何のために進むのか   作:yudaya89

8 / 15
第08話「策略には策略で」

 

紅茶の園でクランベリー、バニラ、ジャスミン、俺の4人でお茶会を開いた翌日、俺はクルセイダー小隊の錬度を確認した。今まで3両のみで練習していたと聞いていたが、中々の錬度だった。しかしそれは今までの聖グロの話だ。今の聖グロからすると錬度は低い。だが、今から全国大会の準々決勝までには何とかなる。なぜなら今までと違い明確な運用方法がある。今日の練習後に皆にその運用方法を伝えるつもりだ。

 

 

「本当にそれがクルセイダーの正しい運用方法なのか?」

「バニラ様訂正いたします。正確には「現時点」となります」

「今後は変わる可能性があると?」

「勿論です。大元の運用方法に合わせて、クルセイダーの運用も変化します」

「なるほど」

「ただし勿論実力があればの話ですが・・・」

「今は実力が無いという事でか?」

「その通りです。クランベリー様」

「じゃあ明日から、この運用方法をマスターするための訓練を行うのですね?」

「いえジャスミン様、明日からではなく、今からです」

「「はぁ?」」

「この運用方法は基本的に薄暗い森を突っ切ります。よって太陽の光が届かない場合も想定し、最小限の光量で森を突っ切れるように訓練しましょう」

「それって危険なのでは?」

「いえいえ、木にあたらなければ問題ありません。では開始しましょう♪」

 

 

 

 

その結果は良くも悪くも無かった。原因は練習不足だ。何せ副小隊長が謹慎中により人数が不足したため車両自体を動かすことが出来なかった。仕方ない・・・だから俺はこの問題を早期に、尚且つ早急に解決しなければいけない。そのための夜間訓練だ。最低限の光量で森を突っ切るのは至難の技だが、それが出来れば昼間の薄暗い程度の森であれば可能だ。しかしこれにも問題はある。それは

 

「水樹!!!」

 ほら来た

 

 

 

「何なのよ!!どうしてここまでクルセイダーが壊れるのよ!!」

「・・・本当に申し訳ありません・・・」

「直す身にもなってよね!!」

 

 

 整備課の人からのクレームだ。そうこの訓練では車両へのダメージが大きい。全速力で樹にぶつかると基本的に前面にダメージが集中する。勿論事前にそのことも考え部品発注は行っている。部品はある、しかし整備するのは人間だ。短期間で修理回数が2ケタを超えれば普通に怒る。最初は普通の整備生、次はそれをまとめる整備主任、そして整備課のボス、整備部長だ。そして今俺を怒っているのは部長様だ。おまけとして整備課の部室で2人という状況・・・死にたい

 

「まぁアールグレイ様から『ご迷惑をかけます』って事前に話はあったよ?私もアールグレイ様直々の話だから・・・最初は皆に我慢するように説得したよ?全力で・・・でもね?そろそろ無理かな・・・わかるよね?」

「はい。最初の3日で最初に発注した部品を使い切りました。そして3両で5日で39回の修理回数・・・それもクルセイダーだけでこの回数です。そして他車両の修理を後回しにしているので、その辺りからもクレームが出ていますね。この辺はアールグレイ様がなんとかしてくれています。しかしそろそろ限界だと思います」

「うん。噂道理の子だね。私としてはあなたを応援したいよ。クルセイダーの運用をここまで頑張ってくれたんだし」

「部長がクルセイダーに興味があるとは思ってもいませんでした」

「私としてはクランベリー様は個人的に好意が持てる人だからね」

「なるほど。では後6回の修理をお願いしてもいいですか?」

「6回の理由は?」

「2日後の試合で勝利した場合は、わが校は準決勝へと駒を進めます。そして準決勝では黒森峰との試合となります。直前まで練習を行いたいですが、修理不能なダメージを負ってしまえば勝率が大幅にダウンします。よって後2日間の練習となります」

「その練習で車両にダメージが入らないようにすることは?」

「理論的に不可能です。諦めてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?」

「はい。我がクルセイダー小隊の練度は以前より75%上昇しています。そしてこの作戦通りなら互角以上に渡り合えると」

「あの黒森峰に?」

「はい、アールグレイ様」

「しかしですね・・・これは難しいです」

「難しい・・ということは可能性は有るということですか?」

「でも、『リゼ小隊とクルセイダー小隊及び予備戦力を入れ替える』これに関して、かなり荒れるわね。リゼ派が黙っていないわ。それに最低ダージリンの支援は必須ね」

「わかりました。ダージリン様の協力を私から要請したいと思います」

「必要ないわ」

「なぜでしょうか?」

「私から彼女に協力を要請する事で問題は解決します」

「ダメです」

「なぜかしら?」

「この作戦はダージリン様の協力が必ず必要となります。私から要請させていただけませんか?もしもダメである場合それは私の力不足です」

「わかりました」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が自ら私を支援する体制を整えない限り、この作戦は成立しない。そもそもこの作戦はダージリンを時期隊長にするのが目的だ。現状はどう足掻いてもリゼの方が優勢だ。

 

 

 

 リゼは俺の作戦を知っている。勿論失敗するように俺に指示している。彼女の中では俺の無謀な作戦に賛同したダージリンは、敗戦の責任を追及される。これによりダージリンの次期隊長への道を完全に閉ざし、うまくいけばダージリンの派閥を取り込む。俺はどうなるかは知らない。知りたくもない。

 しかし俺はそのリゼの策略を利用させてもらう。俺の作戦は失敗せずに、成功してしまう。それもダージリン自身が敵フラッグ車を撃破してしまう。結果ダージリンの評価を底上げする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダージリン様」

「あら?水樹さん、ごきげんよう。何か私に御用?」

「はい。少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「ええ、アッサムも同席しても?」

「勿論です」

 

 

 

 

「結論から申し上げます。黒森峰との試合での作戦内容を決める場で、私の作戦を全面的に支援して頂けませんか?」

「どうして?」

「まず黒森峰に対して我が校の浸透強襲戦術は相性が悪い。そこでこの浸透強襲戦術を強化する必要があります。それはクルセイダー小隊による敵本隊の撹乱及び戦力の分散です。先の親善試合で私が考えた作戦を発展させたものです」

「親善試合の件は、アッサム」

「はい。確かに有効です。あの作戦は黒森峰の進撃を一時的に停止させています。しかし彼女達がその弱点をそのままにするはずがありません。それに親善試合に出場していたのは大半が1年生でした」

「これに対して返答は?水樹」

「はい。確かにアッサム様がおっしゃる通りです。しかしあの時とはこちらの練度も機動力もまったく違います。それに黒森峰の弱点はそれだけではありません。そもそもあの時の弱点・・・本隊が不意に攻撃された時の対処、仮に「命令系統」と略しましょう。この命令系統は簡単に改善できるものではありません。これを改善するには命令系統を3程度に分ける必要があります。しかしこれは黒森峰には不適用です。なぜなら「伝統」だからです」

「なるほど。しかしもう一度この作戦が通用するという理由にはなりませんわよ」

「そもそも同じ作戦を行うとは一度も申していません」

「でもクルセイダーによる敵本隊の撹乱、戦力の分散と先ほど申し上げませんでした?」

「確かに申しました。しかし仕掛けるタイミングなどが違いますし、何より」

「何より?」

「3段階構成となっています。まずクルセイダー小隊で撹乱、ダージリン様の小隊で大幅に戦力を削り、本隊でフラッグ車を撃破します。すべてはタイミングが重要です」

「なるほど。アッサムの意見は?」

「現状では作戦成功率は60%です。もう少し作戦の修正が必要です」

「では、リゼ小隊を他の小隊と入れ替えた場合の作成成功率はいくつでしょうか?」

「・・・」

「アッサム」

「作戦成功率は75%」

「水樹さん、あなたの言いたいことはわかりましたが、リゼの小隊を外す事は出来ないでしょう。それこそ不祥事を起こさない限り」

「わかりました。もしもダージリン様、リゼ様自身が作戦から抜けると言い出した場合は、その場で私に賛同して頂けますか?」

「あなたも思い切った事を言い出しますわね」

「どうでしょうか?」

「いいですわ。もしもリゼが自身で今回の作戦に不参加を表明した時点であなたを全面的に支援いたしますわ」

「ありがとうございます。それでは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。