仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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6月ももう少しで終わろうとしていますね。

雨ってそんなに降ったように思えない、みなひろです。

越境解除となり観光に行こうとする方々もいらっしゃいますが、

8月になるとどうなるんでしょうね。

他はどうかは知りませんが、ウチの地元はイベント事は中止です。

世にも静かな夏休みが確約されてしまっているわけです。



第十八話 「アラートは実戦という旅立ちの汽笛」

 

一対四。

フォワードチームには優勢であり、野上良太郎には圧倒的に不利な状況となった。

傍から見ればの話だが。

実際には目で見た通りというわけではない。

「野上が戦うには珍しくホームの展開になるな」

桜井侑斗が腕を組んで、空間シュミレータにいる良太郎を見下ろしていた。

「ホーム?どうみてもアウェイやと思うけど?」

隣でリインのためにデネブキャンディーの袋を開いてあげている八神はやては首を傾げた。

一対四の状況で何故、良太郎がホームになるのかわからない。

「そうですよぉ。ノガミさんには不利だと思うです。あの子達も初めての実戦を無事乗り越えていますから今までとはちょっと違うですよ」

デネブキャンディーを両手で持って少しずつ味わっているリインもはやてと同じ意見だった。

「お前等。野上が電王に変身している時だけ強いって認識だったら、あいつを舐めてる証拠だぞ?」

侑斗もデネブキャンディーの封を開いていた。

「桜井の言う通りです。主はやて」

頭上から声がしたので、振り向いてみるとシグナム、ヴィータがいた。

「シャマルとザフィーラ、あとデネブは?」

「シャマルは医務室でザフィーラはその護衛、おデブは厨房で厨房スタッフと何か話してた」

「あいつ、その内シェフとかになりそうだな」

「それは負けられへんな」

ヴィータがここにはいない一人と一匹と一体の所在を説明し、侑斗はありえそうなデネブの未来を想像してはやてはそれに対抗意識を燃やした。

「それよりもシグナム。さっきの侑斗さんの言う通りってのは?」

「そうでしたね。私は十年前に電王に変身していない野上と剣を交えたことがあります。レヴァンティンを用いなかったことを差し引いても、決して軽い相手ではありませんでした」

「マジ!?」

ヴィータが驚きの声を上げるのも無理はなかった。

シグナムが良太郎と剣道場で戦った事を知るのはザフィーラだけなのだから。

「今の野上はあの頃よりもさらに強くなっているでしょう。仮に私が戦ったとしても楽に勝てるとは言えません」

「ノロケかよ?シグナぶっ……」

ヴィータが何かを言おうとしたが、シグナムの拳骨で噛んでしまった。

「ってーなぁ!!何すんだよシグナム!!」

殴られた頭を両手で押さえながら、ヴィータは涙目で睨む。

「次に余計な事を喋ったら一発では済まさんぞ?」

頬を少しだけ朱に染めながらシグナムはヴィータに忠告した。

「圧勝はない、てことやね?」

「はい」

はやてはこれ以上刺激するのは危険だと感じたので結末を予想して訊ねると、シグナムは首肯した。

「私等は結構気楽な立場で見れるけど、あっちはどうなんやろな……」

はやての言う『あっち』に全員が視線を向ける。

そこにはどこか落ち着きのないフェイト・T・ハラオウンがいた。

 

 

フェイトの心は落ち着いていなかった。

このように落ち着きがないのはいつ以来だろうと振り返ってしまいたくなる。

自分が保護した子供達二人と自分の想い人がこれから戦うのだ。

それを落ち着いてみる事は今の自分にはできそうにないようだ。

(エリオ、キャロ、良太郎……)

これは模擬戦だ。命を落とすことはよほどの事でない限りはまずない。

理屈ではわかっていても、心配してしまうものだ。

何せ三人のうちの一人は不幸の女神に愛されている男だ。

『よほどの事』というものが起こってしまうという疑念が膨らんでしまうのも無理のないことだった。

(エリオやキャロもいつかはこんな気持ちになっちゃうのかな……)

自分が良太郎と戦う事になれば二人は今の自分と同じ気持ちになるのだろうか。

保護者と言っても親子ではないのだから何とも言えないのだが。

自分が心配しても向こうが心配するとは限らないからだ。

(親って結構損な部分もあるんだね。良太郎)

損得勘定を出すつもりはないが、ふとフェイトはそう思ってしまった。

(みんな、頑張って)

ライトニングの隊長として部下の無事と一人の女性として想い人の無事を籠めて願った。

 

 

フェイト、侑斗、はやてはこれから始まろうとする戦いを前に昨日の任務及びそこに至る経緯を誰の指図を受けることなく振り返る事にした。

 

 

 

 

機動六課を離れてから数キロ、フェイトはステアリングを握り自動車を運転していた。

隣のはやては快適な表情で流れる景色を見ていた。

「フェイトちゃん。運転上手いなぁ」

「そうかな。普通だよ」

余所見をするわけにはいかないので、視線は前を向いたままだ。

「桜井さんもきちんと追走してるね」

バックミラーには真後ろでゼロホーンに乗っている侑斗の姿が見えた。

「バイクに乗るんもええかもなぁ。気持ちよさそうやし」

はやては助手席からちらりと後ろを見ながら言った。

「うん。気持ちいいよ。車と違って風と一体になっている気分になるんだ」

「フェイトちゃんは乗ったことがあるん?」

「あるよ」

フェイトはウインカーを点滅させて、右にステアリングを切った。

八車線の道路で左右の区切りとして縁石というよりも壁が設置されていた。

自動車は一番左から中央へと車線を移動する。

ゼロホーンも釣られるように移動した。

それからもいくつかの世間話をした後で、話の内容は現在向かっている場所にいる人物の事になっていった。

「聖王教会騎士団の魔導騎士で管理局本局の理事官。カリム・グラシアさんか。私はお会いしたことないんだけど……」

「そうやったねぇ……」

はやてにしてみれば身近に感じる人間でも、フェイトにしてみれば縁遠いという事だ。

「はやてはいつから?」

「私が教会騎士団の仕事に派遣で呼ばれた時でリインが生まれたばっかのはずやから……、八年くらい前かなぁ」

「そっか」

「カリムと私は信じてるモノも立場もやるべき事も全然違うけど、今回は二人の目的が一致したから……」

助手席のはやては、運転しているフェイトと違ってシートベルト着用とはいえある程度は体の自由が許されている。

「そもそも六課の起ち上げは実質的な部分をやってくれたんはほとんどカリムなんよ」

「そうなんだ」

フェイトとしてはさして驚くほどの事ではなかった。

誰か協力者がいたのでは?というような考えはあったからだ。

「おかげで私は人材集めに集中できた」

はやての表情は心底感謝していた。

「信頼できる上司って感じ?」

「うーん。仕事や能力は凄いんやけど、あんまり上司って感じはせえへんなぁ。どっちかっていうと『お姉ちゃん』って感じやね」

はやての回答にフェイトは思わず声を出して笑う。

「そっか」

一通り訊ねる事は訊ねたので、フェイトとしては今のところ質問はない。

「レリック事件が解決して一段落したら、ちゃんと紹介するよ。なのはちゃんやフェイトちゃんとも気が合うよ♪」

「うん。楽しみにしてる」

フェイトの右足がさらにアクセルペダルを踏んだ。

 

 

ミッドチルダ北部ベルカ自治領『聖王教会』大聖堂。

聖王教会に到着した侑斗とはやては、フードを被っていた。

身元を偽るような扮装だった。

フェイトは、役目を終えているのでここにはいない。

(カリム・グラシア。八神が高町やテスタロッサ達に何かを隠している理由に無関係とは言えないな)

被り物をするように案内人の男に指示されているところかすると、管理局員やその助っ人が大っぴらでこの場所に足を踏み入れる事はよしとはしていないようだ。

「侑斗さん。くれぐれも粗相のないように頼むで」

「言われなくてもわかってる」

釘を刺された侑斗は、むすっとした表情で答える。

案内人の足が止まり、自分の前を歩いているはやての足も止まった。

ここに本日の目当ての人物がいるのだろう。

案内人がドアを叩く。

「どうぞ」

と部屋から声がしたので、両扉の右側を開く。

待ち受けていたのは、金色の長髪で落ち着きのある雰囲気を纏った女性だった。

(騎士?)

『騎士』と呼ばれているのだから威厳のある雰囲気を想像していたのだが、どうみても戦場に出て戦う事が出来るような人物とは思えなかった。

(シャマルに近いタイプだな)

自分の中で知っている騎士と照らし合わせた。

「カリム。久しぶりや」

はやてはフードを脱いで、顔を露わにする。

「はやて。それと……」

カリムは、はやてを一瞥してからこちらを見ていた。

フードを脱いで、顔を露わにする。

「カリム。この人が桜井侑斗さん、仮面ライダーゼロノスや。侑斗さん。この人がカリム・グラシアさんやで」

はやてが仲介人として互いを紹介してくれた。

「桜井侑斗です」

「初めまして。カリム・グラシアと申します」

互いに一礼をした。

一人のシスターがお菓子と三人分の紅茶を用意してくれた。

はやてとカリムが座り、侑斗ははやての隣で立っていた。

「ごめんなぁ。すっかりご無沙汰してもうて」

「気にしないで。部隊の方は順調みたいね」

「カリムのおかげや」

カリムはクッキーを、はやては紅茶の味を楽しんでいた。

「そういう事にしておくと、お願いもしやすいかな」

(ただの世間話ですむわけないと勘繰っていたけど、まさかドンピシャとはな……)

侑斗はこの騎士とはやてが逢うという事には最初からただの平和的な話ですむわけがないと考えていた。

今のところは口出しする気はないので、静観することにした。

「何やぁ?今日会ってお話しするんはお願い方面かぁ?」

カリムの穏やかな表情が真剣なものになっていった。

宙にモニターを展開させて、触って操作していく。

ガーッと室内のカーテンが自動的に閉じられた。

途端に、はやての表情も真剣なものになった。

彼女も分かっているのだろう。

『世間話』の時間は終わったのだと。

宙に六つのモニターが展開されていた。

妙な箱がクルクルその場で回っているものや、ガジェットドローン一体とと同型と思われる妙な機械兵器が二体

それとこちらの世界で書かれている文章と何かを分析していたと思われるグラフだ。

侑斗がわかるのはガジェットドローンとそれと同型と思われるタイプがいるという事だけだ。

イマジンが表示されていないところからして、それはわかっていないという事だろう。

「これガジェット……。新型?」

「今までのⅠ型以外に新型らしいのが二種類。戦闘性能はまだ不明だけどコレ……」

カリムが眼前に展開しているモニターをさらに操作すると、ガジェットドローンの新型の一体がアップで映し出された。

完全な丸型だ。

「Ⅲ型は割と大型ね」

丸型のガジェットドローンはⅢ型と呼称されており、人と対比してみると大型というのがわかる。

「本局にはまだ正式報告はしていないわ。監査役のクロノ提督にはさわりだけお伝えしたけど……」

(提督?あいつ出世したのか……)

侑斗にしてみれば会った回数はわずかだが赤の他人というわけでもない間柄だ。

「これは!」

はやての視線は妙な箱に行っていた。その表情はさらに険しくなっていた。

聞いてみたいところだが、話の腰を折るわけにはいかないので事の成り行きから情報収集することにする。

「それが今日の本題。一昨日付けでミッドチルダに運び込まれた不審貨物……」

「レリック……やね」

「その可能性が高いわ。Ⅱ型とⅢ型が発見されるようになったのも昨日からだし……」

「ガジェット達がレリックを見つけるまでの予想時間は?」

「調査では早ければ今日、明日」

カリムとはやてから自身でもわかる言葉と言えば、ガジェットドローンくらいだ。

推測するに、『レリック』というのはロストロギアにカテゴライズしても構わないものだという事だろう。

「せやけどおかしいなぁ……。レリックが出てくるんがちょっと早い」

「だから会って話がしたかったの。これをどう判断するべきかどう行動するべきかを……。レリック事件もその後に起こる事件も……そして……」

その場の空気はますます重くなっていく。

 

「サイキョウニシテサイアクナルモノも……対処を失敗するわけにはいかない」

 

カリムが発した言葉で侑斗は一つの確信を得た。

自分や良太郎が手にしたあのメモ書きを彼女達は知っているということを。

(俺の予想、当たっちまったぜ。野上……)

そろそろ静観することを侑斗はやめにすることにした。

はやてはこちらを見ていた。

「侑斗さん……」

という思いが入っている。

侑斗も視線ではやてを見る。

「覚悟を決めてるんだろ?」

という思いで返した。

はやてはカリムの眼前にあるモニターを自分の方に寄せて操作する。

自動的に閉じられていたカーテンが開く。

室内が急に明るくなったので、一段と日差しがまぶしく感じる。

「まぁ、何があってもきっと大丈夫。カリムが力を貸してくれたおかげで部隊はもう何時でも動かせる。即戦力の隊長達はもちろん新人フォワード達も実戦可能。それにイマジンが来ても仮面ライダーがおる」

はやては自信に満ちた表情でカリムに言う。

「予想外の緊急事態にもちゃんと対応できる下地はできてる。そやから大丈夫!」

(そろそろ質問できる頃合いか……)

侑斗は一歩下がった状態から自身を解放することにした。

「騎士グラシア。貴女に訊きたい事がある」

「何でしょうか?桜井様」

カリムは質問されることを予期していたのか驚いている様子はない。

「貴女や八神のさっきの口調からして、これから起こる事をまるで知っているかのような口ぶりだったんで気になって……」

カリムやはやてを見る。

恐らくは種明かしをしていいかどうかを伺っているのだろう。

「カリム。侑斗さんは大丈夫や。それにどちらかというと侑斗さん等はその手の事の実体験もしてるんやし……」

カリムの持っている秘密が、自分の考えている通りのものならば『経験済み』と断言できるだろう。

カチャンという音が響く。

カリムがカップを手にした音だ。

一口飲んでから視線をこちらに向けた。

そして、閉ざしていた口を開き始めた。

 

 

六番ポートにはやてを送り終えたフェイトは機動六課へと帰路をたどっていた。

横に誰もいないとなると、気を遣う必要もないので運転も個人向けのものになる。

スピードメーターもはやてを同席している時よりも速い数値を表示していた。

ステアリングを握る両手の力は、強すぎず弱すぎずという絶妙なものだった。

(はやて。いいなぁ)

フェイトは不謹慎である事は承知だが、はやてと侑斗が四六時中一緒であることは羨ましかった。

これがもし自分と良太郎だったらどうだろう。

きっと保てないかもしれない。

公私混同しない自信はあるが、それでもどこか浮ついているだろうという事は安易に想像できた。

(そういえば今日は良太郎を見てないような……)

一人の異性に依存しているわけではないが、いつも見ている顔を見ていないとなると落ち着かないものだ。

今日は朝から一度も顔を合わせてはいない。

同じ場所にいながらも、立場が違うから機会がないのも当然なのかもしれない。

自分は正規の局員で彼は民間協力者だ。

会社で言うならば正社員とアルバイトの様なものだ。

(正社員に恐れられているアルバイトってのも変な話だね)

自分のたとえ話にぷっと小さく吹き出してしまう。

その間もステアリングは握られており、運転ミスはしていない。

「六課の方はどうなってるんだろ……」

今のところは警戒態勢も取ったことはないし、イマジン出撃の話も出ていないので平和と言えば平和だがそれが永遠不変というわけでもない。

自分の経験上、一時間前が平和でも現在に事件が訪れるなんてことはよくある事だ。

フロントガラス部分に、モニターが展開される。

モニターの大きさは運転の邪魔にならない程度の大きさだ。

表示されているのは物ではなく、人物だった。

眼鏡をかけた男性---グリフィス・ロウランだ。

『お疲れ様です』

「お疲れ様。はやては無事に着いてると思うよ」

『そうですか』

モニターに映るグリフィスは安堵の息を漏らしていた。

「私はこの後に公安地区の捜査部に寄って行こうと思うんだけど、そっちは何か急ぎの用事とかあるかな?」

『いえ、こちらは大丈夫です』

グリフィスが虚勢を張る必要はないので、その言葉は真実なのだろうと今ならわかる。

これが初日ならば嘘で誤魔化しているのだと疑っていた。

人というのは環境に慣れる動物だと聞いた事がある。

イマジンと共闘している機動六課は時空管理局の中では極めて異色と言ってもいいだろう。

今となっては機動六課でモモタロスをはじめとするイマジン達を露骨に恐れる者はいない。

彼等の人となりを知ることで、変に身構えたりすることがバカらしくなったというのが最大の原因だったりする。

フェイトはウインカーレバーを上げて、右を指示してからステアリングを切る。

自動車は操られるようにして、右へと車線を変更した。

『副隊長二人は交代部隊と共に出動中ですが、なのはさん、野上さんをはじめとするチームデンライナーも全員いらっしゃいますのでイマジンが出現しても大丈夫です』

そのような会話が進もうとしていた時だった。

 

『ALERT』

 

とグリフィスが映し出されているモニターの隣に、新しく出現した背景色がマゼンタカラーのモニターに白色で表示されていた。

フェイトの表情が一変して険しいものになった。

その表情は『エリオとキャロの保護者』でも『野上良太郎を一途に想う女性』でもない『時空管理局執務官兼ライトニング分隊長』の顔だった。

 

 

聖王教会でもこの『ALERT』の表示は確認されていた。

カリムの言っていた事は本当に起こったのだ。

現在、はやてとカリムが無数に展開させているモニターを駆使して調査している。

こうなると、侑斗は蚊帳の外であってできる事は何もない。

ふと気になったことがあるので、調査中とは憚られるがはやてに訊ねる事にした。

「なあ、八神」

「どうしたん?侑斗さん」

「お前等が追っているレリックってヤツはロストロギアとみていいのか?」

はやては侑斗の方へと向かずに、答える。

「そうやね。そうみても構へんよ。それがどうしたん?」

侑斗の中での想定内の返答だった。

「ソレって売ったら金になるのか?」

この質問で、はやてのタッチ操作していた手がピタリと止まった。

「なりますね。上質なロストロギアなら高額で取引されていたりします」

はやての代わりにカリムが答えてくれた。

「となると、野上さん等も出動してもろた方がええんやろなぁ……」

「出てこなきゃそれでいいけど保険として、な」

「わかってるて」

侑斗とはやての会話は進んでいく。

「何か?」

そのやり取りをじっと見ている視線を感じたので、顔を向ける。

言うまでもなく、カリムだ。

「保険とは一体何のためのものでしょうか?」

自分とはやてには先程の会話だけで殆どがわかるが、外野からしてみたらわからない事だらけらしい。

 

 

「「イマジンにだ(や)」」

 

 

侑斗とはやては声を揃えて答えた。

カリムは笑みを浮かべている。

「カリム。お仕事中やで」

「ごめんなさいね。はやて。でもおかしくって」

「笑いを取るつもりはないんだがな……」

侑斗は腕を組んでから、次に自分ができる事がないかを考える事にした。

 

 

調査を終えたはやては、報告として機動六課隊舎と現在車で移動しているフェイトに向けて通信を発信した。

「はやて。この件は私達、『聖王教会の依頼』として正式にお願いするわ」

「了解や。なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君。こちら、はやて。聞こえるか?」

はやての眼前に、三つのモニターが出現した。

映っているのは、呼びかけた三人だ。

『状況は?』

フェイトが切り出してきた。

「教会騎士団の調査部で追ってたレリックらしきものが見つかった。場所はエイレム山岳丘陵地区、対象は山岳リニアレールで移動中……」

『移動中って……』

『まさか……』

フェイトとなのはが思わずそのような台詞を出してしまうのも、はやては無理はないと思った。

物品強奪をするなら、強奪者はリスクなく事を成し遂げたいというのがセオリーだ。

そうなると、移動中よりも強引に停止させて奪う方がリスクは高くなるが強奪者の生存率はそれなりに高くなるだろう。

だが、今回の場合は移動中にもかかわらず成し遂げようとしている。

そうなってくると、犯人はリスクを覚悟の上で行える命知らずか、そんな事を気にせずに平然と行える人外の者という事になってくるわけだ。

前者の可能性は薄いだろう。

山岳リニアレールの速度はどう見ても魔法を使える人間が行うからこそ可能というものだが魔力反応が出てこなかった。

となると、後者の可能性が高い。

そして、その考えが正解であるように山岳リニアレール(以後:リニアレール)が映し出されているモニタには人外の者が張り付いていた。

ガジェットドローンだ。

「そのまさかや。内部に侵入したガジェットのせいで車両の制御が奪われてる。リニアレール車両にいるガジェットは最低でも三十体。大型や飛行型の未確認タイプも出ているかもしれへん」

はやては状況を一通り告げてから、一拍おいてからもう一度真面目な表情になる。

「いきなりハードな初出動やけど、なのはちゃん、フェイトちゃん。行けるか?」

『私はいつでも!』

『私も!』

フェイトとなのはが即答した。

この二人は自分の中では想定内の事なので問題はない。

「スバル、ティアナ、エリオ、キャロ。みんなもオッケーか?」

この四人の実力は未知数だ。

正直、訓練が優秀でも実戦ではてんで駄目という事は珍しいことではない。

だがこの四人なら自分が期待している返事が出るだろうという確信があった。

 

『『『『はい!!』』』』

 

四人は自分の期待通りの返事をしてくれた。

「よしっ!いいお返事や。シフトはAの3、グリフィス君は隊舎での指揮、リインは現場管制。なのはちゃん、フェイトちゃんは現場指揮。それと野上さん」

六課のメンバーに粗方指示を終えると、はやては良太郎に向ける。

『何?八神さん』

「モノがモノだけにイマジンが出現する可能性は否定できません。もしもに備えてですけど出動をお願いしたいんですけどよろしいですか?」

『わかりました』

良太郎も即座に快諾してくれた。

 

 

「ほんなら、機動六課フォワード部隊及びチームデンライナー。出動!!」

 

この一声で本格的に今回の任務が始まった。

 

 

フェイトが自動車に設置されているボタンを押して屋根部分にパトランプを出現させてからギアを操作して加速した。

 

ヴァイス・グランセニックが上着を羽織りながら、ヘリポートへと踏み込んでヘリコプターに乗艦した。

 

良太郎がイマジン四体を集めて事情を話していた。

 

 

「シャッハ。はやてを送ってあげて。機動六課の隊舎まで最速で」

カリムがモニターを展開して、映し出されているシスター---シャッハ・ヌエラの指示を出そうとしていた。

『かしこまりました。騎士カリム』

そう言い終えると、シャッハを映し出していたモニターは消えた。

「あ、カリム。シスターシャッハ。気遣いはありがたいんやけどその点は大丈夫や」

「どういう事?はやて」

ここまで、はやては自家用車で来ているわけではない。つまり、機動六課隊舎までは飛んで帰るかスタンバイしているシャッハに送ってもらうしかないわけだ。

「侑斗さん」

「もうそろそろ来る」

「?」

はやてが望んでいる事や侑斗の言っている事にカリムは首を傾げていた。

汽笛のような音がどんどん大きくなっていた。

やがてプシューッという音が鳴って停車した。

停車場所は聖堂の裏、つまりシャッハのいる場所だ。

『き、騎士カリム!!未確認物体がて、停車しましたっ!!』

モニターが出現して、シャッハが動揺を隠さずにカリムに告げてきた。

カリムはこの時、はやてと侑斗が言っていた事の意味が理解できた。

「シャッハ落ち着いて。その未確認物体がはやてと桜井様が待っていたものらしいのよ」

『そうなのですか?』

「だから、手は触れてはダメよ。あと攻撃もしないように」

『……かしこまりました』

そう告げると同時に、またモニターは消えた。

 

((攻撃しようとしてたな……))

 

侑斗とはやてはシャッハの間の置いた返答からしてそのように推察した。

二人は入室した時と同じように、フードを被っていた。

「カリム。お茶ごちそうさま」

はやてはカリムに礼を言う。

「どういたしまして、はやて。あと桜井様」

カリムは笑みで返しながら侑斗を見る。

「はやての事をよろしくお願いします」

「了解した」

即答で答えてから、背を向けて二人は聖堂の裏側へと通じる道を歩き始めた。

未確認物体---ゼロライナーが発進したのはそれから五分後の事だ。

 

 

 

 

「あの時ゼロライナーに攻撃してなかったんは運が良かったというしかあらへんね」

「全くだ」

これから始まる模擬戦を見ながら、はやてと侑斗はシャッハとゼロライナーの事を思い出していた。

二人はその時のシャッハを責めようとはしなかった。

得体の知れないモノがいきなり現れて無警戒というのは重要人物の警護を任されている身としては褒められることではないからだ。

ゼロライナーを見て警戒心を抱いたのは至極当然の事だと思っているくらいだ。

「侑斗さん的にはこれから始まる模擬戦、どうみる?」

はやては隣に座っている侑斗に訊ねる。

「あの四人が今の野上をどう見ているかで勝敗は決まるだろうな」

「どう見ているか?」

「ああ。野上をザコとみるかラスボスとみるかで勝敗は決まる」

侑斗は答えてから、フォワード四人を一瞥してから良太郎を見た。

 

 

 

 

 




次回予告

桜井侑斗 「仮面ライダー電王LYRICAL StS!!」

      アラートが鳴ることは平穏の終わり。

      その原因を作りし存在は破壊を始める。

      それをまた終わらせるのは……


第十九話 「積み重ねたことが活かされるとき」
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