何のために進むのか   作:yudaya89

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第04話「貧乏くじ」

 

 

 シャワーから上がり髪を乾かしテーブルに着く。そこには温かい紅茶が淹れてあった。有り難いが、やはり風呂上りは水が一番だろ?まぁしゃあない。俺はフレーバー様の「席に着きなさい」という言葉に従い席に着く。俺が席に付いき数分後にアールグレイ様が席に付く。

「お待たせしました」

「いえ」

「フレーバー、私にも下さいな」

「かしこまりました」

「ん~いい香りね。彼方の入れる紅茶が一番です」

「ありがとうございます」

「さて、水樹?色々話したい事、聞きたいことがあります」

「何でしょうか?」

「入学式の時、理事長が出した答え解かってた?」

「あの

『金貨の入った袋が10袋あります。ところが、その10袋のうちの1袋に入っている金貨はすべて偽物です。

 本物の金貨は1枚20gで、偽物の金貨は1枚10gです。量りを1度だけ使って、10袋のうち、どれが偽物の金貨なのか当ててください。量りは、天秤ではなく、上に乗せて量るタイプのものです。ちなみに、袋に入っている金貨の枚数は、一定ではない』と

『ジョーカーを抜いた状態でトランプの束からスペードのエースを抜く確率は?』と言う問いだったかと」

「そう。うちの理事長のお遊び。毎年恒例であれを今まで即答できた生徒は居ませんでした。しかし彼方は答えた。『測定は1回』『確率はほぼ100%』とね」

「前の二人が回答している時間で考察出来ましたので」

「でもね。普通は答えられない。意味解かる?彼方はかなり優秀なの」

 

 俺の前でアールグレイが微笑む。しかしその表情は獲物を狙う肉食獣のようだ。俺が質問に答える事ができたのは、答えを知っていたからだ。しかしそれをここで言うのは最も愚かな選択だ。俺の将来が閉ざされる。

 

 多分アールグレイは俺を引き込む気だ。そうじゃなければ今の状況を作り出したアールグレイの意図がわからなくなる。

 

「ありがとうございます。アールグレイ様に褒められるとは思ってませんでした」

「私も彼方のような下級生が居てうれしいわ」

 

 うわ!!あかん!!これ色々ヤバイ状況になってきた。

 

「それでね、もしも水樹さんがいいなら・・・私の派閥に入らない?」

 

 ハイ、派閥勧誘ですね。まぁ派閥っての社会ではよくある。特に女子高にはよくある話だと聞く。転生前は社会に入ってこういう派閥に勧誘されたことは何度かあった。

 

 アールグレイの派閥に入るのは、こうはこの学園の「紅茶の園」に入るのと並ぶぐらい憧れる人間は多い。噂では現在紅茶の園に入っている幹部ですら入れない場合があるらしい。勿論入ると色々特典はある。しかし

 

「お誘いありがとうございます。しかし私のような本当に入学して間もない生徒が入ってもよろしいのでしょうか?私の成績は上から3番目・・・上位の方は勧誘されないのでしょうか?」

「しません」

「ど、どうしてでしょうか?」

「私が求める人材は、優秀な人間ではありません。ただの優秀な人間は五万と居ます。

それだけではなく、物事の本質を見極めて情報を得ることにより行動指針や何事かの目標の設定後の過程をどの様に定めるかなど、多種多様に渡りこの考え方や情報や知識の必要性を重視して行動できる人間を求めているの。分かる?」

 

 

 なるほど、保持している情報をいかに上手に活用し、それを基に結果を出せということか?

 

 アールグレイの派閥に入るのは是非ともお願いしたい。ここは素直に誘いに乗っておこう。

 

 

「分かります。私がアールグレイ様のお役に立てるか分かりませんが、よろしくお願い致します」

「大丈夫よ。役に立つじゃなくて、役に立てるように指導する。適材適所に合わせて指導するのは私の義務よ」

 

 こいつ、最後の最後に「ブラック」な事言いやがった!!

 

「それじゃあ明日からよろしくね。別に朝早く着て何かするとか、私の従者になれとかはないわ。詳しくはフレーバーにきいてちょうだい」

「はい」

「それではごきげんよう」

 

 

 

 

 あの後フレーバーに聞いたが、アールグレイ派閥に入ったからといって、特に何もする必要はなかった。しかしそれはフラグにしか聞こえない。ここで何もしない場合・・・うわぁ絶対何かある。しかし今の俺は紅茶の園に入ることも出来ない、あの人に貢献できる情報も無い・・・集めるか?なにについて?

 

 

 俺は考える・・・あの人が今求めているものは?戦車道の情報?学園の情報?それとも・・・他の派閥の情報?

 

 

 

 アールグレイ派は少数だが影響力が強い。その他の派閥は強硬派は特に居ないと聞く。しかし一部の派閥は紅茶の園への憧れが強く、他の派閥と協力体制を取るとの噂もある。アールグレイ卒業後後を継ぐのはダージリンだ。しかしそれは派閥の問題。戦車道の隊長候補はダージリンともう一人居る。それは『リゼ』だ。少し情報を集めてみるか。

 

 

 

 

 

 

 1週間もするとリゼの情報は集まる。まずリゼ本人についてだ。

はっきり言って優等生、令嬢、成績優秀、人間性も問題ない。アールグレイとも友好的な関係だ。ダージリンとリゼ、どちらも次期隊長及び紅茶の園の長に相応しい。

 

 しかし黒い噂もある。過去に一人の生徒が彼女に何かをされたと・・・そして退学処分になった。と言うのが同級生の情報だ。聞いても無い情報を言ってくれるのはうれしいが、内容が不明確だ。

 

 

 今日は俺が屋上の花を変える日だ。考え事をするには持ってこいの場所であり、俺のサボリスポットだ。しかし今日は何時もと違い、屋上の鍵が開いていた。おかしいここの鍵は2本しか無い。俺は扉を開いた。其処にはいつも私に聞いてもいない情報を話してくれる同級生が居た。しかもアレだ、上級生4名付きで・・・うわっ!!アレだ、イジメ。

「あんた何適当な事話してるのよ!」

「あんたのせいで私達の派閥内で内輪揉めが発生しているのよ!!」

「責任取れるの?」

 

 適当な情報というか話をして、それが広まったか・・・自業自得という言葉がピッタリだ。まぁここは隠れて傍観する。もしも手が出たらそれはそれで報告すればいい。俺は音を立てないように扉を閉める。ゆっくり物陰に隠れスマホで盗撮する。

 

 4人のうち3人は同級生に詰め寄る。残りの1人はずっとポケットに手を入れている。そして一言も喋らない。あれ?この4人の言動、行動は演技?そう演技だ。しかしこの演技の意図はなんだ?その時

 

「彼方達何をしているんですか!!」

「「「「リゼ様」」」」

「何をしているのかを聞いているのです!!」

「彼女が根も葉もない噂をしているので、それへの指導です」

「指導?ではなぜ先生方の前でしないのですか?こんな誰も居ない屋上で、それも4対1で指導?これは指導ではなくイジメでは?この学園でのイジメ行為は退学処分だけで済む話ではなくてよ?」

「「「「・・・」」」」

「この件は私が預かります。いいですね?」

「はい」

 

 俺は思う。本当にこんな三文芝居を信じる人間がいるのか?あの子はそこまでバカじゃないから信じないと思うけど・・・あの4人とリゼはグルでOK。

 

簡単に整理

①リゼは地盤固めのため他の派閥と協力体制

②その過程で新入生を勧誘。

③勧誘方法は先ほどのような感じ

 

 ①~③から考えられる事は、アールグレイ卒業後に行われるダージリンとの派閥争いで勝つため。私としてはダージリンでもリゼでもどちらでもいい。が、上司にするのであれば断然ダージリンだろ。悪徳商法をする人間が上司ならば信用できない。ならばどちらがいい?俺はダージリンがいい。

 

 

 全員が屋上から出て行った事を確認し、私は屋上を後にした。これからアールグレイ様に事の経緯を話したいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?こんな処で何をしているのかしら?」

 

 

 

 俺が屋上に続く階段を下りきった直後、声を掛けられた。

 

 

「あなた・・・水樹エリね?」

「あ、はい」

「水樹さん?」

「は・・・はい」

「今まで何処にいました?」

 

 嘘はよくない。嘘は敵対していると相手に思わせてします。

 

「お・・・屋上です」

「そう

 

 

 あなた同級生が上級生に苛められているのに助けないの?」

 

 

「助けません」

「何故?」

「今回の騒動の原因は彼女の無責任な言動によるもの。つまり彼女自身が引き起こしたものです。それを何故私が止めなければ?もし止めて場合、彼女は反省することなく再度同じ過ちを犯します。ならば傍観し、彼女にお灸をすえ、反省してもらう事で再発防止になると考えるからです」

「でもエスカレートする場合の事は考えていないの?」

「その場合はこの動画を先生方に見せる事で防止可能です」

「なるほど」

 

 

 暫くすると

 

 リゼは俺のスマホを持ってトイレに行った。

「リ、リゼ様」

 

 おれの言葉をまるで聞いていないかのように彼女はゆっくりとトイレに向かう。ここで彼女に触れることは出来ない。触れた瞬間私が悪い事になる。

 

「あなた・・・この動画を見て色々感じましたわね?」

 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!この人かなりヤバイ。その時

「いっ!!」

 俺の胸倉を掴み壁に押し当てた。

「リ、リゼ様!」

「悪いけど、全部知っちゃった子をこのまま帰す訳にはいかないわ。意味分かる?私の目的を邪魔する人間には退場してもらいたいの。今現在私の目的を知っているのは、私と彼方だけ・・・だから・・・死んでくれない?」

「い・・・息・・が」

「嘘嘘♪大丈夫♪安心して、死ぬなんてそんな大層な事はしないわ。ただ私の家族が経営する病院で一生寝たきりで居てもらうだけだから♪だから安心して、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      では

 

 

 

 

      

 

 

    ごきげんよう」

 

 

 

 

 

 

 

 その時スマホに着信が入る。

「あら?あのフレーバーから?」

 俺の胸倉を掴んでいた力が弱まる。

「20分・・後に・・約束して・・・いますので」

「そう。なら出ないさい。ただし要らない話はしないでね。もしもそんな素振りを見せたら・・・私、何するかわからないわよ♪」

 平然と笑顔を絶やさす言ってのける、その性根・・・腐ってやがる!!

 

 

 

 

「そうそう、私の派閥に入りなさい。あなた優秀そうだから使えなくなるまで使ってあげるわ。アールグレイがあなたを勧誘するって話があるの、もしも勧誘されたらYESと答えなさい。分かる?スパイよスパイ。上手くやってダージリンやアールグレイに恥をかかせてやりなさい。いいわね!!」

 

「今日はホントいい日ね。鍵をかけ忘れたから戻ってみれば、アールグレイが勧誘する前に彼方を此方に勧誘できたもの」

 

 

 最後に俺に腹パンをしたのち彼女は去っていく。

 

 

 

 俺はアールグレイ派閥に属しているが関係ない。もしもスパイをしないと何をされるか分からない。あの目、過去に絶対何人か殺っている。間違いない!!

 

 

 

 

 ヤバイ女を敵にしてしまった。





 今回は孕みません。
 
 ちゃんと卒業します。

 ちょっと不幸な目に遭います。

 死にません。

 世界の抑止力はありません。

 
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