何のために進むのか   作:yudaya89

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第07話「クルセイダー小隊」

 

 

 腕から頭に激痛が走り、意識が朦朧とする。おまけに腕には釘が刺さっている・・・

 

 

 

「ハハハ。これどうすんの?」

 

 

 

 

 

 

 

 もう・・・イヤ 

 

 

 

 でも・・・もうすぐお茶会が始まる・・・その席で俺は今後についてプレゼンする手筈になっている。よってそこで不備があればアールグレイの顔にさらに泥を塗ることになる。流石にそれは避けたい。これ以上状況が悪化した場合、アールグレイの支持が下がる可能性が考えられる。

 

 俺は立ち上がって自分の腕を見る。新品の釘が5本刺さっていた。ある意味救われた。新品じゃなく錆がある釘だった場合、破傷風などに感染するリスクがある。そこは感謝する。さて問題は腕に刺さっている釘をどうするか・・・

 

 簡単だ。抜くしかない。その際出血が考えられるが、制服が青いため少しは誤魔化せる。俺は屋上からトレイに向かう。流石に5本全てを抜くには勇気が要る。俺はハンカチを口にくわえ、5本の釘を掴む。

 

 

 

 

 一瞬意識が飛んだが無事抜けた。出血も多くなくトイレの紙で対処できた。しかし腕から頭に響く鈍痛はどうする事も出来ない。こんな時に役に立つのは、女の子の日に飲む頭痛薬(痛み止め)だ。これならプレゼンは何とかなるだろう。薬を内服し、汗を拭き、トイレから出て鏡で自分を見る。酷い顔色だ。水で顔を洗い、軽くメイクを施す。これで何とかなるだろう。

 

 

 

 

 

「以上が今回の試合から推測された我が高の改善ポイントと思われます」

「ありがとう水樹。さて、皆様の意見をお願い致しますわ」

「水樹さん?」

「何でしょうか?ダージリン様」

「隊員の錬度向上はわかりますわ。確かに終盤の乱戦で我々は手も足も出なかったですわ。しかし後の新たな戦車の導入及び戦車の運用方法の再検討とはそういう意味です?」

「まず新戦車に関しては、現状のままであれば少し攻撃面の強化は必須かと」

「解かりますわ。それを補うのが戦術という事も」

「伝統があるのは解かっています。しかし」

「新戦車の案は反対ですわ」

「「異議なし」」

「では、戦車運用の再検討というのは?現状では格上の相手に対して、対応出来ない箇所が見受けられます」

「でも、再検討と言っても何か案は有るのかしら?」

「申し訳ありません」

「謝ることはありませんわ」

「・・・」

 

 なるほど、新戦車の導入、戦術の再検討はしないという事か。いや、「出来ない」だな。しかしそうなると難題になりそうだな。

「そこで提案がありますわ」

「何でしょうか?」

「事前にアールグレイ様にはお話を通していますが、後は水樹さん次第なのですが・・・クルセイダー小隊を彼方が指揮するのは如何でしょうか?」

「クルセイダー小隊?」

「と、言っても現状3台分の隊員しかいませんし、何より副小隊長が謹慎中ですわ」

「謹慎・・・ですか」

「ええ、少し難しい人ですわ。どう?」

 映画版で出ていた車両だな。機動力が高いぐらいしか覚えてない。しかし

「ダージリン様?少しその車両について勉強したいのですが、それからでもよろしいでしょうか?」

「まずは情報収集ですわね?いい心がけですわ。自分の与えられるものに対し関心を持つことは」

「ありがとうございます」

「他に何か意見はありますか?・・・・・では皆さん、お茶会を楽しんでください」

 

 

 アールグレイの言葉で先ほどの空気から一転、お茶会の空気に変わった。俺は素早く

出口に向かう。俺はまだ幹部候補ですらない。ここに入出する事事態特例中の特例だ。その時、俺は腕を掴まれた。この時幸運だったのが、掴まれた腕が怪我をしていない腕だった事だ。そうじゃなければ声を出していただろう。痛み止めがきいていないから。

「水樹さん?」

「アッサム様?どのような御用でしょうか?」

「少しいい?」

 

 そのまま一つのテーブルに連れて行かれた。そこは2人掛けのテーブルだった。アッサムが座った対面にはダージリンが座っていた。

 

「水樹さん?」

「はい」

「彼方に課した事は難しい事だと思いますわ。だから彼方にある言場を送りますわ。『未来は明日始まるんじゃないわ。今日始まるのよ』」

「ありがとうございます」

「ええ、頑張りなさい」

「では」

 

 

 そうそう、忘れてたな。俺は少し離れたところで

 

「ダージリン様?」

「何かしら?」

「ヨハネ・パウロ2世ですね。肝に銘じます」

 

 

 

 あの後クルセイダーに関して調べた。以前から運用こそされていたが、整備性の劣悪さや他の戦車との足並みが揃わないことから、試合への投入は殆ど無し。要は実戦経験なし、データなし、運用方法なし、3N状態だ。これは難題じゃない、不可能だ。俺は資料室から食堂に向かった。勿論ここでは何も食べない。嫌がらせをされるぐらいなら食べない方がいい。それよりもゆっくりとした音楽が流れているから脳みその休憩には持って来いだ。2階の自販機でコヒーを買い、近くの席に座る。2階はあまり人気がない。なぜなら移動距離が入り口から遠いのだ。まぁ元々人ごみ嫌いだし。それに俺が要ると色々視線がウザイしない。一人でゆっくり考え事をしたいときに限って厄介な人間は現れる。時と場所を選ばずに。

 

 

「ねぇねぇ聞いたよ。あのクルセイダー小隊を運用するんだって?」

「またあなた」

「え~そんなに邪険にしないでよ」

 例のリゼ派所属の情報通同級生が私の対面に座る。なんかストーカみたいな奴だな。

「で?何?」

「水樹に耳寄りな情報があるんだ。聞く?」

「見返りは?」

「今度のテスト勉強!!」

「OK」

「我が高の戦車道は数年前に準優勝、10数年前にベスト4に入っています。現在クルセイダーを主に支援しているのはベスト4に入った頃にクルセイダーを運用していたOB、OG。話を聞くと、偶然クルセイダーが活躍して勝利したそうです。まぁ過去に活躍したのだから、今後も活躍するはずという気持ちで今日まで支援をしています。しかしここ10年は殆ど運用されていません。

 それを見かねて去年からOBの娘である2年のクランベリー様が小隊長、同学年のバニラ様が副小隊長に就任しています。しかし両名へのニックネーム付与に関しては、かなり問題があったそうです。特にバニラ様です。この人は元々この学校の校風に馴染めてませんでしたし、半年前に暴力事件で謹慎処分になりました。クランベリー様のお陰で退学にはなっていませんが・・・水樹、噂をすれば、彼女達ですよ。右のおっとりした黒髪の女性がクランベリー様、そして赤髪のほうがバニラ様よ」

「それで暴力事件の真相は?粗方クランベリー様の悪口を聞いたバニラ様がその子を殴った?」

「正解」

「リゼ様派」

「違う派閥」

「なるほど」

 

 その時、下の階でカップの割れる音が響いた。

 

『も!!申し訳ありません!!』

『あなた!!』

 

 どうやら、1年生の給仕係が幹部の制服に紅茶を溢した様だ。それに激怒しているのは、どうやらリゼでもアールグレイ派閥でもない派閥の人間だ。アレぐらいのシミならサッサと拭けば問題ないだろうに。

 

『申し訳有りません。直ぐに!!』

『あなた!!私の制服を汚すという事は私への侮辱ですよ!!』

 

 激怒した幹部が一年生に手を上げた瞬間

 

『一年生を相手に喧嘩を売るとは、まったく情けないかぎりだな』

『誰ですか!!』

『私ですか?私はバニラ。彼方と同じ幹部ですよ。どうしますか?このまま彼女に手を上げるなら、彼方も半年の謹慎を経験しますか?私と言う前例が居ますからね~~流石に何も処分なしってのは無いと思いますよ』

 

 赤髪のバニラがその場の仲裁に入った。しかし何故か彼女の手にはコーヒーの入った容器が握られていた。

『彼方と違います!!私の場合は指導です!!そこを退きなさい!!私への侮辱は許しません』

『そうですか。彼方にとってそのシミは侮辱ですか。では』

 そういい容器に入ったコーヒーを激怒している幹部に向かったに対して、勢いよくをぶちまけた。

『あなた!!何をしますか!!これは幹部会議に報告します!!』

『あら?なら私は指導する立場の人間が、他愛のないミスで一年生の給仕係へ「暴力」を働こうとした幹部が居た事を報告するだけです。勿論一部始終は携帯で撮影済みです。どうしますか?』

『この!!』

 その言場で更に激怒した幹部は、バニラに平手打ちをしようとしたが、バニラに受け止められた。

『あなたがお望みなら、いつでもお相手になりますよ。ですが、その前にもう少し鍛える事をお勧めします』

 

 

 この一連のやり取りは問題にはならなかった。しかしこの学園であんな立ち回りをしていたら、目立ってしかたないだとうに。

 

 

 

 でも気に入った。

 

 

「で?」

「何?」

「大丈夫そう?」

「テスト勉強のほかに、出題箇所を予想して作った模擬テスト・・・する」

「!!是非!!」

「ならクランベリー様とバニラ様の関係を」

「二人は幼馴染。見ての通り、作戦をクランベリー様が、実行をバニラ様って感じの役割です。クランベリー様は日本でも有数の名家。でもバニラ様は普通のご家庭よ」

「なるほどね」

「で、2人の夢はクルセイダーで優勝を掴む事」

「了解」

 俺はその場から立ち上がり出口に向かった。

「模擬テストの件忘れないでね!!」

「了解」

 何故か私の予想した問題が高確率で試験に出るそうだ。

 

 

 

 

 

 

 私は花を持って屋上に向かう。この仕事を始めてまだそんなに経過していないけど、屋上でのイベント発生率が高いような・・・まぁ気のせいだろう。いつものように鍵を取り出して錠前をあけようとした時だった。

「あれ?破壊されてる?」

 簡単な鍵なので壊すのは簡単だ。しかしこの学園でこんな事をする人間は居ない。俺は警戒しながら屋上の扉を開ける。柵の近くに赤い髪をした女性が要るのを確認した。バニラ様だ。仕方ない。

 

 

 

 

「バニラ様?」

「ここは立ち入り禁止だぞ?」

「それは此方のセリフです。私はここへの立ち入りを許可されています」

「それは悪かった」

「それに鍵まで壊して・・・」

「誰かに報告するのか?」

「返事次第かと」

「返事?」

「はい。クルセイダー小隊を私に預けてみませんか?」

「はぁ?お前のような小娘に?」

「はい。因みにバニラ様と1歳しか違いませんが」

「はっ、冗談は辞めてくれ。そもそもお前に預けたら何のメリットがあるんだ?優勝するなんて夢物語は辞めてくれよ?」

「勿論」

「アホらしい」

 彼女が私の横を通過した時、

「いいんですか?バニラ様?」

「何が?」

「クランベリー様ですよ」

「あいつがどうした?」

「かなり危うい立場だそうですね?何でもクルセイダーを支援しているOB、OGからのクレームが日に日に増しているとか?その中に実の母親が含まれているとか・・・」

「てめぇ!!」

 バニラは俺の肩を掴み正面に向け、胸倉をつかむ。

「みんな知っている事ですよ?クルセイダーを運用できない無能、おまけに暴力沙汰を起こす部下が要るもんだから、関係ない指導不足まで取りざたされる・・・そういえば来年からクルセイダー自体の採用をやめるらしいですよ?まぁ小娘の戯言ですけどね」

「!!!」

 俺に手を上げようとする。そうそう怒れ怒れ。

「私はアールグレイ派ですよ」

「お、お前みたいな奴が!!なんで・・・クランベリーは誘われもしなかったのに!!」

「入りたくないですか?もうすぐ始まる全国大会である程度結果を出せばアールグレイ様もお認めになるのでは?」

 俺の胸倉を離す。

「一つ条件だ」

「何でしょうか?」

「クランベリーをアールグレイ派に入れろ」

「無理です。今後クルセイダー小隊の活躍次第となります。それに部下への教育が不十分です」

「私は関係ないだろ!!」

「有るんですよ。あなたはバニラ、この学園の幹部、そしてクルセイダー小隊副小隊長・・・これだけでも十分大有りです。まず彼方が問題を起こさないようにする」

「・・・解かった。今後在学中は問題を起こさないようにする。ただしお前が約束を破るような事があれば話は別だ」

「問題ないです」

「じゃあクランベリーに話をしてくる」

 

 

 

 

 

 話が終わったと思ったら後ろから

「その条件ではダメよ。バニラ」

「クランベリー」

「水樹さん・・・ね?色々話は聞いています。昨日ダージリン様からお話をお聞きしました。しかしその条件では了承できませんわ」

「では、どのような条件なら?」

「私だけではなく、バニラ、ジャスミンをアールグレイ派に入れるへ変更していただけますか?」

「ジャスミン?様」

「ええ、もう一人のクルセイダー車長よ」

「先ほども申しましたが、それは確約できません」

「いいの、アールグレイ様の派閥に入れる可能性がまだあるなら・・・」

「わかりました。では交渉成立という事ですね?」

「「ええ」」

「では、交渉成立という事で、皆様に紅茶の1杯でも入れたいと思います」

「お前・・・大丈夫なのか?」

「さぁ?」

「さぁ・・・て」

「まぁ私が初めて入れる紅茶の試飲という事で。もしもダメならコーヒーでも飲みに行きましょう。勿論私の驕りです」

「ここのコーヒー庶民のお前には高いと思うぞ?いいのか?」

「はい。それにバニラ様は飲めなかったでしょう?今日の昼過ぎに私はバニラ様が他の幹部の生徒と衝突する場に居合わせてまして。そこでバニラ様に紅茶を奢りたくなりました。それが理由です」

「お前見ていたのか?何故助けなかった?

「私もあなた方と同じくかなり危うい立場です。今以上に自分の立場が危うくなれば・・・わかります?」

「まぁ解かるけどな」

「私が幹部になればあのような行為はさせませんけど。この学園で何かをするならば、力が必要です。無ければ今日の給仕係みたいになります」

「解かった。でも次からは誰かに報告しろよ?」

「バニラ様に報告でよろしいですか?」

「ああ」

「暴力は禁止ですよ?」

「解かってる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 このやり取り後、紅茶の園でクランベリー、バニラ、ジャスミン、俺の4人でお茶会を開いた。翌日にはこの話は学園中に広まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「お前・・・本当に紅茶入れるの初めてか?」

「はい」

「・・・」

「どうかしましたか?」

「今後私ら以外に紅茶を入れるなよ?」

「はぁ・・・わかりました」

「・・・(メチャクチャ上手い!!)」

 

 

 

 

 

 

 






 この話の展開に持っていきたかった。


 銀伝は旧作しか見ていません。

 シェーンコップのような中年親父になりたい(トマホークは振り回しません)
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