この鎮守府の提督はいろいろ規格外でした。   作:ペペロンチーノ伯爵

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正直ドッキドキですわこれ…一応誤字とかは確認してるんですが………怖スギィ!


第二話『汚れた手、そして幸せ』

提督となった今でも深創は大本営からの『依頼』を貰い続け、遂行してきた。

ハッキリ言って真っ当な内容じゃないし、どちらかと言えば地獄に堕ちることを前提条件の血にまみれた仕事。

鎮守府の管理を大淀に任せて暗くも賑やかな街道を歩きながら手のひらサイズの投影端末を起動させた。

この端末から発される音声は全て左耳の鼓膜に付けた特定音波無線に流され外には漏れない。

雪がコートの肩に積もり、地を踏む黒色のシューズも雪の白に埋まる。

 

《………簡単に済ませよう、目標は『B-t-89』だ。リストを見てくれ》

 

あらかじめ録音されていた男の声と共に端末から短いリストが投影される。

 

《標的は素早く頼む、お前の存在を知られてはならない。暗殺だ、手段は問わないが標的以外の死亡は認められない、必要書類を回収して何者かの暗殺に仕立て上げろ………『ゴースト』は存在しない》

 

話し終わった途端に端末が自動ロック、内部構造が蒸発して破壊される。

証拠を隠滅するためだ、さっきも言ったが真っ当な仕事じゃないからな。

 

「………ここだな」

 

裏路地の影に隠れながら見上げる視界の先には名高い功績を残している鎮守府が映る。

もう分かっただろう?俺の仕事はこういうやつなんだ、汚れた仕事、血に染まった汚職。

コートの下に着たパーカーのフードを被り、妖狐のお面をつけて裏手に回る。

 

「ふむ…柵には有刺鉄線が二重に巻かれてる、逃げないようにするためか」

 

じっくり観察しながら六時を過ぎた暗闇を纏って抜け道を探す。

鎮守府の反対側にまで忍び足を進ませると、折り返し地点の柵に違和感を感じる。

 

「……この柵に巻かれた有刺鉄線、箇所箇所で意図的に切断されてるな。厚めの布が手摺に掛けられてる、簡単に取り外せそうだ」

 

これを利用しない手は無い、布に手を乗せて柵を上り、有刺鉄線の切断された一部を取り外して鎮守府の裏庭に侵入する。

背後で打ち付けられる港の波の音と共に急な豪雨が降ってきた。

運がいいな、この雨は使える。

深創は周囲を警戒しながら雪解けが始まる雪層を踏んで資材保管庫の壁に身を隠す。

 

「広い鎮守府だ……左手の建物は艦娘寮、右側は工廠。中央に指令棟か、当たり前だがウチの鎮守府とは構造が全く違う………監視カメラはどこだ?」

 

壁から顔を覗かせ、見える範囲の隅々を調べる。

するとどうだろう、ビッシリだ、侵入者対策にしては多すぎるカメラや赤外線警報が出迎えていた。

 

「見える範囲だけでこれか…なら内部はもっと厳重にされているのだろう、油断は出来ない」

 

しきりに両手首を動かし、保管庫の屋根上によじ登る。

視界が広がってより正確に情報を集められるようになった。

艦娘寮の電気は全て消えており、外には誰もいない、まだ就寝時間には早すぎる、出撃がないにしても電気くらいは付いているだろう。

だがその異変に深創は深く興味を持たず、艦娘寮から視線を離して次は工廠に向ける。

 

「電気は付いてるな、音を聞く限り人数は7人。駆逐艦2、空母1、軽巡4か」

 

特に問題は無いだろう、俺は視界にちらつく監視カメラや赤外線を臨機応変に躱しながら指令棟に近い艦娘寮の隅に隠れた。

それと同じタイミングで艦娘寮から傘を差して外に出て来た艦娘の姿を捉える。

 

「……今日は私の番」

(あれは叢雲か……指令棟に向かう行くようだ…まずいな)

 

深創は艦娘寮の扉を外から閉じ、余り意味はないがピッキングでカギを閉めてから暗い表情で俯きながら指令棟に向かう叢雲の後を追う。

そして指令棟の正面に付いた叢雲は監視カメラに見られながら網膜スキャンで中に入っていく。

それを事前に確認していた俺はポーチに入れていたスマホ型の簡易ハッキングツールで監視カメラの映像を偽装し、叢雲の背中にピッタリと触れるギリギリを保ちながら一緒に建物内へ入る。

そして薄暗い定点電球の中を進もうとしたその時、雨でずぶ濡れになっていた深創の服の裾から水滴が床にポタリと垂れた。

 

「………えっ?ッ!?」

 

「ッ………!」

 

致し方ない、俺は叢雲に振り向かれる前に首に腕を回して口を塞ぎ、首筋に艦娘用の麻酔剤を撃ち込む。

 

「ん…!?むぐ……う………」

 

「すまないな叢雲、しばらく寝ていてくれ」

 

脱力して意識を失う叢雲を抱き止め、廊下の端に寝かせる。

内部にも思っていた程ではない量の監視カメラが設置されていたが、執務室への道は更に厳重だった。

だが深創にとっては大した問題じゃない。

 

「ふむ……つくづくこの雨は幸運だな」

 

執務室の中には司令官が一人悠久に浸って酒を嗜んでおり、多少だが酔っているように見える、だから気付かない、気付けない。

自分の真上から覗く視線に。

 

「………………ゴーストは存在しない」

 

「へぁ?」

 

素早く背後に滑り込み、酒臭い男のうなじを右手で鷲掴みにする。

 

「っ…カ……!」

 

「………」

 

うなじを離し、右手首から突き出る全長約25㎝の鋭い刃を手首に付けた機械仕掛けのリストバンドに引き戻す。

 

「さて、これだな……」

 

俺は鍵の付いた引き出しをピッキングし、中に入っていた文書を取り出して窓から脱出する。

 

翌日・黒羽鎮守府

ー『執務室』ー

 

「提督、これを見てくれ」

 

「ん?なんだ」

 

今日の秘書艦を担当してくれている初月は俺の目の前で1刷の新聞を広げる。

 

「どうやら昨日、余所の鎮守府の提督が暗殺されたそうだ」

 

「ほう、そうなのか」

 

「ああ、だが実はその鎮守府。自分の艦娘を性奴隷のように扱い、かなりブラックな指揮をしていた鎮守府だという証拠が発見されたようだ」

 

「それはよかったじゃないか、その鎮守府は遂に解放された訳だな」

 

ただ自然に振る舞う、感づかれないようになんて考えず、関心はするが感情を入れずに答える。

 

「そろそろ遠征から艦隊が帰って来る頃か」

 

「そうだな、初月。すまないが迎えに行ってきてくれ」

 

「提督は来ないのか?」

 

「ああ、少し野暮用を片付けないといけないからな」

 

「そうか、分かった行って来る」

 

初月を見送り、深創は大本営から個人的に届いた手紙を引き出しから取り出して中身を確認する。

手紙には深創に対する感謝の意を告げる内容と、報酬についての内容が書いてあった。

 

「そしてご丁寧に次もよろしく頼むっか……抜かりないなまったく」

 

手紙を粉々に引き裂き、ゴミ箱に捨てる。

椅子から起き上がり、港に向かうために扉を開けて廊下を歩いていると、10メートル先の突き当たりの角から話し声が聞こえる。

 

「それでね!その時にあたしの魚雷がドーンって!」

 

「はいはい白露姉さん、前向いて歩かないと危ないよ」

 

「むー!本当に凄かったんだよ時雨!」

 

白露は相変わらず元気だな、少し挨拶するか。

 

「元気だなふたー」

 

「行くよー!白露魚雷発射ぁ!!」

 

ゴチャッ!!

 

「あだっ!?」

 

「ッッ……ぶ!?」

 

角からいきなり突き出てきた白露の頭が顎にクリティカルヒット、白露は立ったまま自分の頭を撫でるが、深創は床に膝から崩れ落ち、二人に背を向ける。

 

「ああ!ほら、だから言ったじゃないか姉さん!」

 

「あうぅ……ごめん」

 

「提督?大丈夫かい?」

 

「ッ……ッ…!」

 

「提督……?」

 

左腕だけをこっちに向けて崩れ落ちる深創を不振に思った時雨は介護するために左腕を肩に乗せて顔を覗く。

 

「ッ!?」

 

「あれ?どうしたの?」

 

目を見開く時雨の視界には、千切れかけた舌をダラリと垂らしながらこちらを見つめる深創が映っていた。

だがその千切れかけた舌は瞬く間に再生され、元通りになる。

 

「ふう……もう大丈夫だ」

 

「あ、ああ……よかった。そうだったね」

 

「さて、白露?」

 

「は、はい。すいませんでした」

 

「元気なのはいいが、注意散漫は気を付けるように」

 

「分かりました……」

 

二人と分かれ、港まで向かうと先に初月が睦月達を迎えてくれていた。

 

「あ!司令官!!」

 

「良くやったぞ卯月、お疲れ」

 

「司令官、ただいま」

 

「お帰り如月、睦月も」

 

「にゃしい!」

 

「あれ?弥生はどうした?」

 

長距離遠征には弥生も参加していたはずだが、その姿が見えない。

 

「弥生ちゃんは卯月ちゃんのいたずらでびしょぬれになったのでお風呂です!」

 

「ちょっ……!!」

 

「ほう……またやったのか」

 

「し……司令官?ほ、ほら。ぴょーん……」

 

「………………」

 

「ごめんなさい」

 

「はぁ、ちゃんと弥生に謝っておけよ?」

 

「分かったぴょん!」

 

うーむ…少し厳しくしたほうがよかったのか?そんな事を考えながら初月と一緒に執務室で執務を開始する。

 

「なあ提督」

 

「ん?」

 

「お前は今を幸せに感じているのか?」

 

「………幸せ、か」

 

いきなりの質問に少し驚いたが、今こうして考えてみればよく分からないと言ったほうが正しい。

全てが終わったあの日も、俺はきっと満足じゃなかった、満たされてはいなかった。

 

「まだ分からない、正直。あれが俺達のエンディングだったのか、もしくはプロローグなのかも……俺には分からない。まあどちらにせよ」

 

深創はペンを置き、自身の両腕を広げて力を込める。

すると綺麗で白色の両腕を、禍々しさを放つ漆黒のオーラと黒炎が覆い尽くす。

 

「天国には行けないだろうな、そもそも死を捨てた俺がベッド上で安らかに死ぬことは無い、」

 

「そうか……確かに、提督の言うとうりかもしれない」

 

「だが、お前達と過ごしてきた時間、道、苦行は悪くないものだ」

 

腕を元の状態に戻し初月の頭に手を乗せて優しく撫でる。

 

「お前達は俺の家族だ、例え何があろうと守ってみせる。誰一人沈ませはしない……」

 

「ああ、お前は僕達の事を大切にしてくれてるのはよく分かってる。僕をあの場所から連れ出して姉さん達に会わせてくれたのは提督だから」

 

気持ち良さそうに首を捻りながら唸る初月に微笑み、決意を更なるものに固める。

深創が率いるこの黒羽鎮守府に所属している213名の艦娘の殆どは別の鎮守府に配属していた艦娘なのだ。

それも凶悪なブラック鎮守府で酷い扱いを受けてきた大きな闇を抱える艦娘達。

機密部隊だった深創が提督になったのはそんな彼女達を救った事が引き金となったからだ、

 

(きっと彼女達が俺を慕ってくれるのは……普段受けるべきだった愛情や常識が欠落していたからだろう、つまり好きで俺を選んでるわけじゃない。俺は単なる拠り所に過ぎない)

 

初月から手を離し、書類を整頓して立ち上がる。

 

「さあ、もうお昼だ。昼食を食べに行こう初月」

 

「もうそんな時間か。うん、行こう!」

 

この日常を手にするまでに……俺はどれだけの『感情』を犠牲にしてきたのだろう。




書くたび書くたび『こうした方が見やすいかもしれん』『これは見にくいやろ』といった感じにポンポン案が浮かぶので出来上がりに滅茶苦茶時間が掛かったw
うーむ、まだどれくらいの量で終わらせたらいいのか加減が分からないな。この量は短いかな?
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