この鎮守府の提督はいろいろ規格外でした。   作:ペペロンチーノ伯爵

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第十話『目覚め、生還』

作戦記録︰【鎮守府海域奪還作戦】

ラバウル泊地にて設立された第四予備鎮守府による独断の大規模作戦である【省略】この作戦は等作戦遂行中の主力艦隊が接敵した一隻の完全人型の深海悽艦によって壊滅、その後もレ級を含む敵連合艦隊(改フラグシップ群)に圧倒され艦隊は全壊、完全敗北を喫した。

 

 

 

「……………まあ、当然の結果だな」

 

イェソドは数十枚の書類を卓上に投げ捨て、大きな溜め息を吐いた。

 

「資材の補給も供給も安定していないこの時期に数少ない大事な艦娘を減らすとは………救いようが無いな」

 

椅子に深く背もたれを預け、卓上に散らばる書類のうちの一枚を眺める。

 

「いくら備蓄が足りないとはいえたった一隻の深海悽艦に主力艦隊が敗れるのか?だとすればそいつは何者だ?俺達の技術が一部消失したのと関係が?」

 

そう、あの沖縄防衛戦の終了と同時に大日本帝国海軍の重要性の高い実装前の技術が忽然と消えたのだ。

 

「完全人型………調べてみるか」

 

 

同時刻〜am8:30〜

ー『黒羽鎮守府』ー

 

 

……………………………………………………。

「………………………………っ」

 

暖かい…………死んだの?

 

「……………っ?」

 

身を包む暖かさを感じながらゆっくりと瞼を開ける。

目の前には綺麗なアスファルトの天井が広がり、真新しいシーツカバーの匂いを吸い込む。

視線を落とす、首から下を覆っている暖かさの正体は羽毛布団だ。

ベッドの左隣には季節外れの赤いチューリップが一本生けており、微かにいい匂いを漂わせている。

 

「ここは……?」

 

基本的に白を主軸にした空間が広がっており、いくつかのベッドが置かれている。

部屋の隅に設置されてるカウンターを見るからに出入り口は右側、視点を戻して首を右側に曲げたその時、出入り口のドアが開いて誰かが入って来た。

 

「ッ………!」

 

反射的に飛び起きようとした瞬間、全身に激しい激痛が走り、再び倒れるようにしてベッドに沈む。

 

「大丈夫かい?」

 

「っ…………」

 

目の前に現れた少女はベッドの右隣に設置された椅子に座ってこっちの顔を覗き込んで来た。

 

「うん……大丈夫そうだね」

 

「アンタ……白露型の…」

 

服装や身なりで大体予想が付くし、彼女はウチにもいた。

 

「白露型二番艦の時雨だよ、よろしくね」

 

「……ここはどこなの?」

 

「ここはー」

 

口ずさんだ時、出入り口からもう一人入って来た。

今度は艦娘ではなく人間の男だ。

 

「声が聞こえたが……起きたのか」

 

「提督も様子を見に来たの?」

 

「っ………」

 

提督?こいつが?見たところ軍服を着ていないけれど。

提督と呼ばれた男は重ねてあった椅子を手に時雨の隣に座る。

 

「話の内容は廊下で聞こえている。ここは黒羽鎮守府だ」

 

黒羽鎮守府……確かここ最近に出来た新しい鎮守府だったような。

 

「そして俺がここを指揮する指揮官の深創だ、お前の名前は?」

 

「……………………なんでここに?」

 

「ああ、普通はそこからだな……この部屋は医務室、お前は鎮守府海域、製油所地帯沿岸で瀕死だったところを…」

 

「んっ……僕が助けたんだ」

 

彼女にとってその光景は異常だった、男が時雨の頭を撫でると、時雨はまるで犬のように喉を上げて撫でる手を逃さまいと堪能する。

彼女がいた場所でそんな情景はあり得なかった。

 

「さて、お前の名前を聞かせてもらっていいか?」

 

「……………………」

 

「どうしたんだい?名前ぐらいー」

 

「いやいい」

 

「え……?」

 

「………………?」

 

深創は常に攻撃的で警戒心の高い殺気だった視線を向けてくる少女を見ながら答える。

 

「目を見れば分かる、俺をまだ信頼していないのだろう?なら無理強いする必要はない。ゆっくり休んでくれ、俺は執務室に戻るよ」

 

そう言って時雨と共に医務室を去ろうとする背中を睨み、声を出す。

 

「…………霞」

 

「ん……?かすみ?」

 

「名前よ、私の」

 

彼は振り返らず、『ありがとう』と答えて二人は医務室を出ていった。

 

「…………変なやつ」

 

 

ー『医務室前廊下』ー

 

 

「提督、彼女はどうするの?」

 

「どうする?決まってるだろ、ここで保護……いや守るんだ」

 

「守る…?」

 

廊下を歩きながら俺は頷き、執務室の扉を開ける。

 

「時雨」

 

「なに?」

 

「霞が動けるようになったら部屋に案内してやってくれないか?俺は信用されていない、それに同じ艦娘の方が少しは楽だろう」

 

「……わかった、それじゃあ僕は医務室に戻るね」

 

「ああ、任せた」

 

時雨を見送り、執務机に腰を下ろすと、深創は空を睨み付けてボソリと呟いた。

 

「霞……か」

 

 

ー『医務室』ー

 

 

 

「……………………」

 

霞は考えていた、これからのどうなるのか、どうするべきなのか。

 

(あのクズ野郎の鎮守府は…………いえ、もうどうだっていいわ。どうせ私はここでもお役御免になるに決まっているわ)

 

「起きてるかな?入るよー」

 

「っ…………」

 

不意に姿を表した時雨に驚きながらも平静を保ち、殺気の篭った視線を向ける。

 

「なに……?お礼は言わないわよ?」

 

「別に期待してないよ、身体は動くかな?」

 

「…………まぁ」

 

全身の痛みは消えており、霞は多少の目眩を残しながらベッドから起き上がる。

 

「ん……?それ…………」

 

「これは君の制服だよ、ぼろぼろだったから妖精さん達に直してもらったんだ」

 

「…………ふん」

 

時雨から制服をひったくり、恥ずかしげもなくさっさと着替えて再び時雨と向き合う。

もうこれでここにいる用事はない、自分のような艦娘はさっさと去った方がいいのだから。

 

「何処に行くの?」

 

「何処だっていいでしょ、さっさと消えてあげるわよ」

 

わざと時雨の肩にぶつかって威圧しながら医務室のドアノブに手を掛けたその時、背後から片腕を掴まれた。

 

「……離しなさいよ」

 

「そうはいかないかな」

 

めんどくさい、さっさと振り払って…………。

 

「ッ……!?」

 

「君が出ていきたくても、提督は出ていって欲しくないって」

 

振り払おうと力を込めて筋肉に運動するよう伝達するが腕は微動だにしない、まるで鉄筋コンクリートに固定されているかのようだ。

 

「これから霞、君の部屋に案内するから着いてきて」

 

「あたしの部屋…?ってちょ、離しなさい!」

 

「ダメじゃないか、おとなしく着いてきてくれなきゃ」

 

「いっ!わかった、わかったから!おとなしく着いていくわよ!」

 

「なら…………やっぱりダメかな」

 

「はぁぁ!?ちょっと待ちなさいったら!!」

 

 

……………………騒がしいな。

 

 

時雨が医務室に向かってから25分か。

俺はタブレットを懐にしまって執務室を出る、向かう先はがら空きの艦娘寮、さっきから霞の一方的な怒号が飛び交っているのはなぜだろうか。

廊下の突き当たりを曲がったところで二人の姿が見えた。

暴力は振るわず罵詈雑言を吐きまくる霞をよそ目に微笑みながら腕を引く時雨。

 

(ん…………あれ、腕に指食い込んでないか?)

 

「痛い!痛いったら!」

 

「我慢してくれないかな?もうそこだから」

 

「だからおとなしくするって言ってんでしょうが!」

 

「おい時雨、離してやれ」

 

「痛……あ?」

 

声を掛けた瞬間に手を離した時雨に驚愕する霞はキッとこちらを睨み付けてくる。

 

「どんな教育してんのよこのクズ!爪痕が付いちゃったじゃない!!本当に『どいつもこいつも』無能だわ!」

 

(提督が…………無能?クズ?)

「っ…………!!」

 

「待て」

 

「ッ!!!」

 

「な……なによ?」

 

自分の事を鬼の形相で睨み付け、引き締めた拳を振り上げる時雨をあの男は待ての一言で制し、手招きしている。

 

「こっちに来い」

 

「……わかった」

 

「すまなかった霞、お前の部屋はこっちだ。着いてこい」

 

「ッッ…………」

 

しばらく歩き、艦娘寮の一人部屋の前に着く、まだ部屋札すら付いてない新しい素朴な木枠の扉。

 

「…………ここだ」

 

「ふん……」

 

「時雨、少し二人にしてくれないか?」

 

「え!?」

 

「は?」

 

「頼む、少し話をするだけだ。心配なら扉の前で待っててくれ」

 

「……………………っ」

 

やはり時雨はいい子だな。

やるせない表情をしながらも頷いてくれた時雨に微笑み、霞を先に部屋にいれて続くように俺も入室する。

 

「まだ家具も揃ってないし贅沢は出来ないが部屋としての最低限なものはあるから我慢してくれ。すまないな」

 

「……………………」

 

本当に変なやつだ、十分贅沢だろう、なぜかって?この部屋にはベッドがある、カーペットがある、もっと言えば窓がある、十分だ。

それなのにも関わらずこの男は申し訳ないと本気で思って謝っている。

 

(なんなのよ……)

 

「カーペットで悪いが座ってくれ、話したいことがいくつかある。お前も俺に聞きたいことがあるだろう?」

 

「…………」

 

何か茶菓子でも持ってくるべきだったな、そんなことを言いながら目の前の男は扉の手前で胡座を掻いて座る。

私は立ったまま部屋の隅々を見渡す。

すると先に座っていた男が一息吐いてから口を開いた。

 

「監視カメラも盗聴器も無い、心配するな」

 

「…………その証拠は?」

 

「ラバウル拍地第四予備鎮守府の第三艦隊所属、朝潮型駆逐艦九番艦『霞』…………」

 

「っ…………知ってるのね」

 

「いや、名前を教えてもらった時に調べたんだ。それまでは君が駆逐艦だということ以外なにも知らなかった」

 

「嘘ね、海軍出身が艦娘の事を把握してないなんてあり得ないわ」

 

「まあそうだろうな、だが本当だ、証明は出来ないが俺は海軍の出じゃない、即席の提督入りなんだ」

 

「……………………」

 

霞は真偽はどうであれとりあえず壁を背に座った。

俺はタブレットを取り出し、端末を開いて霞を見る。

 

「俺はあの鎮守府について調べた、俗に言う駆逐艦の使い捨てを主流とする」

 

「普通よ、どこだってやってるし一番効率が良い方法よ」

 

「俺はそうは思わない」

 

「…………は?」

(こいつ……筋金入りのバカだ、海軍の出じゃないのは本当みたいね)

 

霞が言っていることは現に正しい 、駆逐艦のスピードやその回避値、そして数を利用した消耗作戦、それこそが一番の効率的な動きに違いない。

史実の二次大戦と違って艦娘を造るのに駆逐艦ならば20分ほどで一隻、コストもほとんど皆無に等しい、だからこそ出来る新しく最高率の神風作戦。

それを深創は否定したのだ、とても海軍の出とは思えない。

 

「一つ聞きたい」

 

「……なに?」

 

「駆逐艦に戦艦が倒せると思うか?」

 

(呆れた……夢の見すぎね、こんなクズが指揮官だなんてこの鎮守府は終わってるわね。答えは決まってるわ)

「は、そんなこと無理に決まってるでしょ?」

 

「なぜだ?」

 

「なぜって……あんた嘘でしょ?耐久と火力が違うに決まってからよ、駆逐艦並みの火力じゃ戦艦の装甲は貫けない、真っ向勝負ならこっちが捻り潰される。当たり前でしょ?」

 

「ふむ…………それは駆逐艦の練度が足りないからだろ?」

 

「……何が言いたいわけ?」

 

「もう一つ聞こうか、とある危険な海域に一人放り出されたとして、敵に囲まれたとして、どれぐらい持ちこたえれる?」

 

「なによその下らない質問、どんなに運が良くても保って一分ね」

 

霞がそう言った瞬間、深創の口角が微妙に上がる。

 

「ほう……だがお前は一時間以上生き延びていたじゃないか」

 

「え……あ……」

 

確かに、彼女自身なぜあれだけ生きていたのかわからなかった。

 

「お前の練度は63……あの作戦に参加していたお前を除く駆逐艦の平均練度は8…………これが違いだ、お前は自分が学んできた常識を信じ込んでいるだけで実際とは雲泥の差で実力差が出来ていたんだ」

 

「ッ……!」

 

「…………とりあえず今日はここまでにしておこう、時雨。入ってこい」

 

「……大丈夫だった?」

 

「今日の午後から秘書艦を霞にする」

 

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

「えぇぇ!?」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

「なんだ?何か問題でも?」

 

「おおありだよ提督!」

 

「アンタバカじゃないの!?」

 

「っ、また提督にそんな言葉ー」

 

「落ち着け、別に強制はしない。霞が嫌だと言うなら構わないさ、もしその気があるなら執務室に来てくれ」

 

俺は時雨の手を引いて半ば強引に部屋を出る。

 

「本当にいいの?彼女を秘書艦にして」

 

「ああ、それに、まだ彼女と大事な部分について話してないからな」

 

「大事な部分?」

 

「いや、時雨は気にしなくていい。今何時だ?」

 

「今は……11時20分だね」

 

「よし、時雨。お前はゆっくり休んでくれ、もし午後になっても霞が来なかった時は呼ぶ」

 

「うーん、その必要は無いんじゃないかな?」

 

「なぜだ?」

 

「まあ午後になれば分かると思うよ、それじゃ僕は部屋に戻るね」

 

「わかった、またな」

 

時雨と艦娘寮の渡り廊下で別れ、深創は一人執務室に戻る。

執務机に座り、ノートパソコンを開いて淡々とタイピングを始めた。

 

「霞……お前は俺達が守る、もう異動は無しだ」

 

しばらくディスプレイと睨み合っていると、深創の聴覚が足音を検知、情報を事細かく脳に知らせてくれる。

 

「………………」

 

甲高く、迷いのない強気な足音は深創の目の前、執務室のドアの向こうで止まった。

ノックも声かけもない、どうやら入って良いものか迷っているようだな、時間は……50分か、まだ午後には10分早いがまあ良いだろう。

 

「勝手に入って来て良いぞ、迷うことはない」

 

「ッ!?……………」

 

霞はややゆっくり目に扉を開けて中に入ってくる。

そして深創の顔を見てから執務室を見渡す、最低限の物しかない案外普通の執務室、来客用のソファベッドが二つ、側面にはクローゼットと給仕用のカウンター。

 

「よく来てくれたな霞、ありがとう」

 

「…………別に」

 

なぜ来てしまったのか、自分ですら理解していない、何かに惹かれるように気付いたら此処に立っていた。

決して自分の意思ではない、何かが私をここに連れてきたのだ、この男から感じる何か、それが原因だろう。

 

「それで?秘書艦って何をすればいいのよ?」

 

「そうだな…とりあえずこの鎮守府の現状を説明しようか」

 

深創はタブレットと記録を使ってざっくりと霞に鎮守府の現状と決まりの説明をする。

 

「あんたホントクズね!こんな無計画な艦隊運用で鎮守府を保てると思ってたの?」

 

「ああ、現になんとか資材はやりくり出来てるだろう?」

 

「うっさい!こんな資材じゃ開発もまともに出来ないじゃない!」

 

これは……なかなかに辛辣だな。

知ってはいたがさすがの深創もこの毒舌には驚いた、だが受け入れるのは一瞬だった。

そんな事よりも,俺はかなり考えが甘かったようだな。

 

「全く、私がいなかったらこんな鎮守府一瞬で御陀仏だったわよ!」

 

「そのとうりだ、お前がいてくれて助かった。ありがとう」

 

「な…………」

 

これだ、この無図痒さ、道具である筈の艦娘に本心からの感謝を伝えてくるプライドの欠片もないこの男といると何か落ち着かない。

 

「ふむ……そしたら12.7㎝㎝連装砲の開発をー」

 

「ちょっと待ちなさい!それなら電探の開発を優先した方がいいわ、主砲なら低コストで開発出来るしもし失敗しても主砲が出ることもあるから一石二鳥よ」

 

「なるほど……そういうこともあるんだな」

 

「その他にもピンポイントで資材を使って開発するよりも少しだけコストを減らせば開発出来る可能性は多少落ちるけどたいして変わらない確率で開発することもできるのよーって聞いてるの!?」

 

「ん?いや……なぜ提督達はお前を次々と異動させるのか不思議に思っていてな」

 

「っ!……それも調べたの?」

 

「ああ、異動した鎮守府の数は14件…理由は上官に対する反発意見、暴言…」

 

「…………だったらあんたも私を早く異動させた方が身のためよ。命令の聞けない艦娘なんて邪魔なだけよ」

 

「…俺が目をつけたのはお前を異動させた鎮守府の上官だ」

 

「……?」

 

霞は俯いた顔を上げ、深創を見つめる。

 

「コイツらは無能だな」

 

「え…………?」

 

「確かにお前の口はかなり饒舌だがそれを責めて否定出来るほどコイツらは優秀じゃない。むしろ俺の記録によればお前の問言は筋が通っている」

 

深創は目の前のディスプレイから視線を離し、霞の目を見て答える。

 

「霞、これは俺からの頼みだ」

 

「……………」

 

「俺の事を信用しなくてもいい、嫌いでも良い、だからお前を俺に守らせてくれ。ここに居てくれないか?」

 

「え………」

 

「お前が必要だ、俺にその力を貸してくれ」

 

「……………なによ、もう……」

 

初めてだった、こいつは道具でしかない捨て艦の駆逐艦、しかも命令に反発する難ありの私を必要としてくれている、この感じ、これがさっきからこの男から感じていたあの不思議な感覚の正体。

他の連中とは違う謎の暖かさ、安心感を感じる。

 

「強制はしない、今すぐは無理だが俺がなんとかまともな鎮守府を見つけてー」

 

「……ってあげる」

 

「……?」

 

「だから!あんたの艦娘になるって言ってんのよこのクズ司令官!!」

 

「……!」

 

深創は目を見開き、驚いたような表情を見せる。

 

「なによ?」

 

「いや、司令官と呼ばれたのは初めてだからな、少し新鮮だっただけだ」

 

執務机から腰を上げ、霞の前に立って左手を差し出す。

 

「改めてよろしく頼む、霞。お前を歓迎しよう」

 

「ふん、私はガンガン行くから、ついてらっしゃいな……クズ司令官」

 

深創の手を取らず、霞は背を向けてサイドテールを靡かせ、腰に手を当てる。

言葉は辛辣だが、深創からは見えぬ彼女の表情は笑っていた、無能なあのクズどもの言いなりにならないように張り詰めて張り詰めて張り詰めてきた表情がこんなにも簡単にほどけるなんて彼女も思っていなかった。

 

 

 

~同時刻~

ー『???』ー

 

 

 

「行くのかい?」

 

「アァ……オマエモ来ルカ?」

 

「行きたいんだけどねぇー、姫様がレ級はダメだってうるさくてね。」

 

「ソウカ、マァ見テイロ、ワタシヒトリデオトシテ来ル」

 

「行ってらっしゃーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ頑張ってよ、イケニエとしてさ。

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