仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party 作:(MINA)
今日は木曜日なので、SDガンダムワールド HEROSの日です。
何か見るものを決めておかないと、曜日の感覚がなくなりそうです。
ちなみに三国創傑伝は全部見てました。
リンクしている蒼翔記と焔虎譚も欠かさず見ていました。
時代はSDガンダムなのかもしれませんね。
桜井侑斗とデネブがイギリスから海鳴へと戻ってくると、拠点となるコテージから煙が立っていた。
ゼロライナーから降りると鼻腔をくすぐる匂いがした。
「もう夕飯時か」
「俺も手伝わなきゃ!」
侑斗は夕飯時だと判断し、デネブは料理をしている人間に手伝うためにコテージの台所へと向かっていった。
「侑斗」
声をかけられたので振り向くと、野上良太郎がいた。
「野上、帰ってたのか」
「うん。それで何か有力な情報は得られたの?」
良太郎の口ぶりからして、自分が誰に会いに行ったかを八神はやて経由で知らされているのだろう。
特に黙っていてほしいと釘を刺したわけでもないので構わないが。
「機動六課で敵になりそうな奴の情報は一応得た」
「その様子からすると、相当厄介な相手?」
良太郎がこちらの表情を読み取って訊ねてきた。
「ああ。相手は『政治家』だ。『政治屋』でないのが余計厄介だ」
「信念を持った相手か……。確かに厄介だね」
「俺達。そういう奴と戦った事はほとんどないもんな……」
「うん……」
今までの戦いで『信念を持った相手』という敵と戦った事はほとんどない。
カイにしろ牙王にしろ死郎にしろ、信念というよりは己の欲望に忠実に従っただけというようにも捉える事ができる。
ネガタロスは少なくとも、欲望というよりは『美意識』で戦っていたとも取れる。もっとも海鳴で復讐を果たすために挑ん
できたRネガタロスの際には美意識よりも復讐心、つまり欲望が勝っていたので結局は信念で戦っていたと取る事はできな
くなってしまったが。
「でも今すぐ戦うわけじゃないし、そもそも戦うと決まったわけでもないからな。変に気張る事もないだろ」
侑斗は良太郎に言いながらも自分に言い聞かせている。
「そうだね。戦うと決まっているわけじゃないから片隅にとどめておく程度でいいかもね」
良太郎も同意した。
侑斗と良太郎が場所を移ると主な面々がいた。
チームライトニングとスターズ、そしてロングアーチにデンライナーのメンバー全員が集まっていた。
そこにどこか見覚えがあるが、誰なのかわからない二人がいた。
その二人は八神はやて、高町なのは、フェイト・T・ハラオウンと楽しく会話していた。
「誰だ?見覚えはあるんだが……」
二人の顔を見て、侑斗は首を傾げたままだ。
「オメェ。どうしたんだよ?ボケーっとしてよ」
モモタロスが気にしてくれているのかこちらに来た。
「お前、わかるのか?」
モモタロスは首を傾げている良太郎の様子を信じられないような表情で見ており、侑斗は答えを知っていると踏んだのか
訊ねた。
「ボケてんじゃねぇよ。金髪チビと紫チビじゃねぇかよ」
「誰が金髪チビよ!」
「私、紫チビじゃないですよ!」
モモタロスの台詞に反応するように二人が抗議してきた。
「金髪チビに紫チビ……」
「見覚えはあるんだよな。でも、十年経ってるから今ひとつなぁ……」
良太郎はモモタロスの発した単語を反芻しながら突破口を見出そうとし、侑斗は確信がないので今ひとつ自分の推測に自信
を持つことができなかった。
「もしかして、バニングスと月村か?」
侑斗はモモタロスが発した名称を反芻して導き出した結果を、口に出した。
三人との会話を一時中断してアリサ・バニングスと月村すずかが歩み寄ってきた。
「お久しぶりです。桜井さん」
「お元気そうで何よりです」
それぞれが軽く会釈してきたので、倣って返す。
侑斗はすずかとは、はやてとの繋がりでそれなりに面識があるがアリサとはあまり面識がないといえばない。
過去二度にわたって海鳴に訪れた事があるが、それでも面識は数えるほどだ。
フェイトと同じ金髪だが活発なのがアリサで、なのは以上に大人しそうな雰囲気をしているのがすずかというくらいだ。
(今思い返すと、すごく失礼な憶え方のような気がする……)
絶対に口に出さないと侑斗は誓う。
「あ、えーと……」
この二人を前にすると、何を言えばいいのかわからない。
何せ話題らしい話題が出てこないのだから。
「私達って共通の話題がありませんね」
アリサはこちらの心中を察してくれたのか先に切り出した。
「まあ……な」
「そういえば、はやてとすずかが趣味で作ったアレってもう見たんですか?」
アリサが言うアレに心当たりがあるのは一つしかない。
「もしかして、ゴルゴムやクライシス帝国に関するファイルのこと?」
確認するかのように言うと、アリサは首を縦に振ってくれた。
「はやてちゃんと頑張りましたからね。アレをあそこまで完成させるのは……」
「あそこまで綺麗に作ったのはほとんど私よ……。アンタ達だけだったら凄い量になってたわよ。間違いなく」
すずかが胸を張って、誇るほどの出来だというのは読者の良太郎としては納得できるがその後のアリサのぼやきは正直気に
なった。
「このファイル、どう見ても八神や月村だけで作ったわけじゃないとは思ってたけど大元はバニングス。お前だったんだな」
侑斗がファイルを閲覧しながら、どこか納得したような口調をしていた。
「どういう事?このファイル、八神さんとすずかちゃんが作ったものじゃないの?」
「ファイルのネタを集めたのは八神と月村で間違いない。ただ、ここまで人に理解しやすい内容となると二人では無理なんだよ」
「何でさ?」
「このファイルを作った人間は文系はもちろん理系も卓越していないと作れないんだ。八神の学業成績はシャマルから教えてもらったが、
コレを作れるほどのモノじゃないな」
「それだと八神さんの成績しかわからないじゃない。すずかちゃんが頑張ったと取れるんじゃ……」
侑斗の言い分だと、はやて一人で作る事はできない事がわかるだけですずかを込みにしても作れないという理由にはならない。
「これもシャマル情報なんだが、月村が八神家に遊びに来ていた時の事なんだが文系、理系の科目が危ないかもと嘆いていたらしい」
「シャマルさん、そんな事まで覚えてたんですか!?」
すずかにしてみれば『閉じておきたい歴史』だったようだ。
「このファイルが作成されたのは今から四年前。いくら八神が現職管理局員だったとしても、片手間ではできるほどチャチな出来じゃないし
月村がいくら中等部から成績を上げたとしても、これほどの出来になるまでには至らないと推測してるが?」
「降参します。桜井さんの言う通り、ファイルの資料を集めたのは私とはやてちゃんですけどまとめたのはアリサちゃんです」
すずかが両手を小さく挙げて打ち明けた。
その表情は暗くなく、逆に尊敬の表情を浮かべているくらいだ。
「そうか」
侑斗は納得したらしく、それ以上は何も言わなかった。
「それで良太郎さん。そのファイル、役に立っ……ちゃったみたいですね」
アリサは昼間、自分が得た情報とファイルの中に入っている情報で合致する部分がある事を思い出すと途端に声が沈んだ。
「うん。できればこんなかたちで役に立ってほしくはなかったんだけどね……」
良太郎の声も沈んでいた。
ファイルが役立つという事は、ゴルゴムかクライシス帝国の怪人が存在しているという事になるのだから。
「このファイルは今から数十年前の出来事だから、今この怪人達が地上にいるとしたらそれって……」
すずかは口にしながらも、それが現実であってほしくはないと願っていた。
「そこから先は僕達が調べるよ」
良太郎は安心させるように笑みを浮かべてから、すずかの言葉を中断させた。
侑斗も同じような表情で、アリサに下手な考えをさせないように中断させていた。
それ以上、下手な事を言わないところからしてアリサとすずかが事情を察してくれたことに良太郎と侑斗は内心で感謝した。
自動車が停車すると、三人の女性が出てきた。
「お姉ちゃんズ。参上!!」
モモタロスならポーズをとること確実な台詞を言ったのは高町美由希だ。
その後に、十年前より髪を伸ばして落ち着きのある雰囲気を出しているエイミィとどこか見覚えのある子供が降りてきた。
「エイミィさん」
「アルフ!」
エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエが真っ先に反応した。
「それに美由希さん……」
「さっき別れたばっかりなのに……」
スバル・ナカジマとティアナ・ランスターは突然の来訪に戸惑う。
「いやあエイミィが、なのは達に合流するって言ったから私も丁度シフトの合間だったし……」
「そうだったんですか……」
美由希の言葉に、スバルが納得する。
「エリオ、キャロ。元気だった?」
エイミィがフォワードの年少組に、離れて住んでいる家族の再会を喜ぶようにして声をかけた。
「「はい!」」
二人は元気よく揃って返事する。
「二人ともちょっとは背伸びたか?」
「どうだろう……」
「少し伸びたかも……」
どこか見覚えのある子供はエリオとキャロの成長を伺うが、二人は実感がないため曖昧な返事しかできなかった。
子供の視線は良太郎に向く。
「良太郎!!」
「アルフさん!」
子供がアルフだという事は良太郎は見抜いていた。
アルフが駆け寄り、良太郎も目線を合わせるようにしてしゃがむ。
「アンタ、久しぶりじゃないか!全然変わってないね」
「アルフさんは十年前より大分変わったね。どうしたの?その身体」
良太郎の知るアルフは自分よりは背が低いものの、メリハリのあるプロポーションをした『少女』と『女性』の間くらいの
容姿をしていた。
それが今は完全に『少女』もしくは『幼女』といってもいいくらいに小さくなっていた。
アルフが大型の狼や可愛らしい『こいぬフォーム』になる姿を見てきているので、今更このような姿になっても大声出して
驚くほどの事ではなかった。
「まぁ、あれから十年も経ってるんだからいろいろ変わるさ」
「その姿で言っても、何か変なだけだよ」
言ってる内容はどこか昔を懐かしむ大人な台詞なのだが、言っている者の外見は子供なのでおかしかった。
「しつれーだぞー」
アルフは抗議するが、会話を弾ませるためのものなので本気で怒っているわけではない。
「アルフー!」
アルフの犬耳がピクピクっと反応する。
彼女にとって最も会いたかった人物の声が耳に入ったのだ。
「フェイト!フェイトー!」
主のそばまで寄ると尻尾までピコピコさせる始末だ。
「アルフ、元気そうだね」
飛びついてきたアルフをフェイトは抱き留める。
「元気!!」
満面の笑顔で答える。
「ほんと、アルフには世話になりっぱなしでね」
エイミィが頬を掻きながら実情を打ち明け始める。
「ウチの子達の世話に遊び相手、本当に助かってるんだよ」
「そうなんですか」
エイミィは感謝しきれないという口調で語り、高町なのはは納得しながら頷いていた。
「ハラオウン家の使い魔だからなー!」
アルフはフェイトから降りて、胸を張って言う。
「チビ達の世話は楽しいし♪」
そのように付け足す。
「あのぉ、ちょっといい?」
良太郎がゆっくりと挙手をしてから、話に入ろうとしていた。
「エイミィさんの言っているウチの子達とかアルフさんの言うチビ達ってなに?もしかして養子?」
真顔で良太郎は質問する。
「良太郎。エイミィは結婚してるんだよ」
フェイトがまず十年間に起こった事実の一つを話した。
「え!?あ、それはその……おめでとうございます」
「あ、いえいえこちらこそ」
事実を教えられた良太郎は一瞬だけ驚いてから、エイミィに頭を下げて感謝の言葉を述べる。
エイミィは笑顔で返す。
「でも誰と結婚したの?僕の知ってる人?エイミィさんだったら候補者募ったら十人二十人じゃ足りないでしょ?」
「そんなにはいないよ~。私そんなに魅力ないしね~」
良太郎の言葉を謙そんしながら、エイミィは笑う。
「そんな、エイミィさんみたいな女性はなかなかいないと思うけどなぁ」
「どうして?」
良太郎は納得いかないという顔をし、フェイトが訊ねた。
「仕事はできるし、家事は完璧で相手への気配りだってできるし偏見で人を見る事はしないんだよ。僕の世界の女性ではなかなか出会えないよ」
フェイトの疑問に良太郎は真顔で答えていく。
「いや~何かそんなふうに褒められると照れちゃうな~」
エイミィは自分をそこまで高く評価してもらったことはあまりないので、照れていた。
「………」
そんな光景を見ながら、一人だけおっかない雰囲気を醸し出そうとしている人物がいる事をここにいる誰もがまだ気づいてはいない。
「………」
おっかない雰囲気を醸し出そうとしているのはフェイトだった。
もちろん本人が意識しての事ではない。
(な、何だろう……)
胸のあたりがちくりと痛むような痛みを覚えてから身体の内に眠る何かがまるで長年の眠りから目覚めたような何かが一気に身体を駆け巡った。
(良太郎がエイミィを褒めただけなのに………)
そう、ただそれだけの事なのにだ。
自分にとって義理の姉が他人に評価される。
悪い事ではなく、むしろいい事なのにだ。
「あの……フェイトちゃん」
なのはが何かに恐れている表情を浮かべながら、声をかけてきた。
「なに?」
訊ね返しただけなのに、なのはは更にビクッとした。
「怖いよ……」
「え?」
言われても何なのかはわからない。
「だからその……何でそんなに機嫌が悪いの?」
「私が?」
「フェイトちゃん以外にはいないって」
なのはが何を言っているのかフェイトには本当にわからない。
(機嫌が悪い?私が……)
どうしてそうなったのかという経緯はひとつしかない。
(良太郎がエイミィを称賛した事が私は嫌だったってこと?)
フェイトは胸に手を当てて、冷静になろうとする。
(どうして。今までこんな事は一度もなかったのに……)
心臓の鼓動が聞こえてくる。
激しかったものがゆっくりと普通に鼓動している。
(私、嫉妬してたんだ……。エイミィに)
今までどんな局面に立っても明らかに嫉妬だと感じたことはなかった。
これが初めて自覚できる嫉妬なのだ。
自覚することでフェイトが行う事は自己嫌悪だ。
(私、嫌な女になっちゃったのかな)
他人を嫉妬するというのは道徳概念でみれば褒められる行為ではない。
だが、今のフェイトの行為を真っ向から避難できる人間がいるだろうか。
「フェイトちゃん」
「良太郎……」
自分の異変を彼が感付かない筈がない。
「どこか行こうか?」
「うん」
月を鏡のように映す湖畔へと移動した。
「どうしたの?」
彼は心配の表情を浮かべたままだ。
自分が彼にこのような表情をさせるのはやっぱり『恋』絡みだけだ。
「う、うん……あのね……」
心配してくれている相手をはぐらかす気持ちはフェイトにはなかった。
それが自分が行為を抱く彼なら尚更だ。
「さっき私ね……。その……」
罪悪感を感じているので、即座に切り出すことはできない。
「エイミィに嫉妬したんだ……」
「エイミィさんに?」
「うん……」
フェイトは告白し、良太郎は訊ね返した。
「僕がエイミィさんの事を言ったから……だよね」
嫉妬する原因が何なのかを見抜けないほど、良太郎は鈍くはなかった。
「うん……。でも良太郎が悪いわけじゃないんだよ。良太郎の言ってる事、本当だし……」
フェイトも身内贔屓を抜きにしても、エイミィへの評価は良太郎と同じだ。
「そんなに気にする事じゃないと思うよ」
どんどん深みにはまろうとしている中に、この台詞が耳に入った。
「でも……」
「誰だって嫉妬はするよ。僕だってモモタロス達だってね」
「例えば?」
深刻な表情をしていたフェイトが興味を持ったのか、横にいる青年の顔を見る。
「君達魔導師は空が飛べる。でも僕達は飛べない、とか」
「陸戦魔導師っていって空を飛べない魔導師だっているんだよ」
「でも僕達が最初に見た魔導師は君達だからね。どうしても君達が基準になっちゃうんだよ」
良太郎も民間協力者であるが、時空管理局に関する最低限の知識は教えられている。
それでも、その手の知識を有する前の方が印象深いためか良太郎にしてみれば『魔導師は空が飛べる』とインプットされてしまっているらしい。
「僕もモモタロス達も自力ではどんなに頑張っても空は飛べないからね。息するみたいな感じで空を飛んでる人を見たら妬ましいと思う事はあるよ」
自分とは逆に、良太郎は穏やかに語っていた。
「でもどうして、空を飛べる事に嫉妬したの?こう言っては何だけど良太郎達は空を飛べなくても強いじゃない?」
フェイトは電王が過去に空戦魔導師とカテゴライズされる魔導師と戦っていた出来事を思い出す。
自分を始めとして、空戦可能な魔導師と戦っても善戦している事実がある。
「土俵が違う相手と戦うって事は、それだけでも普通に戦うよりも体力や精神力が消耗するってのは知ってるでしょ?」
善戦できるといっても、傍目から見て『不利』を背負って戦っている事は確かだ。
「それに嫉妬することは悪い事じゃないよ。大事なのはその後じゃないかな」
「その後?」
良太郎は鼻の頭を掻きながら言い始める。
「嫉妬したことを反省するか、強引に正当化させるかはその人次第だよ」
「……うん」
そう言うと良太郎は踵を返す。
「行こう。そろそろ戻らないと八神さんに茶化されそうだしね」
フェイトは頷き、彼の背を負った。
その後、合流すると予想通りにはやてに茶化された。
エイミィとアルフと話す機会があり、その中で先程のエイミィの亭主となった人物の正体を知り良太郎としては頭を悩ませる事になった。
「モモタロス達。絶対に弄るよね……」
「うん。間違いなくね」
「絶対に弄るね」
「あははは……」
真面目な顔をして言う良太郎、フェイト、アルフに対してエイミィはその未来があまりにハッキリ見えているためか笑うしかなかった。
イマジン達は現在、アリサ、すずかと話し込んでいるのが見えた。
「やっぱり夕飯時に自己紹介とかってあるよね」
「余程非常識でない限りは間違いなく、やるね」
「エイミィの番になったら、モモタロ達は暴れだすよね」
「良太郎君。ハナちゃん、来てるよね?」
「来てるけど、まさかエイミィさん」
四人の話し合いが深刻化し、今後起こるイベントでエイミィの実情を知ったイマジンが暴れだすタイミングを予想しどのように対策を練るかと進んでいた。
「この場にいる面子で確実にモモタロス君達を鎮静化できるのはハナちゃんだけだからね」
折角の社交の場でコハナ一人に汚れ役をさせる事にエイミィは罪の意識を感じていた。
だが彼女も、独身の際は時空管理局の局員だ。
時には非情にならなければならない面がある事も知っている。
「まぁ、ハナさんに事情を話せば二つ返事で応じてくれると思うから心配はないと思うけど」
「あれ?そうなの……」
良太郎の意外な答えに、エイミィの両肩の力が抜けたのは決して気のせいではない。
「何かいい匂いがするね~」
「そうですね。何だか食欲をそそられる匂いですね~」
「お腹すきましたね~」
「キュク~」
「あんた達。意地汚いわよ」
フォワード陣のティアナ・ランスターが窘めるが、三名と一匹は鼻腔をくすぐる匂いの誘惑に負けかけていた。
そこで四人は従来の常識を疑う光景を目の当たりにする。
はやてとデネブが向かい合って、鉄板で調理をしていたのだ。
デネブが作る料理を四人は食べたことがある。
といっても、休憩中にヴィータから配られるデネブキャンディーだが。
元来部隊長が現場に姿を見せる事があっても、ほとんどが指揮を執って泰然自若としているものだ。
少なくとも、参加者全員のために自らが厨房に立って両手にヘラを握って自在に操ったりはしない。
「デネブちゃん。悪いけど今回は勝たせてもらうで」
「前回も引き分けだった。俺も一回は勝っておきたい」
ヘラを自在に操りながら、はやてとデネブは今回の料理に対して抱負を語っていた。
「あー、言っとくが自分達が替わりにやるなんて言うなよー」
フォワード陣が切り出そうとする出鼻をヴィータが挫いた。
「はやて隊長とおデブの料理はギガうまだからな。ありがたくいただけ」
ヴィータの言葉を真に受けて、四人は訓練を受けるくらいに気合のこもった返事をした。
「あの、ヴィータ副隊長」
「何だ。キャロ」
「どうしてシャマル先生はあそこからこちらをじっと見ているのでしょうか?」
キャロの言う通り、シャマルは距離を離れて木の陰に隠れてじっとこちらを、正確には料理をしているはやてとデネブを見ていた。
「あーあれはな……」
「気にするな。いつかは自分もあの場に立ちたいというシャマルの心の表れだ」
ヴィータが答える前にシグナムが簡潔に教えた。
「立てるんでしょうか?」
エリオの問いに、シグナムとヴィータは顔を見合わせる。
「「無理」」
非情な答えにシャマルは涙を流して、どこかに走り去ってしまったことは言うまでもない。
次回予告
第三十話 「機動六課 海鳴へ⑥ ~第一回異種怪人戦~」