ところで、「叫」という漢字を見ると体が反応しちゃうんですよね…
皆さんも歌いたくなるでしょう?「勇者王誕生!!完璧絶叫バージョン」
一説によると、叫びとはストレスの蓄積を防ぐものだとされている。ここで指すストレスとは、精神的なものの他に、身体的なストレスも含まれる。
どれだけ歩いただろうか。進んでも進んでも代わり映えのしない景色に全員が苛立ちを覚え始めていた。最初からずっと気を張っているのだ。精神的に疲れるのも無理は無い。もし、モンスターとの戦闘になればそれが気紛れになるのだろうが、それすら無い。どう考えても異常だった。
(そもそもこの状況が異常か・・・)
そこまで考えて、やはり妙だと思った。マップからして、既に迷宮区に入っている。それなのにまるでモンスターと出くわさないのだ。これが迷宮区に入って数分後とかなら運が良かっただけとも考えられるのだが、既に30分が経過した今、全くモンスターに遭遇しないのはやはりおかしい。それがさらなる苛立ちに、恐怖心に直結して神経をゴリゴリとすり減らしていった。ザッザッザッと集団で歩く音のみが聞こえる。水たまりを踏んだ者の足音にさえ反応する程に気を張っているのだ。時折、ヒタヒタと聞こえる度に立ち止まり、それが足音では無く水の滴る音だと分かり、さらに精神的な疲労を蓄積させて行った。そして、その苛立ちが、その疲れが一瞬にして変質する。
──声が聞こえた──
反響して、どこからなのか分からないが、人の声がした。それも叫ぶように、助けを求める声がしたのだ。いや、もはやそれは叫んでいた。誰かが居るかもしれないという、僅かな希望に必死に縋るように叫んでいた。
「誰かいるのか!?私は血盟騎士団 団長のヒースクリフだ!他のプレイヤーもいる!」
ヒースクリフが声に応えた。しかし、返答が無かった。代わりに聞こえてきたのは
「あああ゛あ゛あ゛や゛め゛て゛く゛れ゛ぇええええええ!!!!殺せ゛よ゛!!!!や゛め゛ろ゛お゛お゛お゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ぎしゃあああああああああああああぁぁぁぁ・・・
断末魔と、唸り声だった。それを皮切りに、恐怖に取り憑かれたプレイヤーの多くが逃げ出した。しかし、この侵食された迷宮区は元の迷宮区よりも複雑に道が入り組み、多岐に渡って分かれ道存在する。ただ逃げ出したいという一心で走り出してしまったプレイヤー達は冷静な判断を失い、各々が正しいと思い込んだ道へ進んでしまう。そうして、集まったトッププレイヤー達の2/3近くが闇へと消えた。
「落ち着け!!今バラバラに逃げた方が危ない!!今すぐ戻ってこい!!!」
そう呼び掛けるも効果は無く、誰も戻ってこなかった。
「クソが!!どうなってやがる!!」
「さっきの奴ってやっぱり・・・」
「言うなよ!畜生がぁ・・・畜生が!!」
「ハハハ・・・もう駄目だ・・・終わりなんだフ、フハハハ・・・」
残ったメンバーもとても冷静では無かった。かく言う俺も、冷静とは言えなかった。この状況で冷静になれという方が難しい。
「残存兵力を確認する。それぞれ組んでいるパーティ・ギルドごとに並んでくれ」
そうヒースクリフが切り出すことで、形だけは全員が冷静になれた。
「よろしい。残ったのは血盟騎士団7人 聖竜連合5人 風林火山参加メンバー全員 エギル君率いるパーティ3人 ソロプレイヤーキリト君 以上か。」
そこまでヒースクリフが言い終えてから、一番の問題を尋ねた。
「どうするヒースクリフ。撤退するか?それとも・・・」
「探索を続ける。」
「でもよぉ!こんだけ人数が減っちまったらそれこそ危険過ぎんぞ!!」
「そうだ!!こんなとこ早く出ようぜ!!」
「これ以上犠牲を出さない為にも撤退すべきだ。」
各々が自分の意見を言っていく。そしてそれは一貫して撤退を促していた。しかし・・・
「しかし、今回集まったのは文字通りこのアインクラッドのトッププレイヤー達だ。2/3も失われたまま戻ってしまえば彼らを見殺しにする上、貴重な限られた戦力を大幅に落とすことになる。今この人数だけが残っても、今後の攻略は不可能になるだろう。」
「「「「・・・」」」」
まさにその通りだ。この20数名では、これから攻略組に加わる人が居たとしても大幅に攻略が難しくなるのだ。さらに、この謎の黒い侵食がどこまで行くのかも分からない。既に迷宮区から近い町なんかは飲み込まれている。今も刻一刻と主街区が飲み込まれつつあるだろう。時間はあまりかけられないのだ。この探索も、攻略そのものも。
「だから今逃げたプレイヤーを含む、行方不明者の捜索を続行する。異論のある者はいるか?」
再び静まりかえる。それは、肯定を意味していた。ようやく全体が纏まりかけたその時
またも、声が聞こえた。
そろそろ黒いやつの正体に気づく人が出てきたかと思います。まもなくハッキリと明言するのでもう暫しのご辛抱を。
次回もお楽しみに〜