食事中にも、やはりというかなんというか…いろいろあった。
食事に妙なたどたどしさが見えていたが、どうしてなのかはすぐに分かった。
「すみません…こういったものを食べるのは初めてで...。」
言い訳をするように言ってきたその言葉。何というか、辛くなってくる。
気にしないでくれ、と言いながら今は義手になった右手で、眉間を押さえる。
「あ、あの…その手は…?」
あぁ、ちょっといろいろあってな。
そう話しながら腕をぷらぷらと動かすと、手首がモーターでウィンウィンと音を立てながら稼動する。
あぁ、丁度いい言い訳を思いついた
警察官だった名残さね。
「そうなのですか…」
興味津々、というように義手を見ている。
現代人であっても珍しく映るものだ、人造人間で、しかも地下に長くいたであろう彼女には、やはり初めて見るものなのだろう。
先程までの体の震えは収まり、ある程度警戒は解いてくれたらしい。
割とよく動くんだ、現代技術の結晶だな。
証拠として示すように、ゆかりの頭を撫でてみる。
右手を挙げた瞬間びくりと体を震わせたが
撫でられると
「ん…あー…?」
不思議そうな顔をしながら、気持ちよさそうに目を細める。
どうやらお気に召してくれたらしい。
ん、お気に召していただいて何よりだ。こんな風に、存外細やかに動くものなんだよ。
「そう、なんですね」
そう言いながら
―少し、笑った気がした。
「ありがとうございます、撫でていただいて。
なんだか、温かい気持ちになって…」
あ…あぁ。
出会って数時間、初めて見えた感情のある顔だった。
今の今まで無表情だったのだ、思わず面喰ってしまい、生返事を返してしまった。
…そんなに気に入ったのなら、またやってやろうか。
「本当ですか?ありがとうございます。」
彼女は小さな頭をぺこり、と下げる。
こんなことに頭を下げなくてもしてやるとも。
そう話しながら、もう一度頭を撫でてやる。
「ん…」
小さな声を発しながら目を細めるその姿はどこか小動物を想像させた。
さて、この子に現代社会を見せてやらなければならない。
あまり話さない彼女だが、素人目に見てもきれいな声の持ち主だと言える。
声を使う仕事のために作られたのだろうか。
彼女の仕事も重要ではあるが、取り敢えずは彼女の生活用品が必要だ。
買い物に行かないと行けない。ついてきてくれるか?
「えぇ、構いませんよ。」
心なしか、声が明るくなった気がする。
お先真っ暗だと思っていた生活は、存外明るくなってきそうだ。
(このゆかりさんチョロい)