仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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第十話 「機動六課 始まりの日」

チームデンライナーを始めとする異世界の仮面ライダー達がミッドチルダの大地に足を踏み入れてから約二週間が経過した。

その間にはスバル・ナカジマ、ティアナ・ランスターは高町なのはの紹介状を手にして時空管理局本局で武装隊の特別講習を受けて、再試験を受験し見事に魔導師ランクBへ

と昇格した。

野上良太郎達もただボーっとしているのではなく、『サイキョウニシテサイアクナルモノ』に該当するような事を過去の新聞やゴシップ記事などで徹底的に探っていた。

だが、ミッドチルダの文字を良太郎達が読めるはずもないのでフェイト・T・ハラオウンに頼んで辞書を貸してもらい、訳しながらの作業なので相当に時間がかかったのは

言うまでもないことだろう。

八神はやてはAゼロノスから送られてきた設計図を本局第四技術部主任であるマリエル・アテンザに見せた。

マリエルはその設計図の精巧さに驚愕し、同時に欠点を敢えて消していなかった事に疑念を感じていた。

 

 

そして古代遺失物管理部『機動六課』発足の日が来た。

 

 

機動六課の寮の一室では良太郎が目覚まし時計を停めてから、目をこすりながら欠伸をしてベッドからゆっくりと起き上がろうとしていた。

洗面所まで個室で別れているのはありがたい。

(さすがに二週間近くも生活してると、慣れてくるね)

当初は『寮』の一室というよりも『ホテル』の一室ではないかと疑ったくらいだ。

歯磨きをしてうがいをする。

ガラガラガラと喉元を鳴らしながら、ペッと口に含んでいた水を吐く。

三日前にナオミから貰った服へと着替えて広間へと向かう。

この寮は殆ど寝るか寛ぐかしかなく、食堂はない。

そのため現在、彼等は寮母のアイナ・トライトンの厚意に甘えて広間で食事を取っているのだ。

「おはようございます。アイナさん」

「おはようございます。あら、今日は私服ではないんですね」

アイナは笑顔で挨拶を返し、良太郎の服装の違いに目を大きく開く。

「はい。今日は機動六課発足の日だと聞いていますので一応正装しておこうと思いまして……」

良太郎の服装はいつもの私服とは違い、上下黒色のスーツだった。

「よくお似合いですよ」

「ありがとうございます」

お世辞だろうけど、言ってくれるのは嬉しいので素直に笑みを浮かべる。

「オース」

「モーニン♪」

「おはようさん」

「おはよー♪」

「おはようございます」

モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、コハナも部屋から出てきて広間へと入ってきた。

ちなみにコハナの服装は良太郎と同様に私服ではなく、正装---かつて『デンライナー署』を発足していた際に着ていた女性用のスーツだ。

「おはようございます。みなさん」

アイナが朝食の準備をしながら、挨拶を返す。

本日の朝食はご飯と味噌汁とだし巻き卵と漬物という和風だった。

ミッドチルダの料理文化は日本と同じらしく、洋風もあれば中華もあるし深いところまで探ればマイナーなものまであるとのことだ。

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

全員が合掌して箸を手にして、食事を始める。

「ここで食事を取るのも今日が最後かもしれませんね」

アイナは味噌汁をすすってから言う。

「え?どうしてですか?」

コハナが何故そのような事を言うのかわからない。

「本来この寮はあくまで就寝と遊興が目的の施設で、食事は隊舎の食堂がありますからそちらで取るのが本来の姿なんですよ」

「夜に腹減ったらどうなるんだよ?寮の母ちゃん」

アイナが寮の存在目的を話すと疑問に感じたモモタロスが訊ねる。

「私が起きている間でしたらお夜食を作る事は出来ますけど、それよりも後となると自炊していただくしかありませんね」

アイナの回答に「うえー」と唸りながらも納得していた。

「僕、自分で作るの苦手なのに~」

「オメェ、自分で作れねぇじゃねぇかよ」

リュウタロスの呟きにモモタロスはサラリと指摘する。

その間、二体の手にする箸は全く止まっていなかった。

「それにしても僕達って機動六課で何するんだろうね」

ウラタロスが尤もな事を告げる。

天災的存在となっているイマジンに仕事を回してくれるとは到底思えないという意味が含まれてもいる。

「やる事なかったら寝るか修行しかあらへんな」

キンタロスは食後のお茶を飲みながら自分にできることを言う。

「ランスターさんの言ってた事が本当ならアンタ達って時空管理局では相当肩身がせまいってことになるわよね」

コハナは空になった食器を積みながら、モモタロス達の扱いを言う。

「んなもん気にしてられっかよ。俺達は俺達だぜ」

モモタロスは特に気にする様子もなく、椅子にもたれて天井を仰いでいた。

「みんなだけじゃないよ。僕や侑斗も下手をすればバケモノ扱いされるかもしれないね……」

良太郎は自分も例外ではないと考えている。

スバルやティアナの前で変身したライナー電王は主人格が自分であるため、『仮面ライダーに変身する人間』と認識されるがそれ以外の電王に変身すると『イマジンに肉体を

憑依させて戦う命知らずの人間』という認識が飛び交うのではと予想してしまう。

(それでもやっていくしかないんだけどね)

上着のポケットに入っているパスを擦る。

それから十分後に全員が機動六課の隊舎へと向かった。

 

 

時空管理局遺失物対策部隊機動六課隊舎。

部隊長オフィスには現在三人と一体がいた。

桜井侑斗、デネブ、八神はやて、リィンである。

はやては自身のデスクを人差し指でなぞっていた。

その仕種はまるで昼ドラに出てくる和服の似合いそうな姑のようだと侑斗は思ったが、口には出さなかった。

デネブと侑斗は来客応対のソファに寝転がっていた。

「侑斗さん。折角決ってるんやから皺になるようなことをしたらあかんで」

はやては椅子に腰掛けながら、侑斗に注意する。

「八神の言うとおりだ侑斗。スーツはクリーニング屋に依頼しないとキチンとならない」

対面のソファで腰掛けているデネブが家庭的なことで侑斗にダメ出しする。

「あーったく、お前等俺の保護者かよ?」

寝転がっていた侑斗は分が悪いと判断して起き上がる。

「侑斗さんがだらしないから私も心を鬼にして言ってるんやで」

はやての言葉を耳に入れながら、侑斗は彼女の顔を見る。

その表情は険しいものではなく、嬉しそうな笑みだ。

「あーそーですかー」

侑斗は右から左へと聞き流した。

侑斗の服装はスーツだが、上下が白でシャツが黒色というどうみてもサラリーマンが着そうにないものだった。

ネクタイは銀色であり、侑斗が着ていると充分に様になっているものだった。

「うふふふ~♪」

先程から会話に参加していなかったリィンが専用の椅子をクルクルと回転させていた。

「このお部屋もやっと隊長室らしくなったですね~」

回転を止めて、はやてへと顔を向ける。

「うん。そうやね。リィンのデスクも丁度ええのが見つかってよかったなぁ」

はやてが笑顔で返した。

穏やかな雰囲気が流れる中、それを壊すかのようにビーッと音が鳴った。

 

隊長室から音が鳴り出す数十分前に遡る。

上下共に黒色のスーツで赤色のネクタイを締めている良太郎を始めとするチームデンライナーの面々が『機動六課』の隊舎に入ると、それだけで雰囲気が変わった。

どこか和気藹々としているような雰囲気が一瞬で張り詰めたものへと変わったのだ。

「何だか敵地に入り込んだような気分よね」

身体にヒシヒシと来る視線に耐えかねたコハナが良太郎に小声で言う。

「主な人達以外は僕達の事を知らないんだから警戒心を抱くのは仕方ないんだけどね」

良太郎も視線を感じながら、尤もな事を言う。

「あー鬱陶しいったらありゃしねぇぜ!」

モモタロスが苛立ちを表に出して、声を荒げるとそれだけで隊舎内にいる局員達は数歩後退していた。

「女の子の視線からはいくらでも受け入れるけど、男に視線向けられるのはいい気分じゃないね」

ウラタロスはおどけて言うが、モモタロス同様に視線を鬱陶しく感じていた。

「俺等別に取って食うわけやないんやけどなぁ」

キンタロスは右親指で首を捻る。

「僕達、怖くないんだよー」

リュウタロスがアピールするが、彼の容姿が災いしたのか余計に後退してしまった。

「あ、良太郎。みんな」

「みなさーん」

フェイトとなのはが一行を目にすると声をかけてくれた。

このやり取りだけで周囲はざわめき始める。

 

隊長二人と顔見知り!?

一体どんな関係!?

 

何て声が出始めていた。

(無理もないか……)

下手に何か言うと、確実にややこしくなるのはわかっているので沈黙を取る事にした。

「おはよう二人とも。昨日とは服が違うね」

良太郎は昨日とは違う二人の外観から会話に入る。

「うん。今日からだけどね」

「私達は、はやてちゃん。いえ八神部隊長の部下になるわけですから」

なのはは公私をハッキリさせておく為に幼馴染を名字で呼ぶ。

「それにしても僕達のことをどうするつもりなのかな?彼女もしかして口の巧いタイプ?」

ウラタロスの言う『彼女』とは、はやての事だ。

「え、ええ。はやてちゃんその……て呼ばれてますし……」

なのはが途中聞こえない声で何かを言った。

「なのはちゃん。何かボソッと言ったよ」

リュウタロスは、なのはが何かを言った事を追求しようとする。

「なのは。言いたい事は声をハッキリして言うた方がええで」

キンタロスはそれを悩みと思ったのか諭す。

「キンちゃん。なのはちゃんが小声で言った事ってオカンさんにとっては不名誉なことなんじゃないの?もしかしたら蔑称とか……」

ウラタロスはキンタロスの考えは違うと指摘しながら、独自の推測を打ち明ける。

「カメ。スケベで女好きのオメーがオカンのことを『オカン』って呼んでるぞ……。で、なのは。何なんだよ気になるじゃねぇか。教えろよ?」

モモタロスは珍しく女性をニックネームで呼んでるウラタロスに指摘しながら、なのはを問い詰める。

‏なのはとフェイトは左右を見回してから側に寄るように手招きする。

 

「はやてちゃん。実は上層部の人達から『タヌキ』って呼ばれてるんですよ」

 

それを耳にした途端にイマジン四体は笑い出し、良太郎とコハナは必死で笑いをこらえていた。

「はやても自分で言う時もあるけど、あまり言っちゃダメだよ。気にしてるからね」

フェイトが全員に忠告する。しかし、その表情は必死で笑いをこらえているから説得力は皆無に等しい。

「それで二人はこれから何処に?」

「隊長室。挨拶にね」

「なら僕も行っていい?お世話になる以上、挨拶はしとかないといけないしね」

「わかった。じゃ、ついてきて」

二人の引率で良太郎は隊長室へと向かった。

廊下を歩く中、三人は黙ったままかというとそうではなかった。

話題は良太郎の服装だ。

彼女達がいつも見ているのは私服姿であり、スーツのような正装は初めてだった。

「そのスーツは持ってきたんですか?」

「いや、三日前にナオミさんが『オーナーからです』って言って置いていったんだよ」

なのはの質問に良太郎は答える。

「多分、オーナーさんはこういう機会もあると見越して良太郎にくれたんだと思うよ」

フェイトはオーナーの意図を想像しながら言う。

「だと思うよ」

良太郎は首を縦に振った。

本当のオーナーの真意はわからない。

出会ってそれなりの月日は流れているが、それでもオーナーという人物はわからないという評価しか出来ないのだ。

「センスがいいという事だけはわかったよ。凄く似合ってる」

「あ、ありがとう……」

実は『服を着ている』というより『服に着られている』という感覚が強かった良太郎にしてみれば救いであった。

隊長室の前に立つと、二人は身形を整える。

良太郎は開いていた上着を閉じる。

「待って」

なのはが入ろうとするところをフェイトが止めた。

彼女の視線は正面の隊長室ではなく、隣の良太郎だった。

「ネクタイ曲がってるよ」

フェイトは良太郎の前に立って、ネクタイを直し始めた。

「あ、えと……」

「動かないで。ちゃんと直せなくなるよ」

「は、はい……」

自分と同年代の女の子とこんなに至近距離になったことはない。

ましてや身形を整えてくれるなんて事をしてもらった事もない。

(本当に十年経ってるんだ……)

もう彼女に合わせて自分がしゃがむ必要はないのだと痛感させられてしまう。

心臓の鼓動が激しくなっているのが、理解できた。

「はい。できたよ良太郎」

フェイトの声に良太郎はいつもより遅く反応した。

「あ、ああ。ありがとうフェイトちゃん」

礼を述べるが、心臓の鼓動は中々収まってくれない。

顔は赤いままだ。

「どうしたの?良太郎」

「え?」

反応が微妙に違っている事をフェイトが見逃すはずがない。

「顔赤いけど……」

赤くした原因を作った者が訊ねる。

「赤くなると思うよ。同年代の女の子にいきなりネクタイ整えられたりしたらさ……」

野上良太郎はこういうときはサラリと真実を打ち明けてしまう青年だ。

「!!」

そう告げられた時、今度はフェイトの顔が赤くなった。

その後、時間にしてニ、三分ほど「あうあう」とあたふたしているフェイトを良太郎となのはは、苦笑しながら見ていた。

 

ビーッと鳴った直後、隊長室のドアが開いた。

「はい。どうぞ」

はやてが入室許諾の返事をする。

「「「失礼します」」」

良太郎、フェイト、なのはの三人が入ってきた。

「お着替え終了やな。野上さんは正装なんやね」

はやてが立ち上がって、入室者達の服装を見る。

「お二人とも。素敵ですぅ」

リィンが両手を前に組んで、なのはとフェイトを称賛した。

「にゃははは」

「ありがとう。リィン」

なのはは笑い、フェイトは笑顔で礼の言葉を述べる。

「三人で同じ制服姿は中学校の時以来やね。何や懐かしい」

はやてとリィンが二人の側まで寄る。

「侑斗の服もオーナーから?」

「三日前にナオミさんが届けてくれたんだ」

女性陣が盛り上がっている中、良太郎が侑斗の身形を訊ね、デネブが答えてくれた。

「センスは悪くないと思うがな。何でこの服なんだよ……」

オーナーのセンスに文句はないが、選んだ服はどうみても裏社会《アンダーグラウンド》な方々が好んで着るようなスーツだった。

カタギの人間が着るようなものではない。

「似合ってるからいいじゃない」

良太郎はそのようなコメントしか出せなかった。

ソファにもたれていた侑斗も腰を上げてから、首をニ、三回左右に動かす。

ピキポキっと音が鳴る。

二人が世間話をしている中で、空気がガラリと変わった。

なのはとフェイトが敬礼しているからだ。

「本日ただいまより、高町なのは一等空尉」

「フェイト・T・ハラオウン執務官」

「両名とも機動六課に出向となります」

「どうぞよろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします」

はやてとリィンが敬礼で返した。

三人は敬礼が終わると同時に笑みを浮かべあっている。

職場上、やり慣れているとはいえ違和感のような物を感じたのかもしれない。

隊長室のドアがまたビーッと鳴った。

入ってきたのは眼鏡をかけた長身で陸士隊服を青年---グリフィス・ロウランだ。

 

グリフィスは、部隊長であるはやてに報告の為に訪れる事になった。

(今日からあの人達とも一緒に働くんだな……)

グリフィスにとって、なのはやフェイト達と働く事は光栄なことであり、自身を研鑽するにはもってこいだった。

だが二週間前に突如現れたあの連中が来てからは、そちらに意識が持っていかれたという自覚があった。

母であるレティ・ロウランやその友人であるリンディ・ハラオウンから聞かされていた。

彼は二つの事件に彼等が関わっている事も知っている。

だが、グリフィス自身は彼等とは一面識もなかった。

顔を見たくても、映像は一切消去されているためどんな顔なのかもわからずだった。

二週間前の事件の際に彼等は現れた。

自分達にとっては『恐怖の対象』をあっという間に倒したのだ。

そんなデタラメな存在と一つの部隊で行動するのだ。

不安もあるが、期待もあった。

(僕は、僕のできることをやるだけだ)

そう決意して隊長室へと踏み込む。

ドアがビーッとなって開いた。

「失礼します。高町一等空尉、テスタロッサ・ハラオウン執務官。ご無沙汰しています!」

予期せぬ来訪者を見て、グリフィスは敬礼する。

だが二人は首を傾げるという反応だった。

(あれ?)

もしかして自分が誰なのか理解していない?と思ってしまう。

「ええと……」

フェイトは思い出そうとする。

「もしかしてグリフィス君?」

なのはは、自信なく名を告げている。

(外見変わったかな?僕)

グリフィス自身、イメチェンをした憶えはないのだが二人が首を傾げるという事は何か変化があったという事になるのだろう。

ちらりと自分と同い年ぐらいのスーツを着用している青年二人とイマジン一体を見る。

「はい。グリフィス・ロウランです」

名前を知らない二人と一体のためにも自己紹介をすることにした。

「うわぁ。久しぶり!てゆうか凄く成長してる~」

なのはがグリフィスの成長振りに驚いていた。

「うん。前見たときはこんなちっちゃかったのに」

フェイトが当時のグリフィスの身長を右手で表現する。

(いや、そこまでは小さくないと思うんですけど……)

心の中でツッコミを入れてしまう。

「そ、その節は大変お世話になりました」

「グリフィスもここの部隊員なの?」

「はい」

フェイトの問いにグリフィスは短く答える。

「私の副官で交替部隊の責任者や」

「運営関係も色々と手伝ってくれているです~」

はやてとリィンがグリフィスのポジションを説明してくれた。

「お母さん---レティ提督はお元気?」

「はい。おかげさまで」

フェイトが実母---レティ・ロウランの近況を訊ねてきたので差し障りのない返答をした。

「あ。報告してもよろしいでしょうか?」

グリフィスは仕事顔に戻る。

「どうぞ」

はやては首を縦に振る。

「フォワード四名を始め機動六課部隊員、スタッフ。全員揃いました。今はロビーに集合、待機しています。あと……」

グリフィスは表情に難色を表してから、良太郎を見る。

「モモタロス達、何かやらかしました?」

毎度の事のように告げる彼の口調を聞き、グリフィスは心底頼もしく感じた。

「その……お連れの女の子に四名とも静められたんですけど、どのようにします?」

自分のもてる経験、知識をフルに回転させたのだがやはり妙案は出なかった。

「そのままにしておいて下さい。あと、皆さんの邪魔にならないように隅の方に寝かせておけば大丈夫です」

慣れているようにして良太郎が告げた。

「わかりました」

グリフィスは安堵の息を漏らしてから、快諾した。

「ほんなら、まずは部隊のみんなにご挨拶や」

はやての言葉に、なのは、フェイト、侑斗、デネブ、リィンは頷いた。

 

 

はやて達より早く、ロビーに足を踏み入れた良太郎はまずコハナによって気絶させられたイマジン四体を隅へと運んでいた。

この作業には侑斗とデネブも協力してくれた。

「あ、あの……」

「よろしければお手伝いしましょうか?」

そんな二人と一体に勇気を振り絞るかのような声が聞こえた。

自分よりも明らかに年下の少女と少年だった。

キャロ・ル・ルシエとエリオ・モンディアルだ。

「ん?もう片付いたからいいぞ。気を遣わせてすまないな」

侑斗が二人の申し出をありがたく思いながらも、既に事を済ませた後だ。

「コイツ等、かなりストレス溜まってるわね……」

「僕達の世界とは違うからね」

自分達の世界ではモモタロス達が素の姿でうろついていたとしても、あまりの常識外の存在であるため無関心を決め込む人間が多数であるためストレスに感じることはない。

だが、このミッドチルダを始めとする次元世界では違う。

好奇、敵意、恐怖といった感情が入り混じった目で見てくるのだ。

しかも何かしようと考えるだけで警戒心を剥き出しにする。

自分がモモタロス達でもストレスを感じるだろう。

「この状況。何とかしないとね……」

「そうね。このままじゃ私達が『サイキョウニシテサイアクナルモノ』になってしまうわね……」

コハナは自分達がその気になれば時空管理局を崩壊させる手がある事を知っているのでそのような事をいってしまう。

無論、冗談だが。

「野上。本当にモモタロス達は寝かせたままでいいのか?」

デネブがオロオロしながら訊ねてくる。

「起きたってまたストレスを感じるかもしれないからね。しばらく寝かせておいてあげて」

「わかった」

良太郎の頼みをデネブは聞き入れた。

「ノガミ……」

キャロが呟いた。

「あの、失礼ですけど貴方はノガミさんというのですか?」

「うん。そうだけど」

エリオが訊ねてきたので、良太郎は答える。

「あ、あの……もしかしてノガミリョウタロウさん、ですか?」

キャロが期待を込めた眼差しでこちらを見る。

「僕が野上良太郎だけど、君達は一体?面識はないはずだけど……」

「じ、自己紹介が遅れて失礼しました!エリオ・モンディアル三等陸士です!!」

「お、同じくキャロ・ル・ルシエ三等陸士であります!!」

二人は良太郎の前でピシッと敬礼した。

「ちょ、ちょっと!僕は管理局の人間じゃないから、敬礼なんてしなくてもいいって」

良太郎は二人にすぐにやめるように言う。

このような事をされるのは慣れていないのだ。

「野上。それにお前達も話があるなら後にしとけ。八神達が来たぞ」

談話をしていたロビーにいる全員は一瞬で沈黙した。

 

はやてが急場で作られた壇上に立った。

(コレ作った人はええ仕事してる)

内心、製作者に感謝の言葉を述べていた。

ちなみに壇上に立っているのは、はやてを含めて計四名だ。

なのは、フェイト、グリフィスだ。

 

「機動六課課長。そしてこの本部隊舎の総部隊長、八神はやてです」

 

はやての自己紹介にロビーにいた全員が拍手で返した。

「平和と法の守護者---時空管理局の部隊として事件に立ち向かい、人々を護っていく事が私達の使命であり、なすべき事です。実績と実力に溢れた指揮官陣。若く可能性に

溢れたフォワード陣。それぞれ優れた専門技術の持ち主のメカニックやバックヤードスタッフ。そしてイマジン討伐のスペシャリストでもあるチームデンライナーとゼロラ

イナーの皆さん。全員が一丸となって事件に立ち向かっていけると信じています」

はやては緊張を解いた表情になる。

「ま、長い話は嫌われるんで以上ここまで。機動六課課長及び部隊長、八神はやてでした」

そう言って手を挙げて挨拶を終了した。

また全員が拍手で返した。

 

はやての挨拶が終わった後、良太郎はエリオとキャロから話を聞いていた。

「君達はフェイトちゃんに保護されたんだ……」

「「はい!」」

(この十年で子供の面倒を見るようになったなんて……)

この二人を見ていると、十年前のフェイトにダブって見えた。

「フェイトさんが言っていました。今の自分があるのは良太郎さんのお陰だって」

「本当の『強さ』を持った人だ、とも言ってました」

子供二人の純粋な眼差しとフェイトの自分に対しての評価に良太郎は何も言えなくなってしまう。

(過大評価しすぎだよ……)

自分はそのように言われるほど、立派な人間ではない。

ミッドチルダに足を初めて踏み入れた日の夜の事を思い出す。

あの時、彼女は自分に対しての想いは十年前から変わっていないと言っていた。

それは裏を返すと、彼女の『恋愛』に関する青春を自分が十年も奪ったことになる。

良太郎はミッドチルダに訪れるまで、フェイトの告白は憶えていたがそれを十年間ずっと抱いているとは思っていなかった。

子供の頃の告白を忘れたところで、誰も責めない。

「二人とも。フェイトちゃんのこと好き?」

良太郎は自分を輝いた瞳で見ている二人に訊ねてみる。

「「はい!」」

事前にそのような打ち合わせをしたわけでもないのに、エリオとキャロは声を揃えた。

「そっか」

二人が言った『好き』は家族愛的なものだということはすぐにわかった。

良太郎は二人が迷うことなく言ってくれた事が嬉しかった。

なのは達以外にもフェイトの繋がりを持つ者達がいることにだ。

 

六課の廊下をフェイトとシグナムが歩いていた。

「お久しぶりです。シグナム」

「ああ、テスタロッサ」

この二人、直接会うのは半年振りとなっていた。

その間、電話などでやり取りはしていたが。

「同じ部隊になるのは初めてですね。どうぞよろしくお願いします」

「こちらの台詞だ」

フェイトの挨拶にシグナムは返す。

「それにお前は私の直属の上司だぞ」

「それはまぁ何というか、その……落ち着かなくて」

シグナムの指摘にフェイトはどこか居心地の悪そうな表情をする。

「上司と部下だからな。テスタロッサに『お前』呼ばわりはよくないか。敬語で喋った方がいいか?」

どこかからかいが混じっていた。

「そういうイジワルはやめてください。いいですよテスタロッサで。お前で」

フェイトもシグナムがからかっているのはわかっていたのでサラリと返した。

「そうさせてもらおう。ところでテスタロッサ」

「何ですか?シグナム」

「野上とは会ったのか?」

「はい。二週間前に一度」

二週間前---彼等が初めて足を踏み入れた時だ。

フェイトはそれ以降は仕事云々で会う機会が得られなかった。

「シグナムは会ったのですか?良太郎に」

「いや。来ているという話を主はやてに聞いただけだ。直に見たのは今日が初めてだ」

シグナムもフェイト同様に仕事云々で会う機会を得る事はなかった。

「テスタロッサ」

歩を進めていたシグナムが止まる。

「シグナム?」

フェイトは急な事なので、何歩か進んでから止まる。

 

「負けるつもりはないぞ」

 

シグナムがどういう意味を込めて言ったのかフェイトには瞬時に理解できた。

 

「私もです。戦うからには必ず勝ちます」

 

フェイトもそのように返した。

互いに牽制しあっているような見える。

二人とも笑みを浮かべながらだが。

 

 

「はっくしょん!!」

エリオとキャロを見送った後、良太郎は背筋に寒気のようなものを感じたのかくしゃみをした。

「風邪か?」

「野上、大丈夫?」

「空気が合わなかったの?良太郎」

侑斗、デネブ、コハナに心配されるが良太郎は首を横に振る。

「何か僕絡みで起こる前兆かもしれない」

野上良太郎。

『時の運行』を護り、別世界の『時間』も護る仮面ライダー電王。

同時に不幸の女神に最も愛された男、でもある。

 

 

 




次回予告

第十一話 「オーナーからの贈り物」
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