仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party 作:(MINA)
今のところはストックがありますからスイスイと出せますが、
ヤバくなる時はヤバいです。
そうなると更新は滞りますことをあらかじめ断っておきます。
高町なのはは、自分の教え子達を見下ろしていた。
相手は自分が知る限りでは二番目に戦いたくない相手だ。
そんな相手にこれから戦おうとする四人を自分がセッティングしたとはいえ、称賛したくなる。
(言いたいんだけど言えないんだよねぇ)
教導官という立場としては簡単に言うわけにはいかない。
『褒め言葉』というのは使いどころを間違えてしまうと、その人物の成長を大きく妨げてしまう要因になる。
今回の模擬戦に至っての褒め言葉は『教導官』ではなく、『高町なのは』として言ってしまいそうだからだ。
だから、なのはは口には出さない。
(訓練通りの事をこなすことができれば、何とかなるかもしれない。でも……)
なのはの中で一つ不安要素があった。
それは相手が、野上良太郎であることだ。
電王ならば対策のしようがあるが、良太郎となると話は違ってくる。
何故なら良太郎の『力』を自分は全く知らないからだ。
以前に桜井侑斗と戦った際の戦いを思い出すが、相手が相手だけにすべての手の内がさらけ出されているとは思えない。
強者同士となると、『いかに相手に全力を出させる前に潰す』というのが暗黙の法則となってくる。
良太郎と侑斗も『実戦経験者』であって、『戦闘狂』ではない。
だから相手の土俵に立つ事を嬉々とはせず、相手を引き込んでは叩くという手段をとる。
(私が戦うとしたらどうなるかなぁ……)
自分が戦うとしたら、自身は『全力全開』で戦うが相手に全力を出させる前に叩くという結論にいきつく。
「なーに難しい顔してんだよ?オメェ」
「モモタロスさん」
モモタロスは当然の様な顔で、なのはの隣に立つ。
なのは自身も十年ぶりだった。
そして、彼女にとって最も戦いたくない相手というのがこのイマジン四体である。
あれから強くなったという自負はある。
それでも戦ったら確実に『勝てる』とは断言できなかった。
『魔法の師』といえるユーノ・スクライアには既に数年前に卒業を言い渡されているが、『生き様の師』とも呼べるこのイマジン四体にはまだ一人前としての言葉をもらってはいない。
このイマジン達はユーノにとっても『師』と呼べる存在だという事は、なのはだけが知っている。
「オメェはどっちが勝つと思ってんだよ?」
モモタロスはどこで売られているのかはわからないが、串刺しになっている鶏のから揚げをなのはに渡す。
受け取ってから、なのはは軽く頭を下げる。
「正直に言うとわからないんです。良太郎さんが電王として戦うという前提なら勝算はハッキリしますけどね」
口には出さないが、フォワードが勝つ事はない。
勝てばイマジンを倒すことも可能になるという裏付けにもなる。
「良太郎にしてみれば五分くれぇの勝負になるだろーな」
「五分、ですか?」
自分の考えている割合とは違う数字だった。
「どうしたよ?」
モモタロスが怪訝な表情をしているこちらを見ていた。
「あ、いえ……私が考えている割合とは違ってるなぁと思って……」
「オメェの予想はどのくらいなんだよ?」
「良太郎さんの勝算は二分くらいだと……」
なのはがこのように少ない数字を出した事には理由がある。
最初に出てくるのは数による不利だ。
次に挙げられる理由は四人が全員、魔法を使えるという事だろう。
いくら相手が仮面ライダーでも多数の魔導師を相手にしたことはないはずだ。
最後の理由としては、戦う四人が電王に関する情報を有している事だ。
対して良太郎は四人の情報を持ってはいても、それは片鱗程度のものでしかないと考えている。
実際、彼が訓練を見る事はあっても四人にこれまで課してきたのは基礎訓練の部類なため、手の内をすべてさらけ出しているわけではない。
「ま、オメェの言うように一対四って数字じゃ良太郎は不利だろーな。でもよ、アイツもバカじゃねぇんだぜ?」
「そうですね。だから怖いんですけどね……」
モモタロスの言葉に、なのはは首を縦に振る。
彼の言っている意味が理解できるからだ。
「ところで、モモタロスさん」
「何だよ?」
「コレってどこで買ったんですか?出来立てですし……」
「あそこ」
なのはは左手で持っている鶏のから揚げの出所を訊ねる。
コンビニや祭りの屋台でしか中々お目にかかれないものだ。
モモタロスの指差す方向には機動六課には絶対にないものがあった。
「ふえええっ!?いつの間にできてたんですかぁ!?」
機動六課には絶対にないモノ。
それは屋台だった。
屋号はひらがな表示で『でんらいなぁ』となっていた。
先程から姿を見ていないウラタロス、キンタロス、リュウタロスが仕切っていた。
「ちなみに開店日は俺達が気が向いた時やイベントの時で、金は全品こんなもんだ」
お品書きを見せてきた。
「安いですね……」
値段を見て、彼らがお金儲けを目当てでやろうとしているのではないという事がわかった。
本当に気まぐれなのだという事もだ。
「さぁて、目ぇ離すなよ?」
「はい!わかってます」
『教える側』に回った自分だが彼等の前だとまだ『教えられる側』にいるのだと、なのはは実感した。
本日の空もあの時と同じくらいの蒼天だった。
*
ヴァイス・グランセニックの操縦でヘリコプターが一機、空を浮上していた。
中にいるのは、なのはとフォワード四名にモモタロスとリュウタロスである。
何故イマジンが二体この場にいるのかというと、単純に「ヘリに乗りたい」という理由からである。
その言葉を聞いたとき、ヴァイスが感激の涙を流していたりする。
残りのキンタロス、ウラタロスと良太郎はデンライナーでヘリコプターの横に並んで並走していた。
本来ならば中々お目にかかれないシチュエーションである。
「新デバイスはぶっつけ本番になっちゃったけど、練習通りで大丈夫だからね」
なのはが初めての実戦で緊張と萎縮してしまっている四人を励ます。
「は、はい……」
ティアナ・ランスターが気丈にふるまうがそれでも内に蠢く不安を隠すことはできなかった。
「頑張ります!」
スバル・ナカジマは下手な事を言うと、ボロが出ると察したのか今後の抱負じみた台詞で応じた。
「エリオとキャロ、それにフリードもしっかりですよ!」
なのはの横で浮遊しているリインが両手を拳にして緊張しているエリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエを励ます。
「「はい!!」」
「キュクー」
二人と一匹も余計なことは言わずに、返事で返した。
「危ない時は私やフェイト隊長、リインがちゃんとフォローするから、おっかなびっくりじゃなくて思いっきりやってみよう!!」
「なぁなぁ、ヘリって動かすのにこんなややこしいのかよ?」
「僕にも触らせてよー。ヘリのおじさん」
操縦しているヴァイスに絡んでいるのはこの中では最も緊張感のないモモタロスとリュウタロスだった。
「お、おじさん!?俺、野上の旦那とそんなに歳は離れてないっすよ!?」
「ノガミノダンナってだれー?」
ヴァイスの抗議の中に聞きなれない言葉があったので、リュウタロスは首を傾げる。
「良太郎の事じゃねぇのか?でもよぉ、何で『旦那』なんだよ?アイツは独身だぜ」
モモタロスの中では『旦那』という言葉は『既婚者』のみにしか許されない言葉らしい。
「でも、ハラオウン執務官とはイイ仲なんでしょ?いずれは……そういう風に呼ばれてもおかしくないんじゃないですか?」
「さぁなぁ……」
モモタロスは良太郎が抱えている事情を知っているだけに即答はできなかった。
リュウタロスも何かを言おうとしたが、思い出したのか両手で口をふさいでいた。
「モモタロスさん、リュウタ君。イマジンが出てきた場合はお願いしますって、何の話してるんですか?」
「何の話って世間話?」
訊ねられたので答えるモモタロスだが、明確なジャンルが浮かばなかったので一番適当なものにした。
「イマジン、出てくると思います?」
なのはの表情が真剣なものになったので、モモタロスは鼻をクンクンとする。
する事、大体二、三分で行動を終えた。
「いや、イマジンの臭いはしねぇ。でもいいのかよ?」
「何がですか?」
「出てきたとして、俺達が倒しちまったらよ。契約者はわかんねぇままだぞ?」
モモタロスの言いたい事を、なのはは理解した。
出現したイマジンを倒す事で、契約者への足取りは途絶えてしまうと言いたいのだ。
「わかってます。今のところ局は契約者の事にはあまり積極的には行動していないんです」
「契約者は逮捕しないの?」
なのはが語る現状に、リュウタロスは当然そうなるだろうという末路を訊ねた。
「イマジンと契約者がベッタリだったら逮捕できると思いますけど、今のところはその前例がないんです」
「それに契約者とイマジンだったら、どちらを優先させるかという事にもよるんですぅ」
なのはの言葉に続くように、リインが言う。
「ま、イマジンだろーなぁ」
「どうしてさ?モモタロス」
モモタロスの即答にリュウタロスは首を傾げる。
「契約者は人間だし、イマジンに頼ってテメェの願いを叶えさせようって根性なしだから気にすることはねーだろ。でもイマジンを放ったらかしたら色々とやばくなるだろ」
「ああ、そっかぁ。イマジンが契約叶えちゃったら、なのはちゃん達じゃ無理だもんね……」
リュウタロスも時空管理局の技術では『時間遡行』できない事は知っている。
「お恥ずかしい限りです……」
なのはが自身の恥のようにしてつぶやく。
「俺達が魔法使えねーようにオメェ等は時間を渡れねぇ。だから俺達手ぇ組んでんだろ?だから気にすんなって」
モモタロスはそう言って、なのはの頭をポンポンと叩く。
「もう!髪が乱れますから!」
一体のイマジンと教導官のやり取りを、リインは叱り、ポカンとした表情でスバルとティアナは見ていた。
「ん?」
そんなやり取りの輪に加わっていない者達の姿をリュウタロスの視界に入った。
エリオとキャロとフリードだった。
デンライナーの食堂車の窓から並走しているヘリを見ながら、コハナは息を一つ吐いた。
「何?ため息?」
目ざとく見ていたのはウラタロスだ。
「ため息もつきたくなるわよ。あの二人、なのはちゃん達の邪魔をしなければいいんだけど……」
「邪魔はせんやろうけど、バカはやりかねへんからなぁ」
コハナのため息の理由に、キンタロスは椅子から立ち上がって食堂車の窓から見えるヘリを一瞥してから告げた。
「センパイとリュウタだもんねぇ。何が起こってもおかしくないしねぇ」
インテリのポーズをとりながら、ここにはいない二体のイマジンが何をやらかすかをウラタロスは想像していた。
「みんな、言いすぎだよ」
良太郎は食堂車に設置されているモニターで外の現状を見ながら、苦笑していた。
「良太郎。外はどう?」
「今のところは何もいないね。快適の空の旅、かな」
「それで済めばええんやけどなぁ」
コハナの問いに良太郎は目を離さないまま答え、キンタロスは腕を組んでどっかりと席に着いた。
「ブレイクしよっか?」
カウンターを無断で使っているウラタロスがコーヒーを淹れていた。
ヘリとデンライナーが山岳地帯付近に踏み込んだ頃、雲一つない青空に無数の何かがこちらに向かっていた。
「モモタロス」
「ああ。何かきやがったぜ……」
今までおちゃらけていたリュウタロスとモモタロスの表情がガラリと変わった。
「………」
なのはも二体に劣らないくらい真剣な表情になっていた。
「ヴァイス君。私も出るよ。フェイト隊長と二人で空を抑える!」
「ウス!なのはさん、お願いします」
ヴァイスは、了承してからヘリのメインハッチを開ける。
内部に風が入り込み、髪がなびいていた。
「じゃ、ちょっと出てくるけどみんなも頑張ってズバッとやっつけちゃおう!」
「「「はい!」」」
「はい!」
スバル、ティアナ、エリオが揃って言ったがキャロだけは遅れた。
「キャロ。大丈夫。そんなに緊張しなくても」
飛び降りようとしたなのはだが、元気づけるために歩み寄って両手をキャロの両頬に添えて優しい表情を浮かべる。
「離れてても通信で繋がってる。一人じゃないから。ピンチの時は助け合えるし、キャロの魔法はみんなを守ってあげられる。優しくて強い力なんだから、ね?」
キャロに今告げておきたい事を終えると、なのははメインハッチへと駆ける。
「モモタロスさん、リュウタ君。イマジンが出たらお願いします!!」
なのはは、ヘリから飛び降りた。
*
「やっぱり魔法ってズリーよなぁ。パラシュートなしでも平気なツラしてられるんだからよぉ」
「にゃはは……。ヤケにパラシュートに拘ってますね……」
モモタロスの魔法に対する見解は深くは知らない者の台詞だ。
実際にはそんなに便利というわけではない。
できない事はできないのだから。
「もしかして何かあったんですか?」
「……聞くなよ。思い出したくねーんだからよ」
図星のようだった。
なのはとしては深く訊ねるという底意地の悪いことはしないので、ここで打ち止めにした。
「はむ」
モモタロスから貰った鶏のから揚げを一口食べる。
「美味ぇだろ?」
「美味しいですねって、アレってリュウタ君……」
「ん?フェイトのところに行ってるな……。エリキャロの事だろーな」
「エリキャロって、二人はコンビですけどそれだとお笑いのコンビ名みたいですよ……」
また変な通り名が浸透するなぁとなのはは予感した。
「そういえば初任務からですよね?三人が仲良くなったのって……」
「そーいやそうだよな。ま、小僧にしてみてもいいダチ公ができたんだからいいんじゃねぇの」
「そうですね」
一体と一人が納得すると、揃って手に持っているから揚げをかじって恍惚の表情を浮かべていた。
「フェイトちゃーん」
モモタロスと同様に、串刺しになっている鶏のから揚げを数本持ったリュウタロスがフェイト・T・ハラオウンの元へと寄った。
「リュウタロス」
「はい」
「あ、ありがとう」
リュウタロスから受け取ることが当然というようなノリで受け取ってから礼を言う。
「もうすぐ始まるね」
「うん。そうだね」
から揚げを美味しく食べているリュウタロスに対して、フェイトの表情は明るくはなかった。
「心配?」
「うん」
リュウタロスがフェイトを覗き込んで見ながら、訊ねた。
「難しいねー」
フェイトが首を縦に振ってから、リュウタロスは短くも正直な本音を口に出した。
「矛盾してるよ。エリオとキャロが負ける姿は見たくないけど、良太郎が負ける姿も見たくはないんだよね……」
両方がぶつかれば勝敗がつく。
この場合、運が良ければ引き分けという事になるがそうなる可能性は極めて低いだろう。
「どっちも応援すればいいんじゃないのー?」
リュウタロスは二本目の鶏のから揚げを食べていた。
「!!」
フェイトにしてみれば先程の言葉は目から鱗が落ちるようなものだった。
「うん。そうだね。ありがとう!リュウタロス」
「?」
何故感謝の言葉を述べられたのかリュウタロスは理解できなかったようだ。
*
駐車場に車を停めて、飛行許可を得てバリアジャケットへと換装を終えたフェイトはバルディッシュ・アサルトを右手に持って、大空を駆けた。
空を飛ぶ。
飛行魔法を有している魔導師ならば至極当たり前の感覚だが、ひどく懐かしく感じた。
ここのところ、デスクワークまがいの事ばかりしていたからかもしれない。
じっとするより体を動かす方が性に合っているというのは自己分析だ。
(気ままに空を飛ぶって事はもうないんだよね……)
時空管理局で働くようになって十年経つ。
得たものもあるが、失ったものだってある。
時空管理局執務官としての『力』を得て、自身の力でありながらも勝手に行使できない事、『自由』を失ったのだ。
(一人で飛んでると、ついこんな事を考えちゃうね……)
一人、小さく笑みを浮かべてからお仕事モードの表情になる。
「ライトニング1、フェイト・T・ハラオウン!!行きます!!」
身体全体を金色の魔力で覆って、飛行速度を上げた。
ドォンという音速を超える音が聞こえた。
ヘリから飛び降りて地上にまっさかさまになっているなのはは、バリアジャケットへと換装して左手にレイジングハート・エクセリオンを握っていた。
両足首に展開されている桜色の双翼が彼女に空を飛ぶ力を与えている。
「イマジンらしい姿はなし、か……。ラッキーと言えばラッキーなのかな」
残酷な現実だが、今の自分ではイマジン一体と対等に戦う事は不可能だ。
身体全体に錘をつけている状態ではわざわざ死ににいくようなものだ。
「目には見える敵を倒さないと、だね!!」
『その通りです』
「スターズ1、高町なのは!!行きます!!」
なのはは足元の桜色の双翼を羽ばたかせて、こちらに迫っている謎の物体に向かっていった。
ヘリに残っているイマジン二体とフォワード四人にちいさな上司はというと。
「任務は二つ。ガジェットを逃走させずに全機破壊すること、そしてレリックを安全に確保すること」
リインが真剣な表情で概要を告げると、モニターを展開させた。
それは現在ガジェットドローンに占領されているリニアレールの現状を表しているものだった。
「ですからスターズ分隊とライトニング分隊、二人ずつのコンビでガジェットを破壊しながら車両前後から中央に向かうです」
「しつもーん」
「何ですか?赤鬼さん」
「オメェはどうすんだよ?俺達みてぇにイマジンが出てくるまで留守番かよ?」
体育座りをしているモモタロスが挙手をした。
「リインは現場に降りて管制を担当するですよ」
そのように告げてから、くるりとその場でターンしてから陸士隊服から白色が目立つ騎士服へと換装した。
「「………」」
「な、何ですか?赤鬼さん、ドラゴンさん」
リイン自身は自分がこれから行う事を間違って告げたわけではない。
なのに何故、疑わしい眼差しで見ているのだろうか。
「オメェ大丈夫なのかよ?」
「巻き添えになるかもしれないよ?」
二体の言葉はどうみても、リインが戦闘中の何かの巻き添えを食らうのではという意見だった。
「リインはそこまでドジじゃありません!大丈夫です!!」
強く二体のイマジンの想像を否定する。
「本当かよ~?ウロウロしてこうベチッと叩かれたらオメェ即オダブツだぞ?」
モモタロスがまるで虫でも叩いて地上に落とすようなしぐさをする。
「「「「「ぶっ!!」」」」」
今まで黙っていたフォワードと操縦に集中していたヴァイスが一斉に噴いた。
キャロの肩に乗っかっていたフリードリヒは地面に伏して呼吸困難になっていた。
「じょ、上官をダシに笑うなんてひどいですぅ~!!」
リインが涙目になって怒るが、みな笑いを止める事はしなかった。
この笑いがフォワード達の余計な緊張を解いてしまったことは言うまでもないことだ。
「こっちの空域は二人で担当する。新人達のフォローをお願い」
『了解しました』
飛行中のフェイトは、六課隊舎のロングアーチに向けて指示を送った。
(おんなじ空は久しぶりだね。フェイトちゃん)
「うん。なのは」
念話の回線を開いてきたなのはの言葉に、答える。
自分より低い位置になのはと彼女の後を追う新型ともいえるガジェットドローンの姿があった。
人一人が乗っかれるくらいの大きさで訓練で仮想敵として用いられるガジェットドローンに比べると大型だ。
イメージとして定着させるとすれば、『小型のステルスジェット機』か『尾のないエイ』といったところだろう。
「目的はレリックの奪取でそれ以外の排除、か」
ガジェットドローンの目的はわかっている。
「!!」
背後から音が聞こえてきたので、立ち止まらずチラリと見る。
先程自分の下を飛行していた同型のガジェットドローンが四機、陣形を組んで向かってきた。
(フェイトちゃん)
「わかってる。行くよ!!」
迎え撃つことにした。
デンライナーでもなのはとフェイトがガジェットドローンを撃墜している姿が映っていた。
「始まったわね」
「出てきているのは空飛ぶガジェットだけで、イマジンは出てないね」
モニターから映し出されている映像にはイマジンの姿はなかった。
だが食堂車にいる誰もが安堵の表情を浮かべていなかった。
「良太郎は今回イマジンが出てきたとしたら、その契約者は六課の人達が追いかけてる連中と繋がってると思う?」
ウラタロスが今回イマジンが襲撃してきた場合のイマジンの契約者の正体を訊ねる。
「繋がっている可能性もあるし、繋がっていないともいえるね」
「曖昧やなぁ。どうしたんや?」
キンタロスが座ったまま、顔だけを良太郎に向ける。
「この任務は言い換えればお宝争奪戦だからね。レリックを狙っているのが六課が追いかけている人達だけとは限らないよ」
「だから、繋がっている可能性もあるし繋がっていないともいえるって言ったのね」
良太郎の曖昧な返答の理由を聞いて、コハナは納得した。
「俺らの出番いらんな……」
「あれでリミッターかけてる状態なんだからね……」
キンタロスの素直な感想を聞きながら、十年で成長している別世界の魔導師二人の姿を見ながら良太郎は呟いた。
挟み撃ちの陣形をしいてきたガジェットドローンが光線を発射してきた。
なのはは魔法障壁を張るより、単純に避ける方が次の攻撃に転ずることができると判断すると、前進しながらもくるりと身体を捻ってからレイジングハート・エクセリオンを構えて桜色の魔力砲を発射した。
魔力砲は一直線に向かっていき、ガジェットドローンの一機に直撃して爆発した。
立ち込める爆煙を避けるようにして、ガジェットドローンが散開する。
(視界を封じられる事を恐れて避けた!?)
機械兵器にしては妙に人間臭い動きだと、なのはは感じた。
だが陣形が崩れてくれたのでこっちにしてみれば好都合だった。
くるりとターンして、後ろにいたガジェットドローン三機を睨んで標的とする。
レイジングハート・エクセリオンがカートリッジを排莢する。
『アクセルシューター』
飛行状態から体を切り替えて、レイジングハート・エクセリオンを両手で握りしめて、桜色の魔力球を展開させて一斉に発射する。
全てがガジェットドローンに向けて光線となって飛んでいく。
ガジェットドローンの身体を貫いていく。
三機は同時に爆発を起こして、煙をたてた。
「よし。フェイトちゃんは……」
ライトニング隊長の安否を気遣おうとした時だ。
ガジェットドローンの一機が光線を放ってきた。
「大丈夫だよね」
そう短く結論付けてから、なのはは攻撃を仕掛けてきたガジェットドローンを迎撃した。
空にたちこめる爆煙を突き抜けて、フェイトはバルディッシュ・アサルトを両手で構えて両断していた。
『ハーケンフォーム』
告げると同時に、バルディッシュ・アサルトのシリンダーが回転してカートリッジを発動させていた。
「はああああああっ!!」
フェイトは稲光を纏った黄金の鎌刃を出現させて、大きく振りかぶる。
そして、薙いだ。
黄金の鎌刃がバルディッシュ・アサルトから発射され、黄金の輪となって飛んでいく。
縦一直線に並んでいるガジェットドローンに向かっていく。
前にいる一機を何事もないように縦に両断する。
両断されて爆発が起こる前に後ろの一機も勢いを殺すことなく両断していた。
黄金の鎌刃が消えると、爆煙が起こった。
「まだいる……」
リミッターをかけられているといっても、この程度なら問題ない。
「数が多い以上、無駄な動きはできない。効率よく倒さないと!」
フェイトはバルディッシュ・アサルトから黄金の鎌刃を出現させる。
そして、ガジェットドローンに向かって黄金の魔力を纏って向かっていった。
直後、一機が爆発した。
「いいなぁ。なのはちゃんとフェイトちゃん」
「俺達、もしかして出番なくなるかもしれねーなぁ」
リュウタロスとモモタロスがヘリの窓越しに外の風景を眺めながらぼやいていた。
「さぁて新人ども。隊長さん達が空を抑えてくれているおかげで安全無事に降下ポイントに到着だ。準備はいいか!?」
「「「「はい!!」」」」
ヴァイスの煽りともいえる台詞に、フォワード達は揃って返事する。
「おーおー。吠えてるぜ」
「ヘリのおじさん。どうしたんだろーねー」
ノリについていかなかったイマジン二体はヴァイスのヤンキー的なノリを一歩退いたかたちで見ていた。
「ちょっとノッてくれたっていーじゃないっすかぁ!!そんな冷めた風に言われると俺イタイ人じゃないですか!?」
「「えー」」
ヴァイスの抗議にイマジン二体は凄く嫌そうな顔をしていた。
ハッチの前ではなびく髪を押さえようとせずにスバルとティアナが降下ポイントを睨んでいた。
「スターズ3、スバル・ナカジマ!」
「スターズ4、ティアナ・ランスター!」
「「行きます!!」」
スバルとティアナがヘリから飛び降りた。
二人の身体が輝き、陸士隊服からバリアジャケットへと換装した。
「次、ライトニング!チビども準備はいいな!?」
しかしスターズの二人とは違って手間取っていた。
キャロが躊躇っているのだ。
「一緒に降りようか」
エリオが気遣うように右手をキャロの前に出した。
キャロは右手を見る。
「うん!」
覚悟を決めて、エリオの右手をとる。
「ライトニング3、エリオ・モンディアル!」
「ライトニング4、キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ!」
二人は手をつないだまま、ハッチを駆けだす。
「「行きます!!」」
ハッチから飛び降りると、二人が同時に輝きだす。
陸士隊服からバリアジャケットへと換装した。
フォワードが全員、リニアレールの屋根へ足を着けたのがモモタロスとリュウタロスの視界に入った。
「何か臭うな……」
臭いの発信源が空からなのかモモタロスは天井に向けて鼻クンクンをしていた。
「イマジンだね……」
リュウタロスはモモタロスが何の臭いを掴んだのか理解していた。
「ああ、面白くなってきたぜ!小僧、準備はいいか!?」
「もち!!」
モモタロスの気合の入った声にリュウタロスはパスを持っている右手を振っていた。
「マジですかい……。イマジン相手ですぜ?」
「あ?だから何だよ」
「いつもやってる事だしねー」
イマジンと戦える事に嬉々しているモモタロス達とは対照的に、ヴァイスは狼狽していた。
モモタロスとリュウタロスは準備運動をしていた。
「僕、エリオとキャロちゃん、フリードの方に行くね!」
「じゃあ、俺は青髪と銃の姉ちゃんの方だな」
互いの降下先を告げると、二体のイマジンは迷うことなくハッチの前に立つ。
「チームデンライナー、モモタロス!」
「チームデンライナー、リュウタロス!」
二体はフォワードの真似を始める。
「行くぜぇ!!」
「行くよぉ!!」
飛び降りた。
*
訓練場でフォワードが円陣を組んで最終確認を行っているのが、なのはとモモタロスには見えた。
「まさか、はやてちゃんの予想が的中するとは思いませんでしたけどね……」
鶏のから揚げが刺さっていた串を、なのはは指揮棒のように持っていた。
「俺達にしてみれば願ったりかなったりだけどな。ただの付添だったら退屈でかなわねぇ」
モモタロスは串を煙草のように口で銜えていた。
「エリオとキャロ、フリードにとっては初めてで、スバルとティアナは二度目ですけどね。イマジンとの遭遇は……」
イマジンの存在を『実戦』という場で肌で感じた事は成長の材料になっていると考えながら、なのははフォワードを見る。
「俺達以外のイマジンを見たから化けるってか?ありえるかもしれねぇけどよ。なのは、お前イマジンよりずっと恐ろしいのこの世にいるって知ってるか?」
モモタロスは良太郎を見ながら、なのはに質問した。
「え?一体なんですか?」
「ま、オメェが管理局を辞めるまでの俺からのシュクダイってやつだ。頭のいいオメェだからすぐにわかんだろうよ」
モモタロスは『回答』を明確には出さなかった。
「さぁ、パスなしのオメェの実力見せてもらうぜ?良太郎」
誰にも聞こえない声で発した。
次回予告
デネブ 「仮面ライダー電王LYRICAL StS!!」
初の任務。
初の実戦。
初の・・・
第二十話 「任務完了と模擬戦終了」