この鎮守府の提督はいろいろ規格外でした。 作:ペペロンチーノ伯爵
深創は黄金に輝く右眼で駆逐古姫を見定め、仕込み刀を鞘に収める。
「お前に個人的な恨みはないが……すまない」
「オマエ……アタシ達トオナジニオイガスル」
駆逐古姫は深創の腕と眼を見ながら口を開く。
「ニンゲンジャナイ……アノイマイマシイヤツラデモナイ……」
「………分かるのか」
「ワカル……オマエハアタシ達ト同ジダ」
駆逐古姫は主砲の頭に手を乗せて砲口を下ろし、深創に近づいてくる。
「ソノカラダ……ドウヤッテ?」
「………お前に話して何になる?」
「ナニニモナラナイ……ダガシリタイ…」
「………」
駆逐古姫は深創の燃え盛る黒炎を纏った手を引き、滑走路から出て海岸に連れられる。
不思議と拒否感はなかった、むしろ、幼馴染みといるかのような懐かしい感覚になった。
さっきまで互いの命を削り合っていたはずなのにもかかわらずだ。
雄叫びを上げて威嚇していた駆逐古姫も今や元から仲間だったかのように口元を緩ませている。
「………ここは」
海岸の端に立ち、隣にいる駆逐古姫を見下ろす。
「オマエハ……ナゼココニイル……?」
駆逐古姫の吸い込まれそうな濁りの無い瞳に見つめられながら深創は彼女の頭に積もった雪を払う。
「俺は……」
駆逐古姫に引かれるがままゆっくりと地面に腰を下ろし、眼を伏せる。
「確かに、俺は人間じゃないし。あの子達とは違う……そう、違うんだ」
眼を閉じ、全身の力を抜いてから深創は9年前の、あの全てが始まった俺の…いや、俺たちの軌跡を思い出す。
「あれは俺が全てを失った場所……記憶だ、終わりの始まりを体現したかのような出来事……全てを失い、全てを得た軌跡の道……」
自然と深創の口が滑り、ジッとこちらを見つめたままの駆逐古姫に話し始める。
「全てはお前達、深海棲艦が沖縄の海岸に侵略したあの日から始まった。俺がまだ『ゴースト』の腕章を身に付けていた頃の話だ」
深創は9年前まで自分を遡らせ、黒ずんだ濃血に染まった妖狐の面を付け、どしゃ降りの嵐の中で佇む己の姿を思い出す。
駆逐古姫の頭を撫で、冷たい肌に自分のコートを被せる。
「……アリガ…トウ」
「お前も……全てを失い、捨ててから生まれたんだろう?あらゆる深海棲艦や艦娘は悲劇的な絶望から生まれる言わば『負の集合体』のような物だ、艦娘はそれを乗り越えて使命を背負った存在。だが逆に深海棲艦とはその闇に呑み込まれてしまった負の存在」
これから語るのは全てが始まった刻、彼が死に、生まれた物語。
艦娘と深海棲艦の狭間に堕ちた者が見るのは希望か深淵か、もしくは灰色の自壊か。深創、そして艦娘達の過去から引き出された答えは君たちに何を与えるのか?期待はしない方がいい、全てがハッピーエンドで終わるとは限らないのだから。
少し短いですし、かなり急ぎ足だったのでのちのち大幅な修正を加えますのでご理解下さい。