仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party 作:(MINA)
みなひろです。
身内の不幸が二連発ありまして、何とか終わりました。
よく漫画で「実は身内が・・・」と有給だの休みを取りたい言い訳があったりしますが、あのネタがマジで笑えなくなってしまう出来事です。
何せ月に二度、身内が亡くなっているわけです。
会社で休みとる時も、「事実なんだけど、嘘くさく感じちゃうもんな」と思ってしまうわけです。
コロナショック状態の葬儀は家族葬がメインであり、参列者も少ないです。
早くは終わりますけどね。
カタカタと休憩室で通称『小さな上司』、別称『銀バエ』で通っているリインが内容を呟きながら指を動かしてキーを叩いていた。
「五月十三日。部隊の正式稼働後、初の緊急出動がありました。密輸ルートで運びこまれたロストロギア---レリックをガジェットが発見、
移送中のリニアレールを襲撃。それを阻止。レリックを回収する任務という事でしたが、六課前線メンバーの活躍もあって無事に解決」
リインの前にモニターが出現して、スターズ&ライトニングの副隊長を除く全員が代わる代わる映し出されていた。
「その際にイマジン二体の存在も目撃されるが、仮面ライダー電王に変身したモモタロス、リュウタロスの二名が撃退。イマジンが何故レリックの
傍で待ち構えていた理由についてはレリックが目当てではなく、それを確保する際に出現すると思われる仮面ライダー電王を撃退する事が真の動機
だと判明する」
モニターの画面が切り替わり、ソード電王とガン電王が映し出され、ペレグリンイマジンも映っていた。
「確保した刻印ナンバー9のレリックは現在中央のラボにて保管、調査中。初任務として問題なしだと部隊長のはやてちゃん、六課の後見人騎士カリム、
クロノ提督達も満足されているようです、と」
キーを叩く速度が上がってきていると自身でも実感している。
もうすぐ終わりだからだ。
「あっ、確か赤鬼さん達の事は記録にしてはいけないんだったです!」
リインは、八神はやてに注意されたことを思い出して電王に関する部分を消去した。
本音を言えば凄くもったいない気持ちだった。
「リイン曹長」
声がしたので、顔を向ける。
廊下を歩いていたシャリオ・フィニーノが歩を止めていた。
「シャーリー♪」
「ご休憩中ですか?」
「休憩半分、お仕事半分。個人的な業務日誌をつけていたですよ」
リインは笑顔で、キーボードとモニターを消してから椅子から飛び上がってシャリオの前に浮く。
「なるほど」
シャリオは納得した。
「シャーリーは?」
今度はリインがシャリオに訊ねてきた。
「新しいデバイスたちの調子を見に訓練場まで行ってきたんですよ」
「なるほどぉそうでしたかぁ。みんな元気でした?」
「フォワード陣もデバイス達も絶好調です!よほど野上さんとの模擬戦が刺激になったのかもしれませんね」
「アレですかぁ」
リインは数日前の模擬戦の事を思い出す。
ガジェットドローンを訓練通りに倒して、絶好調となった直後に起きた完全な敗北をフォワード陣は味わった。
しかも相手は変身せずに、
敗北の中身は誰から見ても、『完敗』である。
「魔法を使えなくても魔導師と対等以上に戦える、ある意味では『希望』ですね~」
リインの言う通り、良太郎の行為は魔法を使えない者にとっては希望になる事だ。
努力をすればいつかは勝てるという事を現しているのだから。
「でもリイン曹長。野上さんの行為は魔導師にとっては『恐怖』にもなりますよ」
シャリオはリインの逆をついた。
魔導師にとって、
「仮面ライダーの存在でこのような考えが出てきちゃうんですね~」
「ええ。でもだからこそ味方であるからこそ、頼もしいんですよね」
「敵だとまさにサイアクですぅ」
上司と部下の会話は『仮面ライダー』談義になっていた。
野上良太郎と桜井侑斗は機動六課の医務室で部屋の主であるシャマルの表情を見ていた。
シャマルは真剣な表情でモニターに表示されている二つのデータを凝視していた。
二人のこれまでの検査に関するデータである。
「良太郎君も侑斗君も、あれだけの外傷を負ってはいても内蔵に関するダメージはほとんどなかったからその当たりの心配はなしで、脳はっと……」
シャマルはモニターをタッチして、データを切り替えていく。
「脳も後遺症になる心配となる症状はなし。うん、二人とも大丈夫よ」
先程まで難しい表情をしていたシャマルは笑顔で言う。
その笑顔を見て、良太郎と侑斗は同時に安堵の息を漏らす。
「でも、戦闘後には必ず検査に来ること。デネブちゃん達にも伝えてほしいの」
途端に真面目な表情になって、シャマルは二人に告げる。
「一回の戦闘ごとに、ですか?」
「ええ。しつこいようだけど今のところ、イマジンを倒すことができるのは貴方達しかいないのよ。だから貴方達の健康管理の把握は決して大げさなものではないわ」
良太郎は大げさでは?と訊ねるがシャマルは表情を崩すことはなかった。
「そんな難しい顔しなくてもいいわよ。単純な検査だからそんなに時間はかからないわ。それにこの手の検査は部隊によっては義務付けられているのよ」
シャマルの一言に、二人の身が一瞬だけ硬直した。
飛行機のパイロットが健康診断を受けて、基準以下だった場合勤務できないという話を思い出したのだ。
シャマルが自分達に要請する検査はそのような厳しいものではないが、それでも小言の一つや二つが飛んでくるのは確実だろう。
「わかりました」
「……わかったよ」
良太郎と侑斗は折れた。
「言っておくがシャマル。健康管理にかこつけて薬膳料理は作るなよ?」
「作りませんよ!」
シャマルならやりかねない事を侑斗は言い、抗議された。
*
空間シュミレーターに設定されている
市街地はもちろん、ハイウェイ、遺跡跡地に砂漠なども設定されていたりする。
今回はその中で森林が舞台となっていた。
自然あふれ、森林浴をすれば『安らぎ』の効果を得られそうだ。
しかし、この森林は仮想であるため天然ものの効果は得られない。
いわば絵に描いた森林を眺めているようなものだったりする。
なお、余談ではあるが森林には必ずついていると思われる昆虫類は一匹もいなかったりする。
この辺りも監修の意図なのかもしれない。
モモタロスはウラタロス、キンタロス、リュウタロスとは別行動で一組の訓練風景を見ていた。
スターズ副隊長ヴィータとスターズ3のスバル・ナカジマの訓練をだ。
「オラアァ!!いっくぞぉぉぉ!!」
バリアジャケットではなく、訓練着姿のヴィータが下げていたグラーフアイゼンを振りかぶりながら、対するスバルを睨んでいた。
掛け声が引き金となり、スバルも身構えていた。
(赤チビの一撃は結構痛ぇぞぉ。どうすんだ青髪)
モモタロスはスバルがどのような方法を用いるのかを興味を持っていた。
振りかぶっているヴィータは魔力を使わずに加速せずに前へ向かっていく。
モモタロスの目から見たら、防御はもちろん反撃だって十分にできるものだ。
自分が良太郎に戦い方を教える際には防御はほとんど教えていない。
その手の事は自分が仮想敵となる際には本人任せにしている。
自分は特に苦に感じたことはないが、ヴィータの動きには自分が知っている彼女特有のキレがなかったのだから。
(訓練ってのも何かと大変だなぁ)
そのような事を考えながら、モモタロスはスバルがどのような対策をとるのか拝見することにした。
「マッハキャリバー!!」
リボルバーナックルを装着している右手を前に出して、スバルは両脚に履いているマッハキャリバーに命令を下す。
『プロテクション』
マッハキャリバーは主の名に応じる結論を導き出した。
リボルバーナックルのスピナーが回転する。
水色の魔力光が出現して、薄い壁となる。
ヴィータが助走を終えて地を蹴って一気に間合いを詰めると同時に、振りかぶっていたグラーフアイゼンをスバルに振り下ろす。
グラーフアイゼンのハンマーが水色の薄壁に直撃する。
バチバチバチとハンマーと薄壁から火花が飛び散る。
(重い!!)
眼前の人物の身体から噴出す力とは思えないものだった。
ズルズルと踏ん張っているのにマッハキャリバーのタイヤが地面を削っていく。
「くっ!!」
スバルは苦悶の表情を浮かべながらも、眼前のヴィータの攻撃からは目を離してはいなかった。
グラーフアイゼンのハンマーが自分が構築した水色の薄壁から離れた。
(諦めた?違う。何かくる!!)
今の攻撃をやめたからといって、諦めたという事にはならない。むしろ第ニ撃が来ると考えた方が自然だ。
これは以前の良太郎との模擬戦から学んだ事だ。
『戦いの空気』を感じ取る事だ。
この空気がまだ途絶えていないと肌で感じているので必ず何かがあると確信している。
グラーフアイゼンのハンマーが先程とは違う角度から薄壁を打ち付けてきた。
ヴィータはグラーフアイゼンを振り下ろして、スバルが構築した水色の魔力光で構築された薄壁を見る。
ハンマー越しに感触を確かめる。
(悪くはねぇな……)
防御としての機能は十分に発揮しているので、合格点を与える事はできる。
(なら!!)
グラーフアイゼンを一旦引き寄せてから、別の角度---左横から薄壁へと打ち付けた。
「でえやあああああああ!!」
ヴィータの気合のこもった第ニ撃を食らったスバルは正面からの一撃には中々持ちこたえれたが、角度を変えた途端に後方へと下がってしまった。
ドン、とスバルの背中は木に激突した。
「いったった~」
スバルが悲鳴を上げているが、声色からしてそれほど深刻なダメージではないと判断できた。
その証拠にスバルの両目はこちらを見ているのだから。
「なるほど。やっぱバリアの強度自体はそんなに悪くねぇな」
「あ、ありがとうございます」
ヴィータの言葉に、スバルはリボルバーナックルから展開していた水色の薄壁を消した。
そして、スーッとマッハキャリバーのタイヤを滑らせてこちらへと寄ってきた。
「お前やあたしのポジション---FAはな、敵陣に単身で斬り込んだり最前線の防衛ラインを守ったりが主な仕事なんだ」
空いた左手が説明と同時に巧みに動いていた。
「防御スキルと生存能力が高いほど、攻撃時間を長くとれるしサポート陣にも頼らねーで済むって。これは、なのはに教わったな?」
「はい!ヴィータ副隊長」
スバルの返事をヴィータは信じる事にした。
「受け止めるバリア系。弾いてそらすシールド系」
右手で紅色の魔力光で構築された薄壁を展開させてから、左手で紅色の三角形が主体となっているベルカ式の魔法陣を展開させた。
「身に纏って自分を守るフィールド系」
両手に展開した防御魔法を消してから、紅色の魔力光を身体全身に纏った。
「この三種を使いこなしつつ本部をぶっ飛ばされねぇように下半身の頑張りとマッハキャリバーの使いこなしを身につけろ」
「はい!頑張ります!」
『学習します』
ヴィータが提示した課題にスバルとマッハキャリバーは返事した。
「防御ごと潰す打撃は、あたしの専門分野だからなぁ」
グラーフアイゼンを振り回しながら、得意な表情で語る。
適度に振り回してからハンマーをスバルの顔面に突きつける。
「グラーフアイゼンにぶっ叩かれたくなかったら、しっかり守れよ?あともうひとつ……」
ヴィータはモモタロスをちらりと見てから、口を開く。
「あそこにいるバカ達の一撃は、常時防御潰しだからな。あたしにぶっ叩かれるようじゃ良太郎にリトライしても結果は同じだぞ?」
「は、はい!!」
スバルに煽るように告げてから訓練が再開された。
ヴィータとスバルの訓練風景を見ながら、モモタロスはどこか空虚なものを感じた。
(十年経つと変わっちまうんだなぁ)
ヴィータが知的な事を言ってスバルに指導する姿はサマになっていると感じたが、あるモノを感じられなくなった。
それは十年前の彼女が持っていた『荒々しさ』とか『猛々しい』というようなものがなくなったからだ。
(それだけじゃねーんだよなぁ)
今のヴィータは十年前に比べて『大人』になったと受け止めれば丸く収まるが、それだけではないように感じた。
「なーんかあるんだよなぁ」
それが何なのかはわからない。
そもそもモモタロスは理屈肌のウラタロスと違って、『直感』でそのように思っているため根拠はないしヴィータ本人に訊ねてもはぐらかされるのがオチだ。
「何があるんだよ?赤鬼」
独り言じみた台詞をヴィータが聞いていたらしく、前に立っていた。
その後ろではスバルが一人で何かを練習していた。
「あー何つーかなぁ……」
モモタロスは現在座っている状態であり、この位でヴィータと目線が同じになる。
「何だよ?」
ヴィータが訝しげな表情を浮かべる。
「オメェ、つまんなくなっちまったなぁ」
モモタロスは自分の思ったことをヴィータにぶつけた。
ヴィータの両目が丸くなってからすぐに吊り上った。
「どういう意味だよ?それ……」
グラーフアイゼンを握る右手がカタカタと震えていた。
自分の言った言葉が彼女の神経を逆なでする事ももちろん自覚している。
「わかんねーよ。そんなもん」
これも正直な意見だ。
モモタロスは立ち上がって、歩き出す。
「おい、どこ行くんだよ!?何だったら今から始めてもいいんだぜ!?」
グラーフアイゼンを構えて、こちらを睨んでいた。
場の空気が変わりだしているのは、肌で感じられた。
その証拠に、一人で練習をしていたスバルが止めに入ろうとする。
「冗談言うなよ?今のオメェとやりあってもちっとも面白くねぇんだからよ」
モモタロスはヴィータにそのように告げてからその場を歩き去った。
空間シュミレータ内の別地点では、訓練着を纏ったフェイト・T・ハラオウンがエリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ、フリードリヒ、そして好奇心で
リュウタロスにこれから行う訓練内容を説明した。
彼女の周辺には半透明であるが、実体の木のような障害物が数本立っており、宙には球体に串が刺さったかのような自動機械が数機浮上していた。
「エリオやキャロはスバルやヴィータのように頑丈じゃないから、反応と回避がまず最重要」
身体がまだできていない二人に『撃たれて倒れるな』なんて事はあまりに酷な話だ。
それに『撃たれるくらいなら上手く避けろ』の方が理に適っている。
「たとえば……」
フェイトがチラリと自動機械に目をやると、応じるようにして二機が金色の光を纏って水色の光弾を発射した。
二発の光弾をフェイトはきちんと見切ってから、必要最小限の行動範囲で身体を動かして避けていく。
一発目をどのようにして避ければ二発目もリスクなく避ける事を把握しての動きだ。
光弾は二発とも、地面にぶつかって消滅した。
「まずは動き回って狙わせない」
ジグザグにフェイトは走り出す。
自動機械はウインウインと全体を動かしながら、狙いをつけようとする。
「攻撃が当たる位置に……」
走り回ったフェイトは停止する。
自動機械は狙いをつけて光弾を放つ。
「長居しない!」
教え子二人と一匹とオマケのイマジンに告げると同時に、右へと駆けだす。
光弾は障害物に激突して、消滅した。
「ね?」
手本を見せてから二人と一匹と一体を見た。
「「はい!!」」
「キュクー」
「はーい」
それぞれが返事する。
「コレを定速で確実にできるようになったら……」
直後にフェイトは右方向へと駆けだす。
「スピードを上げていく」
フェイトの速度も上がっていく。
自動機械の射撃も鋭さを増しているが、最初の三発をそのまま軽く跳躍して避ける。
足が宙に浮いている間に身体の向きを百八十度変えてから後方へと飛び退いてから、また前進する。
その間にも自動機械は攻撃を繰り出しているが、フェイトには一発も当たっていなかった。
自動機械が次にどのように攻撃を繰り出すかを予測するために、出方を伺う。
(挟み撃ち……)
フェイトの予想は当たり、彼女を囲むようにして攻撃を仕掛けてきた。
先程のような単体の連続ではなく、一斉射撃だった。
フェイトと自動機械を中心にして、爆煙が立った。
エリオ、キャロ、フリードリヒがフェイトの心配をしているが、リュウタロスの視線だけは別の方向へと向いていた。
「キュ?」
リュウタロスの様子に最初に気付いたのはフリードリヒだった。
「どうしたの?フリード」
「?」
次にキャロが気付いて、釣られるようにしてエリオもリュウタロスを見る。
「どこを見てるの?リュウタロス」
「フェイトちゃんが走ってる方向」
エリオの質問にリュウタロスは答える。
「え?え?フェイトさんはあそこにいるんじゃ……」
リュウタロスの回答にキャロは混乱していた。
キャロの指差す方向は先程の爆煙が立っているところだ。
「いないよ。そろそろこっちに来ると思うな~」
顔を動かすだけでは追いかける事が出来なくなったのか、身体全体の方向を変えていく。
二人と一匹もリュウタロスが向いている方角に身体を向けた。
「こんな感じにねって、あれ?」
二人と一匹と一体の眼前にフェイトが出現した。
「ね?」
「「本当だぁ」」
「キュー」
フェイトは二人と一匹と一体の反応についていけていない。
「どういう事なの?」
「リュウタ君が見ている方向を同じように見てたら、こうなったんです」
キャロが代表して答えた。
「リュウタロスは見えてたの?」
「うん!ハッキリと見えてたよ」
「今更ながらにイマジンの身体能力の高さには驚かされるね……」
爆煙が晴れると、フェイトがここまで来た足跡が残っていた。
「す、すごい……」
エリオの言うように、その足跡とは靴の跡のようなものではなかった。
地面がUの字に抉れていたのだから。
「ほえ~」
フェイトの動きを把握できているリュウタロスでも、この足跡には声を上げるしかなかった。
「今のもゆっくりやれば誰でもできる基礎アクションを早回しにしてるだけなんだよ」
解説を聞いて、首を傾げているのはリュウタロスだけだった。
「スピードが上がれば上がるほど、勘やセンスに頼って動くのは危ないの。GWのエリオはどの位置からでも攻撃やサポートができるように、FBのキャロは
素早く動いて仲間の支援をしてあげられるように確実で有効な回避アクションの基礎をしっかり覚えていこう」
フェイトがしゃがんでエリオとキャロの目を見て、肩を掴んでそのように方針を伝えた。
「「はい!!」」
「はーい」
「キュクー」
ここにいる誰もがやる気十分だった。
桜色の魔力球の構築者は高町なのはであり、橙色の魔力弾の構築者はティアナ・ランスターである。
ティアナが訓練着であるに対して、なのはは教導官服とこの空間シュミレータの中では一番浮いていたりする。
「うん。いいよティアナ。その調子」
ティアナの的確な行動に称賛する。
なのはの足元には桜色の円形のミッドチルダ式魔法陣が展開されており、彼女の周囲には様々な魔力球が宙に浮いていた。
「はい!」
称賛されたことに返事で返すティアナだが、手は休まっていない。
両手に握られているクロスミラージュで襲い掛かってくる魔力球を打ち消していく。
ティアナの足元には空になったマガジンの役割を担っているバレルが散らばっていた。
「ティアナみたいな精密射撃型はいちいち避けたり受けたりしてたんじゃ、仕事ができないからね」
右人差し指が合図となり、宙に浮いている魔力球がなのはの元に集まる。
「!!」
ティアナは、なのはが何かを違うパターンを仕掛けてくると直感した。
「バレット!レフトV、ライトRF!!」
発射させる魔力弾のタイプを選択した。
『オーライ』
二丁のクロスミラージュは主の命に応じて、エンブレム部分を明滅させていた。
(来る!)
後ろをちらりと見ると、桜色の魔力球が三個ほど弧を描きながらこちらに向かってきた。
受け身を取って、タイミングよく一発目を避ける。
一発目が地面に激突して爆煙を立てて間もなく、二発目が狙ってきたのでそのまま転がって避ける。
三発目が狙いをつけてこちらに向かってきても、転がって避けると同時にそのまま身体を上手く動かしてそのまま起き上がった。
「ほら、そうやって動いちゃうと後が続かない!」
なのはの表情や口調からして今の行動は適切ではなかったと理解した。
(どうすれば……、今の標的を的確に捉えるには……)
いわばこれは一対多数の戦いだ。
そうなると、何が一番必要だ。
(野上さんは私達を相手に怯まないどころか躊躇なく向かっていった……)
良太郎との模擬戦を思い出す。
完全に叩きのめされた苦い一戦だった。
だが、今はこの戦いに感謝せざるを得なかった。
何故なら自分が相手の立場に今立っていると理解できるのだから。
なのはの右手が射撃するようなしぐさをする。
水色の直進弾と湾曲しながら動いてる茶色の誘導弾の二種類が一度にこちらに向かってきた。
(野上さんは私達と戦う際に、間合いに入り込んでから相手を狙うなんて事はしていない。始まる前に見てたんだ。私たち全体を……)
右手に握られているクロスミラージュのハンマーを親指でぐいっと下げる。
そして引き金を絞る。
銃口から発射されたのは鏃のような形をした橙色の魔力弾だった。
一直線で速くなく、ゆっくりでユラユラと上下に移動していた。
茶色の誘導弾を標的として追尾していく。
二発の弾丸の動きは螺旋を描くようにして空を上昇していく。
すかさず左手に握られているクロスミラージュの引き金を絞って橙色の直進弾を発射させる。
弾と弾がぶつかって二色の直進弾は相殺して、爆煙が立った。
「そう!それ!足を止めて視野を広く!」
なのはの声が聞こえた。
だが、今はこの精神状態を維持する事に意識が集中していた。
右斜め上からこちらから向かってくる魔力球を三発連射して落とす。
左斜めから向かってくる魔力球を撃破していく。
「射撃型の神髄は……」
「あらゆる相手に正確な弾丸をセレクトして命中させる……」
なのはの言葉に続くように、ティアナは足場を動かさずに目標を視野に入れて二丁のクロスミラージュの引き金を絞る。
「判断速度と命中精度!!」
バレルをを切り捨てると、左太腿に巻かれているホルスターにクロスミラージュを挿入する。
それだけでバレルは装填されていた。
『リロード』
クロスミラージュが告げ終えると、ティアナは構えて向かってくる魔力球に狙いをつけた。
次の標的を繰り出す準備をしているなのははどのタイミングで繰り出すかを見計らっていた。
ティアナの視野を捉える力は彼女には失礼だが、もう少し時間がかかると思っていた。
それだけ自分が繰り出しているそれは難度が高いものだからだ。
だが、ティアナが自分からして失態と思えたのは死角に近い場所からの三発くらいだった。
その時に彼女は今自分に置かれている状況を把握したのだ。
一対多数に限りなく近い状態になっているのだと。
(良太郎さんの視点になって学び取ったんだね)
ティアナが視野の広さを学んだのは、見本となる人間がいたからだ。
「チームの中央に立って誰よりも早く中長距離を制する。それが私やティアナのポジション---CGの役目だよ」
「はい!!」
なのはがポジションの解説を説明しているが、ティアナは今の状態を完全にモノにする事に集中していた。
この訓練は終了のチャイムが鳴るまで続いていた。
なお、フォワード陣の声と身体が悲鳴を上げたことは言うまでもない事である。
次回予告
八神はやて 「仮面ライダー電王LYRICAL StS!!」
桜井侑斗は八神はやての『師』と出会う。
野上良太郎は今回の敵となる人物の名を知ることになる。
第二十三話 「その名は……」