仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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最新話を投稿いたします。

みなひろです。


今回より新章突入となります。


世界は時の流れのごとき進む
第二十一話 「司書長と査察官」


時空管理局本局にある無限書庫。

日中、暇なく司書達が無重力空間を飛び回っている場所である。

職場は前線の現場と違う意味で忙しないが、ギスギスしている様子はない。

司書達は互いに労い、励まし合って仕事をこなしていた。

「武装隊とは全く違いますね。彼等は手を取り合ってはいても、表面上という部分が見え隠れしています」

時空管理局査察官ヴェロッサ・アコースはモニターに映し出されている映像を見ながら、テーブルに置かれている盤上に駒を指した。

パチンという音が響く。

「対して、無限書庫(ここ)は本当に手を取り合っています。理想的な職場ですね」

「ありがとうございます。でもワーストランキングが覆らないのも現実ですけどね」

ヴェロッサの称賛に、無限書庫司書長ユーノ・スクライアは称賛を受けながらも苦笑を浮かべていた。

時空管理局には局内のみで発行されている報道誌がある。

誌名は『管理局日報』であり、局員達は略して『カンニチ』と呼んでいる。

カンニチの『絶対に就きたくない職場ワーストランキング』というコーナーでは無限書庫は稼働し始めてからずっと一位だったりする。

ユーノはソファに置かれているカンニチを手にする。

トップ面には『機動六課。イマジンと機械兵器を見事撃退!!』と大きく書かれていた。

「イマジンを撃退したのは間違いなく、良太郎さん達ですね」

書かれてはいなくても、読者の誰もがそのように思っている事をユーノは口に出す。

「ええ、確か彼等の存在は極力隠しておく必要があるんでしたよね?」

「はい。恐らく今の時間より未来から来ているはずですからね……」

直接聞いたわけではないが、存在の秘匿を他者に要請するところから推測できることだ。

ユーノはパチンと駒を盤の上に置く。

「前々から不思議に感じていたのですが、今より三時間後でも『未来』になるんですよね?」

ヴェロッサとしてはこの考えにまだ慣れがない。

「そうですね。未来というと数年後のことを前提にしてしまうのが普通ですけど『時の運行』に関わると今の時間より後でも『未来』と考えられますからね」

「まだまだ僕はそちら側には行けていないわけですね」

自嘲しながら、ヴェロッサは駒をパチンと盤の上に置く。

「来ない方がいいですよ。来れば間違いなく後戻りできなくなります」

ユーノはヴェロッサにこれ以上、こちら側---『時の運行』関連に関わらないように警告する。

彼には今の立ち位置でいてほしいという願いもあった。

「……軽率でした。すみません」

ヴェロッサは対面の人物が『力』を手にした代償に失ったものがある事を思い出し、謝罪した。

「いえ、覚悟はしていた事ですから」

頭を下げるヴェロッサに上げるように、ユーノは促す。

「それで今日はどうしたんです?わざわざ将棋を指しに来たわけではないでしょうに」

ユーノとヴェロッサが遊んでいたのは将棋だった。

ちなみに持ってきたのはヴェロッサだったりする。

「アコースさんは地球に行った事があるんですか?」

今まで黙って観戦していた白い毛並みに青いメッシュの入ったフェレット---プロキオンが訊ねてきた。

「いや、はやてから教えてもらったんだよ。対戦相手がほしいという理由でね」

ヴェロッサはプロキオンに自分が将棋のルールを知っている理由を告げた。

「タヌキさんがですか?」

「ロッキー、それ当人の前で言っちゃダメだよ」

「?」

いくら知的なフェレットでも性格は子供なため、無邪気に大人がグサリとするような事を言う時もあるのでユーノは釘を刺しておくことにした。

「脱線してしまいましたが、こちらを見てください」

ヴェロッサは数枚の紙と写真をユーノに見せる。

「何です……これ……」

紙を受け取っているユーノの手が震えていた。

「見ての通りです。ここ数日で管理外世界が二つほど、壊滅寸前まで追いやられています」

「ロストロギア、ではないですね……」

ユーノは定番の回答を口にしながらも否定し、ヴェロッサは首を縦に振った。

「これ等は次元航行艦から発進した監視マシンが写した写真です」

「この事を他の方達は?」

ユーノの質問にヴェロッサは首を横に振る。

「管理外世界の事ですからね。ロストロギア、もしくはイマジンでも絡めば話は別なのかもしれませんが」

ヴェロッサの説明にユーノは唸るような表情をしている。

「壊滅寸前の原因としてロストロギアもしくはイマジンとの因果関係は認められず、ですか」

「じゃあ誰がこんなひどい事をしたんですか?悪い魔導師さんでしょうか?」

ユーノの肩に乗っかって、覗き見ているプロキオンがヴェロッサに第三の可能性を提示する。

「それもあり得ないね。魔導師が行っているならそれなりに証拠が残るからね」

「証拠ですか?」

ヴェロッサの言っている事にプロキオンが首を傾げる。

「これだけの破壊活動を行うとなると、巨大な魔力を使用することになる。そうなると必ずと言っていいほど探査には引っかかるからね」

「でも、引っかからなかったんですね」

「そう。だからあり得ないって言ったんだよ」

ヴェロッサの解説にプロキオンは腕を組んで納得した。

「スクライア司書長。この事、機動六課が追いかけている一件と関わりがあると思いますか?」

「ない、と言いたいですね。絡んでたらただでさえ相手は尻尾を出してないのに余計厄介になりますよ」

ユーノの一言に、そこにいる全員が黙る。

「ロッキー、アコース査察官」

「何です?ユノさん」

「どうしました?」

 

 

「気晴らしに外に行きません?」

 

 

ユーノの申し出に、プロキオンとヴェロッサは顔を見合わせた。

 

 

 

 

二人と一匹が赴いたのは、空き地だった。

大きさとしてはかなり大きな豪邸が建てれる程のものだった。

「首都のクラナガンにこんな空き地があるなんて……」

「違いますよアコースさん。ここには元々大きなビルが建ってたんです」

ヴェロッサは空き地を見て、クラナガンの不動産事情では空き地が存在している事は考えにくいことを思い出す。

「でも今は空き地だけど……」

「ユノさんがここに建っていたビルを壊したんです」

「壊した!?」

「元々、ここは次元犯罪者がアジトに使っていたところだったんですよ」

ユーノがヴェロッサに説明しながら空き地に踏み込む。

「ここを買い取る時に不動産屋さんが諸手を挙げて喜んでくれましてね。ビルを倒壊させてもいいし、好きなように使ってもいいという好条件もくれたんですよ」

「土地を売る側としてはいわくありげな土地を手放せるし、懐も温かくなるからいいことづくめという事ですね」

ヴェロッサの言葉に、ユーノは首を縦に振る。

「だからここは僕が安値で買い取り、改造したんですよ」

空き地のとある場所でしゃがむとガーッと一部がスライドしてカードリーダが出現する。

ユーノは懐から管理局発行のIDカードを取り出してカードリーダにスキャニングする。

直後にゴゴゴゴっと音が響き始める。

やがてガァーッと大きく響いて土をこぼしながら空き地の一部分に隠れていたハッチが開いた。

「こ、これは……」

「僕の私設訓練場です」

人からは『大物』だと言われているヴェロッサだが、彼と関わるようになってから驚くことばかりだった。

二人と一匹が入るとハッチが閉じられる。

同時に照明が点灯される。

そこには三両編成の『時の列車』---ANOTHERライナーと端末が乗っかっている机が一つと休憩用のリクライニングチェアがあるだけだった。

「司書長室とここは繋がっていたんですか……」

「正確には司書長室に地下を作った際に繋げたんですよ」

「結構かかったのでは?」

ヴェロッサは私設訓練室を見まわしながら、ここまでの施設にするのに莫大な費用がかかったのではないかと訊ねる。

「いやあ、それが最初から八割近く完成していたんでそんなにかからなかったんですよ」

ユーノは照れ笑いを浮かべながら実情を語る。

「八割近く?その犯罪者、本局にテロでも仕掛けるつもりだったんですか?」

「いえ、後で調べてみたんですけどここを作ったのはその犯罪者ではないみたいなんです。でも、多分目的は先程おっしゃったようにテロだと思われます」

「外部だけの人間ではできませんよね。内通者がいると思えて仕方がないんですけどね……」

ヴェロッサの表情が『査察官』になっていた。

「内通者ですか。否定できませんね」

ユーノはヴェロッサの言うように、管理局の中に犯罪者と密接な繋がりを持っている者が存在している事を否定はしなかった。

「アルフレッド。内通者と思われる局員っている?」

ユーノは手を仰ぐようにして、誰かに向かって言う。

『カラー識別でいきますと、ブラックの特定には時間がかかります。グレーと思わしき人物なら百十五名はいます』

私設訓練室から声が響いた。

「そう、ありがとう。あとブラックは調べる必要はないからね」

『かしこまりました』

そう告げると、声は消えた。

「百十五人もいるみたいですよ。内通者」

腕を組んで、隣で頭を抱えているヴェロッサに視線を向ける。

「ブラックの数まで特定されたら、査察部は間違いなく無能者の集まりと言われてしまいますよ」

ヴェロッサには『ブラック』や『グレー』という意味合いは理解できているようだ。

彼は驚かない。

先程の姿なき声の正体を知っているからだ。

姿なき声、それはユーノの専用デバイスといえるAI『アルフレッド』だ。

情報収集能力は下手な調査活動が得意な管理局員よりも優れていたりする。

また、対話能力も従来のデバイスよりもずっと人間的だったりする。

つまり冗談や皮肉も言えるという事だ。

「これはゼロノスカード……。こんな無造作に散らかしてていいんですか?」

ヴェロッサは机の上に散在しているカードの一枚を手にして、ユーノに確認する。

「ああ、それはダミーカードですよ」

「ダミーカード?」

ヴェロッサにはこれが偽物とは簡単には信じられないようだ。

「正確には空間シュミレータ内で変身が可能なゼロノスカードなんですよ」

「ゼロノスタイプは確か、変身に代償が付きまとうと聞いています」

ヴェロッサは、はやてからゼロノスの変身システムは聞かされている。

ゼロノス、ANOTHERゼロノスの両方を知っている彼は『代償を付きまとう時の運行を守る仮面ライダー』を『ゼロノスタイプ』と呼んでいる。

「ええ、迂闊に訓練もできません。しかし、変身をしても訓練をしたいという要望は必ず出てきますからね。それで作ったんですよ」

ユーノはヴェロッサが握っているダミーカードを指差す。

 

 

「空間シュミレータ限定で無代償で変身できるカードをね」

 

 

「少し前に機動六課で仮面ライダー電王と仮面ライダーゼロノスが派手な激戦をしたと聞きましたが、それに関係ありますよね?」

「ええ。まず間違いなく、はやて経由で侑斗さんの手に渡って使ったんでしょうね」

ユーノは特に驚くことなく、確信を持って言う。

「はやて経由で?」

「はやてにダミーカードの設計図を送ったのは僕ですからね。侑斗さんがあちらにいる以上、何かと役に立つと思いましてね」

ユーノは立ちっぱなしに疲れたのか、椅子に座る。

「そうですか。あ、そういえば近々ホテル・アグスタで骨董品のオークションが開催されることはご存知ですか?」

「いえ、初耳ですね」

ヴェロッサがダミーカードからこれからの世事へと切り替えた。

「出品されるものの中には価値のあるものからガラクタ同然のものまであると聞きますね」

「中にはロストロギア指定を受けているものもあるかもしれませんね」

「おっしゃる通りです」

ユーノの導き出した仮説に、ヴェロッサは首を縦に振る。

「おーくしょんって何ですか?」

わからない言葉なのでプロキオンが挙手して訊ねてきた。

「オークションっていっても色々あるからね……」

ユーノとしては持てる知識を全て教えると、プロキオンが混乱する可能性もあるので誰もが想像できるものを脳内で選出した。

「一つの物品を買い手同士が最もいい条件を提示して競い合わせる事なんだよ」

世間一般に知れ渡っているオークションは先程ユーノ述べたように『買い手同士が最もいい条件を提示して競い合わせる』ものだ。

この方式を『イングリッシュ・オークション』といわれている。

通常のオークションが『いい条件』を提示する事を競い合わせる事だが、中には売り手が最高価格をあらかじめ提示して、順番に価格を下げて買い手が

適当な価格で落札するという『ダッチ・オークション』というのもある。

ホテル・アグスタで行われるオークション方式は『イングリッシュ』だろう。

「ヴィンテージ物のワインとかあれば僕も参加するんですけどねぇ」

ヴェロッサは手を顎に当てて、出品物を想像する。

「もしかするとあるかもしれませんね。骨董品というのがどのあたりまで枠づけられているかにもよりますけど」

ユーノは笑みを浮かべながら言う。

「アコース査察官」

「わかってますよ。オークションの出展品の中にロストロギア関連があるか否か調べてみましょう」

「「お願いします」」

ヴェロッサは快諾し、ユーノとプロキオンは頭を下げた。

 

 

 

 

ヴェロッサと別れ、昼食を食堂かそれとも司書長室までデリバリーしてもらおうか否かと一人と一匹は話し合っていた。

「ユーノ、ロッキー」

その中で提督階級の服を着た青年が一人と一匹に声をかけてきた。

「やっぱりデリバリーしてもらった方がいいと思います。僕が食堂にいると、女の人達がジロジロ見るんです」

プロキオンはデリバリー派だった。

「しかし、司書長室で食事っていうのもねぇ」

不満はないが、そろそろ衆人環視の前で姿を現さないと『死んだ』とか『消えた』という噂が立ちかねない。

生きているのに、勝手に噂で故人扱いされるのは気分のいいものではないのでそろそろ頃合いとしていた。

「おい」

青年がもう一度声を出して、視線を一人と一匹に向けた。

だがやっぱり、一人と一匹は廊下を歩いている。

「おい!」

怒号まじりに、青年はすたすたと歩く一人と一匹に視線を向ける。

 

 

「そこのフェレットとフェレットもどき!」

 

 

一人と一匹がピタリと会話を止めて、青年の方に顔を向ける。

「やあ、クロノ」

「こんにちは。クロイノさん」

一人と一匹---ユーノとプロキオンは爽やかな表情で、挨拶する。

「その爽やかな表情はやめろ。わざとらしいんだよ」

青年---クロノ・ハラオウンは額に青筋を立てていた。

「お前の顔を見ると、嫌な事を思い出したくなる僕等の身にもなってくれ」

ユーノの一言に、肩に乗っかっているプロキオンは首を縦に振る。

「僕はそんなに君の部署では嫌われているのか?」

時空管理局という職場は警察のように『人に恨まれてなんぼ、嫌われてなんぼ』という部分があるが、それはあくまで外部からのものだ。

内部で嫌われているというのは精神的にいいものではない。

「特に休みがお流れになったときとかはね」

「クロイノさんの請求で、慰安旅行がお流れになった事もありましたね」

ユーノとプロキオンは思い出しながら、呟く。

「あー」

クロノとしてもそのように言われると、後ろめたさが出てくるものだ。

人命がかかっている重要な案件だという事を考慮してもだ。

「その……すまない」

「いいよ。もし、詫びる気があるなら忙しくない時に何か持ってきてよ」

「わかった。僕も忙しいときに無限書庫に入り込む勇気はない……」

無限書庫での『忙しい』時というのはまさに『修羅場』という言葉が相応しいものだった。

人が『ヒト』でなくなる時期であり、クロノは過去にその状況の際に立ち寄った過去がある。

その際、彼は見てしまったのだ。

無限書庫で跳梁跋扈している『人の姿をした獣』を。

「捕食される側になったのは初めてだよ……」

クロノは思い出したのか、背筋に何かがゾクッと走ったようだ。

雰囲気が暗くなり始めたので、二人と一匹は深呼吸をする。

「ところで昼食はまだか?」

「まぁね。食堂に行くか、デリバリーにするか悩んでいるところだよ」

「そうか。なら司書長室で食べないか?フェイト達の話もあるしね」

「いいけど、エイミィさんの手作り弁当でも持ってきてるの?」

「………」

図星のようだった。

「もしかして、僕に対するあてつけ?」

「それは違うと断言しておく」

二人と一匹は無限書庫の司書長室へと向かった。

 

 

 

クロノがエイミィ・リミエッタ(現在はエイミィ・ハラオウン)と結婚して子供をもうけてからは『仕事人間』だの『仕事虫』だのと揶揄されなくなったというのは割と有名な話だったりする。

このエイミィとの結婚だが、数多の局員達に知れ渡るとクロノは男性局員から怨嗟の視線をひたすらぶつけられていた。

家事全般オールオッケーで気さくで人当たりもよく明るいし、仕事も有能で顔立ちもいいのだから男性からの評価は高い。

エイミィが休職する際にも、彼女の人柄ゆえに男女問わずに盛大にもてなされた程だ。

反対にクロノは怨嗟と皮肉を込めて『昼の仕事は有能だが夜の仕事は超有能』だと囁かれていたりする。

「ハート型じゃないんだ」

ユーノがクロノの弁当を覗き見ながら、漏らす。

「……殴るぞ」

結婚して数年経っているので、いつまでも新婚気分ではないのだ。

だからといって倦怠期というわけでもないのだが。

ドアを叩く音がした。

「どうぞ。開いてますよ」

食堂のスタッフがユーノが頼んだ日替わりランチと鶏のから揚げを持ってきてくれた。

「ありがとう」

代金を受け取って、スタッフは司書長室を出て行った。

「はい」

「ありがとうございます。ユノさん」

鶏のから揚げを受け取って、感謝の言葉を述べるプロキオン。

「君が食べるのかい?」

「そうですよ。このくらいならラクショーです!」

クロノが訊ねてきたので、プロキオンは余裕の表情で返す。

「「「いただきます」」」

二人と一匹が合掌して、昼食に手を付けた。

「六課の話は聞いているか?」

「まぁちらほらと……」

クロノがわざわざこのような席にしたのは単に愛妻弁当を見られるのが恥ずかしいだけというわけではない。

「なのは達、活躍してるね」

「ああ、本局でも彼女達の話を聞かない日はないな」

会話をしながらも、二人の箸は止まっていない。

「フェイトやはやては、やっぱり舞い上がってたりする?」

「いや、二人とも仕事は普通にこなしているようだ。でも内心では君の言うように心弾んでいるだろうな」

二人ともフェイト・T・ハラオウンと八神はやての想い人を知っているからこそ言える会話だろう。

「十年ぶりに会うんだからね。無理もないけど」

「まぁその事に僕から何かと言うつもりはないがね」

二人の会話は弾み、プロキオンは五個入りのから揚げのうち、二つを食べ終えていた。

「ところで、君となのははどうなんだ?」

「え?」

そのように切り出してくるとは思わなかった。

「ほら、お互い忙しい身だし中々会う機会もなければ、もちろん話す機会もないしね」

「それは現在の話だ。六課が本格的に動く前は機会はあったはずだろ?」

「まあ……ね」

確かに機会はあった。

だが、ユーノ自身には積極的に会おうという気にはなれなかった。

自分が抱えている代償を知っているからだ。

(カードを使い続けて五年。正直みんなが僕を憶えていること自体、奇跡に近いのに……)

箸を持っている右手に自然と視線が向く。

自分の手には『プランAZ』を起ち上げてから四年で数多のイマジンの命を奪った感覚があった。

それに自分はすでに『脛に傷ある身』だし、これからもそれは進行していく。

意識しているからこそ、余計に避けてしまうのだ。

「どうした?」

「いや、何でもない」

箸が止まっていたので、ユーノはもう一度動かした。

プロキオンには契約者の心中が痛いほど理解できていた。

それからしばらくして、司書長室での昼食は終わった。

 

 

クロノが退室してから、ユーノとプロキオンは専用端末を操作していた。

司書達が完成させた資料を検分して、ミスがないかをチェックするのが主な業務だ。

ミスがあればそこにサインを入れて、担当司書に戻して再検索させる。

「最近はミスもほとんどないから、僕としてはちょっと寂しいね……」

二足の草鞋を履いて生活をしていく上で自ずと個人の能力が上がっていくものだ。

それは彼にとってもプラスになる事だ。

「いいじゃないですか。その間に調べ物ができるんですから……」

机にちょこんと座っているプロキオンも端末を見ていた。

二人が現在行っている調べものとは、ある村についてだった。

「やっぱりわからない……」

「データ不明ってありえないですよー」

ユーノとプロキオンは難色の表情を浮かべる。

次元世界があり、その中に『村』や『町』が存在している以上は必ずそれらのことは『情報』として無限書庫の中に入ってくる。

それこそ一日に無限書庫に入ってくる情報量は、大抵の局員が逃げ出したくなるくらいのものだ。

情報量という事だけならば間違いなくトップレベルの無限書庫でもわからない事があるのも確かだ。

それらの情報は全て『過去に某かのかたちで存在していたもの』ということだ。

つまり最初から『存在していない』ように無限書庫に認識させれば『存在しないもの』として取り扱われるということだ。

この無限書庫の『穴』は無限書庫のスタッフは全員知っているが、それ以外の局員達は知らないし知られてもいない。

「偶然でできるものじゃないしね」

「じゃあ、確信犯ですか?」

「まず間違いないね」

「手詰まりですねー」

ユーノとプロキオンは腕を組んで、天井を仰ぐ。

(僕の目的を達成させるためにも、あの村の真実を知らなきゃいけない。でも無限書庫の情報にはないとなると……)

物事を進める一手が出てこない以上、手をこまねいているだけだ。

司書長室のドアを叩く音が聞こえた。

「どうぞ」

「失礼します、司書長。本日の新しい情報が入ってきましたので目を通してください」

「わかった。ありがとう」

「では」

男性司書が入り、報告をしにきたので作業を中断した。

入ってきた情報に目を通していく。

「ん?これは……」

ある部分で流し読みをしていたユーノの目が止まる。

項目は『ガジェットドローンに関する情報』だ。

「ガジェットドローンの製作者は……」

ユーノが読み上げようとすると、端末のディスプレイに『ALERT』と表示された。

『第二十六管理世界でイマジン反応ありです』

端末からアルフレッドの声で伝えてきた。

席を立ちあがって、宙にモニターを展開させる。

「みんな、イマジンが出てきたからプランAZを発動するよ」

モニターに映し出されているのは無限書庫内部だ。

ユーノは司書達に指示を出すと、司書達は全員応じた。

本棚がスライドして私設訓練場へと通じる地下へのエレベーターが出現した。

「さあ、行くよ」

「はい!」

一人と一匹の表情はイマジンを狩る『狩人』のものになっていた。

 

 

 

幼馴染み達を偽ってでも、成し遂げようとする一人の若者の旅路に終点はまだ遠い。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告


フェイト・T・ハラオウン「仮面ライダー電王LYRICAL StS!!」

     
        そいつの事を彼女は『赤鬼』と呼ぶ。


        そいつは彼女のことを『赤チビ』と呼ぶ。

     
        そいつは彼女に告げる。  
     


        第二十二話  「進展」
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