この鎮守府の提督はいろいろ規格外でした。   作:ペペロンチーノ伯爵

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ここから一気にぶち込んで行くので頑張って着いてきて下さいな!


第四話『血に浮かぶ古』

その日の夜中、朝雲の大きな欠伸を聞きながら執務机で演習用のスケジュール表をPCで作成していると、右耳に付けた機密無線に大本営から緊急連絡が入り、若い男の声が聞こえてきた。

 

《ッッ……深創殿、急用だ》

 

「いきなりだな、なんの用だ?」

 

「……?」

 

《陸軍が機密で回収した『繭』から深海棲艦が生まれた》

 

陸軍め……余計な事を。

『繭』を回収する際、『ハズレの場合』を見越して数人の艦娘と共に海上で解放するのが原則。

ハズレから生まれた深海棲艦を処分するために、陸軍の事だ研究か何かの為に独断で解放したのだらう。

 

「陸上か?それなら深海棲艦も満足に動けないだろ」

 

「司令?」

 

《出現したのは『駆逐古鬼』陸上でも活動が可能な艦種だ》

 

よりにもよって小回りがきく駆逐古鬼か…陸軍じゃまず対処できないな。

だが陸上でも動けるとはいえ本来の機動力は出せないはず、今からなら世間の目に触れる前に間に合う。

 

《こちらも情報が不足してる、深創殿には今すぐに対処してもらいたい》

 

「もちろんだ、すぐに行く」

 

「ねぇって!」

 

服の裾をグイと引っ張られる。

視点を力の掛かった場所に向けると、むくれた朝雲がこちらを睨み付けていた。

 

「ああすまない朝雲、すこし出掛けてくるよ」

 

「急用?」

 

「そうだ、陸軍第一空挺施設に行ってくる。大した用事じゃない。すぐに戻るよ」

 

「分かった、したらあたし寝ずの番するから」

 

「くれぐれも無理はするなよ」

 

そう言って深創は黒コートを羽織って鎮守府を出る。

軍用車の防弾式GTRに乗り、深夜帯の人気の無い大通りをスピード無視で走り出す。

 

 

深夜・マルヒトマルマル

ー『陸軍基地・第一空挺格納施設』ー

 

 

しっかりと除雪が施された駐車場に車を止め、今のところは物音一つしない基地から漂う血生臭い雰囲気を感じながら自動ドアを通過して二重ロックの電子門をスマホ型ハックツールでハッキングする。

 

「駆逐古鬼は確か地下4階で解放されたはずだ、下に向かおう」

 

大型輸送ヘリ用のヘリポートの端にある非常ドアを開けて無人の受付窓口を抜ける。

 

「人の気配がしない……施設内の独立電力が物理的に破壊されてる。エレベーターは駄目だ、非常階段から行くしかないな」

 

この時点で深創の予想は確信に変わる、もうこの基地に生き残りは存在しない。

 

(何故なら。地下4階から声どころか心拍音すら聞こえない……最悪の事態だ、何としてでも駆逐古鬼を止めなくては)

 

その意志を固め、1階から非常階段の螺旋階段の手摺を飛び越えて地下4階まで急降下、4階階段の手摺に手を掛け素早く登り、視界を4階の格納スペースに向けたその時、深創は顔をしかめた。

 

「この臭いは……やはりか」

 

深創の視界に見えたのは地獄絵図。

衛生管理が無視された豚の解体工場のように酷たらしい惨殺死体の海が広がっていた。

破裂した人間の下半身、壁にへばりついた肉塊の中から煌めくドッグタグには着任したばかりの訓練兵の名が刻まれている。

 

「………駆逐古鬼、お前がやったんだな」

 

俺は腰の仕込み刀を引き抜く。

鞘から姿を現した円銅のない厚みのある鋼鉄とチタンを含む刀身は一般的の刀よりも短く、所々に斜線の痕が見える機械仕掛けの光沢が血海の真ん中で背を向けたまま佇む幼い幼少の姿をした漆色の和服の少女を映し出す。

 

「オマエモ……アタシヲ捨テルノカ……?」

 

「いや、お前を止めに来た」

 

駆逐古鬼はゆっくりと首をこっちに向け、その蒼く不気味な瞳に帯びた紫色の輝きが深創を確実に補足する。

そしてそれと同時に一身二頭の主砲もこちらに振り向く。

 

 

旧型駆逐艦

ー『駆逐古鬼』ー

 

 

「ニンゲンガアタシニ勝テルワケナイダロォ……!」

 

駆逐古鬼は主砲を向け、ソナーで精密射撃の準備を整えながらニヤリと笑う。

 

 

黒羽鎮守府・提督

ー『深創』ー

〖仕込み刀・刀剣〗

 

 

「確かに生身だとキツいかもしれないが、俺はもう『捨てた身』だからな、やってみないと分からないだろ?」

 

仕込み刀を構え、15メートル先の駆逐古鬼を見据えながら周辺を見渡す。

マズいな…これで陸上のアドバンテージは無くなったか。

深創の足首にまで達した血海は地下4階を覆い尽くし、その水面上に浮かぶ駆逐古鬼の卑しい笑みは更に深みを増した。

 

「さあ、始めようか……」

 

圧倒的不利の状態になった深創に追い打ちを掛けるが如く更なるデメリットが加わった。

 

 

深夜マルヒトサンマルにて戦闘開始

ー『我、夜戦に突入す』ー

 

 

臨戦態勢に入った事を検知した思考プロセッサーが深創の視覚情報の右上に夜戦突入の表示を映した。

いまこの状況、生身の男が海上で尚且つ深海棲艦相手に夜戦という危機的状況を覆す事は出来ない。

 

(非常にまずい……1on1の状況にしては最悪の展開、だが出来る限り『使いたくない』が……)

 

刹那、深創は反射的に目前に迫った一発目の砲弾を躱し、連撃で放たれる二発目は仕込み刀で斬り弾く。

そして仕込み刀を逆手に構え、地面に当たらないようにその刃身を振り落とす。

振り落とされた圧力で木刀並みの厚さを持つ刀身に仕掛けられた銃創が突き出る。

 

「ッ!?」

 

銃創から撃たれた『AP.45口径炸裂弾』は駆逐古鬼の主砲に直撃し、爆発と硝煙を巻き起こした。

 

(不意打ちは直撃したが次は当たらないかもしれない)

 

「ヨォシ……」

 

「っ……?」

 

「クラエェッ!!」

 

硝煙の中から放たれた二発の砲弾は深創の両脇にある柱を破壊した。

崩れる柱の瓦礫から逃げ、晴れゆく硝煙から覗く眼光に向けて炸裂弾を撃ち出すが首をかしげるように傾けて躱される。

 

「モウヨメタ……アタラナイ!」

 

「ッ……やはり適応が早いな」

 

「………オマエ…」

 

「……?」

 

駆逐古鬼は硝煙を振り払い、深創の前に崩れた瓦礫に主砲を放った。

爆散するコンクリート片を避けた拍子に生まれた一瞬の隙を逃さず駆逐古鬼の次弾が深創に向かって来る。

だが驚異的な反射神経と技量で何とか砲弾を受け流すがそれと同時に放たれていた二発目の次弾が深創の立っている地面を吹き飛ばす。

 

「ッ……!?」

 

「アタシノ勝チダ……シズメヨェ!!」

 

駆逐古鬼

ー『魚雷・絶対命中(カットイン)』ー

 

クソッ……しくじったか。

炸裂弾とは比べものにならない程の爆発が巻き起こり、爆風と共に吹き飛ばされた深創は壁に激突する。

壁は衝撃によって崩れ落ち、深創の身体を埋め尽くす。

 

「…………………」

(ああ……右脚は潰れたな、左眼に鉄骨が貫通してるようだ)

 

瓦礫から手を出し、暗転した視界の中で思考を巡らせる。

 

(こうなっては仕方ない、出来る限り被害を避けたかったが……)

 

「……ナンダ?」

 

(誰も来ないことを願おうか……)

 

這い出た腕から黒炎が燃え盛り、瓦礫を退けて起き上がった深創の右眼は真っ黒に染まり漆黒の炎妖を纏う。

損失した左眼や右脚は完全に再生され、深創は血海に浮かび駆逐古鬼へ左手を向ける。

 

「久しぶりだが……飛べ」

 

閃光の一瞬、駆逐古鬼の身体は格納スペースを突き破って地下第二滑走路にまで弾け飛んだ。

 

「アガッ!ッッ……ナンデサ…ナンデオキアガルンダヨォ!!」

 

「…………」

 

中破程度だろうか、その身に纏った和服の一部が磨り減った状態で立ち上がる少女の眼光はより一層深みを増し、主砲の砲口は緋色の輝きを放つ。

 

 

捨てられ、忘れ去られた旧型駆逐艦

ー『駆逐古姫・改flagship』ー

 

 

「ナンナンダヨオマエハァ……ナンデ!?」

 

フラグシップに覚醒した駆逐古姫は雄叫びを上げながら深創に主砲を撃ち放つ。

深創は黒炎を纏う右腕で砲弾を殴り飛ばし、倒壊した穴から滑走路に降りる。

 

 

深淵を受け入れた者

ー『深創』ー

〖深淵化・flagship〗

 

 

「俺は………いや、何も言うまい」

 

黒炎は黄色いオーラを帯び、右眼に纏う漆黒は黄金に輝く。

 

 

深夜マルサンマルマル

黒羽鎮守府

ー『執務室』ー

 

 

「司令遅いな……」

 

普段深創が座っている執務机に突っ伏したままぼそりと呟く朝雲は顔を上げ、窓の外を眺める。

 

「………よし」




むむむ……もう少し細かく伝える文章力が乏しいw勉強せねば!( ・o・)
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