オーバーロード 新参プレイヤーの冒険譚   作:Esche

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オバマスでの設定を参考にしています。


(45)狩猟

 背後に跳び退いたユンゲの眼前、横薙ぎに振るわれた逞しい枝角の一撃が、激しい風切り音を残して過ぎていった。

「――っとと!」

 幾重にも張り出した大樹の根に危うく足を取られかけ、蹈鞴を踏みながらも身を投げ出して再びの跳躍。逃げ遅れた長外套の裾を掠めるように、鋭い蹄脚の追撃が突き立てられた。

 深々と大地を抉ってみせた異形の主――獰猛で知られる“怪鳥”ペリュトンが、その巨躯を震わせて憤然と雄叫びを上げる。

 こちらを威圧するように見下ろしてくる血走った赤い肉食獣の瞳は、獲物であるユンゲを仕留め損なったことに苛立っているのかも知れない。

「へー、こんなに大きな野生動物がいるんだなぁ」

 一般の冒険者ならば死を覚悟するほどの怒気に当てられても、他事に気を取られているユンゲには相手の様子を観察するだけの余裕があった。

 立派な牡鹿の角を有する頭と強靭そうな逞しい脚周り、“怪鳥”の異名は背から伸びる巨大な猛禽類の翼が由来なのだろう。普段は高山に生息しており、人目に触れる機会はほとんどないらしいが、獲物の少ない季節には稀に麓まで降りてくることもあるとのことだ。

 事前に得ていた情報を思い出しながら、ユンゲの興味を何より駆り立てるのは、ペリュトンの肉身が非常に美味だという噂の真偽だった。

 その話題を初めて耳にしたのは、帝都アーウィンタールの市場を巡っていたときのことだろうか。

 未発見だった遺跡調査の護衛という、“漆黒”のモモンから誘われた依頼に同行する許可を求めて、帝国魔法学院のフールーダ・パラダインを訪問した帰路での出来事――散々に憔悴させられたユンゲたちは、鬱憤晴らしに出店の料理や酒類を片っ端から買い漁ったことがある。

 その際に聞き及んだ珍しい食材の一つに、“怪鳥”ペリュトンの名前が挙げられた。

 教えてくれた串焼き屋台の店主も、まだ食べたことがないという幻の獣肉は、兎にも角にも市場に出回ることが滅多にないらしい。そもそもの生息域である山岳地帯が人間の身には過酷な環境であることに加えて、モンスターにも比肩する凶暴な気性から戦闘行為に不慣れな猟師では手も足も出ないために、荒事の専門家たる冒険者チームを編成して狩猟に挑むのが定石とのことだった。

 しかし、当然ながら腕利きの冒険者を雇うためには、相応に高額な費用が必要となってしまう。

 そうした事情から、余程の金に飽かした好事家でもなければ口にすることのできない希少な食材として、ペリュトンの獣肉は市井の人々から羨望されているのだろう。

 その未知なる味を自らの舌で確かめたいと考えるにつけ、ユンゲは期待に口許が緩みそうになってしまうのを自覚する。

 逸る気持ちを引き締めるように軽く頬を張り、やおらと見上げた視線の先――前脚の蹄から肩辺りまでの体高で既に二メートルはあるだろうか。雄々しい枝角の先まで含めれば五メートルにも届きそうな大型の捕食者が、茶褐色の毛並みを逆立てながら頻りに威嚇の唸り声を向けてくるのだった。

 

 *

 

 頭上を覆い尽くす曇天に時折の雪が散らつき始め、一層と朝晩の冷え込みが厳しくなった頃――、カルネ村の逼迫した食糧問題に取り組んでいるゴブリンの狩猟班が、貴重な獲物とともに一つの情報を持ち帰った。

「そんなに、ヤバそうな相手なのか?」

「うーん、状況次第なんだけど……多分、ユンゲの協力が必要になると思う」

 こちらの何気ない問いかけに、“翠の旋風”の野伏〈レンジャー〉として狩りに同行してもらっていたキーファが、小さく肩を竦めてみせる。

 森の方へと向けられた横顔には浮かない影が過ぎり、後ろ手に括られたポニーテールまで心持ち元気がないような雰囲気だ。

 普段の快活なキーファの振る舞いとの差異に、ユンゲは少しだけ慎重に口を開く。

「……俺は構わないけど、具体的に何をしたら良いんだ?」

「えーっと……これから相談するみたいだから、とりあえずユンゲも一緒にきてよ」

 口許に指先を当てた考える素振りから、不意にこちらの手を取ったキーファに促されるように、ユンゲは慌てて椅子代わりにしていた丸木から立ち上がるのだった。

 

「――以前は、“森の賢王”がこの周辺を縄張りにしていたので、それほど問題にはならなかったのですが……」

「森の中で何かしら勢力図に変化が起きているのなら、隣接するカルネ村にも影響があるかも知れない……って、ことですか」

 説明役を買ってくれたンフィーレアの気詰まる様子に、ユンゲは静かに言葉を引き取った。

 トブの大森林の奥地から“聞き慣れない唸り声が響いてくる”という狩猟班からの不穏な報告は、先に集まっていた村人たちの焦燥を駆り立てるには充分であった。

 本来なら庇護者であるはずのリ・エスティーゼ王国から裏切られ、既に疲弊し切っている辺境の開拓村に、更なる懸念を抱えるような事態は些かも酷に過ぎるだろう。

 アインズ・ウール・ゴウンの御使いであるルプスレギナからは、心配ないという旨を告げられてはいるが、いつ再び王国軍が攻め寄せてこないとも知れない。厚意により借り受けたゴーレムたちの休みない働きもあって、村の四方を囲う塀や門の整備は急速に進んでいるものの、危急の事態には森へと逃げ込む算段をしている状況下において、未知の脅威にまで怯えなければならないということなのだ。

 思わずこぼれそうになる溜め息を堪えつつ、詰めかけた村人たちの蒼白な顔を見回し、ユンゲは傍らに立つキーファへと目配せを向けた。

 少しばかりの憂いを孕んだ野葡萄色の視線が、こちらを縋るように見上げてくる。

 その微かに震える肩に手を置き、静かに一つ頷きを返した。

 可愛らしい薄紅色の口許に浮かんだ微笑みを確かめたユンゲは、不安そうに顔を見合わせていたエンリとンフィーレアに向き直る。

「……なら、俺たち“翠の旋風”にご依頼ください。ぱぱっと森の様子を探ってきますよ」

 そうして、特に気負う素振りもない口調で言い差し、ユンゲは軽く戯けるように肩を竦めてみせた。

 

 相談の場に参加していなかったマリーとリンダに事情を伝えた翌日、軽めの朝食を済ませたユンゲとキーファは、“翠の旋風”への依頼を携えてトブの大森林に足を踏み入れる。

 報告にあった唸り声の響いてきた方角を目指して、落ち葉の降り積もる道ともつかない樹々の合間を奥地へと分け入っていけば、何かしらの異変が起きていることは明白だった。

 すっかりと冬枯れの様相を呈している森に、楽しげな鳥たちの囀りはなく、虫や獣たちも皆が息を潜めているかのように気配が感じられない。奇妙なほどの静けさに包まれた中では、思い出したように吹きつける風が梢枝を揺らし、最後まで抗っていた数枚の残り葉を散らしていくばかりだ。

「……やけに静かだな」

 不意の遭遇に備えて先を進んでいたユンゲは、周囲に目を配りながら背後を振り返った。

「そうだね……でも、森全体が酷く怯えてるような感じがする。この先に、間違いなくいると思う」

 やや緊張した面持ちで額の汗を拭いつつ、こちらに一瞥をくれたキーファが、ふと不思議そうに小首を傾げてみせた。

「……なんだか、ユンゲは嬉しそうだね」

「――ん? だって、キーファの予想通りなら“幻の高級食材”にありつけるかも知れないんだろ」

 こんな機会なら楽しみにもなるさ、と言葉を続けるユンゲの頬は無意識の内に緩んでしまう。

 奥地を目指して駆け出したくなる思いは何とか堪えているものの、急くような鼓動の高まりは無視できそうにもない。

「えーと、可能性の話だし……そもそも危険性を伝えたかったんだけどなぁ」

 多分に諦めの含まれたキーファの声音に肩を竦めることで応えたユンゲは、腰の剣帯に留めたバスタードソードの柄頭を指先で軽く弾きつつ、「まぁ、なるようになるさ」と気楽に笑い返す。

 決して自身の力量に慢心しているつもりはないものの、過度に不安視するほどの状況ではないと感じてしまうのが、偽らないユンゲの本音だった。

 やれやれとばかりに肩を竦めてみせたキーファからは、わざとらしい溜め息を吐かれてしまうが今更だろう。

「……噂話を聞く分には、それなりに厄介そうな相手ではあるけど、“森の賢王”よりも弱い相手なら心配ないよ」

 少しだけ言い訳めいた思いとともに、やおらとユンゲが目線を持ち上げれば、物寂しい樹々の梢を抑えつけるような低い空に、鈍色の暗い積雲が押し迫っていた。

 雨か雪でも降り始める先触れだろうか――と、

「……でも、本当に唸り声の主が噂のペリュトンなのかは――」

 分からないよ、と言いかけたキーファの台詞を軽く手を振って遮り、ユンゲは口許を綻ばせた。

「――いや、キーファの予想が大当たりだったみたいだぜ」

 短く言い差し、冴えない空模様の一点に向けて指先を掲げてみせる。

 灰色の煤けた画板を這うように飛び交う、黒い影たちの群がり――無詠唱で紡いだ〈クレアボヤンス/千里眼〉によって強化されたユンゲの視界は、“同じく高山を生息域としている”はずの禿鷲〈ヴァルチャー〉の姿をはっきりと知覚していた。

 

 *

 

 先の席でンフィーレアの口から名前の挙げられた“森の賢王”とは、“漆黒の英雄”モモンの騎乗魔獣として、ユンゲも見知っているハムスケの異名であり、かつてはトブの大森林における頂点捕食者として君臨していたらしい。

 そうした事情を踏まえたのなら、モモンに連れられて森を去った支配者の不在が、今回の事態を引き起こしている要因だと考えられた。――つまりは、空白地帯となった領域を巡っての縄張り争いであり、これまでは“森の賢王”を相手に後込みしていた連中が、新たな棲み家を手に入れようとしている最中の騒動ということなのだろう。

 現時点での影響は知れないものの、仮に人間を襲うような猛獣やモンスターの類いが近隣に居着いてしまった場合、カルネ村を取り巻く状況が一層と深刻になることは避けられない。

「――降り懸かりそうな火の粉は、しっかり払わないとなっ!」

 言い捨て様に横倒しの木陰へと身を躱せば、巨躯の猛進に巻き上げられた突風が、ユンゲの前髪を強く吹き乱した。

 大地を揺るがさんばかりの衝撃と破砕音――、激突の勢いに傾いでいく大樹の幹から枝角を引き抜き、荒々しく振り返ったのは、赤い血のような憤怒に燃え立つ眼差し。取るに足らないはずの小さな存在に、先刻から振り回され続けた“怪鳥” ペリュトンは、その獰猛な鼻先から大量の真っ白な呼気を吐き出しつつ、戸惑いを糊塗するように威嚇の低い唸り声を上げていた。

 生身の人間であれば、重なる疲労に肩で息をしているような具合だろうか。

 何度となく繰り返した突進が、獲物であるはずのユンゲには届かず、今も飄々とした姿勢を崩さないままに相手をされている。

 そうした苦境にありながらも撤退を良しとしないのは、トブの大森林における新しい支配者たらんとする、獣なりの矜恃なのかも知れない。

 しかしながら、彼我の余裕を鑑みて“どちらが本当の捕食者であるのか”を判断できなかったことは、弱肉強食に生きる野生動物として致命的であった。

 

 強大な魔獣として市井の人々から畏怖され、嘗てのペリュトンも敵うことのなかった“森の賢王”であっても、軍馬よりも大きな規格外の体躯に目を瞑れば、妙に人懐っこい性格も相俟って、ユンゲの感覚では可愛らしい愛玩動物〈ハムスター〉となってしまう。

 モモンたち“漆黒”との交流をする中で、何故か武人気質なハムスケから手合わせを請われたこともあるのだが、率直な感想として剣を抜くまでもない相手だったのだ。

「まぁ、武技を使えたり、視界の外から飛んでくる尻尾は厄介だったけど――」

 もっと精進せねばならないでござる、と悔しがっていた魔獣の愛らしい仕草を思い出して、ユンゲは口許を綻ばせる。

 主人であるモモンの役に立ちたいからと奮闘する姿は、どこか忠犬のような印象すらあった。

(……そういや、モモンさんが武技を使うところは見たことないな)

 冒険者の最高位たるアダマンタイト級を冠するモモンからしてみれば、現状のユンゲも手合わせで本気を出すまでもない相手に過ぎないのだろう。

 遥かな高みを思いながら何気なく頭上を仰いでも、鉛色の曇天は何も映してはくれない。

 思わずと溜め息がこぼれかけ――、不意の地鳴りがユンゲの耳朶を打った。

 こちらの気の緩みを見止めてか、向かい合っていたペリュトンが再びの突進。それでも、やや勢いが減じた感のある襲歩に、軽く眉を顰めるようにしたユンゲは、落ち着いて小さく身を屈めた。

 這うような姿勢から地面を強く蹴り出し、迫りくる逞しい四肢の隙間を跳ぶように駆け抜ける。

 身を捩って素早く反転すれば、目の前で標的を見失ったらしいペリュトンが、蹈鞴を踏むように脚元をふらつかせていた。

「……やっぱり、ハムスケよりも弱いみたいだな」

 視界の端で力なく垂れた茶褐色の尾を見遣り、ユンゲは一つ頷いて周囲の様子へと視線を巡らせた。

 暴れ回っていたペリュトンを宛ら闘牛士のようにいなし続けた結果、辺りの樹々は散々に薙ぎ倒されており、森の中にぽっかりと開けた動きやすい空間が広がっている。

 強力な捕食者たるペリュトンのおこぼれを狙うように上空を飛び交っていたヴァルチャーの群れは、接近前に範囲を拡大した〈エレクトロ・スフィア/電撃球〉の初撃で追い散らしており、その後もキーファが遠巻きに警戒してくれているので気にかける必要もないだろう。

 

 万一の懸念が取り除かれたのなら、後事は“幻”とまで呼ばれるペリュトンの獣肉をカルネ村まで持ち帰り、根を詰め続けているエンリやンフィーレアたちに労いを込めて振る舞ってやれば良いだけだ。

 村人総出でも食べ切れそうにないほどのご馳走を眼前にして、ユンゲは無意識の内に舌舐めずりをしてしまう。

「でも、この場で仕留めるにもなぁ……」

 ゴブリンや村人たちの言葉を思い起こしたのなら、狩猟後の血抜き処理や捌き方などの手順次第で、獲物の食味は大きく変容してしまうらしい。

 残念ながら、そうした知識や技術を持ち合わせないユンゲなので、やはり専門家に指示を仰ぐのが最善だろう。希少な食材を味わうことができる、またとない機会を自身の不手際で台無しにする訳にはいかないのだ。

 時間との勝負になるはずなので、カルネ村の付近まで誘導してから仕留める方法も考えられそうだが――、「……気絶させて生け捕りにするか」ぽつりと呟く。

 下手な真似をして道中に危険が及ぶような事態は、絶対に避けなければならない。

 ふと顔を持ち上げてみれば、短弓を手に周囲を警戒しながらも、こちらに視線をくれるキーファの横顔。この身に余るほどの信頼を寄せてくれながらも、やはり不安を拭い切れないらしい健気な様子に軽く肩を竦めてみせたユンゲは、「心配ないよ」と穏やかに口調で笑いかけた。

 そうして、ようやくとこちらに向き直った“怪鳥”ペリュトンに対峙し、命をいただくことに感謝を込めた合掌とともに小さく頭を下げる。

 樹々の根ごとに掘り返された腐葉土の濃い薫りが鼻腔をくすぐれば、冷たい吹き下ろしの寒風に横倒しの枝と枝とがさざめき、どこか軽やかな旋律を奏でていた。

 焦れるような時間の流れ――業を煮やしたペリュトンが駆け出し、ユンゲもまた応じる気持ちで歩みを進める。

 見上げるほどの高さから、突進の勢いに任せて振り下ろされる枝角の一撃。

 大樹さえも粉砕する大振りを今度は避けることなく、ユンゲは正面から両腕を張って受け止める。

 超重量の鉄槌に足元の地面が沈み、衝撃の余波が周囲の幹枝を轟々と震わせた。

 鼓膜を打った小さな悲鳴――それでも、ユンゲの姿勢が崩れることはない。

 力の拮抗が軋むように耳障りな音を響かせ、血走ったペリュトンの双眸が驚愕に見開かれていく。

 これまでの生涯において、臆病者に自慢の突進が避けられることはあっても、真っ向から対抗された経験などなかったに違いない。

 猛進を苦もなく受け止めた右手を離し、ユンゲは吹き乱れた髪を撫でつけるようにかき上げた。

 理解の及ばない事象を前に戦慄き、咄嗟に身を退こうとするペリュトンの動きを残りの左腕だけで制止し、自身の無事を誇示するように不敵な笑みを浮かべてみせる。

「お互いの力量を見極められなきゃ、“賢王”にはなれないぞ」

 強き御仁と戦ってみたいのでござる、と手合わせを懇願してきた“前王”を思い出しながら短く言い差したユンゲは、右手を再び枝角に添えて静かに全身へと気力を漲らせた。

 握り締める力を一層と強めながら引き寄せ、無詠唱化した〈ミドル・ストレングス/中級筋力増大〉を発動する。

 大地に深く突き立った両の脚を起点に、力任せに背筋を反らせたならば、ペリュトンの逞しい前肢と後肢が順を追うように地面を離れて逆立ち、巌のような巨躯が長大な円弧の軌跡を描いていく。

 瞬く間に上昇から落下へ。半身を捻るとともにユンゲは左右の枝角を持ち替え、振り子の勢いに乗せてペリュトンを投げ放つ。

 先ほどに倍する轟音と衝撃――冗談のように軽々と宙を舞った巨大に過ぎる体躯が、散乱する横倒しの大樹を諸共に薙ぎ払いながら叩き潰した。

 耳に喧しいほどの破壊の残響に、森全体が息を呑んだような静けさが続き――、

「…………あっ、やばいか!?」

 全く起き上がってくる様子のないペリュトンを見遣り、ユンゲは慌てて傍へと駆け寄る。

 結構な森の奥地まで分け入っているので、この場で仕留めてしまったのなら、不本意な結果になりかねない。

 だらりと伸びきったペリュトンの喉元が、弱々しく上下するのを見止めたユンゲは、焦りながらも右手を振って合図を送り、呆気に取られていたらしいキーファに呼びかける。

「ちょっと拙いかも知れない、急いでカルネ村近くの河原に運ぼう!」

 そう勢い込んで告げたユンゲに、木陰から足早に走り寄ってくれたキーファは、何とも言えない表情を浮かべながらも、「分かったよ!」と首肯してくれるのだった。

 

 

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