かくして濁った瞳の少女、結月ゆかりと俺が部屋に取り残され、非常に気まずい状況となった。
お通夜でもあったのかというほどの空気の沈み方だ。
...取り敢えず自己紹介でもして様子をうかがってみることにしてみる
あー…改めて、マーフィ・ランバートだ、よろしく頼むよ。
虚ろな目をした目の前のボイスロイドとやらはうんともすんとも言ってくれず、まるでシャットダウンしたロボットの様だ。
ここでひとつ、頭に考えが浮かんだ。
ここまで第一印象が酷かったんだ、すこし悪戯をしてリラックスさせてやろうか。
もしもし、聞こえてるのか?もしもーし?
肩をぽんぽん、と叩きながら聞こえているであろうというのに敢えて聞いてやる。
「…っ!」
ハッとしたような顔をして、数秒もたたないうちに顔が真っ青に染まり…
「すみませんっ!すみませんっ!最低の屑奴隷で大変申し訳ございませんっ!どうかあの薬だけはっ!」
さっきまでの無表情、不動はなんだったのかというほどのマシンガントークで謝罪をしながら、土下座してきた。
「…ご、ご主人様…?」
がたがたと体を震わせ、いまにも逃げ出したいというような表情をしながら此方を見上げてくる。
…まくしたてるような謝罪を受け、今度は此方が思考停止していたらしい。
あぁ…悪い…考え事をしていた…君の名前を聞かせてくれるか?
もう既に聞いていたのだが、思考停止していたがために再び聞いてしまった。
「ゆ、結月ゆかりと申します…」
そう話す声すらも震え、上擦っていた。
自己紹介でこれか…そう思った瞬間に、これから…少なくとも1週間は共にしなければいけないという事を思い出す。
…これから…どうやって生活していくんだ…
はぁ…とため息をつき、頭を抱えてしまう。
「ひっ…すみまっ」
いや…君のせいじゃない…安心してくれ…。
「そ、そうでしたか!大変失礼いたしました!」
…やっぱりこの子のせいかもしれない…。
まぁ…悩んでいても仕方ないか。これからの気苦労から目を逸らした。
ふとそう思い立って、風呂を沸かそうと立ち上がる。
そうすると彼女の体が分かりやすくビクッ!と反応する。
…なにをするにもこれか…酷く生きづらそうな彼女に同情するような目線を向けながら、風呂を沸かしに部屋を移動した。
いいシャンプーとかはないが、我慢してくれ。
そう言うと、彼女は非常に不思議そうな顔をした。
「奴隷なのに…お風呂に入れてくださるんですか…?」