オーバーロード 新参プレイヤーの冒険譚   作:Esche

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−これまでのお話−
エ・ランテルに帰還したユンゲたち“翠の旋風”は、調査依頼を受けて辺境のカルネ村へと赴いた。
以前に顔見知りとなった“村娘”エンリとの再会を喜ぶ最中、突如として攻め寄せてきた“第一王子”バルブロ率いる王国軍に対峙したユンゲは、葛藤を抱きながらも村人を守るために剣を手にする。
仮面の男“アインズ・ウール・ゴウン”の助力により、辛くも危機を脱したカルネ村ではあったが、その代償は決して見過ごせるものではなかった。


scene.7 新たなる秩序
(43)黎明


 朝の目覚めは、どこか遠くに鳴り響いている鳥の囀りだった。

 窓辺から差し込んでくる陽射しが妙に眩しく感じられ、ユンゲは寝惚け眼を擦りながら煩わしい思いで顔を背ける。

 のそのそと寝返りを打った拍子に、毛布の隙間から悪戯な冷気が忍び込んできた。

 震えるように小さく身動ぎをしつつ、温もりの余韻を求めて彷徨った腕が、何も抱き寄せられないままに虚しく空を切る。

「……もう朝、か」

 ぼんやりとした微睡みの思考の中で、意味のない言葉が呟かれ、小さな苦笑いが口許に浮かんだ。

 緩慢な動きで上半身を起こしたユンゲは、こぼれそうになる欠伸を堪えながら、大きく背筋を伸ばしてみる。

 諸々の様子に気付かない振りをして、このまま倒れ込んで二度寝に耽ってしまいたい誘惑――抗い難い魅力を覚えていても、のんびりとばかりはしていられないだろう。

 寝癖のついた髪を掻き撫でつつ、何気なく視線を向けたのなら、窓枠越しに広がる長閑な開拓村の風景には、既に忙しなく働き始めている村人たちの姿が見受けられた。

 城塞都市〈エ・ランテル〉のような市街部で暮らす人々とは異なり、農耕や狩猟を主な生業として生きる人々の暮らしは、いつでも太陽の光とともにあるらしい。

 東の空が明るみ始める頃には、ほとんどの村人たちが起き出しており、朝の水汲みや簡単な食事を済ませると、早々に仕事へと精を出していく。

 今朝のように吐息も白くなる冬の季節は、本来であれば休耕期になるという話なのだが、現在の村を取り巻く情勢が逼迫しているために、暖かい春を待ち侘びながら漫然と過ごす余裕はないのだろう。

 リ・エスティーゼ王国の辺境に位置する小さな開拓村――カルネ村は、春先に起きた痛ましい襲撃事件によって多くの働き手を失ったばかりでなく、つい先日には味方であるはずの王国軍にまで、突如として攻め寄せられる事態に見舞われていた。

 傲慢な“第一王子”バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフに率いられた五千もの軍勢による被害の爪痕は、村の周囲に設けられた塀や正面門の破損に色濃く残っている。

 更に痛ましいことに、故郷や家族を守ろうと立ち上がった村の男たちの中には、決して少なくない犠牲者が出てしまってもいた。

「…………っ、やり切れないよなぁ」

 心の内で燻る思いの矛先を持て余すように、ユンゲは足取りの重いままに窓辺へと歩み寄っていく。

 口を吐きそうになる溜め息を堪えながら、やおらに見上げる高い塀の向こう――、良く晴れた空は鮮やかな向日葵色に染まり、朝の訪れを告げる真っ赤な太陽は、地上での出来事などは素知らぬ顔で、目映いほどに燃え立っている。

 遠景に連なって見えるアゼルリシア山脈は、その頂きに今朝も真っ白な雪の冠を抱いて聳えながら、これからも悠久の刻を見守り続けるのだろうか。

 忸怩たる暗い気持ちを抱きながらも、深刻な大気汚染に侵された“転移前の世界”では、どれほどの大金を積んだとしも拝むことのできない光景を眺める内に、自身の頬が意図しないままに緩んでいくのが分かった。

 そうして、ふと麗らかな陽の光に当てられたユンゲは、何の気なしに朝露の伝う窓枠を押し開けてしまう。

 途端に流れ込んでくるのは、身も凍える隙間風。

「――って、寒っ!」

 突然の肌を刺すような感覚に慌てて窓を閉め直しつつ、もう一度ぶるりと肩を震わせる。考えなしだった浅はかな自分の行動に、自嘲めいた笑みを浮かべることしかできない。

 堪えていたはずの溜め息が口からこぼれ落ち、ユンゲは思わず頭からベッドに倒れ込む。

 細い縄で縛った干し草の束を重ねて、薄い敷布を被せただけのベッドは、少しばかり固さを覚える簡素な作り。

 それでも、突っ伏すようにして投げだした身体は、柔らかな草木の薫りに包み込まれるように、不思議な心地良さをもたらしてくれる――と、不意にコンコンと扉を叩く軽い音が耳朶を打った。

「ユンゲさん、もう起きていらっしゃいますか?」

 やや遠慮がちな呼びかけに応じて、ユンゲは伏せていた顔を持ち上げ、扉の方へと視線を向ける。

 取り付けられた蝶番が小さく軋みを上げると、少しだけ開けられた扉の隙間から室内の様子を窺うように、可愛いらしい森妖精〈エルフ〉の少女の顔が覗いた。

 軽い驚きに見開かれた碧の澄んだ眼差しに、軽く手を振ってみせたユンゲは、腕の力で身体を反らすように起こしながら、おもむろにベッドの縁から這い出していく。

 都合、こちらを見下ろすような体勢となったマリーは、口許に手を当てなから柔らかな笑みを浮かべているのが見えた。

 仕方のない人だ、とばかりにやれやれと肩を竦めてみせる仕草に、何くれと世話を焼きたがるような気配を感じて、ユンゲは思わず口許を綻ばせる。

「……おはよう、マリー」

 のんびりと胡座を組みながら床に腰を下ろしたのなら、ユンゲの傍らに歩み寄りながら膝を折ったマリーが、視線の高さを合わせるように小さく屈み込んでくれる。

「おはようございます、ユンゲさん。――そろそろ朝食の用意ができそうですけど、すぐに食べられますか?」

 ちょこんと小首が傾げられた拍子に、今朝はまだ纏められていなかった髪の一房が、丸く膨らんだ白磁の頬へと垂れていた。

 パチパチと燃える熾火の音が耳に触れて、ふと鼻孔を魅惑する芳ばしい香り――、“朝食”という単語を耳にして早速と鳴り始めてしまう現金な腹の虫に、軽く呆れるような思いを抱きつつ、ユンゲは苦笑を堪えて口を開いた。

「ん、顔だけ洗ったら行くよ。――ありがとう」

 頬にかかる艶やかな金糸を梳くように指先で掬い上げれば、エルフの特徴的な長く尖った形の良い耳が露わになる。

「はいっ! では、お待ちしていますね」

 少しだけくすぐったそうにしながら、晴れやかな笑顔で頷いてくれたマリーが、立ち上がってくるりと踵を返していく。

 窓辺から差し込んだ陽光に照らされて煌めく黄金色の後ろ髪が、さらりと流れるように肩の辺りで揺れていた。

 

 汲み置きしていた水の冷たさに、すっかりと悴んでしまった両手を竈の残り火へとかざす。

 ちりちりとした熱の何とも言えない心地良さに当てられながら、強張りをほぐすように手を揉み合わせていたユンゲは、そそられる匂いにふと鼻をひくつかせた。

 首だけで振り返りつつ、待ち遠しい気持ちのままに視線を食卓の方へと巡らせれば、マリーの抱えるお手製のバスケットには焼きたてのパンがこんもりと盛られており、添えられたドライフルーツの彩りが目にも楽しい。

 こちらに気付いて可愛らしい笑顔を見せてくれる向こうには、温かな湯気を立ち昇らせている鉄鍋が見える。

 ごろっとした丸蕪とたっぷりの挽き肉が煮込まれる琥珀色のスープは、凍えるような寒さの朝にあって、何よりのご馳走に過ぎるだろう。

 食い気に逸るユンゲが身を乗り出すようにしたのなら、「……もうちょっとですからね」と軽く窘めるような優しい声音に迎えられてしまう。

 見つめた先には、冴えた銀髪が衆目を集めるだろう、すらりとした痩身の麗人。

 慣れた手つきでスープを取り分けてくれるリンダの口許には、まるで赤ん坊をあやすような笑みが浮かんでいた。

 流石に摘まみ食いはしないよ、と小さく肩を竦めてみせるユンゲではあったが、至れり尽くせりで食事の配膳までしてもらっている現状では、そうした扱いも甘んじて受け入れるべきなのかも知れない。

「――後は、最後の仕上げだけですね」

「そうそう、これで完成だよ」

 横合いからリンダの言葉を引き取ったキーファの手には、小振りな調理用のナイフと瓶詰めの真っ白なバター。

 仕上げ、という単語に軽い疑問符を浮かべたユンゲに応えて、キーファが得意気な笑みを返してみせると、後ろ手に括られる栗色の髪が今朝も楽しそうに弾んでいた。

 視線を誘うように差し込まれた器用なナイフの刃先が、欠片に切り取ったバターを温かな琥珀色のスープに浮かべていく。

 思わず頬が緩くなってしまうほどの熱に、とろりと形を崩しながら溶け込むバターの香りが、どこか甘い悪戯のようにユンゲの鼻孔をくすぐる。

 無意識の内に生唾を飲み込んでしまったユンゲの姿を目に止めて、面白そうに顔を見合わせたキーファとリンダが、小さく吹き出している気配を感じても全く気にはならなかった。

「おぉ、これは美味そうだな」

「……ふふっ、それでは食事にしましょうか」

 卓上を整え終えたマリーが、口許に軽く手を当てながら微笑みをくれる。

 まるっきり聞き分けのない子に接するような態度だったが、それも仕方のないことだろう。

 そうして、待ち切れない思いのままに席へと着いたユンゲは、「……では、いっただっきまーす!」と高らかに声を張り上げるのだった。

 

 *

 

「ふぅ……、食った食ったー!」

 すっかりと満たされた腹を叩いてみせながら、ユンゲは感嘆の声をもらした。

 これから力仕事が待っていることを思えば、いつにも増して食べ過ぎてしまった気もするが、それも今更だろう。

「――ていうか、朝なのに相変わらずの凄い食欲だよね」

 こちらの少し先を跳ねるように歩いていたキーファが振り返り、くすくすと笑いを堪えるように見上げてくる。

「あのスープ、自信作だったけど……朝だけで食べ切っちゃうとは思ってなかったよ」

 呆れとも驚きともつかないキーファの声音に軽く肩を竦めつつ、ユンゲは小柄な肩に手を置いて笑いかける。

「それだけ美味しかった、ってことだよ。ありがとな」

 毎食でも食べたいくらいだ、と素直な気持ちを口にしたのなら、気を良くしてくれた様子のキーファが、首許に巻きつけた若草色のロングマフラーを冷たい風に靡かせながら、「えっへん!」とわざとらしく胸を張ってみせた。

 吐いた息が瞬く間に凍ってしまうような冬空の下にあっても、彼女が持つ生来の元気印は少しも失われることがないらしい。

 野伏〈レンジャー〉としての働きを邪魔しないように、と普段から厚着を好まない性格のキーファなので、今朝の衣服も薄手のシャツに革製の短外套を羽織っているだけだ。

 切り詰めたジーンズパンツから健康的な素足を惜しげもなく晒らす身軽な姿は、目に眩しいながらも見ているだけで寒々しい。

 辛うじて防寒用と呼べるアイテムは、帰還前に帝都アーウィンタールの市場で買い求めたマフラーくらいだが――先ほどから吹きつけてくる風の冷たさに、思わず身体を強張らせてしまうユンゲの感覚からすれば――どれほどの役に立っているのかは疑わしいところだった。

 エ・ランテルからカルネ村までの道中、白雪に覆われたアゼルリシア山脈を遠くに眺めながら、「寒い場所は得意じゃない」と苦笑いをしていたマリーとは対照的な振る舞いだが、同じエルフという種族であっても、個人の感覚を一括りにできるものではないのだろう。

 そんな取り止めのない考えを浮かべつつも、溌剌としたキーファの笑みに当てられたユンゲの口許は、無意識の内に綻んでしまう。

「……ん、どうしたの?」

 不思議そうに見上げてくる野葡萄色の視線に、「いや、なんでもないよ」と小さくかぶりを振ってみせ、努めて軽い調子で言葉を重ねる。

「――たくさん食べた分は、しっかり働かないと……ってな」

 気持ちを切り替えるように巡らせた視線の先には、半ばまで焼け落ちてしまった物見櫓の残骸。

 方々に突き立ったままとなっている無数の矢と、一部の爛れたように黒々と染まる地面の色は、無慈悲な凶行による爪痕だった。

 本来であれば庇護者であるはずのリ・エスティーゼ王国から、一方的な裏切りを受けてしまったカルネ村の住人たちの落胆や徒労の大きさは、察して余りあるものではあったが――それでも、損傷の目立つ煤けた正面門の向こうには、急拵えながら既に木柵が設けられている。

 苛酷に過ぎる境遇へと追い込まれても、再び立ち上がろうと村の仲間たちに奮起を促すエンリやンフィーレアたちの姿を間近にしたのなら、ユンゲたち“翠の旋風”が復興に協力を申し出ない訳にはいかなかったのだ。

 

 底知れない実力を持つ、仮面の英雄“アインズ・ウール・ゴウン”の活躍によって王国軍を退け、辛くも窮地を脱することのできたカルネ村ではあったが、皆の頭を悩ませる課題は山積している。

 撤退する際にも激昂していたバルブロの様子を思い返せば、いつ報復のために軍隊を取って返してくるとも知れない危うい印象は拭えなかった。

 悲観的に状況を鑑みれば、大きく破損した正面門や囲塀の修復は急務であり、負傷した村人やゴブリンたちを治療するために在庫が尽きてしまった、ポーション類の補充も欠かせないだろう。

 エンリやンフィーレアと役回りを相談した結果、前者には材木の伐採や運搬などの力仕事要員としてユンゲが参加し、後者は薬草関係に明るい森祭司〈ドルイド〉のマリーと、前衛役にも長ける神官〈クレリック〉のリンダが受け持つことに決まっている。今頃の二人は、薬師であるンフィーレアの護衛を兼ねながら、冬季には貴重となる効能の高い薬草を求めて、一緒にトブの大森林を探し回ってくれているはずだ。

 そして、もう一つの無視できない村の問題として、春先の襲撃事件から尾を引く備蓄食糧の不足が挙げられる。

 多くの働き手を失っていたこともあり、ラール麦などの収穫が儘ならなかったカルネ村は、ただでさえ厳冬を凌ぐのには不安な事情を抱えていた。

 一朝一夕に農作物を実らせる魔法のような方法があるはずもなく、不足してしまうであろう諸々の物資を調達するためには、近隣の都市へと赴かなければならなかったのだが――、拠り所となるはずのエ・ランテルは、今や敵対関係にあるリ・エスティーゼ王家の直轄領という有り様なのだ。

 孤立無援な苦境へと立たされたカルネ村に、予定外の滞在となるユンゲたちの食い扶持を賄う余裕がないことは明白だった。

 大飯食らいに過ぎるハーフエルフの存在を考慮したのなら、尚更といったところか。

 一方で、ユンゲたちが荷馬車に積み込んできた食材は、もう数日の間には底を尽きてしまうだろう。

 そうした現状を踏まえれば、朝食時における自身の振る舞いは、決して褒められたものではないのものの――、

「まぁ、こっちの仕事は任せてよ。おっきな獲物を捕まえてくるからさ!」

 再び跳ねるように歩き始めたキーファが、背中の短弓に手をかけながら人懐っこい素振りのままに傍らへと並んでくれる。

 こちらの内心が見透かされているような反応に、小さく苦笑いを返しつつも嫌な気はしない。

 ちょっとした気恥ずかしさを咳払いで誤魔化し、ユンゲは軽い調子で言葉を投げかける。

「頼りにしてるよ。前に帝都で食べた猪肉の燻製とかは、かなり好みだったからな」

「おっけー、この森なら立派なイノシシも見つかると思うから狙ってみるね」

 事もなげに言い放ち、キーファが小さな握り拳を掲げてみせた。

 上目遣いに向けられるのは、何らかの意図を感じさせる野葡萄色の視線。

 眼前に突き出された拳とキーファの表情を交互に見遣り、ようやくとユンゲは意味合いを察する。

 少しだけ照れるような思いで拳を作って応じ、「あぁ、よろしく頼む」と互いの持ち上げた手を軽く打ち合わせれば、麗らかな陽だまりに大輪の花が咲いていった。

 屈託のない笑顔を見せてくれるキーファの様子に、そっと胸を撫で下ろしたユンゲは、余計な世話かと思いつつも言葉を重ねる。

「……危ないと感じたら、無理はしないでくれよ」

「大丈夫! ゴブリンさんたちと一緒だし、期待してて良いよ!」

 こちらの心配は杞憂だとばかりに意気込む元気な姿に破顔し、ユンゲは小さく肩を竦めてみせながら高い塀の向こうへと目を向けた。

 すっかりと枝葉を落とし、冬枯れの様相となったトブの大森林ではあるが、その豊かな恵みまで失われてしまったということではない。

 大型のシカやイノシシ、毛皮も重宝されるテンやアナウサギなど数多くの野生動物は今の季節にも棲息しているのだ。

 カルネ村の窮状を打開する食料確保の手段として、手っ取り早い“狩り”という選択がなされたのは、自然の成り行きであった。

 エンリを慕うゴブリンたちの狩りに協力して、いくらかの分け前を得られたのなら、滞在中の問題は概ね解消できるはずだ。

 未踏の深部はともかく、森の浅い地域には強大なモンスターが現れることもないらしいので、キーファの言うように不安を覚える必要もないのだろう。

 大きく腕を振りながら歩いていく元気な後ろ姿を目で追いつつ、ユンゲは気持ちを落ち着けるようにゆっくりと息を吸い込んだ。

 特定の国家に帰属しない冒険者組合が、独立組織として掲げる“国家間の政治や戦争に関わらない”という基本理念に照らせば、こうしたユンゲたちの振る舞いは許されない背信行為と見做されるのかも知れない。

「人々の剣となり、盾となり……か」

 どこか言い訳めいた言葉を口にして、ユンゲは少しだけ寂しくなった首許に手を伸ばした。

 ふと見上げた空は、曇りのない群青――朝方に鮮やかだった向日葵色の紗幕はいつしか取り払われ、峻険なアゼルリシア山脈を越えて遥かな彼方まで広がっている。

「……とりあえず、なるようにしかならないよな」

 呟きとともにこぼれた溜め息が白く曇り、ふわりと舞うように風の中へと霧散していく。

 そうして、小さくかぶりを振ったユンゲは、軽く伸びをしてから自身を鼓舞するように声を張り上げるのだった。

「――まぁ、頑張りますか!」

 

 




長らくお待たせいたしました。
相変わらずの不定期更新となりますが、お楽しみいただけたのなら嬉しいです。
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