この鎮守府の提督はいろいろ規格外でした。   作:ペペロンチーノ伯爵

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この章から過去編に移ります。
かなり長くなる予定なので気長に読んで頂けたら幸いです


第零章~『軌跡編』~
第一話『一度死んだ男』


機密ファイル:G-141α

『出撃命令・作戦概要』

〔記録337:沖縄海防衛作戦。

本作戦には極秘特殊部隊『Ghost』を投入。

現地に向かうGhost分隊『Nightfall』は分隊長である“?????・??????”の指揮に従い状況対処に臨んで下さい。

尚、既に現場には“艦娘”が海上展開していますが、我々Ghostは存在しません。

その事をお忘れ無きよう。

※このファイルは24時間以内に消失し、全ての記録から抹消されます〕

 

 

同時刻~pm22:40~天候・嵐

作戦区域

ー『海岸浜辺沿い』ー

 

 

まるで絨毯爆撃のような無数の砲弾が砂中を吹き飛ばし、防壁豪を打ち砕く。

雷々と共に降り注ぐ豪雨に濡れながら彼は海岸に設置された四段土嚢に寄り掛かり、腰に下げた『ACR-D』ネイビー迷彩アサルトライフル銃のプラスチックマガジンを抜き取って浜辺に投げ捨てる。

 

「ッ…弾薬が尽きそうだ……」

 

弾倉ベルトのポーチから最後のマガジンを取り、ACRに装填する。

 

「ボス!5×7のマガジンあるか!?」

 

「いや無い、俺のサブは45マガジンだ」

 

隣り合わせで息を荒くする同じGhost部隊の戦友がメインウェポンのARX-140を投げ捨て、5×7のスライドを引く。

俺達Ghost部隊は4日間に渡って現地の艦娘と共に陸上を海に侵食しながら侵攻してくる深海棲艦の進軍を何とか食い止めて来たが、圧倒的物量で劣り、資材が尽きた殆どの鎮守府は艦娘を退避させ戦場をGhostに押し付けた。

 

(俺達の弾薬もそろそろ底を尽く……まったく、最後の最後まで無駄な汚れ仕事で死ぬのか)

 

「ボス、負傷者が多すぎる!Ghostも撤退しなければ壊滅するぞ!」

 

「………そうか」

 

俺は傍らに転がるGhost部隊員の死体を見ながら海岸に迫る深海棲艦の群れに息を着く。

『Ghostは存在しない』ここで撤退すれば確実に俺達の存在がばれる。

 

「撤退はしない。Ghostが世界のどの記録に載ることは許されないからだ、俺達はここで戦い続けるしかない」

 

彼の言葉を聞いた部隊員は多少の迷いや後悔を表しながらも命令に従い、武器を構える。

現在生き残っているGhost部隊は彼を含めて7人、その内4人が再起不能の重傷を負っていた。

爆発物も無ければ弾薬も無い、そもそも撤退するにしても移動手段がないのだ。

俺は穴だらけになった土嚢の隙間から顔を出し、海上の様子を確認する。

 

(完全包囲か……艦娘もいなければ強力な兵器もない……)

 

その時、止むことのない砲撃の一発が目の前の土嚢を吹き飛ばし、部隊員全員を巻き込む。

 

「…………ッ!!」

 

起き上がろうとしたその瞬間、暗転した視界の右端と左腕に鋭い激痛を感じる。

どうやら右眼は完全に潰れており、左腕は肩から先に感覚を感じなくなっていた。

それもそうだろう、いま自分の目の前にちぎれた己の左腕が転がっているのだから。

 

「ッッ……腕章を……」

 

絶え間ない激痛で身体を奮い起こしながら人間の骨や血肉が混ざった砂を掴みながらちぎれた左腕まで這いずり、二の腕に張られたGhostの腕章を引き剥がして砂の中に埋める。

 

「……ランバート…!いまどこだ…?」

 

胸元の無線に手を掛け必死に声を出すが応答は無く、自分の声だけがハウリングして聞こえる、脳振盪だろうかやけに近くから聞こえるような気がする。

 

「ランバート……?」

 

《ランバート……?》

 

「…………?」

 

だんだんとハウリングしている場所を判別出来るようになり、首を傾け視線を向けると、そこには砂埃にまみれ、5×7を握り締めたまま絶命したランバートの姿があった。

 

「っ………他には…?」

 

激しい痛みに耐えながらも身体を起こし、へし折れた右脚を引きずって膝立ちになる。

 

「ああ……クソッ……」

 

狭く暗い視野から、土嚢がきれいさっぱり消し飛んだ雷雨荒れ行く浜辺に視界を向け、絶望する。

さっきまで生きていたはずの隊員の無惨な死体は彼の心の均衡を破壊するには十分過ぎた。

 

「イキノコリ……カ?」

 

「ッ……?」

 

朦朧とする意識の中、陸上を歩く一体の深海棲艦が顔をのぞき込んでくる。

そしてしばらく見つめ続けた後、クスリと笑って俺の頬に両手を添えた。

 

「オマエノメ……キニイッタ、ワタシタチトオナジメヲシテイル……」

 

冷たく白い深海棲艦の手の中に包まれながら途切れ掛けていた意識を手放す。

 

 

~am03:00~

~『深淵の覚醒から4時間半経過』ー

 

 

手放した意識が戻り、うっすらと瞼を開ける。

いつの間にか豪雨は止み、月明かりだけで照らされた血染めの砂浜が広がっていた。

 

「ッ……身体が……」

 

ふと気付けば彼の身体は無傷のまま綺麗に残っており、潰れた右眼も左腕も元の状態に戻っている。

 

「……どういう事だ…俺の身体になにが…」

 

思い浮かぶのは最後自分の前に来たあの深海棲艦、奴が何かしたのだろうか?夢で済ますのはあまりにも無理がある。

 

「……生存者は……?誰かいないのか?」

 

大した期待を抱かずに暗闇の中を探るが、手に触れるのは使い捨てられた銃器、そして人間の死体だけだ。

 

「奴らはどこに行った…?まさか…いや、それはないか」

 

頭の中で一つの可能性を消し去る。

深海棲艦は陸上を侵略する際、その地理地形を海に変える特殊な力を使う。

つまりこうして最前線だった浜辺が存在しているということはここより先は侵略されていないことを意味する。

 

「侵略をやめた……?何のために?」

 

そんな事を考えていると、浜辺から数メートル離れた海岸に1台の車が止まり、俺に向かってライトを浴びせる。

 

「ッ……!」

 

素早く腰の45ガバメントを抜き出して眩しい光を放つ車のフロントへと構えた。

 

「誰だ……!」

 

「そう警戒するな……俺は敵じゃない」

 

「仲間でもないだろ?」

 

それは…確かに?、と咳払いをしながら車から姿を現す一人の男は口に咥えた葉巻をこちらに差し出す。

 

「吸うか?」

 

「……キューバ産か?」

(ん…?なんだこの違和感は……)

 

「その距離から良く分かったな、そのとうり、これはキューバ産だ」

 

そうだ、やはり何かおかしい。

なぜあの距離から葉巻の正確な匂いと形が分かったんだ?

……クソ、なんだこれは?

 

「っ……???」

 

「おん?どうした?」

 

落ち着きを取り戻した瞬間、彼の視覚は暗闇を昼間のような明るさで見ることができ、嗅覚は数十メートル先の草木で蠢く蟻の蟻酸を嗅ぎ分け、聴覚はここから数㎞先にある灯台の傍に隣接した民家の扉の閉まる音を感知した。

 

「なにが……?」

 

「よく分からんが、とりあえず乗れよ『ゴースト』さんよ」

 

「ッ………」

 

砲撃によって地形が歪んでしまった避難区域の街道を走る1台の車の中で二人は沈黙に包まれていたが、疑問を殺し切れなかった男が口を開く。

 

「それで……なぜ俺の事を知ってる?」

 

「そりゃそのゴーストさんが大本営にお前さんを『回収』するように頼んで来たからだよ」

 

「ゴーストが……回収?」

 

「ああ、死体でもいいから回収してこいと言われたんだが……まさか生きてるとはな」

 

「…………」

(この身体と何か関係があるのか…?)

 

「それにしても……お前すげえな」

 

そう言って車を運転する男は数枚の書類を受け渡してきた。

そこには俺のあらゆる情報がその紙に書いてあり、全てが事実。

 

所属部隊『ゴースト』

本名:グレイブス・フェニックス

既得コードネーム:オシリス

仮国籍:アメリカ合衆国

年齢:《エラー》21歳《エラー》

身長:176㎝

体重:57㎏

血液型:B型

生年月日:《エラー》1988年5月23日《エラー》

現在歴〖所属部隊ゴーストにて最高機密部隊『ナイトフォール』の部隊長を務める〗

 

「グレイブス・フェニックス………不死の救世主ね、いい名前じゃねぇか?」

 

「………そんな見栄を張れるような名前じゃない」

 

「そうか?まあ俺にはいい名前だと思うがな」

 

「……あんたは何者だ?」

 

「俺か?『溝走・文輝(みぞばしりふみき)』だ日本海軍の総司令部。『元帥』って奴だ」

 

「……そうか、ありがとう」

 

「気にすんなよ………それと」

 

文輝はダッシュボードから封筒を取り出してグレイブスに渡す。

 

「これから大本営で詳しい話をされるが一応目を通して置いた方がいい」

 

「これは………ふ、そうか」

 

受け取った封筒の中に入った書類の中には、今回の沖縄海防衛作戦の死傷者数とその名が書かれた極秘資料が入っていた。

そこには出撃したゴースト部隊『全員』の名前が書かれている。

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