この鎮守府の提督はいろいろ規格外でした。   作:ペペロンチーノ伯爵

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なるほど、連載小説で行くとこうなるのですか、仕様は分かりました。後は工夫を凝らして見やすくしていきたいですな。
よし、頑張るぞい!


第一話『男の名』

昼時のヒトフタサンマル(pm12:30)大本営の管理室で緑茶を啜っていた元帥は懐かしむように一枚の機密文書を手に取ってニヤリと笑う。

機密文書には一人の男の顔写真とその情報が載せられていた。

 

「懐かしいな……お前が特殊部隊員だったあの頃から9年か」

 

元帥は機密文書を灰皿に立て掛けてあった火の付いた葉巻を取り、その火で機密文書を燃やす。

 

「キューバ産の葉巻で燃やされるなんて贅沢な紙だぜ……」

 

鎮守府

~『執務室』~

 

提督は先程大本営から送られてきた大規模作戦概要の計画書と睨み合っていた。

 

「ふむ…次の作戦は坊ノ岬、つまり『天一号作戦』って事か」

 

タブレットを操作して所属艦娘のリストを表示する。

 

「第一遊撃部隊は『矢矧』『雪風』『浜風』『磯風』『初霜』『霞』『朝霜』『涼月』………そして『冬月』か。冬月はまだ艦娘として繭が発見されていないようだな」

 

計画書を引き出しにしまい、夕張に渡す開発用の書類を纏める。

そして腰に差した『仕込み刀』の鞘に左腕の重量を預けながら立ち上がり、執務室を出る。

先に言っておくが今日の執務はすでに終わらせてるからサボってはないからな。

 

「ふむ…そういえば昼の演習はどうなっているのだろうか」

 

ふと思い立った俺はその足で廊下を抜けて鎮守府の演習場に設けられた港へ向かう。

天気は雪降る曇りで、時計がないと時間が分からない程の悪雲も雪景色と合わせれば美しく見える。

除雪はしているつもりだがそれでも積もりゆく雪の層を踏みながら港の近くまで行くと、さっきから鳴り止まなかった砲撃音が止んだ。

 

(もしかして終わったのか?今日は横須賀の艦娘との演習、今回は向こうからの演習願いだったから軽めの編成にしてみたが果たして………)

 

そしていざ港に顔を出すと、海上には手前側に1人の艦娘が悠々と水面を滑っており、その奥には6人編成の艦隊が水面に膝を付き息を荒くしながら破壊された機関部を担ぎ水面を走る1人を見つめていた。

 

「はぁ、話になんないわ。弱すぎよあんたら」

 

「いや……Meが強すぎなんデース!」

 

「この大和が……無様です」

 

「一体どうやったらあんな動きが出来るのですか?」

 

「どうって、そんなの訓練したに決まってるじゃない。単にあんたらが訓練をサボってるだけでしょ?」

 

「そんなバカな……」

 

やはりこうなったか。

崩れ落ちている演習相手の『金剛』『大和』『長門』『榛名』『加賀』『蒼龍』は仁王立ちで佇む『霞』に屈服している。

俺は何も言わず港の端に居た横須賀を指揮する司令官の隣に立つ。

 

「演習結果はどうだ?」

 

「いやはや……貴方の艦娘には驚きましたよ。見ての通り完敗です、駆逐艦1人にウチの主力艦隊があの状態ではもう認めるしかない」

 

「そうか、すまないな。出来るだけ手加減するように言っておいたし装備も未改修の物を持たせていたんだが」

 

「はい…確かにそのとうりです」

 

横須賀の提督は俺が送った演習用の資料を見せてきた。

 

三日後の連続演習予定表

 

朝潮型駆逐艦

ー『霞・改二乙』ー

練度(99)

所持装備

〖12.7㎝連装砲〗

〖12.7㎝連装砲〗

〖7.7㎜機銃〗

 

その資料を握りしめた奴は悔し涙を隠しながら俺に深々と頭を下げる。

 

「もう一度……もう一度だけ演習のリベンジをさせてください!!」

 

「………いいのか?お前の艦隊は優秀だ、別の鎮守府とやれば確実に勝利できる。練度向上の為にもー」

 

「私は!リベンジがしたいのです、練度向上や見栄を張りたい訳じゃない。提督としてのプライドを捨ててでも『貴方と戦いたい』!」

 

「……ふむ」

 

俺は港の向こうに視線を向ける、するとガミガミと説教モードに入った霞がこちらの視線に気付いて振り返った。

 

「演習は終わりだ、全艦隊。集合せよ!」

 

涙を拭いながら号令を掛ける司令官から少し離れ、俺の動きに合わせて港に戻って来た霞は不機嫌そうに目の前まで滑って来る。

 

「お疲れさー」

 

「全くどんな采配してんのよ!?あんな雑魚を相手にさせるなんて本当クズね!」

 

いきなりキツいな…これは。

 

「手加減しようにも弱すぎて加減を忘れそうになったわ!」

 

「すまなかったな、だがもう1戦やってもらう。同じ艦隊で来るか分からないが。行けるか?」

 

「はぁ!?まだやるの!?それなら一人でカスカダマ行った方がまだマシよ!」

 

「そうか。そんなに嫌だったか」

 

「えっ……」

 

「それなら最近消化不良って言っていたし夕立に頼んでー」

 

「あ、あんたがどうしてもって言うならやってあげるわ!」

 

「ん?いや、霞に無理矢理やらせる訳には行かないからな、夕立に頼ー」

 

「ああ分かったわよ!私がやるったら!!」

 

「お?そ、そうか。なんかすまないな」

 

駄目だ、やはり霞の気持ちが読めん、まあやる気になってくれたのはありがたいが。

それを見ていた作戦会議を終えた演習相手の金剛が呟く。

 

「あそこのテートクは何者ネ~?」

 

「あの人は……俺達の憧れ、いや英雄的存在なんだ」

 

「英雄、ですか?」

 

「ああ。彼の名は『深創(しんらぎ)』この『黒羽(こくふ)』鎮守府の提督」

 

「深創?変な名前ですね」

 

悪気はないのだろう、淡々と語る加賀を制しながら提督は話を続ける。

 

「いや、本名は別にあるらしいがどの資料にも載ってない。完全に機密扱いさ」

 

「俺の事は知らなくていい、変に嗅ぎ回るな」

「っ!!」

 

いつの間に!?全く気付かなかった。

隣にいた加賀も深創には気付かず、表情には出ないがビクリと身を震わせた。

 

「え…っと、その……」

 

「別に怒っちゃいない、あまり過去を知られたくないだけだ」

 

「す、すいません」

 

「分かってくれればいい。こっちは準備出来てる、そっちはどうだ?」

 

「我々も大丈夫です、さぁ、行きなさい」

 

海上に滑り出す艦娘達を見ながら深創は傍にいた霞に視線を向ける。

 

「よし、これは二回目、手加減はいらん……装備は変えないが本気で行け」

 

「本気出す前に終わっちゃうわよあんなの。それじゃ行ってくるわ」

 

そう言って水面を行く霞の背中を見送ると横にいた司令官に声を掛ける。

 

「さっきはどれぐらいで決着がついた?」

 

「そうですね………ざっと5分くらいでしょうか?」

 

「ふむ…1分以内だ」

 

「えっ」

 

演習開始の空砲が鳴り響いてから終了の声が掛かるまでの時間約『57秒』

空砲が鳴り、単縦陣を組んでから霞の位置を補足、艦載機を飛ばす加賀と蒼龍に続いて砲撃を放とうと戦艦四人が主砲を向けたその瞬間、金剛を中心に戦艦勢の主砲が爆発、それによって巻き上がる噴煙に紛れて距離を詰めてきた霞は怯む空母の機関部に一撃を喰らわした。

このトリックは単純、霞は戦艦の主砲の砲口に12.7㎝連装砲を撃ち放ち、砲撃が始まる前に内部爆発させただけの事。

 

「なんっ………!?」

 

「良くやったぞ霞、戻ってこい」

 

「そんな神業じみた事が……」

 

「史実には比べられないが、ウチの駆逐艦は15㎞圏内なら電探や水上偵察機が無くても精密射撃が出来る、そう訓練されているからな」

 

「なに他人ごとみたいに言ってんのよ、訓練したのはあんたでしょ?」

 

「っ………」

 

その日の演習は終了し、夕暮れ時になっても変わらない雪積もる暗雲を眺めながら霞と鎮守府の裏庭に回る。

 

「今日はすまなかったな。無理にやってもらって」

 

「別に良いわよ。あんたが気にすることじゃないわ」

 

「そうか、ありがとうな」

 

「ふん………」

 

霞は耳を真っ赤に染めながら俺から目を逸らし、スタスタと艦娘寮に戻って行った。

 

「執務室に戻るか、次の演習予定表を作らないとな」

 

艦娘寮に背を向け、執務室への廊下を歩いていると背後から声を掛けられた。

 

「あの、司令官様?」

 

「ん?春風か、どうかしたのか?」

 

振り返ってみると、適度な角度を守ったお辞儀をする春風が俺に微笑みかけていた。

 

「あの、朝風さんを見ませんでしたか?」

 

「朝風?いや見てないな。部屋にいなかったのか?」

 

「はい、一緒に食堂に行く約束をしていたのですが………」

 

「そうか、分かった。どこかですれ違ったら言っとくよ」

 

「ありがとうございます。あ、そういえば明石さんが司令官様を探していましたよ?」

 

「明石が?分かった。行ってくる、それじゃあな」

 

踵を返して工廠の方を向くと、不意に服の裾を握られた。

 

「…………なんだ?」

 

「司令官様?あんまり無理なさらないで下さいね」

 

「俺は大丈夫だよ、心配するな。何も問題ないから」

 

「……はい」

 

春風と分かれ、鎮守府の外廊下を歩いて工廠のシャッターを潜る。

相変わらず錆びた鉄と油の臭いが充満するだだっ広い工廠の左手前にある階段を下り、『明石専用の工廠』と記された扉を開ける。

 

「明石、いるか?」

 

「はいはーい、明石はここです!」

 

専用工廠の更に奥の溶接室からヌラリと現れた明石は右手に溶接バーナー、左手にスパナを握りながら頬の黒ずんだ油を拭う。

 

「俺に用があったんだろう?」

 

「はい!そうなんです、提督が前々から注文していた物が完成しましたよ」

 

「そうか、やっと完成したのか」

 

深創が明石に注文したのは数本の投擲用のナイフ、形状は平たくした苦無(クナイ)に似ている。

全体が研がれた鋭い刃で出来ているため垂直に摘まんで目の前に持ってくる。

 

「良く出来てるな。先端はダイヤ、他は全て銀製か」

 

「錆びないように私が開発した特殊な錆止めを塗ってあるので威力の低下は心配ないです」

 

いつの間にか明石が用意していた50メートル先の的に視線を移す。

右手に持ったナイフを構え、腕を振るった遠心力と共に投げ飛ばすとそれは的の中心を軽々と貫通してその先の鉄筋コンクリートの壁に半分近く突き刺さった。

 

「これは良いな、軽くて扱いやすい」

 

「それはよかったです!」

 

「事あるごとにすまない、助かってるよ」

 

「いえいえ、気にしないで下さいね」

 

それでは、と明石はまた溶接室の暖簾をくぐり抜けてその姿が見えなくなる。

深創は作業台の上に置かれたバックパックを持って私室の保管庫に収納する。

 

「そろそろヒトゴウマルマルだな……『仕事』の時間だ」




1話ずつの長さはどれぐらいがいいのかな…う~む。
とりあえずジャンジャン更新していきたいと思います!
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