仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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投稿に至る作業を行っているのは6/18ですが、投稿するのは6/20と考えている

みなひろです。

明日は仮面ライダージョーカーを組み立てたいので、投稿作業はお休みさせて

いただきます。




ファーストアラート
第十六話 「明かされる次元世界最強の戦士」


 

桜井侑斗は現在、居候先である八神家で割り当てられた部屋で夜空を眺めていた。

「どうしたん?侑斗さん、天体観測かぁ?」

寝間着姿の八神はやてが、部屋に入ってきた。

ワインボトルとグラスが二つ乗っているトレーを持ってきていた。

「お前、十九だろ?未成年の飲酒を認める気はないぞ」

といっても侑斗も軽く舐める程度には飲めてたりする。

「ミッドでは低年齢でも飲酒はOKなんやで。色々と付き合いもあるから習慣といえば習慣やね」

そう言いながら、はやては侑斗にワイングラスを渡す。

「黙認だろ。ほとんど」

郷に入っては郷に従えということかもしれないと判断し、侑斗は受け取る。

「親御さんがいたら微妙な顔をするぞ。年頃の若い娘が男と酒飲んでるからな」

「ま、ま、侑斗さんどうぞ」

はやてはあえて、聞かないふりをしながらワイングラスにワインボトルを傾ける。

ドクドクとグラスの中にボトルの中身が入っていく。

「赤ワインか……」

「私、これ好きやねん」

はやては自分の分もグラスに注ぐ。

「八神ー。おつまみ持ってきたよー」

とデネブがおつまみを乗せた皿を持って部屋に入ってきた。

「お前、デネブに作らせていたのかよ?」

「私がお酒持って、侑斗さんのところに行くって言ったらデネブちゃんがおつまみ作るって言ってくれたからご厚意に甘えよと思うて……」

呆れ半分の侑斗に対して、はやては照れ顔で内情を説明した。

デネブが持ってきたおつまみとはビーフジャーキーとチーズだった。

「それじゃごゆっくり」

デネブは気を利かせてくれたのか、おつまみを置いて部屋から出ていった。

「たく……」

妙な空気だけは読むんだよなぁ、あいつ。とデネブの背中を見送りながら侑斗は思う。

乾杯の音頭は取らずに、侑斗とはやては互いのタイミングで飲み始めた。

しばらく経っての事だ。

「侑斗さん」

「ん?何だよ」

「何で野上さんと戦おうって思たん?オーナーさんから貰った武器のならしで済ませれてたはずやのに……」

はやてが訊ねてきたのは本日の野上良太郎との戦いの事だ。

「確かめたかったのかもしれないな」

「何をや?」

「野上の蓋が開いたかどうかをさ」

侑斗は告げると、チーズを口の中に入れる。

「で、侑斗さんはどない見たん?」

訊ねないところからして、自分が言う『蓋』という意味を彼女は理解しているのだろう。

「開いたな。でなきゃ『ならし』の段階で終わってたと思うぜ」

GZガッシャーとGDガッシャーのならし運転といえば、楽なようにも感じるが侑斗は全力とまではいかないが七割以上は出していたのだ。

対する良太郎がそれより下だとは思えないが、それでも全力で『ならし』をしていたとは考えにくかった。

電王に成りたてのままの良太郎だったら、確実に終わっていたと断言できる。

「八神」

「ん?なぁに侑斗さん」

「今の野上は強いぞ。本当の意味で、な」

「本当の意味?どういう事なん侑斗さん」

訊ねてくる事からして今度は意味を理解できていないようだ。

「じっくり考えてみな」

侑斗は、その答えを見つけることを楽しむように言いながらグラスの中に入っているワインを口の中に入れた。

しばらくして、はやての声が聞こえなくなると彼女はすーすーと寝息を立てていた。

布団をかけてから、侑斗は後頭部を掻きながら部屋を出た。

「リビングで寝るか……」

そう呟いて。

 

 

 

 

翌朝になると、機動六課隊舎の一室のドア入口には『関係者以外入室禁止』とミッドチルダの文字で書かれている張り紙が貼っていた。

「あー眠いー」

「僕、徹夜のできる体質じゃないんだけどねー」

「ぐおおおおおがあああああああああ」

「クマちゃん。うるさーいぃ」

モモタロスとウラタロスが机に突っ伏しており、キンタロスはそこから爆睡中でリュウタロスが睡眠妨害で原因に文句を垂らしていた。

「アンタ達~、寝る前にちゃんとどの画像がいいか決めときなさいよ~。ふぁーあ」

モニターを前にして、リモコン操作をしているコハナはあくびをしながらも作業を続行していた。

現在、四体と一人は過去の映像を編集して、電王やゼロノスの紹介をするための資料を作っていた。

最初のうちは自分たちの過去の戦いを見てはしゃいでいたのだが、今までの分全部となるとその量は馬鹿にならないものとなっている。

つまり彼らは次第に飽きはじめ、そして眠気が襲来し今まで睡魔と闘っていたのだ。

それは今一人で作業をしているコハナも同じことだが。

その中で良太郎は自分を含めての人数分のコーヒーを作っていた。

コーヒーをカップに淹れて、なんとか頑張って起きている面々に渡していく。

そしてその場にいる全員が同じタイミングで一口飲む。

 

ぷはー。

 

と何とも気の抜けそうな声を出す。

「それでどのくらいまでできてるの?」

映像の編集をしているコハナに訊ねる。

「さっすがにどの映像を使えばいいかってなると、結構悩むのよねぇ。それにしても私達って結構戦ってきたのよねぇ」

感慨深く語りながらも、コハナは視線をテレビに向けたままだった。

コーヒー一杯飲んだ程度ではどうやらあまり効果はないらしく、彼女の両目は半分閉じようとしていた。

「ナオミさんのコーヒーを作った方がよかったかなぁ……」

そう良太郎が呟くと、コハナは激しく首を横に振った。

目が覚めるのは一瞬で別の意味で意識を持ってかれてはたまらないからだ。

「映像を見せた方が早いってのはわかるけど、古い映像見せたら詐欺にならない?」

「古い映像といっても、ここまで派手に戦ったのは一年ちよっとだからどれも『古い』と呼べないわよ」

コハナの言葉に良太郎は思い出す。

急速に桁外れな強さを手に入れたとはいえ、良太郎達の戦闘キャリアは二年を超えていないのだ。

それだけで、あれだけ強くなったという事は内容が一回の戦闘の内容がいかに凄まじいものかという事を理解できるものだ。

生きているって素晴らしいと改めて思い知らされる。

「<ruby>別世界<rp>(</rp><rt>ここ</rt><rp>)</rp></ruby>での戦闘映像ってないの?」

「あるけど、それにする?私達の今後に影響する可能性は大だと思うけど……」

別世界、つまり海鳴市での戦闘映像をメインにするという事はイマジンだけでなく、魔導師や騎士との戦闘も映し出されている。

それを映すという事は自分達が『魔導師や騎士を凌駕できる存在』という事をアピールしていると受け止められる事もある。

機動六課にも魔導師や騎士に憧憬の念を抱いている局員達はいるだろう。

その者達にとっては決して面白くない事になるのは間違いない。

「僕達の事を知ってもらうってのはある意味では誰か(・・)の常識を徹底的に潰す結果になるのかもしれない……。でも……」

「でも?」

 

「僕達が流す映像から目を背けたら別世界(ここ)でこれから起きる出来事には決して立ち向かえない……」

 

良太郎は『サイキョウニシテサイアクナルモノ』という単語を思い出しながら、静かに厳かに語る。

「そうね。下手な誤魔化しは後で悲惨な結果を招きかねないものね」

コハナは意を決したように、『本世界中心のでの戦闘記録』から『別世界中心の戦闘記録』へと変更した。

 

 

 

侑斗は部隊長室で自身が担当するゼロノスの紹介に関する原稿を執筆中だった。

しかし、進行状況は芳しくなく紙をクシャクシャに丸めてゴミ箱にポイの繰り返しになっていた。

それをはやては半分面白く、半分は感心しながら眺めていた。

リィンは純粋にゴミ箱に百発百中で入っていく様を見えて「すごいですぅ」と賞賛していた。

何故、彼がここでこのような作業をしているかというと答えは簡単だった。

モモタロス達に茶化されることを避けての事だ。

ちなみにデネブも侑斗の隣で自身の事と侑斗の事について、せっせと書いていた。

「侑斗。できたよ」

と隣で書いている契約者に見てもらう。

裁定はというと。

「デェネェブゥ!!」

顔を真っ赤にした侑斗がデネブの書いた原稿を丸めてポイしてから素早く背後に回り、両掌を合わせる形で両手を組んで手首や前腕をデネブの喉にあて締め上げ始めた。

「ゆ、侑斗!痛い!やめて!締まってる締まってる!!」

デネブが慣れた具合に締め上げている侑斗の腕を両手で軽く叩く。

「お前、自分の紹介に何で俺を紹介するような内容を入れてるんだよ!!」

「だって八神達以外の人にも侑斗の事を知ってもらおうと思って……」

締められながらもデネブは自分の言い分を主張する。

「お前に紹介されなくても、俺の事は俺の今後の行動でわかるもんだろ?」

侑斗は気が済んだので、デネブを解放する。

「ユウトさん!!」

侑斗とデネブのやり取りを見ていたリィンが浮遊しながら、侑斗の眼前に現れた。

「おデブさんはユウトさんの事を想っての事をしたんですよ!!どうして、こんな酷い事をするんですか!?」

「あ、リィン。あのな……」

はやてが言おうとする前に、リィンは侑斗に説教を始めていた。

「いくらおデブさんが頑丈なイマジンさんだからといって、問答無用で締め技をしていい事なんてないんですよ!!」

「あ、ああ」

「わかってるんですか!?」

「まぁ……」

リィンに、侑斗は圧されていた。

ここまで自分に叱ってくるとは思わなかったのだ。

小さな身体で精いっぱい声を張り上げている。

「八神。どうしよう……」

「どないしよってデネブちゃん……。私にもどないにもならんで」

デネブとはやての声が耳に入る中、侑斗はリィンにこの後一時間近く説教を受ける事になった。

 

 

 

昼休みとなり、食堂で良太郎は午前の訓練を終えて昼食をがっついているフォワード達と顔を合わせた。

スバル・ナカジマとエリオ・モンディアルの皿には一人前とは思えない量の料理が乗っかっていた。

それを二人はリスのように頬を膨らませて、食べていた。

ティアナ・ランスターとキャロ・ル・ルシエは一人前の料理を食べていた。

二人に比べると、食が進まないのは食欲よりも疲労の方が勝っているからだと思われる。

「相席いい?」

良太郎は自分の料理をトレーに乗せたまま、フォワード四人の中でリーダー的存在であるティアナにお伺いを立てる。

「どうぞ」

ティアナは良太郎と目を合わせてから、了承の返事をした。

「ありがとう」

口元をゆるませて、笑みを浮かべてから座る。

全員の視線が自分に向けられていた。

「ええと、何、かな。そう見られると食べられないんだけどね……」

良太郎が手を付けようとする料理の量は決して多くはないが、少ないともいえない。

ティアナやキャロよりは多いが、スバル、エリオに比べると少ない量だ。

「あのぉ、それだけで足りるんですか?」

スバルが食べる事を中断して、訊ねてきた。

「身体を動かしたわけじゃないから、このくらいで十分だよ」

嘘偽りのない意見で返す。

良太郎は箸を手にして、日替わり定食を食べ始める。

それでも四人の視線が付きまとう。

「どうしたの?冷めちゃうよ?」

良太郎は四人の食が止まっているので、食べるように促してみる。

四人が同じタイミングで再開する。

だが、それでもチラチラと視線を向けてくる。

(やっぱり昨日の事かな……)

間近で自分と侑斗の戦いを見ていたのだ。何か聞きたい事があるのかもしれない、と考える。

「もしかして、僕に何か聞きたい事とかあったりする?」

自分から質問しやすいように切り出してみた。

四人は互いに顔を見合している。

その間に、唇からは一言も声が発せられていない。

(念話、かな)

フェイト・T・ハラオウン経由で魔法の事はそれなりに教わっているので予想を立てる事はできる。

魔導師ではない自分には四人が念話で交信をとっているのかはわからないが、アイコンタクトではない事だけはわかる。

見合わせている時間が長いからだ。

アイコンタクトのメリットは一瞬、目を合わせて互いの意思疎通を行う事だ。

つまり第三者に気取られた時点で『失敗』という事になる。

この場合、四人がアイコンタクトをしているとしたら自分に気取られているので失敗という事になるわけだ。

「あ、あの野上さん」

「なに?ナカジマさん」

切り出してきたのはスバルだ。

「あ、スバルでいいですよ。あのですね。野上さんって戦いのキャリアって長いんですか?」

そのような事を訊ねてくるとは思わなかった。

「長いか短いかで言われると、正直わからないけど一年と八か月くらいかな……」

コハナ(当時はハナ)と出会い、モモタロスと出会って仮面ライダー電王ソードフォーム(以後:ソード電王)に変身してバットイマジンと戦ったことから自分の戦いの歴史が始まったと言える。

良太郎の返答に、四人は視線を合わせている。

 

一年八か月。

 

社会人が『会社』という組織で身を置く数字としては決して長いとは言えない。

職場にとっては『一人前』と評されるし、『ヒヨッコ以下』とも評される。

良太郎が現在、身を置いている『戦いの世界』でこの日数は『一年八か月も生き残っている』という解釈ができるが、『一年八か月しか戦っていない』という解釈をとることも可能だ。

四人がどのような解釈をとれているかは念話やテレパシーなどが無縁な良太郎には永遠にわからない事だった。

良太郎はこれ以上は質問がないと判断したのか、黙々と食事を続けた。

食事を終えると良太郎はモモタロス達と交替で部屋に戻り、作業に戻ることにした。

「野上ぃ。作業は進んでる?」

しばらくしてからデネブが近況を知るために入ってきた。

デネブキャンディーを持参してだ。

「ぼちぼちとね」

この手の事では当たり障りのない台詞で返す。

「そっちは?」

「俺も侑斗も結構難航している。自分の事を人に伝えるって難しい……」

デネブが難色の色を浮かべていた。

「誰でもそうだと思うよ。自分のことほど人に伝えるのって難しいものはないからね」

デネブを元気づけられるかどうかはわからないが、良太郎はそのように言う。

「うん……。コレみんなにね」

デネブは元気を取り戻したのか、持参したデネブキャンディーを良太郎に渡して部屋を出て行った。

 

 

 

 

コハナは昼食を終えた後、イマジン達とは別行動をとっていた。

彼女が現在足を踏み入れているのは、ミッドチルダでもなければ海鳴市でもない。

モニュメントバレーを髣髴させる荒野---『時の空間』で停車しているデンライナーにいた。

さっきも飲んだが、ナオミの厚意を無下にするわけにはいかないのでコーヒーを飲む。

(ミッドチルダ(むこう)で美味しいのを飲むと、余計に違和感感じちゃうわね)

ナオミには決して言えない事だった。

ここに来た目的はひとつ。

『サイキョウニシテサイアクナルモノ』の新しい情報が得られたかどうかだ。

待つこと五分。

オーナーがステッキをつきながら脇に抱えている紙束を持って食堂車へと入ってきた。

「どうもぉ。お待たせして申し訳ありませんねぇ」

オーナーは詫びを述べながら、コハナの向かいに座る。

脇に抱えていた紙束をテーブルに置く。

「あの、オーナー。この紙束は一体?」

「あれから私達もターミナルの駅長とともに『サイキョウニシテサイアクナルモノ』について調べていくとこんな風になってしまったのですよ」

自分達が別世界で行動を始めてから一か月も経っていないのにこのような紙束ができるという事にコハナは目を丸くするしかなかった。

「まず私達はあの文章を作った主について調べる事を始めました。この文面はどうやら今の時間より五年前に作られたものですねぇ」

「五年前、ですか。その時間って何かあったんですか?」

五年前の別世界の時間に自分達は行った事がないので、何が起こったのかは知らない事だ。

「大きな出来事はありませんねぇ。ただ、ある出来事が起きましたがそれはこの『サイキョウニシテサイアクナルモノ』とは関係がないといえばないので、気にしないでください」

「は、はあ……」

何か誤魔化されているような感じがしたが、口先の勝負でオーナーに太刀打ちできるはずもないので渋々頷くことにする。

「次にこの単語は一つの単語として記されているものなのか、何かの文章の一部なのかを調べてみる事にしました。その結果がこれです」

オーナーは一枚の紙をコハナに見せた。

(こういうところが文明の違いを見せつけられちゃうのよね……)

ミッドチルダなら、宙にモニターが出現してタッチ操作で出現するという光景になるわけだが。

コハナは目を通していく中で、ある部分で目を大きく開く。

「オーナー。これって……」

「いずれ時間が経過すれば解決することなので、良太郎君達以外には口外無用ですよ」

「わかりました……」

デンライナーのドアから『時の空間』を抜けて、機動六課隊舎へとコハナは戻ってきた。

その光景を局員達が目撃し、目を点にしていた。

ちなみに魔導師達は転送魔法を用いる事ができるが、それとて人物出現の前に魔法陣が展開されるので驚きの原因にはならない。

(あーそっかぁ)

コハナは自身の迂闊さを呪いながら、周りの局員達を見る。

窓からいきなり外にはいない人間が出てきたら驚くのは当然だろう。

しかも魔法を使っていないのだから。

「あはははははは……。お仕事がんばってください~」

苦笑いを浮かべながら、その場を走り去った。

 

 

 

 

夕方となり、映像の編集はあらかた完了したので後は文章作成だけとなった。

はやてから与えられたタイムリミットは五日だ。

今日に映像編集が完了できたのは、ひとえに皆の協力があったからだと良太郎は思う。

編集した映像を一通り見たチームデンライナー、ゼロライナーはというと。

 

よっしゃああああああああ!!

 

という歓喜の雄たけびを上げた。

「後はそれぞれの自己紹介の文章作成だけだね」

と良太郎が告げると、途端に暗くなってしまった。

誰一人として作り上げていないという事が丸わかりだった。

ちなみに良太郎は一番最初に作り終えていたので、彼の仕事はすでに終わっている。

余裕はあるので、皆の手伝いをすることはできる。

(明日からでいいか)

一つの工程が完了したので気持ちに余裕ができたのでそのような気持ちが芽生えた。

野上良太郎は決して仕事の虫(ワーカホリック)でも真面目人間でもない。

ただの人間だ。

疲れもすれば、怠け虫に支配されることだってあるのだ。

ましてや夕方だ。

イマジンの集中力が人間並みだと仮定すると、そろそろ緊張の糸が切れかかっている頃合いだからだ。

「まぁ文章作りは明日からでも十分に間に合うし、今日はもう終わろう」

その一言に室内にいる全員が緊張の糸が本当に切れてしまった。

イマジン達とコハナが食堂で夕食をとっているなか、良太郎と侑斗はもう一度映像を見ていた。

「俺達も随分と戦ってきたな……」

「そうだね……」

侑斗の言葉に良太郎は相槌を打つ。

「今じゃ俺達はバケモノ扱い、か……」

侑斗も表面には出さないが、それなりには気にはしていたらしい。

「仕方ないよ。仮に僕達が別世界(ここ)の住人だったとしても、同じような反応をしていたと思うよ」

良太郎は誰かが悪いわけではないと言う。

「野上」

「ん?なに?侑斗」

場を沈黙が支配しようとしていた時に先に破ったのは侑斗だ。

「八神のやつ、高町やテスタロッサにも打ち明けていない事があると思う」

「八神さんが?」

内容に反応した良太郎は侑斗のいる方向に顔を向ける。

彼の表情は真剣なものだった。

「あいつが自分の夢だけに『機動六課』を設立させたとは思えないんだ」

「何か裏があるって事?」

「裏か。あいつが親友を裏切って疾しいことをするはずがないから、内々に秘めておきたい理由があるんだと思う」

「その理由って、僕達と繋がりがあると思う?」

「ないとは言い切れないな。確実にあるという自信もないが」

推測や勘の域だと良太郎は判断した。

「俺もそろそろ上がる。今日は八神家総出で外食だ」

「そうなんだ。お疲れ」

今夜の予定を告げる侑斗の背中を良太郎は見送った。

室内の照明をオフにして部屋を出ると、フェイトと会った。

「良太郎。今日はもう終わり?」

「うん。とりあえずひと段落はついたからね」

「そうなんだ。あ、ご飯食べた?」

「いや、これから食堂で食べようと思ってるけどフェイトちゃんは?」

「私はフォワードの皆にはちょっと悪いけど外食しようと思ってるんだけど……」

フェイトはそう言いながら、ちらりと良太郎を見る。

「なに?」

「良太郎。あのね。その……もしね、よかったらでいいんだけどさ。私と一緒に行かない?」

言葉を述べながら、フェイトの頬は赤くなっている。

「どこに?」

良太郎は確認するように訊ねる。

「私の行きつけの店」

フェイトは即答する。

「モモタロス達も連れて?」

良太郎はさらに訊ねる。

「良太郎と私の二人で!」

フェイトはまたも即答した。

声が大きくなると同時に、頬だけでなく顔全体が赤くなっているようにも見えた。

 

「えーっと……それって、その……デートって事?」

 

確認するような感じで、確信が持てないので自信なく訊ねる。

フェイトは今度は即答しない代わりに、どんどん顔を赤くしていった。

今、体温計で熱を測らしたら一発で破壊できそうだというくらいに。

 

「……う、うん」

 

短く、こくりと首を縦に振る。

良太郎は自身の体温が高くなっている事がハッキリわかった。

体内の血液が急激に流れが速くなっている事も。

心臓の鼓動も先程よりも激しくなっている事も。

生まれてから十九年。異性---女性にデートを申し込まれたことはなかった。

生まれもっての不運体質を自覚した時から意識的に避けていた。

女性とは『友達』になる事はできない、と。

ましてや『恋人』になんてもっての外だ、と。

女性に知り合いはいるが、『友達』と呼べるか否かというところだ。

学生時代では女子を『クラスメート』としてくくっていた。

以前に再会した澤田さんも、クラスメートであって『友達』かどうかといわれると微妙なものだ。

眼前で顔を赤くしながら、こちらを見ている少女を見る。

彼女が自分に告白したのは今より十年前の事だ。

(かわいい……)

自分にとってフェイトはプレシア・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサに託された『護るべき存在』であり、性別間を超えた『戦友』だ。

それに彼女を『かわいい』と思う事は多々あったが、そこに『異性としての意識』はなかった。

今感じた『かわいい』は紛れもなく、『異性』としてのものだった。

男女交際なんてどこかの遠島にでも置いてきたくらいに縁のない良太郎だが、フェイトの勇気を振り絞っての厚意を無碍する気はなかった。

「わかった。僕でよかったら一緒に行こう」

良太郎の良い返事に、フェイトが笑顔になったのは言うまでもないことだった。

 

 

 

 

それからチームデンライナー、ゼロライナーはひたすら頭を振り絞って、残っている作業を完成させることに専念した。

 

 

 

 

そして、期限の五日が終えて翌日のこと。

機動六課の一室には隊長、副隊長、フォワードやバックヤードはもちろんのこと、前線に出る事のない内勤局員や厨房のコック達まで着席していた。

まさに機動六課全員がこの部屋に集まっているのだ。

良太郎も侑斗も服装はスーツである。

「そういえば八神さんが挨拶してた時に思ったけどさ、六課って人数的にはどうなの?」

「多すぎるとは言えないな。八神が言うには機動一課から五課はもう少し多いらしい。六課は設立されて間がない上に実績もないから、今のところ人数の補充をする予定はないみたいだ」

「潰しは利くの?」

良太郎の問いに、侑斗は首を横に振る。

「野上さん。そろそろお願いします」

他愛のない会話が盛り上がろうとしていた時に、はやてが割り込んだ。

「わかったよ。それじゃみんな、準備はいいね?」

良太郎の一言にイマジン達とコハナは親指を立ててサムズアップで返礼した。

「みなさん、おはようございます。本日はお忙しい中、僕達の説明にお付き合いいただき誠にありがとうございます」

良太郎はマイク片手に、挨拶を始める。

「最初の話が長くなると、皆さんも眠たくとなると思いますので早速本題に入りたいと思います。まずはこちらの映像をご覧ください」

挨拶を切り上げると同時に、良太郎は少しだけ歩いて全員にスクリーンが見えるように移動する。

スクリーンには『イマジンとは?』というタイトルが出ていた。

「皆さんにとってイマジンとはどのようなものでしょう。並の武装局員が束になっても勝てない相手、高ランクの魔導師が戒厳令を出されて出撃不可させるほどの危険な存在など色々な受け止め方ができると思います。しかし、それらはイマジンの能力のほんの一端でしかありません」

良太郎の一言に室内はざわめく。

スクリーン表示が切り替わる。

『イマジンとは?』から『イマジンの主な行動目的』へと。

「その前にイマジンには大まかに分かれて四つのタイプがあると思ってください。ひとつは普通のイマジン。二つ目ははぐれイマジン。三つ目は先の二つに該当しない特殊なイマジン。四つ目は悪い集団の中でリーダー格に手足のようにこき使われてイマジンです」

スクリーンにも良太郎が告げた内容が表示されていた。

「ここで説明するのは一番最初に述べたイマジンについてです。スクリーンをご覧ください」

良太郎は皆にスクリーンを見るように促す。

簡略されてはいるが、イマジンの目的が表示されていた。

良太郎は最初のポイントをレーザーポインタで指す。

「スクリーンの内容を補足しますと、イマジンは未来の時間の人間の精神体です。つまり人間がいる限りイマジンの存在は切っても切れないモノという事になります」

イマジンに関しての真実を機動六課の中で知っているのはごくわずかで隊長、副隊長などのような役職持ちしか知らされていない。

人類が滅ばない限りイマジン絶滅はあり得ないという事を知り、動揺の色は隠せないようだ。

「イマジンの目的は過去の時間に遡って現在や未来の本来あるべき時間を改竄することが主な目的です」

この一言は今までイマジンに苦汁を与えられた管理局員に更に恐怖を与えるには十分だった。

過去に遡行して、時間を改竄するというのは現在の時空管理局のテクノロジーでも防ぐ事は不可能だ。

「イマジンの過去への遡行方法はそんなに多くはありません。ひとつは『時の列車』と呼ばれている電車、わかりやすくいえばタイムマシンを使用すること。もうひとつは契約者の望みをあらゆる手段を用いて完了させて契約者の過去を基準にして遡行することです」

良太郎はレーザーポインタで『契約者』という部分を指す。

そこには『イマジンと契約を交わした人間』と解説されていた。

「『契約』といわれて難しく考えるかもしれませんが、要は自分が一番叶えてほしい事を叶えてくれるわけです」

これだけの説明だとイマジンが『悪』と断定していいのかわからなくなり始めている頃だと考える。

「ただし、ほとんどが暴力行使ですけどね」

イマジンの契約執行方法はほとんどが暴力的なものだ。

例えば『お金持ちになりたい』と言えば、金持ちの家に強引に運び込んで住んでいる金持ち達を追い出すくらいの事は平気でやる。

「イマジンが『時の運行』を乱そうとするなら僕達が動くわけですが、過去に遡ってしまったイマジン達を追いかける手段は一つしかありません」

良太郎が言った直後に、スクリーンの表示が変わる。

『時の列車について』となっていた。

そこでコハナとバトンタッチするように、レーザーポインタを渡した。

 

 

「ここからは私、ハナが説明させていただきます。先ほども言いましたようにイマジンが過去に遡行されると『時の運行』が変わる。つまりタイムパラドックスが起きます。普通の人は改竄前と改竄後の記憶を共有することはできませんので変化を知ることはできません」

スクリーンは『時の列車について』のままだ。

「過去に遡ってしまったイマジンを私達が追いかける唯一の方法が『時の列車』を用いての時間航行です」

コハナが言うと同時に、スクリーンにはモニュメントバレーを髣髴させる荒野---『時の空間』が映し出されていた。

「今、映し出されている風景が『時の空間』と呼ばれるもので、『時間』という概念が存在する限りどのような世界にも存在します。私達もこの場所を経由してこちらのミッドチルダに来ているわけですからね」

スクリーンには『別世界への移動方法』として簡略化された図が表れていた。

「次に『時の列車』についての説明に移りたいと思います」

コハナが話題を切り替えるタイミングと同時に、『時の列車』というタイトルへとスクリーンが変わった。

スクリーンには先程と同じように『時の空間』が映し出されていた。

違うのは大地に線路が敷設されている事だった。

その上を一台の電車が走っていた。

(これ、どうやって撮ったのかしら?)

という疑問を抱きながらも、コハナは口を開き始める。

「現在『時の空間』を走っている電車、これが私達が常時使用しているデンライナーです」

更に映像が変わり、空の上を線路を敷きながら走っている姿が映し出されていた。

「私達が使用している『時の列車』はただのタイムマシンではなく、このように線路を敷設できる場所ならどこでも移動が可能になります。また……」

映像が変わると、今度は巨大な怪獣ともいえる---ギガンデスヘルと戦っているデンライナーが映っていた。

「このように戦闘能力も備わっています」

映像だよりの説明をしながら、コハナは周囲が驚きの声を上げていない事が気になる。

デンライナーの性能は現在の時空管理局のテクノロジーをはるかに上回っているのだから、驚きの声くらいは出るものだと予測していた。

(あ……)

機動六課のほとんどの面々が両目を大きく開いて、口をポカンと開けていた。

声がないのは、声を出せないくらいに驚いているという事だと理解した。

自動車、ヘリコプター以上の機動性を持ち、タイムトラベルという別世界で言えばロストロギアに匹敵するテクノロジー。

そして巨大な怪物と対等に戦うことができる戦闘能力。

時空管理局で開発、配備されているいかなる乗り物よりも優れているのだから無理もない事だろう。

「また、私達が使用しているデンライナーにはこのような種類もあります」

映像には『時の空間』に三本の線路が敷設され、三種類の『時の列車』が並走していた。

青色がメインカラーの一両編成のデンライナー・イスルギ(以後:イスルギ)

金色がメインカラーのイスルギと同じく一両編成のデンライナー・レッコウ(以後:レッコウ)

最後にイスルギ、レッコウと違い二両編成で紫色がメインカラーとなっているデンライナー・イカズチ(以後:イカズチ)

「この三種類と先程紹介したデンライナーとで……」

コハナは説明を切る。

イカズチの一両目が先頭を走り、二両目と切り離されている。

レッコウとイスルギが縦に連結してから、デンライナーへと縦に連結されていく。

デンライナー最後尾にイカズチの二両目が縦連結され、最後にイカズチの一両目がレッコウと縦連結された。

イカズチの頭部がドラゴンのように伸びるとレッコウの両端から斧が出現し、イスルギの上部が開きデンライナーの五両すべての武装が展開された。

機械仕掛けの龍---電光石火(以後:デンコウセッカ)の完成だ。

「他にもターミナルと呼ばれているキングライナーという大型の『時の列車』もあったりします。他にも色々な『時の列車』がありますがこれ以上説明すると聞いている側も疲れてくると思いますので、簡単な紹介をさせていただきます」

コハナが告げると同時に、デンコウセッカからこれまでに明らかになっている『時の列車』が映し出されていた。

ゼロノスが用いる二両編成のゼロライナー。

仮面ライダーガオウ(以後:ガオウ)が用いていたガオウライナー。

死郎が使用していた物質透過能力を持っている骸骨が頭部の幽霊列車。

一度は倒され、復讐のために立ち上がったRネガタロスが改修したネガNEWデンライナー。

(結構戦ってきたわね。私達……)

敵方の『時の列車』を見ながら、そのような感慨に一瞬耽ってしまった。

「少々、端折ったりもしましたが以上で『時の列車』についての説明を終わります。次はこちらです」

コハナは頭を下げてから、次の説明役であるモモタロスにレーザーポインタを渡した。

 

 

「俺、参上!!」

とモモタロスは左手を前に右手を後ろにして、針時計にして四時のポーズを取っていた。

場内は静まり返り、何のリアクションもなかった。

「あり?」

思わず首を傾げてしまうモモタロス。

「センパイ。なのはちゃん達みたいに冗談が通じる相手ばっかりじゃないんだって……」

次の番であるウラタロスが近寄って耳打ちしてきた。

「マジかよ……」

やりづれぇ、とモモタロスは本気で思った。

ミッドチルダに来てから、イマジンであることから遠目で恐怖がこもった目で見られることは多々あった。

空間シミュレーターでストレス発散としてガジェットドローンを破壊しまくるが、それもさすがに飽きはじめていた頃だ。

(あー、面倒くせぇなぁ……)

適当にパパッと終わらせてやろうかとも考えたが、そんな事をしたらプリンが食べれなくなるだけでなく、コハナからの鉄拳制裁もありえる。

「真面目に……、真面目に……」

小声でつぶやきながら、モモタロスは説明を始める事にした。

スクリーンには『電王ソードフォームについて』と表示されていた。

タイトルからすぐに、赤色が目立つ電王---ソード電王の全体写真が映し出されていた。

「俺と良太郎でこの姿にもなれるし、パスさえあれば俺だけでもこの姿に変身することもできるぜ」

映像が縦に分割される。

右にはデンオウベルトを巻いた良太郎、左には同じくデンオウベルトを巻いたモモタロスが映っていた。

それぞれが「変身!!」と叫んでから、パスをセタッチする。

『ソードフォーム』とデンオウベルトが電子音声で発すると、プラット電王からオーラアーマーが宙に浮かんで出現して、それぞれの部位に装着されていく。

最後に頭部に電仮面が走り、『仮面』の役割を果たす位置になると停止してパカリと桃が割れたような形になった。

左右のソード電王が同じタイミングで、右親指で自身を指してから右手を後ろに左手を前にした大仰なポーズをとる。

 

「「俺、別世界でも参上!!」」

 

とソード電王が高らかに叫んだ。

それから戦闘を繰り広げている映像へと切り替わった。

九歳のフェイトとの戦闘。(第一部参照)

レイイマジンとの戦闘。(第二部参照)

ヴィータとの戦闘。(第二部参照)

ソード電王の戦闘の中で、別世界側となるとこの三つが代表的なものだろう。

「フェイトや赤チビと戦って思ったけどよ。魔法使える奴ってのズリーよなぁ。空は飛ぶわ、飛び道具ぶっ放してくるわでいつもと違うからやりにくいったらなかったぜ」

これはモモタロスの本音だ。

フェイトにもヴィータにも勝ってはいるが、それが一番強く残っていた。

「まぁ見ても分かるように、俺は剣をメインにして戦ってるってわけだ。最初に言っとくけど誰かに習ったわけじゃねぇぞぉ」

モモタロスは付け足すようにして、自身の戦闘スタイルを打ち明けた。

「さぁてと俺の説明は終わりだ。次はカメだかんなぁ」

モモタロスはウラタロスからレーザーポインタを受け取った。

 

 

「センパイったら適当なんだから……。て言っても僕も似たようなことしか説明できないからね」

ウラタロスが警告のようなセリフを言う。

「名前を知らない人は初めまして。僕はウラタロス。ちなみにさっきの脳味噌干物で赤鬼顔のはモモタロスだからね」

自己紹介をすると同時にモモタロスの紹介も一応しておいた。

「僕も先程のセンパイと同じように良太郎の中に入り込んで僕のスタイルに合った電王に変身できるし、パスさえあれば僕だけでも変身できるんだ」

スクリーンには『電王ロッドフォームについて』となっていた。

映像も先程のモモタロスと同じように、変身パターンが二つになっていたが結論は同じで左右ともに青色がメインカラーとなっている電王ロッドフォーム(以後:ロッド電王)となっていた。

 

「「お前、僕に釣られてみる?」」

 

と決め台詞もかぶっていた。

「僕はセンパイと違って魔導師や騎士と戦ったことはないけど、間近で見た感想としてはセンパイと同じでいつもと違うからやり辛いってのは本当だね」

ロッド電王として別世界で戦った相手は全てイマジンだ。

チーターイマジン(第一部参照)とシー・ブリームイマジン(第二部参照)と戦った映像が映し出されていた。

「僕は主にロッドと蹴りを主にして戦うね。当たると結構痛いから気を付けてね?」

気遣ってるのか脅しているのかわからないようなことを言いながら、ウラタロスは使わなかったレーザーポインタをキンタロスに渡した。

「それじゃ、キンちゃんよろしく」

 

 

レーザーポインタを受け取ったキンタロスは腕を組んで、首を捻っていた。

「なぁ良太郎」

「なに?キンタロス」

「俺の紹介、ハッキリ言って二番煎じにしかならへんと思うねんけどええんか?」

キンタロスが紹介する内容も、ハッキリ言えば先の二体と大して変わりはない。

「聞いてる側としても、そう感じるとは思うけどさ。それでもやっておかないとね……」

「む……」

キンタロスは唸りながらも、良太郎の言い分も尤もだと納得してしまう。

(とは言うても、俺もリュウタの紹介も新鮮なもんとは言えへんで……)

モモタロス、ウラタロスに続いての紹介なので見ている側も退屈しているのでは?と思ってしまうのはある意味では芸人気質だ。

もう一度、この部屋にいる別世界の者達を一瞥する。

(退屈しとるような目はしてへんな)

ならばこちらもそれ相応の態度で接しなければならないわけだ。

「俺が説明するんもモモの字やカメの字と大して変化はあらへん。戦い方が若干違うくらいやからなぁ」

スクリーンには『電王アックスフォームについて』と表示され、すぐに左右に画面が分割して良太郎とキンタロスが映し出されていた。

ロッド電王と同じように、分割された二つの画面の結末は金色がメインカラーの電王---電王アックスフォーム(以後:アックス電王)だった。

 

「「俺の強さにお前が泣いた!!」」

 

映像の中のアックス電王が相撲取りがとる仕草をしながら言った。

ウイッチドッグイマジン(第一部参照)、レイディバードイマジン(第二部参照)との戦いが映し出されていく。

「俺の得物は斧や。リーチは短いけど一発の威力は大きいでぇ」

自身のスタイルを説明する。

「それじゃリュウタ。出番やで」

キンタロスは親指で首をくいっと捻ってから、レーザーポインタをリュウタロスに渡した。

 

 

「やーっと僕の番♪」

堪え性のないリュウタロスはキンタロスからレーザーポインタを受け取って、人の目はばからずに諸手を上げて喜んでいた。

その場でくるりとターンをしてから、指をびしっと指す。

「これからは僕が行くよ?いいよね?答えは聞いてない!!」

と言うと直後にスクリーンは『電王ガンフォームについて』という表示になっていた。

リュウタロスは左手にレーザーポインタを持ち替えて、右手にフリーエネルギーを収束させて紫色の銃---リュウボルバーを出現させた。

「僕が使う武器はこの通り、銃だよ!これでどんなヤツでもバンバン撃っちゃうんだ!」

そう言いながら、ジャキンとリュウボルバーの銃口を前へと構える。

『イマジンが銃を構える』という行為が、どれほど脅威になるものかをリュウタロスが知っているわけがない。

リュウタロスも本気で撃つわけではないので、すぐにリュウボルバーを引っ込めた。

「僕の戦い方は今から流れるえーぞーを見たらわかるからね」

スクリーンにはくどいかもしれないが、左右に分割されて良太郎とリュウタロスの変身シーンへとなっていた。

互いにパスをセタッチしてから、電王ガンフォーム(以後:ガン電王)へと変身した。

左右のガン電王は先程のリュウタロスと同じようにその場でくるりとターンをしてから、右手を前に出す。

 

「「オマエ、倒すけどいいよね?答えは聞いてない!!」」

 

ガン電王が決め台詞を吐き、そのまま戦闘映像へと切り替わっていった。

シープイマジン(第一部参照)、レイディバードイマジン(第二部参照)の戦闘が映し出されていく。

その戦闘方法は『銃』というものを主武装とする者達の度肝を抜くような戦い方だったというのは言うまでもないだろう。

「僕のお話はこれでおしまい!次は良太郎の番だよ♪」

リュウタロスは良太郎にレーザーポインタを渡した。

 

 

リュウタロスからレーザーポインタを受け取った良太郎は本日二度目のナビゲーターを務める事になる。

「僕が説明する電王はこちらの二種類です」

スクリーンには『電王クライマックスフォーム、ライナーフォームについて』と表示されていた。

すぐに電王クライマックスフォーム(以後:クライマックス電王)とライナー電王が映し出され、クライマックス電王がアップになっていた。

「まずこちらの電王ですが、これは先に説明してくれたモモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスの力を一つに集約された電王といっても過言ではありません」

それを聞いた局員達は驚きの声を上げる。

ただでさえ、強い電王のその上がいると聞けば驚くのも無理はないと思う。

「ただ、この電王にも欠点もいくつかあるのは確かです。一つは先に言った四人の『想い』がを一つにならないと、この姿になる事はできません。もう一つは力が集約されていますが人格はそのまま残っている状態です」

クライマックス電王の主な主導権はモモタロスだが、他の三体も身体を操作しようと思えばできる。

そうなってくると、主導権争いが起こることも十分にあり得る。

それでもこれまで上手くやってこれたのは、無意識レベルではあるが互いが互いを尊重している部分もあるからだと良太郎は最近考えていたりする。

双子のコッドイマジン(第一部参照)、ゼブライマジン&ゴリライマジン&ジラフイマジン(第二部参照)の戦いが映し出されていた。

(改めてみると、こっちが不利の状況が多いような……)

複数対一が目立つ戦闘ばかりだと改めて過去の映像を見ながら、思ってしまう。

スクリーンはまた、二種類の電王を映し出した状態へと戻って今度はライナー電王がアップになった。

「こちらが僕が主人格で変身する電王です。こっちも先程の電王と同様に四人の力を使うことができます」

ライナー電王の長所はクライマックス電王と同様に、四体のイマジンの力を使うことができる事だ。

「唯一の違いは先程の電王がモモタロス達の人格も体内に収まっているのに対して、この電王は体に収まっているのは僕の人格のみであること、そして純粋に力だけを使うことができる事です」

レーザーポインタの光がライナー電王が握っているデンカメンソードに重なった。

「この剣を介して四人はアドバイスをしてくれます」

告げると同時に、良太郎はレーザーポインタの電源を切った。

「一見欠点のないようにも見えますが、この電王にも欠点があって主人格である僕が彼等四人の力をきちんと把握していないと完全に発揮することができないという事です」

自身が体験している事だから嫌でもわかる事だ。

特性と欠点を把握して戦闘スタイルを切り替えなければ能力に振り回されて自滅なんてことも十分にあり得る。

(今の僕でどれだけ扱えてるか……)

良太郎の思案をよそに、ライナー電王としての主な闘いの記録が映し出されていた。

ファルコンイマジンとの戦い。(第一部参照)

プレシア・テスタロッサとの戦い。(第一部参照)

シグナムとの戦い。(第二部参照)

仮面の男との戦い。(第二部参照)

仮面ライダーネガNEW電王(以後:ネガNEW電王)との戦い。(第二部参照)

先程のクライマックス電王との戦いを見た時もそうだが、改めて自分の戦いを映像で見ると『運がいい』と思わずにはいられないものがあった。

(よく生きてたなぁ……)

良太郎は映像を見ながら、自身がこの場に足ついて生きていることを感謝せずにはいられなかった。

どの戦いも下手をすれば確実に死ぬようなものばかりだからだ。

見ている管理局員達も今まで以上に真剣なものになっていた。

特に仮面の男とネガNEW電王の戦いを、だ。

(後はジークを含めた電王だけど……。アレはジークがいないと成立しないし、常に変身できるわけじゃないから下手に紹介するわけにいかないしね)

クライマックス電王にジークというイマジンを含めた電王---電王超クライマックスフォーム(以後:超電王)がある。

しかし、良太郎はこの電王の紹介をするつもりはなかった。

最大の理由としては常に使えるわけではないという事だ。

今までの電王の中で最強の力を有していると言ってもいいのだが、難解な条件付きの電王に頼られるのは後々危険だと判断したうえでのことだ。

「以上で僕からの紹介は終わります。次はゼロノスについてです」

良太郎は頭を下げてから、最後になる侑斗にレーザーポインタを渡した。

 

 

電王の紹介の後、ゼロノスの事について話すというのがかねてよりの事だった。

(迂闊だったぜ。電王の形態は俺よりも倍以上あるじゃねぇかよ)

ゼロノスの形態は全部で三つ。対して電王は最弱形態のプラット電王、神出鬼没といってもいい電王ウイングフォーム(以後:ウイング電王)そして最強形態の超電王を抜いたとしても六形態もある。

知らない側はその手の話を聞いたら、面白いかもしれないが知っている側としてみれば退屈なことこの上ないのは確かだ。

「トリを飾らせてもらう桜井侑斗です。俺が変身するゼロノスは形態は三つあってそのうち、主人格が俺なのはこの二つです」

侑斗が言った直後に、スクリーンに表示されていた『ゼロノスについて』から緑色がメインカラーのゼロノス・アルタイルフォーム(以後:ゼロノス)と赤銅色のZゼロノスが映し出されていた。

「どちらに変身するにしても俺には相応のリスクが付きまといます。野上のようにパスを用いて変身するのではなく、このカードを用いるわけですから」

スーツの懐から黒いカードケースを取り出して蓋を開けて、三枚のゼロノスカードを取り出した。

アルタイル(A)フォームを表す緑色/ベガ(V)フォームを表す黄色。

緑色/ゼロ(Z)フォームを表す赤銅色。

黄色/赤銅色。

という三種類だ。

「このカードを用いて俺はゼロノスに変身するわけですが代償があります。それは……」

デネブが不安げな表情でこちらを見ている。

だが、これは誰かが言ったところで真実味を帯びないものだ。

もっとも自身が口にしたところでも真実味があるとは思えないものだが。

 

「俺に関することを皆さんが忘れていく事です……」

 

侑斗の一言にこの事を知らない局員達は一瞬にして顔面を蒼白させていた。

自分達の意識もなく、一人の人間を忘却してしまう事実にだ。

「これは俺自身が覚悟している事ですので、皆さんは気にしないでください。それに別世界(ここ)は俺が住んでいる世界よりもカードの効力が甘いからよほどの事がない限りは、皆さんが忘れるところまでには至りません」

慰めにならない事を侑斗は告げる。

下手に同情されるのは自分の性には合わない。

何故なら自分は自分の意思でゼロノスになったのだ。

忘れ去られることに慣れているわけではないが、その事で他人に憐れみをかけてもらって喜ぶことはない。

誇りに思うほど、大げさなものではない。

ただ、自分がゼロノスになる事の当然の代償として割り切ってはいるが。

「以上で俺が主人格のゼロノスの紹介は終わります。デネブ」

「了解!」

侑斗の声にデネブはレーザーポインタを受け取った。

「初めまして。デネブです」

今までのイマジン達とは違い、軽く頭を下げる。

手にはデネブキャンディーの入ったバスケットはない。

侑斗が先日に口を酸っぱくして注意をしておいたからだ。

「俺が主人格となるゼロノスは一つだけなんだ。後は侑斗が赤いゼロノスになるときは俺はこんな武器になっているんだ」

スクリーンにはVゼロノスとデネビックバスター(以後:Dバスター)の二つが映っていた。

この二つはデネブに大きく関係あるものだ。

「Dバスターになっている俺の弾丸の一発は大した威力がないけど連射、つまり数で勝負してるから十分に戦えるんだ」

デネブは自身が武器化した姿の事を説明した。

「以上で俺達ゼロノスの説明を終わります」

侑斗が言った直後に、良太郎、コハナ、モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスも歩いて一列に並んだ。

 

「礼!!」

 

モモタロスが発し、全員が頭を下げた。

 

ご清聴ありがとうございます。

 

と、感謝の言葉を述べた。

その場にいる誰もが拍手を送ってくれた。

 

 

こうして『次元世界最強の戦士』と呼称される仮面ライダーについての説明会は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

     リュウタロス「仮面ライダー電王LYRICAL StS!!」

            張り切るフォワード陣

            対戦相手は現状を把握してはいる。

            把握してはいるのだが……

         第十七話 「相手は野上良太郎!?」
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