Fate/Dainsleif   作:英雄ならできたぞ?

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卿ら、本気を讃えよ。


第6話

あの光景()を忘れねぇ。

何年経とうと瞼から消えない鋼の英雄。遍く悪を手に持つ二刀で切り捨てていく光の行進。

 

目の前で行われた英雄の神話。

子供に読み聞かせるみたいな勧善懲悪。

 

美しい美しい美しい美しい。その本気が美しくてたまらない。

アレが欲しい。アレだけが欲しい。あの俺の魂を焼き尽くす光が堪らなく欲しい。

 

ああ・・・なのになんだこの醜さは。光へ向けて手を伸ばす俺の腕。なんて醜悪なのだろう。なんて邪で醜いのだろう。

 

そうしている間に、輝かしき英雄譚は完結した。周りは焦土。生きているのは俺一人。いや、生者は誰もいない(・・・・・・・・・)

 

この日、(邪竜)は滅ぼされ、英雄を滅ぼす(魔剣)が誕生した。

 

 

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「邪悪なる竜は失墜し」

 

魔力が吹き荒れる。『黒』のセイバーの持つ銀剣のより溢れる光。それは余波にも満たぬものでありながらら途方もない神秘を宿している。アレが一度放たれれば周辺は灰土と化してしまうやもしれぬ。

正しく英雄を象徴する宝具に相応しい。

 

相対するファヴニルに動作はない。ただ来たる宝具を受け止めるため、避けもせずにその場に立ち尽くしている。

いいぜ来いよと口が動く。それを『黒』のセイバーが認識できたかは分からない。

 

「世界は今、落陽に至る。撃ち墜す——」

 

『黒』のセイバーの口より紡がれる言葉が、一言ごとに宝具の真名を解放していく。

更に強く、強く、強く輝きを放っていく。そして魔力が最高潮へと高まる。なんの邪魔もなく、贅沢に魔力を使った必殺の一撃が完成する。

 

 

「——幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!!」

 

 

「グォォッ・・・!うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

青白い極大の光がファヴニルへと叩きつけられる。咄嗟に腕を交差している姿が一瞬だけ見えた。だがそれも無駄に終わるだろう。いくら防御が強かろうと、この魔剣を無防備に受けて生きていられるはずがない。塵も残さず消滅するか、肉団子にでもされるだろう。

やがてファヴニルの叫び声が消える。息絶えたと判断するには十分だ。

魔剣より放たれし魔力は消え、残ったのは抉られた地面。

ファヴニルのいた場所さえも抉られ、そこには何も残っていない。武器の欠片も、布も、血も肉も。

この時、ファヴニル・ダインスレイフは『黒』のセイバーの宝具により消えた。

 

「ふん!正面から態と受けるとは馬鹿な奴め。戻るぞ、セイバー」

 

機嫌が良さそうなゴルドがセイバーへ指示する。『黒』のセイバーも頷き、持っていた魔剣を背中に担ぎ、マスターを背負ってユグドミレニア城へ戻っていく。

サーヴァントの速度に人間であるゴルドが耐えられるとは思わないが、恐らくは簡易的な結界を張って風圧や埃から免れているのだろう。

 

ルーラーは全てを見届け、ファヴニルのいた場所に近づく。近寄ってみて改めて『黒』のセイバーの強力さを思い知った。

 

「本当に・・・今夜はありえないことばかりです・・・」

 

「クハハ、クハハハハ、ハハハハハハハハハハハ!!!」

 

ルーラーがそう呟くと、地面が弾けとんだ。地中より土を巻き上げ地へ奇声と共に舞い戻ったのはファヴニル。ファヴニルの姿は一目見ても酷い有様だ。

全身は火傷で赤く染まり、血は絶え間なく全身の至る所から流れ出ている。身体の骨も十箇所は折れているだろう。生前、幾多もの負傷を見てきたルーラーでさえ、目を背けたくなってしまう。

だが生きている。そして意識もハッキリしている。それどころか動いて傷を悪化させている。

 

「ああ!本当にいい!最高だ!やはり本気は最高の魔法だ!それが今日、俺自身が証明できた。やはり本気は素晴らしい!

そして何よりようやく出会えたぞ、我が麗しの英雄(ジークフリート)!何年も待ち望んだ。途方もない時間を待ち焦がれていた。ああ、もう逃がさない。お前の命は俺のモノだ!俺がお前を喰らってやるぞ!」

 

両手を天に掲げ、神へ祈るかのように叫ぶファヴニルを見て、ルーラーは本格的に頭がおかしくなりそうだった。

英霊の宝具を真正面から受けて、五体満足で生存し、食らった直後にここまで動けるのだ。驚愕を通り越して恐怖する。

 

「さて」

 

ファヴニルの喜びが止まると、ルーラーを見る。その目は闘争心に溢れ、いつでもルーラーの喉元を喰い散らかそうとしている。

ルーラーも、反射神経の領域で構える。

 

「待て待て、俺にはもうやる気はねぇよ」

 

予想に反してファヴニルは教会のある方向へ向けて身を翻す。

 

「俺は別にお前が生きてようが死んでようがどうだっていいんだよ。そもそも、テメェの生死に問題があるのは()だけだ。

後々、やる事やっちまえばお前なんてどうでもいい。

まぁ、確かに旗の聖女様とも是非殺し合いてぇところだが、やるなら今じゃねぇ」

 

「ちょっと待ってください!どういうこと——」

 

ルーラーの問いかけを歯牙にもかけず、ファヴニルはスタスタと歩き出す。傷だらけで全身が傷んでいるはずなのに、先程よりも傷が浅くなっているのは目の錯覚だろう。

 

「行ってしまいましたね。それでは私も——」

 

ユグドミレニア要塞へ向かおうと歩を進めようとすると、足元でクシャりと紙を踏んづけた音がした。

 

「これは・・・東洋に伝わる呪符?恐らくですが即席の結界を作るための・・・」

 

もしかしてファヴニルが無事だったのはこの呪符が原因だったのかもしれない。英霊の宝具を傷だらけになりながらも、生きて守るなど、相当な手練の協力者、もしくはマスターが『赤』にいるのは確かだ。

 

やがて呪符は灰となって消え、ルーラーもほどなくしてユグドミレニア要塞へと向かった。

 

 

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翌日。

朝、自分の部屋から起きてきたアヴェンジャーはコーヒーカップ片手に、教会内の広間に出てきた。コーヒーカップを持つ手と反対の手には名高き音楽家であり、かつてアヴェンジャーに支持していたベートーヴェンの偉人伝が。

召喚されてからアヴェンジャーは偉人伝をよく好んでいた。自らのもとを去っていった音楽家達は、アヴェンジャーよりも大成し、その名を世界へ轟かせている。

たとえ短い時間の師事でも、弟子だったことには変わりない。だから彼らの生涯を見聞きしたかったのだ。

 

ふと、庭園の方から話し声がしたので覗いてみると、そこでは傷だらけのファヴニルが『赤』のアサシンとコトミネから治療を受けていた。

 

「全く、なんだこの肉体は?ほとんど人の部分が残っていないではないか」

 

「無闇に傷を負うのはやめていただきたい。いくら私が用意した簡易結界の呪符があるとはいえ、あなたの身体は人間のものだ。いくら魔術と機械を使用して人離れしていようとも、それだけは変わりません」

 

アサシンが治癒魔術をかけ、コトミネは何やらファヴニルの身体を弄っている。

 

「しかし、機械で魔力を生成して全身に強化の概念を施し、筋肉の繊維も魔術的、機械的に改造している。更には貴様が自らかけている強化魔術。

貴様本当に人間か?たとえどんなに魔術で身体を強化したところで、普通なら持つはずがない」

 

「だからわざわざ肉体を改造したんだよ。弾丸どころかそこらの剣なら欠片も通さねぇ鋼の肉体(竜の鱗)。足りねぇ部分は他所から奪う。

俺の心臓と魔力炉の二重生成。そして俺の本気の強化。こんくらいしねぇと届かねぇだろ英雄には」

 

「貴方は英雄ではなく邪竜ですがね」

 

コトミネが笑いながらいう。喋っている最中も手は動き続けている。余程作業に手慣れているのだろう。

 

「しかし、重要器官を全て機械化し、不要な機能を切り落とすとはな・・・。この分では残っているのは首から上くらいか。ん?おい待つのだ。この心臓の部分はなんだ?部品が足りないのではないのか?」

 

アサシンが指さした場所には確かに何かが欠けている。見た感じ何かを取り付けられそうな場所だが、そこに合うパーツはどこにもない。

 

「ああ、ここですか。ここには・・・」

 

「ふっ、随分といい姿になったじゃないかマスター」

 

コトミネが何かを語ろうとした時に、アヴェンジャーが降りてきた。その所作はやはり貴族と言うべきか、所々に品性を感じさせた。

 

「その様子じゃ昨夜は大分お楽しみだったようだな」

 

「ああ。最高だったぜ」

 

体の調子を確かめるように右腕を動かす。動作に異常はない。頭で命令したとおりに動く。

ファヴニルの動作を一通り確認したコトミネは立ち上がり、いつの間にか集まっていたアーチャー、ライダー、ランサーを見渡す。

 

「こちらもそろそろ動き出しましょう。当初の予定とは少し離れましたが、アヴェンジャーならば問題はありません」

 

コトミネの視線を鼻を鳴らしながら逸らすアヴェンジャー。ライダーは興奮したように高らかに声を上げる。

 

「ハッ!ようやくか。『黒』には俺に傷をつけることが出来るやつがいるか。今からでも楽しみだ」

 

「油断はするなよ。いくら汝が硬く速いとはいえ、運悪く弱点に当たれば一気にとられるぞ?」

 

「俺を誰だと思ってるんだ姐さん?」

 

自信満々に言うライダーにアーチャーは少し呆れ気味に返していく。そんな彼らをコトミネは優しそうに見守る。

 

「どうやら大丈夫そうですね。では、こちらから攻めていきましょう。あ、ファヴニルは離れたところで待機していてください」

 

数時間後に始まる、聖杯大戦初の一つの陣営の複数のサーヴァントによる総力戦とも言える戦争が、刻一刻と近づいていた。

 

 

 

 

 

 

「すまない。私は正直に言わせてもらうがやりたくないのだが」

 

作戦の要(アヴェンジャー)の意思を無視して。

 

 

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ユグドミレニア要塞ではキャスターとそのマスターであるロシェ以外のマスターとサーヴァント達が集まっていた。

空気はピリピリしているどころか既に爆発寸前。それも全て、ユグドミレニアの当主であるダーニックのゴルドに対する発言が原因だった。

 

「どういうことだダーニック!?」

 

痺れを切らしてゴルドが身体を震わせながら唾を吐き散らして叫ぶ。隣にいたカウレスはビクリと身体を震わせ、ゴルドから少しだけ離れる。

いい歳こいた肥満体質のおっさんの唾など、誰が欲しがるものか。

 

「何度も言わせてもらおう。何故帰ってきた?敵のマスターを、ファヴニル・ダインスレイフを仕留めずに。瀕死の状態にまで追い込んだというのに」

 

「奴は死んだ!私のセイバーの宝具によって見るも無惨に消滅した!そこの二人だって見ていただろうが!!」

 

ゴルドがカウレスと、カウレスの姉であるフィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアを指さす。

彼ら以外にもライダーのマスターがこの要塞にいるのだが、その人物は昨夜はライダーと『お楽しみ』をしていたので見てはいなかった。

 

「そもそも奴の参加を私に言わなかったのが原因だろう!奴がいるのなら私はあんな場所には行かなかった!」

 

それはちょっと違うとカウレスが言おうとしても、自分のような二流がいい所の魔術師が家柄だけは無駄にいいゴルドに何かを言っても、まともな会話ができるはずがないのでため息をつくに留める。

 

「今回の件は不問にする。よろしいですか、王よ」

 

ダーニックは後に座って控えていたランサーに頭を垂れる。ダーニックとランサーの主従関係は基本的なサーヴァントの関係から逸脱している。

ランサーは王で、ダーニックが臣下。

 

「うむ」

 

威厳ある声で頷く。それだけでランサーの威圧感が広がるようにも思えてしまう。

だが当のランサーは頭の中でほとんど違うことを考えていた。それはあの夜、キャスターに話されたこと。

 

「なに?・・・セレニケとライダー呼んでこい」

 

ダーニックがそばにいたホムンクルスから何かを耳打ちされ、終わると少し考えて命令を下す。

 

「王よ、『赤』の陣営のサーヴァント。恐らくはバーサーカーと思わしきサーヴァントが暴走したのか、王の治める地に侵入しようとしております。このままだと城に到達するまで、一時間と少しかと」

 

「ほう・・・よかろう。蛮族共に我が領地へ土足で踏み込んだ罪、清算してもらおう」

 

ランサーが椅子から立ち上がり、見渡す。セイバーが、ゴルドが、カウレスが、バーサーカーが、フィオレが、アーチャーが、セレニケが、ライダーが、ダーニックが王の言葉を待つ。

 

「皆の者、今こそ我ら『黒』が『赤』の蛮族へと武勇を振るう時が来た。さぁ!ゆくぞ!」

 

『黒』の陣営、出撃。

 

 

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・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・必ず、君は僕が助けるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄を・・・見た・・・




幻想大剣・天魔失墜で普通に生きてるファヴニルさん。ゴルドとジークフリートは殺ったと思って帰っちゃいました。ゴルドは慢心。ジークフリートは流石に宝具撃ったら死ぬだろ、と思って撤退。
型月時空のファーヴニルをどのように倒したか覚えていないのが仇になりました。邪竜の生存力舐めていました。


次回からはアヴェンジャーに働いてもらいます。死ぬ気で働いてもらいます。
どうかアヴェンジャーが生き残るように応援してあげてください。


執筆の最中にヴラドとサリエリのパジャマ姿が執筆を邪魔していた。
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