仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party 作:(MINA)
みなひろです。
何とか習慣づけようと頑張っています。
そのためには、一日も早く 現在の仕事のカンを取り戻して時間を有意義にしてい聴きたいと思います。
それでは第15話スタートです。
ミッドチルダの青空を一機のヘリコプターがジャイロを高回転させながら、機動六課の隊舎に向かっていた。
ヴァイス・グランセニックは缶コーヒーを飲みながら、ヘリコプターの速度を上げていた。
「ヴァイス君も気になるんやな?」
速度を上げていることに気付いた八神はやては、率直に訊ねる。
「そりゃあ気になりますよ。仮面ライダー同士が戦うなんて、見れるんだったら金払ってでも見たいものですからねぇ」
ヴァイスは本音を告げる。
「そこまで大袈裟なものじゃ……」
フェイト・T・ハラオウンはヴァイスは大仰に言っているのでは、と受け止めている。
「いやぁ、それは見慣れてる人の感想っスよ。俺達、仮面ライダーが戦闘してるところなんて全くないんですからねぇ」
「「あ……」」
ヴァイスの一言は彼だけのものではない。機動六課のスタッフのほとんどの者達の意見と言ってもいいくらいのものだ。
「でも私等が見たんも今から十年前に数回やで。あれから同じ力のままって事はないやろね」
「底なしに成長するんスか?ただでさえ強いのに……」
「うん。電王やゼロノスよりも強い仮面ライダーがいたしね」
はやては以前に会ったままの強さではないと言い、ヴァイスはその事に恐れをなし、フェイトは十年前に一度だけ出会った敵方の仮面ライダーの事を思い出した。
「マジですか!?」
「うん。フェイトちゃんの言う通りやで。電王やゼロノスがかかっても互角どころか圧倒的に優勢を誇ってた仮面ライダーがおったで」
「でもそんな仮面ライダーをよく倒せましたね……」
ヴァイスが興味を持つのは無理もないことだと、はやてとフェイトは思う。
「勝てた原因は良太郎、じゃなかった野上さんかな」
「フェイトちゃん。公私つけたい気持ちはわかるけど無理はせんでもええで」
はやてはフェイトの無理な呼び方にダメ出しをする。
「う、うん」
フェイトは頬を赤らめながら首を縦に振る。
「あの、ひとつ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
ヴァイスが前を向いたまま言う。
「なに?ヴァイス陸曹」
「フェイト執務官と野上さんって婚約してるんですか?噂になってますよ。フェイト執務官に婚約者がいるって、それが野上さんでは?って……」
「え?」
ヴァイスの言葉にフェイトは両目を大きく開く。
「あ、それなら私も聞いた事あるで。中には直に私に聞いてきた人もおったなぁ」
はやてが言うには、そのように訊ねてきたのは一人や二人ではないとの事だ。
「ええええええええええええ!!そ、そそそそそんな恐れ多い!わ、私と良太郎が婚約してるってどういう事ぉ!?」
フェイトは大声で叫んでしまう。
「フェイトちゃん。ちょっとうるさいで」
ヘリコプターの中というのはちょっとした密閉空間で声が反響して、正直響く。
「あ、ご、ごめん。でもそんな噂、私聞いた事ないよ?」
「そりゃそうやろ。その辺はみんな気を遣ってたんやと思うで。ハッキリ言えばフェイトちゃん当人に聞くには失礼と言えば失礼やもんね」
はやてを始め、機動六課の主な面々はフェイトが野上良太郎に特別な想いを抱いていることは知っている。
本来ならば十年分の空白を埋めたいと思っているのもだ。
だが、彼女の生来の生真面目さや他者を気遣ってばかりという損な性分がそれをさせない。
(もっと奔放になったらええのになぁ)
それが、はやてが現在フェイトに抱いている感情だ。
「それに私の片想いだし……」
フェイトの呟きに、ヴァイスはそれ以上の事を何も言わなかった。
「まあ、今は色々と忙しい時期やら落ち着いたら野上さんとゆっくり話をしてもええと思うで」
それがはやてが今、彼女にかけてあげられる一言だった。
*
機動六課隊舎内でグリフィス・ロウランもライナー電王とZゼロノスの戦いを見ていた。
無論、この時に二人の戦闘力をデータとして記録することも忘れてはいなかった。
そして、過去に出現したイマジン達のデータと比較する。
「こうして数字で見ると、改めて思い知らされるな……」
グリフィスの呟きにデータ採集をしているスタッフ達は首を縦に振る。
全ての数値がイマジンを超えているのだ。
これでは魔導師や騎士は逆立ちしても勝てない事が証明されたわけだ。
「コレ、記録しておいておきます?」
スタッフの一人がグリフィスに顔を向けて訊ねる。
「そうだな。とりあえず記録を残して、その後の判断は八神部隊長に任せよう」
「わかりました」
現在は四月なので、異世界の仮面ライダー達からすれば『過去』の時間になってしまう。
映像や写真というような彼等にしてみれば『足跡』となってしまうものは残しておくわけにはいかない。
タイムパラドックスの可能性があるためだ。
この事は、はやてから釘を刺されている。
詳細を見てから、消去しても遅くはないと判断した。
*
ライナー電王は満身創痍と呼称されてもおかしくない状態だった。
両肩は激しく上下に揺れて、息を整えているが体力が回復するには時間がかかる。
先程、Zゼロノスに告げたように次に繰り出す攻撃が自分の限界だ。
キンアックス---キンタロスの能力が表面化される状態で、今の自分にできる事はアレしかない。
(原理は極めて単純。でも、失敗すれば確実に僕の負け……)
命を懸けた戦いならば『負け』は『死』に直結する。
だが、これは死力を尽くしたとしても模擬戦。負けても『恥』にはならない。
(だけど……)
以前ならば負けてもいいと思えた。
模擬戦なのだから。訓練なのだからと。
でも、今は違う。
(僕を、こんな僕を信じている人がいる。信じてくれる人達がいる……)
両拳に力が入る。
右人差し指でケータロス装着型デンオウベルトのチャージ&アップスイッチを押す。
『フルチャージ』
身体全身にフリーエネルギーが纏われる。
さらにもう一回押す。
『フルチャージ』
さらにもう一段階、フリーエネルギーが纏われる。
「二回、か……。何をするつもりかはわからないが受けて立ってやる」
Zサーベルを突き刺して、指をバキボキと鳴らしてから首を鳴らしながら言う。
「………」
もう一回押す。
『フルチャージ』
パチッパチッと身体全身から稲妻のようなフリーエネルギーが身体全身からあふれ出している。
「三回?お前一体……」
三回連続のフルチャージ(以後:トリプルチャージ)となってくると、何が起こるかわからない。
だが自分がこれからする事にはあと一回フルチャージ、つまり四回しなければならない。
そして最後に一回、チャージ&アップスイッチを押した。
『フルチャージ』
稲妻の数が先ほどよりさらに増えた。
(準備はできた……。後は……)
ライナー電王はZサーベルを握って警戒しているZゼロノスを睨む。
(放つだけ……)
*
「俺の状態でフルチャージを四回やて?良太郎、まさかアレをやる気か!?」
キンタロスは珍しく焦りの感情を表に出していた。
「アカン!アレは今の状態の良太郎がやったらどうなるかわからんで!!」
「さっきから何を焦ってんだよ?クマ公」
モモタロスがいつもと違うキンタロスに面倒ながらも訊ねることにした。
「良太郎は『一撃必殺の極意』をやるつもりや……」
キンタロスは静かに言う。
イチゲキヒッサツノゴクイ?
キンタロスを除く全員が首を傾げながら言った。
「一撃必殺というと空手などの究極の命題ですよね?」
いち早く反応したのは、高町なのはだった。
「「あの、イチゲキヒッサツって何なんですか?」」
エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエの二人が声を揃えて、なのはに質問した。
「たった一撃で相手を確実に葬ることよ」
なのはの代わりに、コハナが説明してくれた。
「でもそれって結構コンディションが最高の状態じゃないと無理なんじゃなかったっけ……」
ウラタロスが記憶を引っ張り出しながらキンタロスに言う。
「そうや。心身ともに最高でないと、上手くはいかんやろな……」
「クマちゃん。それって良太郎、失敗するの?」
「それはわからへん」
「ま、ここでビクビクしてても仕方ねーだろ。黙って見てよーぜ。な?」
あれやこれやと外野が言っても仕方ないことだと判断したモモタロスは全員に言った。
*
デンカメンソードをその場において、ライナー電王は構えを一つも取らずに直立していた。
その行動がZゼロノスの警戒心を更に煽ることになった。
今のライナー電王は隙だらけだ。
どこからでも狙いをつけることができる。
しかし、それがこちらを誘い込むための罠のようにも思える。
「どこからでも来い、か……」
Zサーベルを正眼に構えたまま、円軌道で移動しながらライナー電王のうかがう。
体力の消耗が激しくなるが、慎重に動かなければならない。
(多分野上は次で終わらせに来る。となると俺もこの一撃で終わらせる!!)
Zゼロノスはゼロノスベルト上部のフルチャージスイッチを押す。
『フルチャージ』
電子音声が発してからダミーカードをゼロノスベルトのクロスディスクから抜き取り、Zサーベルのガッシャースロットに挿し込む。
Zサーベルの刃からバチバチとフリーエネルギーが充填される。
円軌道で移動しているが、先程のような軽やかなステップではない。
ゆっくりとしかし、獲物を狩るような動きだ。
「正面から斬りにいくなんて、俺のガラじゃないんだけどな」
「………」
Zゼロノスの言葉に、ライナー電王は何も返してこない。
正面から斬りにいくのは自分のスタイルではない。
効率よく、いわば相手に本気を出させずに勝つというのが自分のスタイルだ。
デネブからは「卑怯すぎる!」と抗議を受けることはしばしばだが。
上段に構えてから、ゆっくりとだがライナー電王との間合いを詰めていく。
(あと二歩……)
警戒しながら間合いを詰めていくというのは必要以上に体力を消耗する。
(正直、神経まで削られている気分だぜ)
もう一歩詰める。
自分が踏み込めるのはあと一歩だ。
それ以上踏み込むと、向こう側の
温度が二、三度下がったような気がする。
*
ビルの屋上で観戦している全員が口を開かなかった。
正確にはいつ決着がつくかわからない状態なので、一瞬でも見逃したくないのだ。
張りつめた空気がこちらにも伝わってくる。
普段は明るいノリをしているイマジン達も何も言わない。
(手ぇ出してミスった方が負けになるからなぁ。良太郎も侑斗もまるで動こうとしねぇ)
モモタロスの言うように、ほんの一瞬の判断ミスがこの戦いの終わりになる。
カチャカチャとシャリオ・フィニーノがモニターを操作する音だけが聞こえた。
*
「行くぞ」
「うん」
短く応答するZゼロノスとライナー電王。
「終わりだ!!」
ZゼロノスがZサーベルを一気にライナー電王の脳天に向かって振り下ろす。
全てを切り裂き、滅する勢いで。
「野上ぃぃぃぃぃぃ!!」
ライナー電王は数ミリの間隔で太刀筋を見切って、避ける。
傍から見ればZゼロノスがわざと外しているようにも見えるほどだ。
相手をとらえ損ねたZサーベルの刃に充填されているフリーエネルギーは、地面を走る。
その証明として、一本の線が地面を抉って終着点としてビルまで走り、結果としてL字で跡を作っていた。
左足を前に出して、しっかりと地面を踏む。
フリーエネルギーを纏った右拳をZゼロノスの腹部に狙いをつけて放つ。
「うわあああああああああああああ!!」
半ば悲鳴に近い叫びをあげながら、放った拳を抉りこむようにして打つ。
「#$%&!!」
Zゼロノスは声にならない声を上げる。
右拳を引き抜く。
腹部を両手で抱え、くの字になりながらもこちらを睨んでいる。
(もう右手は使えない。あと三発……)
ライナー電王の右手は先程の一撃でボロボロになっており、拳として放つという事は不可能---死に腕になっていた。
動かないZゼロノスの前に歩み、左拳を振り上げる。
顔面に放つ。
踏ん張る力がないのか、弧を描きながら後方へと吹っ飛ぶ。
ビルの壁をぶち破る。
コンクリートの粉塵が舞う。
そこから人影が出てくる。
Zゼロノスが立ち上がる。
こっちを見ているだけで、何もしようとはしない。
(まだ立つ?)
ライナー電王はZゼロノスに歩み寄る。
両腕は使えない。
しかし、フルチャージを四回しておりあと二回放つことができる。
それはあくまで理論上でのことだ。
実際に両拳は使えなくなっているし、自身を支えている両脚があるが実質的に攻撃として放てるのはあと一回だ。
両脚を使うと、立てなくなる。
それを覚悟しているなら、使うことができる。
「胃の中のものが全部出そうな気分だったぞ……。そんな隠し玉を持ってたのかよ」
「余裕がないと使えないんだけどね……」
互いに睨み合ったまま動かない。
「
よく見ると、Zゼロノスの両腕と両脚は激しく震えていた。
反撃する力がないというのも本当の事だろう。
「あるけどさ。もう撃てないよ」
身体に纏われているフリーエネルギーが徐々に消えていく。
「やっぱり身体全身に纏わせても、すぐに使わないと消えちゃうみたいだね」
ライナー電王ももう反撃の手はない。
蹴りを放つことはできるが、それはいくら放っても決定打にはならないだろう。
「そうかよ……」
緊張の糸が切れたのか、Zゼロノスはその場でへたり込んでしまった。
「……はあ……」
ライナー電王も座り込んでしまった。
「野上?お前どういうつもりだ?」
「侑斗の言う通り、隠し玉はあと二回は使えるよ。でもそれを使うと僕の身体がもちそうにないしね」
「俺は意識はあるけど、両腕、両脚が動きそうにない。だったら今回は……」
Zゼロノスの言いたい事はライナー電王には理解できた。
「「引き分け」」
告げたと同時にZゼロノスが仰向けになって倒れていくのが見えながらも、ライナー電王も意識を手放した。
*
野上良太郎が目を開くと、そこは見知らぬ天井だった。
「よぉ、目ぇ覚めたみてぇだな」
周囲をも回そうとしたが、モモタロスの声のする方に顔を向ける。
モモタロスが座っていた。
「モモタロス……」
「まぁ上出来じゃねぇのか。色々とダメ出しする部分は多いけどな」
良太郎が言う前に、モモタロスが今回の評価を告げた。
「みんなは?」
「カメ、クマ、小僧にコハナクソ女ならオメェの仕事やってるよ」
「え!?」
良太郎はその返答に不安を感じずにはいられなかった。
「何だよ?俺達がオメェの代わりに仕事するのがそんなにイヤなのかよ?」
「そうじゃないよ。だって皆ミッドチルダの文字書けるの?てゆうか読めるの?」
「オメェ、俺達の事舐めてるな?二週間いればそんくらいできて当たり前だろ?」
良太郎の質問に、モモタロスは自信を持って答えた。
どうみても虚勢ではない。
「いや、普通はたった二週間で異世界の読み書きなんて早々できるもんじゃないんだけどね」
たとえるならばアメリカに行った日本人が二週間で読み書きを理解できるかと言われると、ほとんどの人が『ノー』と答えるだろう。
「で、こんな感じで進めるんだとよ。おい侑斗、オメェも見とけよ?」
黙って天井を見上げていた桜井侑斗にもモモタロスは持ってきた紙を渡す。
「俺もか……」
「オカンから言われてるんだろ?俺達の事を紹介しなきゃなんねぇってよ」
「期日はまだ余裕あったはずよな?」
侑斗が確認するようにモモタロスに訊ねる。
「明後日だとよ」
「そのことだけど、変更になったわよ」
モモタロスの答えを否定するようにして陸士隊服の上に白衣を着こんだシャマルが入ってきた。
「二人が盛大に戦ってできた傷を完治するには最低でも三日はかかるの」
シャマルはかかる日数を先に述べてから、カルテを読み上げていく。
「良太郎君及び侑斗君の今回の喧嘩による怪我は……」
「シャマルさん。僕達一応訓練みたいなことをしていたわけで……」
あくまで『喧嘩』ではなく『訓練』だと主張をする良太郎。
モモタロス、侑斗も首を縦に振る。
シャマルはベッドに寝ている二人と一体に一睨みする。
「電王やゼロノスになっていて、今の二人だから全治三日といったのよ。常人なら全治一か月。どんな怪我でもそうだけど最悪の場合は死んでいたかもしれないのよ」
シャマルに言われて、二人と一体は黙ってしまう。
というより、言い返せないのだ。
「なのはちゃん達だけでは済みそうにはないわね。無茶をして治療しなければならない人達……」
「「ごめんなさい……」」
ジロリとシャマルが良太郎と侑斗を見ながら言うので、二人は謝るという選択肢をとるしかなかった。
先程まで戦っていた<ruby>勝負者<rp>(</rp><rt>良太郎と侑斗</rt><rp>)</rp></ruby>が恐れる者。
それは怪我人の面倒を見る事を職務とするシャマルなのかもしれない。
「貴方達がはやてちゃん、八神部隊長に与えられた仕事を完了させるに必要な猶予は今日を含めてあと五日ってことになるわ」
*
夜となり、本日の訓練はすでに終了していた。
医務室のベッドで一泊過ごす気はないので、良太郎は外に出ていた。
フルに戦うことはできないが、それでも自分が治っていく実感があった。
夜道を四つの何かがトボトボと歩いてくる。
それはよく見ると、スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエのフォワード四人だった。
午前の頃のような活発さはなく、全員が『辛うじて生きている』と例えられてもおかしくない状態だった。
良太郎と四人の目が合う。
「「「「……お疲れ様です」」」」
最後あたりになると、声がかすれていた。
挨拶をする元気もないのに、わざわざしてくれるのはありがたいが見ていて痛々しいものだった。
四人はトボトボと寮へと入っていった。
「お疲れ様……」
良太郎は労うように返した。
彼らに聞こえていると思いたかった。
自分が本格的に仕事に取り掛かるのは明日からであり、今日はとりあえず後は入浴して眠るだけだった。
しかし、眠るには早すぎる。
「そういや、少しお腹すいたな……」
電王に変身すると、極度に体力を使うので軽く食べた程度では足しにはならない。
六課隊舎にある食堂がまだ開いていることを祈りながら、良太郎は歩を進めた。
「照明がついてるからまだ大丈夫かな……」
六課隊舎に入ると、照明が切られていないところからしてもしかしたら食堂は開いているかもしれないと勘繰る。
良太郎が食堂に入ろうとした時だ。
「良太郎」
女性のしかも、自分にとっては聞き覚えのある声だった。
声のする方向に顔を向けると、そこにはフェイトがいた。
彼女は目があった瞬間に、不機嫌そうな表情をとっていた。
その理由はわかっているので、何を言われても仕方ないと覚悟をすることにした。
「あのー、えーと……」
いつものように声をかけれない。
自身にやましいことがあるのだから当然と言えば当然だ。
「もしかして、私が昼間の事で怒ってるって思ってる?」
フェイトがじーっとこちらを見ながら言う。
表情は、あからさまに『私は怒ってます』だ。
「怒ってないわけ……ないよね?」
良太郎はおそるおそる訊ねる。
「当たり前だよ!!」
多分知っている人なら『信じられない』という表情をしているだろう。
「良太郎が桜井さんと戦うって聞いたときは驚いただけで済んだけど、その結果がその怪我じゃ怒るよ!!」
多分、フェイトの怒った姿を見るのはこれが初めてだと思う。
「……ごめんなさい」
良太郎は素直に謝罪した。
下手な言い訳は男らしくないと思ったし、何より怒ってはいるが涙目になっているフェイトを見ると胸がチクチクと痛む。
「悪いって思ってる?もし、場を取り繕うためだったら本当に怒るよ……」
「心配かけたこと、本当に反省してます。ごめんなさい」
良太郎はもう一度頭を下げて謝罪した。
「……じゃあいいよ。私からは何も言うことはない」
そう言うと、フェイトはハンカチを取り出して目尻を拭いていた。
拭き終えるとハンカチをしまいこんでこちらに視線を向けていた。
「で、どうしたの?シャマル先生が言うには本来なら医務室で大人しくしてないといけないんじゃないの?」
フェイトの表情は元に戻っていた。
「いやその……お腹すいちゃって……。それに皆の夜食でも作れたら作ろうと思ってね」
良太郎は来訪目的を素直に打ち明けた。
「怪我してるのに?」
「まぁその……」
フェイトに問い詰められるとばつが悪そうな表情になってしまう。
「軽いものでいいなら私が作るよ」
そんな自分の表情を見かねたのかフェイトは自分が作ると言い出した。
こっちを気遣っての事だという事はすぐにわかる。
相変わらず損な性分だと思ってしまう。
「じゃあお願いしようかな」
「何が食べたい?」
「フェイトちゃんに任せるよ」
断ってもこれ以上はこじれるだけだと判断した良太郎はフェイトにすべてを任せることにした。
「設立趣旨の説明はどうだったの?」
食堂に入った良太郎とフェイトは厨房が空になっていたので、入って夜食の支度をしていた。
小さい皿と大きな皿の二つを用意する。
一つは自分用。
もう一つは現在も仕事をしている仲間達の分だ。
「で、何を作るつもり?」
「夜食の定番といえばおにぎりでしょう」
フェイトが準備をしながら、訊ねてきた良太郎に回答した。
「おかずとかもつけた方がいいかな?」
「まぁ、あった方がいいかもしれないね」
イマジン達も自分同様に健啖家だ。好き嫌いらしいものはない。
強いて挙げれば『まずいものが嫌い』というくらいだろう。
「あの、やっぱり僕も手伝った方が……」
「ダメ」
フェイト一人に夜食作りをさせるわけにはいかないので、手伝おうと言うがあっさりと却下されてしまった。
「それにその手で、食材手掴みはダメだって」
良太郎の両手は包帯で巻かれていた。ハッキリ言って食べる側からすればあまりいい評価は受けないだろう。
フェイトは慣れた手つきでおにぎりを作り始める。
厨房はすごく静かだった。
(こういう時、何か話しかけた方がいいのかな……)
作業中の人間に話しかけるのはマナーとしてはどうかと思ってしまうが、退屈なものは退屈だ。
隣に料理をしている人間がいるので、フケが落ちるかもしれないので後頭部を掻けない。
「そういえばさ、執務官になったんだよね。おめでとう」
沈黙に耐えられなくなった良太郎は思い出した事を言う。
「……ぷっ。それ今になって言う事じゃないよ」
黙々と作業をしていたフェイトが手を止めて、吹き出した。
口元はちゃんと手で押さえていた。
「ごめんごめん。何か君に言わなきゃいけない事があるとは思ってたんだけど、あれやこれやで、ね」
「それで今になってって事?」
「まあ……」
フェイトは笑みを浮かべたまま、作業を続ける。
良太郎はあたふたとしているが言いたい事は言ったので気分は晴れ晴れだった。
フェイトの手はおにぎりを作る手は止まっていない。
既に七個目になっていた。
「手際いいね。作り慣れてる?」
料理をしている手つきを見られているというのは、改めて考えると結構恥ずかしかったりするが褒められているので羞恥の感情は表面化されていなかった。
「執務官試験の時にはお世話になったからね」
今となってはいい思い出とフェイトは割り切れるが、体験したいかと言われると『ノー』と答えるの自然の摂理の様なものだ。
「良太郎」
「ん?」
「また強くなった?」
なのは経由でライナー電王対Zゼロノスの模擬戦の映像を一部始終を見ていたので率直な感想を訊ねてみる。
この間もおにぎりを作る手は止まっていない。
「イマジンとは戦ってたし、モモタロス達との特訓は続けていたからね。少しは強くなったと思うよ」
良太郎は、鼻の頭を人差し指で一掻きしてから答えた。
(少し!?映像を見たけど十年前よりはるかに強くなってるよ……。実戦と特訓だけであそこまで強くなれるのかな……)
良太郎が強くなった要因としては、彼の口から述べた二つが説得力があるといえばある。
だがそれだけで強くなったのではないと、フェイトは考えている。
人はあることがきっかけで今までにないくらいに急激に成長を遂げることがある。
日々の鍛練はそれを引き出すためのきっかけのようなものだともいわれている。
それとも今、良太郎は『成長期』なのではとも思っている。
(『成長期』って言葉で今はくくってるけど、それだけでは済まないような気がしてくる……)
十年たった現在の自分は十年前の自分よりも強くなったと自負しているが、あの映像を見たらそんな気持ちを持つことが『傲慢』だと思わされれるくらいだ。
電王、仮面ライダーと最初に戦闘をしたのは自分だ。
(今、戦えばどうなるんだろ……)
『勝つ』か『負ける』かというと、わからない。
確実に『勝つ』とはいえない。
相手はイマジン討伐のプロフェッショナルにして限りなく『最強』に近い存在だから。
だからといって『負ける』という前提で戦うのは相手に対して、失礼だ。
(『勝つ』気持ちでは挑めないね。まだ……)
それが今のフェイトの素直な気持ちだった。
『まだ』挑めない。
(でももう一度再戦してみせる。貴方の背中を護れるくらい強くなってみせる。いつまでも護られっぱなしじゃなくて、ね)
時空管理局執務官としてではなく、エリオ、キャロの保護者でもなくフェイト・T・ハラオウンとしての素の目標だ。
「フェイトちゃん」
隣の良太郎に声をかけられた。
「!!え!?どうしたの?」
おにぎりを作りながらも、考え事をしていたので意識はそこにはなかった。
「夜食の量を超えてるよ。絶対に……」
良太郎の言うように、いくらイマジン達が大食漢でも仕事の際の『夜食』なので食べすぎはよくないと思ったのだが、作りすぎたらしい。
「うぅぅ。やっちゃったぁ~」
フェイトは赤くなった顔を良太郎に見られまいとしながらも、頭を抱えた。
結局、作りすぎた夜食もイマジン達が食べることになったという。
良太郎とフェイトは夜食を渡し終えた後、食堂へと移動していた。
フェイトがトレーで持っているのは良太郎の夜食である。
おにぎりではなく、茶碗に入ったご飯と厚焼き玉子だ。
適当な席があったので、二人は座る。
席に着くとフェイトはトレーに乗っかっている二つをテーブルに置く。
「はい。どうぞ」
「いただきます」
作り主から食べるゴーサインが出たので、良太郎は合掌をしてから箸を手にする。
ご飯を一口、卵焼きを一口食べる。
「おいしい……」
良太郎は短く、しかし素直に述べた。
「ありがとう。久々に作ったんだけどね」
フェイトは笑みを浮かべる。
食事を終えて、フェイトにお茶を淹れてもらい啜っていた。
「今日の設立趣旨で、仮面ライダーと協力してるって事を上層部の人達にも打ち明けたから」
「思い切ったね……。八神さんの発案?」
「うん。隠ぺいするよりも早い内に暴露する方がいいってね」
正論だと良太郎は思う。
「反応はどうだったの?」
「うーん。下手な干渉はしてこないとは思うよ。表立っては、だけどね」
「僕達個人を呼びつけて勧誘とかはあるって事?」
良太郎のたとえにフェイトは首を縦に振る。
「うん。そうなると私達は身元保証人的存在だけど、良太郎達を拘束する権利はないからその……」
「勧誘に乗っても構わないと?」
「う、うん。だ、大丈夫だよ。仮に良太郎達がいなくなっても……いなくなっても……」
フェイトの声がどんどん弱弱しくなってきていた。
「全然平気だから!!」
と、言ってはいるが全身は震えてて涙目になっているので説得力のかけらもない。
「あー、大丈夫。下手な勧誘に乗るつもりはないから安心していいよ」
「本当?」
「僕達の力だけが目当ての勧誘なんだったら、お断りだね」
良太郎は自身の意思をきちんとフェイトに伝える。
「それに機動六課以外にモモタロス達と付き合っていけるとは思えないしね」
良太郎の一言は、あまりに説得力のあるものだった。
機動六課以外の遺失物管理課はそれなりに規律がある。
『規律って何?』を地で歩くようなイマジン達をそれで縛る事なんてできはしないだろう。
「確かに。モモタロス達と付き合えるのって
フェイトも納得してしまった。
涙目でなくなり、笑顔に戻っていた。
(十年前と想いは変わってない、か……)
フェイトと正面から会話をしていると自分をそのように思ってくれている事に『嬉しい』と思う反面、『申し訳ない』という気持ちもあった。
良太郎とフェイトが機動六課の隊舎を出た後の話になる。
侑斗は、隣で母親のごとく説教しているはやての言葉をウンザリしながらも聞いていた。
「まったく、野上さんに喧嘩ふっかけて怪我するんはシグナムだけやと思うてたのに……。侑斗さんまで……」
「シグナムはいいのかよ?」
「しょうがないやん。シグナム、強い人見たら戦いたがる性癖なんやから」
「年頃の娘が性癖なんて言うな。せめてサガって言え」
説教を聞きながら、はやての言葉に侑斗は注意する。
「それでも今の野上さんを見ても、戦いたがらへんところを見ると我慢強くなったんやなぁ。あ、違うわ。あっちかぁ……」
何かを思い出しながら、はやてはほくそ笑んでいた。
「何一人で思い出し笑いしてるんだよ?」
「ん?何でもあらへんよ」
「シグナムが野上に気があるんだろ?」
侑斗の一言に、はやてはその場で動きを止めて目を開いていた。
「知ってたん!?」
「俺は野上ほど鈍くはないぞ」
侑斗はしれっと言う。
食堂に入ると、ヴォルケンリッターとデネブが食事をしていた。
ヴィータとデネブが手を振っていた。
シャマルとシグナム、ザフィーラ(狼)は軽く頭を下げていた。
「侑斗さん」
「わかってる。俺も馬に蹴られて死ぬつもりはないからな」
そんな話をしながら、侑斗とはやては席に着く。
「みんなでお食事かぁ?」
「はい。打ち合わせがてら」
はやての質問に、シャマルが笑顔で答えた。
「はやてと侑斗はご飯食べた?」
はやてはザフィーラを撫でており、侑斗は腕を組んでそんなやり取りを見ていた。
「お昼抜きやったからもうお腹ペコペコや」
「俺は食べたが、小腹がすいた」
「それは大変ですね。すぐに注文してきましょう。桜井、お前は軽いものでいいな?」
「ああ。頼む」
「お茶二人分追加しまーす」
二人が空腹だと聞くと、シグナムとシャマルが注文に行った。
「おおきになぁ」
はやては二人に礼を言いながら、背中を見送った。
注文した料理が届き、八神家+ゼロライナーで食事をとることにした。
ちなみにリィンはというと。
「すぴー。くー」
はやてが下げていたバッグを開けると、そこにはリィンが眠っており、中身は眠っている彼女専用の私室にカスタマイズされていた。
「よく眠ってるなぁ」
「まぁ一生懸命働いてくれてるからなぁ」
ヴィータはリィンの寝姿を、呆れ半分で見ながらバッグのふたを閉じた。
食事をしながら、本日の出来事を皆で報告しあっている。
「中央の方はどうでしたか?」
シグナムがフォークを置いて、はやてに訊ねた。
「まぁ新設部隊とはいえ、後ろ盾は相当しっかりしてるからなぁ。そんなに問題はないよ」
「やっぱり、あったんだな。後ろ盾」
侑斗は機動六課がバックボーンもなしに、設立できるとは到底思えなかった。
『出る杭は打たれる』の法則だ。
「後見人だけでもリンディ提督にレティ提督にクロノ君、じゃないクロノ・ハラオウン提督」
「そして最大の後ろ盾。聖王教会と教会騎士団の騎士カリム。ま、文句の出ようはありませんね」
(それでも圧倒的な暴力には屈するんだよな……)
侑斗はこれから起こる五か月後の未来を映像で見ている。
そこには機動六課の隊舎は影も形もなかった。
(こいつらの『夢』護りたいよな)
夢を持たない自分にしてみれば夢を持っている彼女達が羨ましく思う。
だからこそ、護りたいという気持ちが侑斗にはあった。
こうして一日は終わっていく。
次回予告
キンタロス 「仮面ライダー電王LYRICAL StS!!」
機動六課スタッフにより知ってもらうために
チームデンライナー&ゼロライナーは……
オーナーの力を借りてこれまでの戦歴映像を編集していた。
第十六話 「明かされる次元世界最強の戦士」