…なんだって?
「?…私は奴隷なのですから…」
あぁ、そうか。彼女は誤解をしているらしい。
あー…俺は君をそういうものとして使うつもりはない、安心してくれ。
「っ…そうでしたか…」
非常に悲しそうな目線が此方を刺す、が敢えて無視する。
これ以上気にかけていたら気が持たないと気づいたからだ。
あー…じゃあ、風呂に入ろうか、案内するよ。
そう語りながらついてくるように促すと、存外素直にこちらについてきてくれた。
今度は言うこと聞いてくれたか…
着いた辺りで、女性の裸体を見るのも何なので後ろを向く。
…そこにあるのは使ってくれて構わないよ…流石に風呂の入り方は分るよな?
「問題ありません、ご主人様。」
…なんだかなぁ。
思うところはいろいろあったが、取り敢えずは部屋に戻ることにした。
…奴隷なのにお風呂に入れてくださるんですか、ねぇ…。
価値観の相違というのはよくあることだ。
このせいで他人と言い争いになるなんてことは生きていればよくあることだろう。
ただ…
相手の価値観が低すぎて戸惑うというのは、貧民に出会ったなどという経験がない俺を狼狽えさせるには十分すぎる言葉であった。
その人間の価値観とは、その人間が生きていた状況に依存する。
例えば、人殺し。
今日の様々な国では、殺しはしてはいけない事となっている。
…だが、殺さなければ食っていけないところならどうだろう。
殺さなければ死んでしまう。そして、人間には慣れというものがある。
そうすれば、戸惑いのない人間なんて簡単に完成する。
そういうのの更生というのは非常に難しい。それが当たり前のことになってしまうからだ。
やはり、子供にはいろいろと考えさせられるものがある。
考え事にふけっていると、足音が聞こえてきた。
あぁ、早かった…な…
何故、風呂から出て服を着ないのか、そうも裸体を見せることに戸惑いがないのか。
気になるところはいろいろあったが、それよりもまずその体に言葉を失った。
異様に痩せこけた体。焼け爛れた肌、擦り傷、切り傷、それも数え切れないほどに。
ここで、先ほどの彼女の言葉がフラッシュバックした。
…あの薬。
恐らくはそれによる症状だろう。
「...なにかお気に障ることがあったでしょうか…。」
相変わらず震えながら話す少女に、背筋が凍るような感覚がした。
ここまでの傷を負いながら、正気を保った精神力。
商品として長年使えるようにという企業の仕様であるのだろうが…
あまりにも残酷すぎるではないか。
いや…あー…なんでもない。ご飯にしようか。