アールグレイの勧誘に同意し派閥に入るも、自分の不注意からリゼに殺されそうになってしまい、それを回避するためリゼの傘下に非公式に入る状況になり、早2週間。俺は今マチルダの車長をしている。
リゼの命令で俺は戦車道を受講する事になった。(命令が無くても入るつもりだった)
勿論俺が唯単に受講したわけではない。俺の役目は
①ダージリンの指揮下に入る
②車長になる
③その後1年生では前例が無い小隊長に任命される。任命にはダージリン、アールグレイの2名の名前が連なる。
④小隊長任命後、重大な試合でミスをし、それが原因で敗北するように仕向ける
⑤アールグレイ派閥の発言力を低下させる
①②は早々にクリアしている。しかし③は難しいだろう。前代未聞だぞ?原作ではペコが1年生で紅茶名を貰い、ダージリン車の装填手だった・・・しかし原作でもそこまでだぞ?それ以上を俺に求めるか・・・
「あの?」
「何?」
「本当に大丈夫なのでしょうか?」
「小隊長の話?」
「はい」
「アールグレイの話聞いている?」
「どのような話でしょうか?」
「改革」
「改革・・・ですか」
「そう。今までの伝統はそのままで新しい伝統を取り込もうって話」
「でもOG会が黙っていないのでは?」
「当たり前よ。だからあなたよ」
「私ですか?」
「そうよ。入学早々紅茶の園でアールグレイと一緒に入浴、その後お茶を共にした・・・創立以来の大ニュースよ?間違ってないでしょ?答えなさい?虚偽は許さないわよ」
「その通りです」
(フレーバー様に押し倒された話は聞いていないみたいだな)
「素直ですわね。その改革の目玉が・・・あなたよ」
「しかし小隊長になるには、それなりの成果・・・結果が必要なはず。しかし私は未だ結果を出していません」
「黒森峰は知っている?」
「?はい・・・ある程度は」
「今年の黒森峰には西住流の後継者西住まほ、そして今年その妹のみほが在学しているわ。そして2週間後に親善試合が行われます」
「そこで私に結果を?」
「その通りですわ」
「なるほど、私をその親善試合に小隊長として臨時任命、結果を過去の試合結果と比較検討し、私が有能であると証明する・・・そして今後有能な1年生を発掘し育成する事で優勝する事も可能とOG会を説得する。なるほど理にかなっていますね」
「・・・」
「す、すみません。誤った考察でした」
「いえ、正解よ。まぁあなたに結果を求めてはいないわ。殆どがアールグレイの指示通り動けば問題ないようになっているわ」
「承知しました」
「くれぐれもヘマをしないでね。私も条件付で彼方の小隊長臨時就任に承認しているのですから」
「はい」
俺の小隊長臨時就任はリゼと話した2日後に紅茶の園でアールグレイより発表された。皆驚いていたが、最も皆が驚いていたのが、リゼも臨時就任に条件付で承認していた事だ。アールグレイ派の人間に対してリゼが反対せず賛同した事で、何か裏が有るのではないかと皆疑った。
「ねえねえ?」
「何?」
「小隊長になってどう?」
「どうって・・・」
過去の出来事からリゼ派に入った情報通の同級生・・・相変わらず喧しい。
「だってアールグレイ様、ダージリン様、それにリゼ様にも認められたじゃない。うれしくないの?」
「うれしいよ」
「そうなの?ちっともうれしそうに見えないよ?もしかしてリゼ様の条件が気に入らないの?」
「条件は私には関係ないよ」
「なら、何故?」
「就任早々にフレーバー様に指導されたくないからよ」
「・・・確かに」
「それより彼方またフレーバー様に呼び出されたって?」
「それは・・・あははは、じゃあね」
メンドクサイ。リゼ派の人間から俺の心情を探れとでも命令されたか。まったく俺がそんなヘマするかよ。
小隊長としての仕事にも慣れ、とうとう問題の黒森峰との試合が明日行われる。俺は所詮飾りに過ぎない。しかしアールグレイはそれを良しとしない。リゼは自分の保持のため飾りでいることを望む。しかし今後飾りではアールグレイのスパイを継続できない。リゼの役にも立たない。結果俺は役立たずの烙印を押される。そしてその役立たずを押したアールグレイ派は失墜、リゼ派が勢力を伸ばすだろ。
だからリゼにボコられるのを覚悟で挑むしかない。
試合当日
現在黒森峰はまほが隊長、みほは副隊長となっている。まぁ原作通りという事だ。俺が介入した事で色々変化があると思ったが、要らぬ心配だった。
今日は15対15のフラッグ戦。私の指揮下には7両となっている。遠まわしに私のヘマで敗北が決定する。しかし逆に考えればこの7両で勝利する事で私の道筋通りになる。
今回は親善試合という事で黒森峰にも1年生が要るみたいだ。まぁエリカ以外は覚えていない。あのタレ目の女の子は小梅?だったか?もう20年ぐらい経過しているから覚えていない。でもアレだ。カワイイ。
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
私はアールグレイの指示のもと岡上に待機、敵車両が通過後挟撃といった特に捻りも無い作戦を任された。偵察車両により敵は3小隊に別れ別々に進撃しているとのこと。しかしその偵察車両も相手の斥候に早々に撃破されてしまい情報が不足している。
俺は考える。相手が3小隊に?別々に進撃?おかしい。何故??斥候のため部隊を分けるのは理解できる。しかしそれ以外に黒森峰が・・・西住流がそんな事をするか?いや、みほなら辻褄は合う。しかしガチガチの西住流に染まっているまほがそんな事しない。今日の試合でまっすぐ正面から攻める西住流を1年生に教えるはずだ・・・
だからもしもこのまま我々がここで待機するのは・・・
『アールグレイ様?』
『何?』
『偵察をしては如何でしょうか?』
『何故?』
『情報が曖昧です。現状のままではもし相手が3小隊で別々に進撃ではなく、全隊で進撃している場合、部隊を2つに分けているこちらは不利になります』
『確かに』
『こちらが先行している分偵察には適していると考えます』
『では2両偵察に』
『了解しました』
まぁギリギリ大丈夫だろ。
「2両偵察に出てください」
「大変です!!」
「どうしました?」
「敵です!!」
確かに情報は正しい。双眼鏡を覗き込み俺はそう思考した。3小隊に分かれて進撃している。但し別々ではない。
先頭車両はは機動力、攻撃力を有した車両、その後方にフラッグ車を挟み込むように防御の硬い車両で覆う。後方には先頭と同じ車両を配置している。こちらの浸透強襲戦術への対策だろ。先頭の車両で相手の陣形に穴を空け、其処に入り込み、外側の車両は防御と攻撃を両立できる。穴を空けた車両は機動力があるため敵陣形の好きな所に移動できる。後方の車両と挟撃も可能だ。この陣形を重戦車で運用されると殆ど対応出来ない。
【無理ゲー】
俺の頭にはその言葉以外出てこない。あの陣形を攻略はほぼ無理だ。
『アールグレイ様、敵部隊は『3小隊でこちらに向かっていますか?』何故それを!』
『過去の試合では、殆ど似たような陣形で攻めていますので』
おい!知っているのか・・・あ、そういう事か!
『では一度本隊に合流したほうがよろしいですか?』
『合流後は?』
『は?』
『合流後のプランはありますか?』
『・・・』
過去の試合から黒森峰の戦術は把握している。しかしそれへの対策を行ってもOG会が許可しない。勿論隊長であるアールグレイが、試合中に「勝手に」指示することは、例え勝利してもOG会が許可しない。
ならばどうする?この試合の目的は新しい試みの結果を出すことだ。試合中に伝統に反する行動を取る。その行動が結果として勝利に結びついた場合、OG会を説得できる。もしも勝利出来なくても過去の結果と比較した結果問題なければ、同じく説得できる。
これを隊長が実施し、失敗した場合のリスクは大きすぎるが、私ならリスクは少なく済む。でもそんなリスクがある事、事前に話して欲しかった。
『仕方ありません。全部隊は前進してください。分隊は後退し合流して下さい』
『・・・』
『水樹?』
『了解しました』
「では全車後退でよろしいですか?」
「いえ、後退は不要です」
「は?命令ですよ?」
「アールグレイ様は後退し合流せよと命令されました。しかし『いつ』『どこで』とは命じていません。なので我々はまずこの岡上から後退し、あそこの森に行きます」
「それでは命令違反では!?」
「後退し、待機するだけです。命令違反にはなりません。全車後退し森の両サイドに分かれて待機して下さい」
荒野の両端にある森へ移動後、部隊を2つに分け待機させる。これで後は敵さんがこの道幅1.5kmに入ってきたら作戦開始だ。敵は後5分でここに到着する。此方の本隊はあと15分だ。たった10分間。600s俺は相手をこの地点で釘付けにする作戦を行えばいい。そうする事でアールグレイの部隊で行う浸透強襲戦術が有効に機能する・・・はずだ。本番一発勝負。そもそも打ち合わせなしのアドリブだ。
なんだったけ?・・・思い出せ!!みほが黒森峰で行った作戦を!!なんだったけ?
あ!!パラリラだ。あれ、あれだ。
『煙幕はありますか?』
『え?いえ、煙幕などは搭載していません』
『解かりました』
はい積んだ。相手の視界を奪い接近する作戦・・・終了
ならどうする?・・・いやまて、まほやみほだけを相手にしてる訳じゃない、俺は黒森峰の戦車道受講者を相手にするんだ。だったら道はある。
なんたってあいつらは俺と同じ女子高生・・・たった16年しか生きていない。まぁ俺は前世込みで40歳を超えている・・・いやもう歳のことは置いておこう。
悪いな。前世からネチネチ諦めが悪い性格なんでね。
リゼにボコボコにされたくないし、アールグレイに見捨てられてあくないしね。悪いが俺の野望のために利用させてもらうぞ。