何のために進むのか   作:yudaya89

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第10話「不確定要素」

 

 

 ダージリンはポイントαに移動し、待機しているとの連絡があった。ならばそろそろ我々も移動するとしよう。

『全車は作戦にある通りポイントδに向かいます。その後ダージリン様の合図があるまで待機』

『了解』

 我々3両はポイントδで待機する事にした。次の作戦までにしばらく時間があるため、先の戦闘による車両へのダメージを確認する作業を開始した。

 

 しかし

「車両点検お願いします」

「・・・」

「どうしました?」

「・・・この車両は足周りに重大なダメージを受けたので、ここでリタイアします」

「何を言っているんですか?」

「水樹さん・・・ごめんなさい」

「ごめんなさい」

 

 

 

 

「「ごめんなさい!!」」

 

 

 なるほど・・・補充員だけではなく、私の車両の搭乗員にも脅しをかけたか・・・

外を見ると、他の車両は皆で車両ダメージを確認している。という事は私の車両のみということか。それならまだ打開策はある。

 

 

「経緯は聞きません。首謀者も聞きません。ただ今あなた達の置かれている状況は分かりました。しかし今あなた達は自分達が救われる可能性があるにも関わらず、それを踏み潰そうとしている。このままリタイアした場合、首謀者は途轍もない権力を握るでしょう。その時自分達はどうなるか想像できますか?もし私が首謀者であれば、いつまでもあなた達のように自分の不正を知っている人間を生かしておきませんよ?」

「でも!!」

「別にいいですよ?ここでワザとリタイアしても。私には関係ありません。私はリゼ派ですから。リゼ様には私もこの試合で負けるように命令されています」

「「え?」」

「あ、今私が言った事聞きましたよね?残念ですが・・・ごめんなさい」

「「そんな!!」」

「では白旗を上げてください」

「「・・・」」

「どうしたんですか?」

「お願いします!!助けてください!!」

「私も助けてください!!」

 

 

 結局自分達の状況は変わらない事をいまさら理解したか。だからリゼに利用さされるんだよ。

 

 

「白旗あげてください。それともリゼ様の命令に背くんですか?それならこの事はリゼ様に報告する義務があります。あなた方が『リゼ様の命令に背いた』・・・と」

「「ああ」」

「分かりましたか?あなた達は現状のままでは、試合終了後消されます。まぁ殺されることはないと思いますが・・・リゼ様ですからね。薬物依存症にして金持ちに売り飛ばす・・・とかは有るかもしれませんがね」

 

 

 

 

 

 

「助かりたいですか?」

「「え?」」

「助かりたいですか?」

「・・・方法があるんですか?」

「私の言う事を聞くなら」

「「はい!!」」

「では私の指示通りに動いてください。それと脅されているネタは何ですか?」

「わかりました。私は親の会社の裏帳簿についてです」

「私は・・・学園への裏口入学の件です」

「分かりました」

 

 別にばらされても大丈夫な内容なんじゃ?まぁいい。

 

 

 

「どうしたの?」

「クランベリー様、いえ、通信機の調子が悪いとい言う事なので、そちらの調整を優先していただけです。今から確認作業に移ります。」

「そうだったの。所で作戦と少し違っているけど大丈夫?」

「先の戦闘は回避できませんでしたから。次の作戦は大丈夫でしょう。ダージリン様次第ですが」

「わかったわ」

 

 そしてダージリンから通信が入った。

 

 

 

 

『こちらダージリンですわ。ポイントαにて敵捕捉。作戦開始でよろしいでしょうか?』

『こちら水樹です。了解しました。作戦を開始してください」

 

 

 私が立てた作戦はシンプルだ。

 

 クルセイダー3両で敵本陣に突入、ある程度撹乱し離脱する。そして相手部隊が再構成される前にダージリン小隊が突入。その際敵フラッグ車は離脱するはず。それをアールグレイ小隊が狙撃もしくは追撃し撃破する。現状相手は9両、こちらは15両。数は優勢している。しかしここで問題が生じる。装甲の厚さと攻撃力だ。相手のフラッグ車は簡単には撃破出来ない。勿論そこも対策済みだ。最初にも述べたが、現在雨が降っている。この雨はエンジン音をかき消すとともに車両移動時の土煙りが舞いあがるのを抑制する。そして私の作戦は無いなら持ってくる作戦だ。どこの試合会場にも必ずあるものを利用して相手を撃破すればいい。勿論作戦内容には一切書いていない。実戦には想定外の事も発生するのは当たり前だ。

 

 

 正々堂々と戦ったたんだから

 

 

 

 恨みっこなしだよね。

 

 

 そう・・・正々堂々とね

 

 

 

 

 

 

 

「クルセイダー小隊突撃」

 俺の命令で3両のクルセイダーが9両の黒森峰の戦車隊に突っ込んだ。相手は一瞬慌てたが、すぐに持ち直した。勿論その事は織り込み済みだ。相手は密集しフラッグ車を防御する形になった。前回の練習試合では有効であった。しかしそれが今日の試合にも有効かどうかは・・・・

 

 

『ダージリン様?』

『どうしたの?』

『作戦開始でお願いします』

『分かりましたわ』

 

 

 

 

 前回は密集状態から攻撃態勢に迅速に移行された。しかし今日は雨の影響で戦闘地域の地盤が緩い。車両が重く防御態勢に移行しそのまま停止していた事で、予想以上に地面に車両が嵌った。また砲撃も行った事でその反動でより深く沈む事になる。

 

 以上の事から導き出せる答えは、以前と違い攻撃態勢への移行が遅れるという事だ。俺の予想通りダージリン小隊が到着したときには、攻撃態勢に移れず防御態勢のまま、フラッグ車を守っていた。フラッグ車を360°囲っているため、ダージリン小隊へ満足に攻撃できない。その態勢を解いた瞬間、次はクルセイダーがやってくる。

 

 

 今日この試合必ずこの事態になる事が俺には予想できた。最近では1カ月以上前の天気がある程度の確率で予想出来る。そして次の試合会場になると思われる場所で、雨の時、晴れの時などの地盤の状態を確認し、作戦を立案する。後は試合会場が決定したら作戦を多少修正するだけだ。

 

 

 

 そしてダージリンは防御箇所への一点集中攻撃を実施した。

 

 

『黒森峰女学院 3両 走行不能!!』

 

 これで相手は6両。この放送でアールグレイ小隊が動き出す。相手の撃破された車両は移動できないためそのままになる。正面の車両を撃破したため後ろにしか逃げ場がなくなった相手フラッグ車は撃破覚悟でその場からの離脱を図る。

 

 

 このままダージリンの手柄にしたい。しかしリゼの命令でこのままダージリンに撃破させるわけにはいかない。あくまでも不測の事態が発生したように見せないといけない。

 

 

 

 

 だからさぁ・・・動けよ・・・西住みほ・・・

 

 

 私の作戦では、お前はこの窮地をどう脱する?西住みほ。

 

 

 

 そして

 

 

 

 

 『聖グロリアーナ女学院 2両 戦闘不能』

 

 そして試合は動きださす。

 

 

 

 





 最近仕事が事務仕事ばかりなので
 
 PCに向かう気分ではないです。なので亀更新が続きますが

 よろしくお願いします。

 

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