Fate/Dainsleif   作:英雄ならできたぞ?

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おや?何か様子のおかしい人がいるぞ?


第3話

アヴェンジャーが召喚される前日の夜。

 

ルーマニアにある『黒』の陣営の要塞、ミレニア要塞の王の間で、『黒』のランサーは赤いワインを嗜む。グラスを揺らし、水面にたつ小さい波に己の万年の想いを乗せる。

 

(余に生前、一騎当千の将はいなかったが、今回は違う。余以外にも六人の英雄がいる。そして余の知名度は最高値。肝心の聖杯も我らが『黒』にある。余の願いを叶える日は近い)

 

彼の願いとは己に課せられた汚名を晴らすこと。永遠の命も、無限の命も、受肉さえも興味はない。自分たちサーヴァントは終わった存在。そんな自分達が現世にいても新たな事は望めない。

過去の改変をすれば、課せられた汚名は消えるだろう。だがそれは生前、彼に仕えてきた全ての者達に対する侮辱である。

だからこそ、今に轟く己が名を正当な物に正す。誇り高き父と己の名を、これ以上穢してたまるものか。

 

「失礼。王よ、入らせてもらうぞ」

 

王の間の扉を叩いて入ってきたのは『黒』のキャスター。『黒』のランサーの少しあとに召喚されたサーヴァントで、常に仮面を被り続けている。『黒』のランサーさえも、その仮面を剥いだことはない。

 

「何のようだね?」

 

「いや、少しばかり戯言に付き合って欲しくてね」

 

よかろうと言って『黒』のランサーは近づかせる。遠慮なく近づいてくる『黒』のキャスター。その表情は如何様なものか。白いのか黒いのか。もしくは人に見せられない傷でもあるのか。

 

「これから僕が話すことは、まぁいわゆる警告のようなものだよ。気を悪くしたなら僕をどうしたって構わない。令呪で物言わぬ人形にするも、君の『杭』で刺し殺すも」

 

「ふむ、話すがよい」

 

『黒』のキャスターの言葉に少し眉を潜めながらも話させる。何を話すか、だいぶ好奇心が寄せられる。

 

「僕はね、生前人を殺したことはついぞなかった。確かに人、特に魔術回路を持つ人間なら、いいゴーレムの素材が出来ただろう。だから何度も行おうとした。でもダメだった。僕は一人も、傷つけることは出来なかった。

サーヴァントになった僕達は、召喚されている間に強力すぎる思い出や、それに付随する何かがあると本体に影響があるのは知っているよね?」

 

「勿論、余も知っている」

 

「僕はどうやら、生前ではなく死後、英霊になってから人を殺したんだ。僕自身の意思で、純粋で無垢な子供をね・・・」

 

その言葉に『黒』のランサーは顔を顰める。確かに生前、彼も大量の人間を殺してきた。その必要があったからだ。見せしめに戦、ありとあらゆる状況が、彼に人を殺すことを強要してきた。だがその中に含まれていた子供は何人か。気付いたとしても、それは全て殺したあとだ。

 

「殺した子供の顔を、僕はよく覚えている。マスターにそっくりだったんだ・・・。そして、その記憶を辿ると、穴だらけだけどいくつか、僕が生前に体験しなかった記憶があった。

その中には何故かダーニックの姿もね」

 

どういうことだと問おうとするも、キャスターは喋らせるまもなく話し始める。

 

「僕の記録の中に残っているダーニックは令呪を使って誰かに命令していた。『封じていた宝具』を解放するように」

 

その言葉に『黒』のランサーは勢いよく立ち上がる。その衝撃でグラスは倒れ、床に赤い液体がぶちまけられる。

本来であれば意味が分からず問い直すところだろう。だがそんな冷静さは一瞬で弾け飛んだ。

なぜなら『黒』のランサーにはマスターであるダーニックに一つの宝具を絶対に使わないと宣言していたからだ。もし、キャスターの記憶が本当ならば・・・

 

「落ち着きたまえよ。話はまだこれからだ。僕としても、君の誇りや名誉を傷つけたくはないからね。

ダーニックは魔術師だ。僕もゴーレムを作ることしか出来ないが魔術師の端くれだから理解できる。そして召喚されてから二ヶ月。ダーニックとは何度もお茶を共にしたが、彼は危うい。僕をしてそう思わざるを得ない。

だから処置として君に許可を貰いたいんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

君の宝具を使うように命令した時に、ダーニックの令呪を奪う許可を」

 

 

——————————————————————————

 

 

教会。

何重にも重ねられた人払いの結界。その教会の地下。何の目的で作られたのか一切不明のその場所は、中心に巨大な円卓が置かれていても悠々とした空間がある。

そして円卓に座る英霊達。

英霊達は皆、神妙な顔付きで座っている者もいれば、これから始まる夢の如き闘争に思いを馳せて笑う者もいる。

 

居座る『赤』のサーヴァントは都合6騎。ここにはいない最後の一騎は半分『赤』の陣営から離反。戦力が減少するのは残念だが、所詮は『赤』の肩書きを持つサーヴァント。『黒』の陣営が快く迎えるはずもない。

それに、いないならいないで都合よく利用すればいい。

 

ギシリ、と重い扉が開かれる。出てきたのは『赤』のアサシンのマスター、シロウ・コトミネ。そして『赤』のアヴェンジャーのマスターの男。そして男が入ると同時に、無作為に吹き荒れる殺気。

 

「へぇ、そいつがアヴェンジャーのマスターか。エクストラクラスを召喚するんだ。どんな奴かと思えば、すげぇ殺気じゃねぇかよ」

 

鎧を付けた男が悠々と返す。彼からしてみればこの程度の殺気では役不足。無論、相手がまだ本気手出していないことはわかっているが、所詮は『人間』。程度は知れる。

 

「次からはやらない事だな。もし次があるなら、私の矢が汝の眉間を打ち抜くかもしれんぞ?」

 

不躾な顔で言い放ったのは緑の衣装に緑の獣耳を付けた女。彼女は言葉の通り弓矢———遠距離武器を切り札とする『赤』のアーチャー。純潔の狩人。

 

「・・・・・」

 

何も言わないのは『赤』のランサー。彼は何も言わずに横目で男を見るだけで、再び戻す。

 

「いやぁ結構結構。その程度で武器構えるようなら今ここで直々にぶち殺してたぜ。流石は英雄様。殺気の区別(・・)は付いてもらわなきゃな」

 

そう言って男は手を叩いて言峰の隣に座る。『赤』のアサシンはその態度が気に入らないらしく、鬱陶しい視線を男へ向ける。

 

「キャスターは執筆中なので席を外しています。・・・さて、では始めましょうか。我々の聖杯大戦を」

 

シロウのその言葉に、中心に展開されていた魔術モニターが切り替わる。そこには対峙している二体のサーヴァント。白銀の重厚な鎧を身につけた『赤』のセイバーと、花嫁のような衣装を着た『黒』のサーヴァントが映っていた。

 

 

——————————————————————————

 

 

「テメェ、『黒』のサーヴァントだな?」

 

威嚇するような声でそう告げたのは『赤』のセイバー。その声からは確実な怒りと苛立ちが入っており、少しでも琴線にふれればそのまま爆発してしまいそうな印象を与える。

『赤』のセイバーが苛立っている理由は、先程まで『黒』の陣営の手の者と戦闘という名の蹂躙をしていたからだ。

それを『赤』のセイバーは気に入らなかった。この身は常勝の王の元に仕える円卓の騎士が一人。そんな己に、たかだかホムンクルス程度で倒す、もしくは足止め出来ると思われていたことが。

 

彼女の胸の炎は消えるどころかどんどん激しく燃え盛る。事実、あまりの苛立ちに体から雷の魔力が漏れ出ている。

 

「・・・・・」

 

そして対峙するは花嫁のような衣装を見に纏った『黒』のバーサーカー。彼女は手に持つ武器を握りしめ、眼前の敵を見据える。返答はしない。出来ないのだ。元よりバーサーカーのクラスで与えられた自分は、呻くような声しか出せないのだ。意思疎通など不可能である。

 

「ハッ!喋ることもできねぇ木偶が俺の相手とはな。随分舐めてくれんじゃねぇかッ!」

 

とうとう爆発して魔力を撒き散らしながら突貫する。その加速力は『赤』のセイバーのステータスと『魔力放出(雷)』によるもの。咄嗟にマスターから無駄に魔力をまき散らすなと、咎められるがそれを無視。

両手に持った大剣で『黒』のバーサーカーの胴体目掛けて斬りかかる。大気ごと切り裂く銀の剣はバーサーカーを切り裂かず、バーサーカーの持っている武器、先端に巨大な球体が付いているハンマーの柄で防がれている。

 

「その程度で俺を止められると思ってんのか!!」

 

力業で押し込む。狂化スキルにより上昇したステータスでさえも、『赤』のセイバーを止めることは出来ない。持って数瞬。簡単に弾き飛ばされる。

 

「ウガアアァ!」

 

ハンマーの石突を地面に突き刺して威力を殺す。未だに手に痺れが残っている。恐ろしいほどの筋力。それだけでサーヴァントとしての格の違いが明確に現れている。

ここは一時、体勢を立て直すのが得策。狂化されながらも、事態を冷静に理解している『黒』のバーサーカーは後ろへ跳ぼうとするが、

 

「逃がすわけねぇだろうが!」

 

「・・・ッ!」

 

砲弾の如き勢いで『赤』のセイバーが襲いかかる。距離が縮まるのは一瞬。弾かれるように腕を動かす。同時に手に来る強烈な痺れ。今度は鍔迫り合いになることは無かったが、数が増えた。

 

「そらそらそらそら!!守ってばっかりかこの腑抜け!英霊らしくしてみろや!」

 

荒っぽい怒涛の連撃。右に左に、上に下に斜めに。縦横無尽に襲ってくる剣線を、『黒』のバーサーカーはただ守り続ける。攻撃できる隙がないわけではない。ただ今は下手に防御を崩すことが出来ない。

 

「ソラッ!!」

 

「ウガッ・・・!」

 

腹部に鈍痛。その原因は『赤』のセイバーの右足。右足は防御の隙を抜いながら、『黒』のバーサーカーへ着実にダメージを与えた。いかにサーヴァントが頑丈とはいえ、同じサーヴァントが相手ならサーヴァント特有の頑丈性は薄くなる。宝具やスキルがあれば別だが、『黒』のバーサーカーはそのようなものは持っていない。

 

攻撃は受けた。無視できるダメージではない。だが明確な隙はできた。

 

「ガアアアアアア!!!」

 

「グッ、テメッ!」

 

咄嗟にハンマーを手放し『赤』のセイバーの右足を両手で掴んでフルスイング。地面に、ゴーレムの残骸に叩きつけながら吹き飛ばす。ダメージにはあまり期待出来ない。が、リズムを崩すことには成功した。

 

「ウガアアァアアア!!」

 

ハンマーを掴み、『赤』のセイバーへ叩きつける。無論、『赤』のセイバーも受けているはずはない。力任せに振り抜いた銀色の大剣で防ぐ。防いだ『赤』のセイバーの腕に重い衝撃。

痛みで少しだけ顔を歪める。そして吹き荒れる怒りの感情。自らに泥を塗った『黒』のバーサーカーを許さない。その思いで『黒』のバーサーカー目掛けて振った大剣は、

 

「グアッ!」

 

横から強大な衝撃と共に吹き飛ばされた。無意識に片腕でガードしてダメージを減らすことには成功したが、攻撃を受けた片腕の篭手は少しだけひしゃげている。

冷たい感触とともに、腕が窮屈なことに気づく。

 

「図に乗ってんじゃねぇぞ・・・狂戦士風情が!!」

 

爆発的に魔力を剣へ溜めていく。余剰魔力は赤雷となり、周囲を破壊しながら撒き散らされる。使うは英霊の象徴である『宝具』。宝具の中には支援などしかできないものもあるが、『赤』のセイバーの宝具は超攻撃特化。並の英霊なら防御しようがその上から潰すことも出来る。

 

『黒』のバーサーカーは後さずる。現状、アレを止める手段は存在しない。自身の宝具を使えば止められるかもしれないが、それはできない。彼女の宝具はこんな序盤でやすやすと使っていいものではない。

 

「てめぇ如き、俺の宝具で消し炭にしてやるよ!」

 

『赤』のセイバーが何かを叫んでいるが、『黒』のバーサーカーの耳には入らない。恐らくは咄嗟に彼女の顔の周りに音消しの結界が作られたのだろう。それだけで、マスターはそれなりに優秀ということが分かる。

そしてそのような行いをするということは、宝具が真名を明かす決定的なものであること。

 

「—————————『————————』」

 

暴風を起こしながら、赤雷の魔力を纏った大剣、否。柱が振い落される。それは正しく理不尽と称すのに相応しい宝具。

やがて柱は『黒』のバーサーカーを呑み込み、その存在を滅却させる。

 

『やったか?』

 

念話で『赤』のセイバーのマスターが確認を入れる。マスターはここにはいない遠い所、戦闘に巻き込まれないところにいるのは確実だろう。

『赤』のセイバーは『黒』のバーサーカーがいた場所を見つめる。そこは荒れ果てた焦土となり、地面は抉れ、その威力の凄まじさを告げている。

 

「いや、手応えがなかった。令呪で逃げられたな」

 

叩き切ったという感触がしなかった。戦闘を見ていた『黒』のバーサーカーのマスターが間一髪で転移させたのだろう。倒せはしなかったものの、三角しかない令呪を削ったのは大きい。

 

『そうか。分かった。戻ってこいセイバー』

 

「ああ」

 

己のマスターの少しだけ機嫌のいい声とは真逆に、『赤』のセイバーの声はイマイチだった。

 

「今度会ったら確実にその首を撥ねてやる」

 

そう言い残すと『赤』のセイバーは霊体化し、自らのマスターが待つ共同墓地へと戻って言った。




初戦はモーさんとフラン。仕方ないよね。
すまないさんは切り札だから。

戦闘が簡素なのは許してつかぁさい。流石に実力差がありすぎますし、フランは宝具使うわけにはいかないので。
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