仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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リアルが忙しすぎましたが、ボチボチですが更新していきます


第三話 「魔導師ランク試験」

〇〇七五年四月。

臨海第八空港近隣の廃棄都市街。

晴天であり、外で何かを行うには絶好の日和であり私有地であるかのように一機のヘリコプターが飛んでいた。

その場で瞑想していた濃い青色髪をショートヘアにしている少女---スバル・ナカジマは右手で拳を作り、左掌にパシッと打ちつける。

中腰になって構えてから右、左と正拳を繰り出す。

次に右フック、また右正拳、左正拳と繰り出してから右下段回し蹴りを放つ。

拳にしろ蹴りにしろ、素早くキレがある。

その場で跳躍する事でカチャンカチャンと音が鳴る。

コンクリートの床とローラーの車輪がぶつかり合う音だ。

カチャリカチャリとスバルが鳴らしている音とは違う別の音が鳴る。

「スバル。あんまり暴れてると試験中に、そのオンボロローラー逝ってしまうわよ」

オレンジ髪にツインテールの少女---ティアナ・ランスターが自作のアンカーガンを手際よく弄りながら、相棒に忠告する。

「ええ~。ティア~。やなこと言わないで。ちゃんと油も差してきた!」

スバルは大丈夫という意味合いがこもった台詞を言いながら、浅い伸脚運動をしている。

ティアナもアンカーガンを弄り終えたのか、下げていたバレルにカートリッジをを詰め込んでからガシャリと正位置に戻す。

右手を腕時計を見るように構えると半透明で時刻が表示される。

指定した時間になると、ピーッとアラームが鳴る。

二人の前にモニターが出現する。

そこに映っていたのは、陸士隊制服を着用した銀色の長髪の少女---リィンフォースⅡ《ツヴァイ》(以後:リィン)だった。

『おはようございます!さて魔導師試験の受験者さん二名。揃ってますかぁ?』

「「はい!」」

リィンの確認に、スバルとティアナは横一列に並んで返答する。

『時空管理局陸士三八六部隊所属。スバル・ナカジマ二等陸士』

「はい!」

『同じくティアナ・ランスター二等陸士』

「はい!」

スバルとティアナは返事をする。

『所有している魔導師ランクは陸戦Cランク。本日受験するのは陸戦魔導師Bランクで間違いないですね?』

リィンは手元の書類を読み上げていく。

「はい!」

「間違いありません」

受験者二人はそれぞれ即答する。

『はい。本日の試験官を務めますのは、わたくしリィンフォースⅡ空曹長です。よろしくですよぉ』

リィンは自己紹介を終えると、敬礼する。

「「よろしくお願いします!」」

受験者二人もすぐに敬礼で返した。

 

ババババとプロペラの音を鳴らしながら、ヘリコプターがその場に留まっていた。

ドアが開き、陸士隊制服でショートボブの女性と少女の中間にあたる八神《やがみ》はやてがヘリコプターのドアを開いて、見下ろしていた。

「お~、早速始まってるなぁ。リィンもちゃんと試験官してる♪」

満足げな笑みを浮かべる。

現在の彼女の階級は二等陸佐である。

「はやて、ドア全開だと危ないよ。モニターでも見られるんだから」

隣に座っている金髪で長髪、黒をメインとした制服を着たはやて同様に少女と女性の中間にあたるフェイト・T・ハラオウンが強くはないが、注意した。

風がふぶいているため、金色の髪がなびくため右手で抑えている。

「は~い」

はやてはフェイトの言葉に従い、ドアを閉じるため側にあるボタンを押した。

ヘリコプターのドアが閉まり、はやてはフェイトの隣の席に座る。

背景が淡い赤色のモニターが出現し、スバルとティアナも映し出されていた。

「この二人がはやてが見つけた子達だね?」

モニターを弄りながら訊ねる。

フェイトは、この画面で見るのが初めてとなる。

「うん。二人とも、中々の伸び代《しろ》がありそうなええ素材や」

「今日の試験の様子を見ていけそうなら正式に引き抜き?」

はやての『人を見る眼』を信じているフェイトには、はやてのおおよその行動が理解できる。

「直接の判断は、なのはちゃんにお任せしてるけどな。部隊に入ったら、なのはちゃんの直接の部下で教え子になるわけやからな」

「そっか」

はやては試験後の予定を話し、フェイトは納得した。

 

別の場所では一人の栗色の髪をサイドポニーにした、はやてやフェイトとは違う白色がメインとなっている教導隊服を着た高町(たかまち)なのはが宙に出現している背景が薄い青色のモニターを弄っていた。

スバルとティアナの主なデータが映し出されており、何かを仕掛けるようにモニターを触る。

建造物などの映像に切り替わる。

『範囲内に生命反応、危険物の反応はありません。コースチェック終了です』

「うん。ありがとう。レイジングハート」

なのははスタンバイモードのレイジングハート・エクセリオンに礼を述べる。

「観察用のサーチャーと障害用のオートスフィアも設置完了。私達は全体を見ていようか」

『はい。マイマスター』

レイジングハート・エクセリオンは自身を輝かせて、答えた。

 

『二人はここからスタートして、各所に設置されたポイントターゲットを破壊。ああ、もちろん破壊したらダメのダミーターゲットもありますからね』

リィンがスバルとティアナに試験概要を説明していた。

モニターの画面が切り替わって、ダミーターゲットが表示される。

『妨害攻撃に気をつけて、全てのターゲットを破壊。制限時間内にゴールを目指してくださいです。なにか質問は?』

この魔導師試験、ちょっとしたアクションゲームじみているといってもいい。

制限時間内に与えられたミッションをこなせるか否かというのが大まかな流れだろう。

ただし、その中でも細かい部分には減点基準が設けられていると考えた方がいいだろう。

単純に制限時間内にターゲットを破壊するだけなら、ちょっとした力自慢(この場合は魔力)なら誰でも突破できるという事になるからだ。

「ええと……」

「ありません」

「ありません!」

スバルは何かあるかなぁと頭を働かせると同時に、ティアナを見るが彼女が毅然とした態度で即答したので自分も下手に考える事はやめた。

『ではスタートまであと少し。ゴール地点で会いましょう、ですよ』

リィンがウインクをして告げてからモニターが閉じられた。

 

 

荒野を思わせる『時の空間』を一台の連結車輌が走っていた。

デンライナーとゼロライナーだ。

元々行動が同じなので併走する必要はなく、ゼロライナーはデンライナーの後部に連結していた。

線路を敷設・撤去しながら四ヶ月前の時間まで走っていた。

まずは自分達の世界の『時の空間』で四ヶ月前まで遡って、別世界の『時の空間』へと架かっている『橋』を経由して向かうという方法だ。

デンライナーもゼロライナーもタイムマシンではないため、別の世界へ直接行くことは出来ない。

だが、どの世界にも『時間』という概念が存在している限り『時の空間』も存在しているという事は前回、前々回で立証済みだ。

桜井侑斗、デネブはゼロライナーで恒例の二人ババ抜きをしており、デンライナー食堂車にいる野上良太郎を始めとする者達はというと……。

食堂車の中央に巨大な円卓があり、その真ん中には巨大チャーハンがあった。

所謂、オーナーの趣味ともいえる『チャーハン対決』だ。

今回は全員が参加していた。

そもそもこの競技、最終的に旗を落とした者が負けなので大人数で行う方が責任のなすりあいが可能なので有利、不利がコロコロと変わる。

トップバッターはオーナー。

二番手は良太郎。

三番手はコハナ。

四番手はモモタロス。

五番手はウラタロス。

六番手はキンタロス。

ラストはリュウタロスとなっている。

スプーンでチャーハンを突き刺す→掬う→スプーンで掬ったチャーハンを食べる→手元にあるベルを鳴らして次の相手に回す。という工程を繰り返していた。

優勢、劣勢はチャーハンの量が多いうちは誰に傾くというような事は明確にはならないが、少なくなれば一喜一憂となっていく。

七人の共通点としては自分の番で旗を落とすような状態にならなければいいという事だけだ。

「みなさぁん。まもなく別世界の四ヶ月前に到着しまーす」

一人観客を決め込んでいたナオミが、車内アナウンスをした。

チャーハン対決は決着はつかないままだった。

 

 

青い空には宙に出現するモニターと同じ原理で、モータースポーツ御用達のシグナルが表示されていた。

スバルとティアナの表情が険しくなる。

ビッ。

シグナル三つのうち、一つが消える。

ビッ。

シグナル残り二つのうち、一つが消える。

「レディー……」

ティアナが構えて自身に暗示をかけるようにして呟き、スバルも構える。

ビーッ。

最後の一つが消えて『START』と同時に、ティアナが「ゴー!」っと張り上げて二人が駆け出した。

 

試験をヘリコプター内部という特等席で観覧しているフェイトとはやてはというと。

「お、始まった始まった」

「お手並み拝見っと」

身を乗り出して、受験者二人がどのような行動を取って結果をもたらすのか楽しみにしていた。

 

駆け出したスバルとティアナは一旦停止していた。

ティアナがアンカーガンのダイヤルを弄ってから、廃ビルの天井付近に狙いをつけてから引き金を絞る。

バシュッとアンカーが射出されて、先端が食い込んだ場所にオレンジ色の魔法陣が展開される。

「スバル」

「うん!」

ティアナが何をするのか理解しているスバルはティアナにしがみつく。

二人同時に駆けてから、引き寄せられるようにして廃ビルへと近寄っていく。

「中のターゲットは私が片付けてくる!」

「手早くね」

「オウケエエエェェェイ!」

スバルはティアナから離れると、衝撃に備えて両腕で防御体勢を取りながら廃ビルへと突入した。

窓ガラスが割れて、破片が飛び散っているがスバルは気にせず前へと進む。

今のスバルに映っているのは、障害物となっているオートスフィアだけだ。

ローラーの車輪を回転させて迎撃態勢をとっているオートスフィアに向かっていく。

オートスフィアが放つ光線をローラーを駆使して、巧みに避けていく。

射程範囲に近づくと、跳躍して右手でオートスフィアを殴り飛ばして破壊してから、勢いを殺さずに右側にいるオートスフィアに右踵落としを食らわせて破壊する。

爆煙が晴れる前にスバルは突き抜けていく。

横に滑りながら、オートスフィアは狙いをつけて光線を放つ。

右、左、とローラーを滑らせながら避けていきながらもスバルはオートスフィアを睨む。

「ロードカートリッジ!!」

右拳を振りかぶる。

右腕に装着されているリボルバーナックルの手首付近のスライドカバーが開く。

リボルバーのシリンダーが回転しながら蒸気が噴出される。

スライドカバーが閉じられる。

 

「リボルバァァァァァァ!!」

 

掌を拳に切り替えて、手首付近の二重の歯車---スピナーが回転を始める。

スピナーを基点に蒸気が噴き出る。

 

「シュゥゥゥゥゥトオォォォォォ!!」

 

左足を前に踏みかえると同時に、右拳を真っ直ぐに突き出す。

ドゥンという音を響かせながら、拳の先から青い魔力弾を放つ。

魔力弾を放った拳は反動で跳ね上がるようにして、持ち上がっていた。

魔力弾は直線上にあるオートスフィアに向かっていく。

スピナーから生じた渦が放った魔力弾を覆うようになっていく。

オートスフィアは『貫かれる』というより『ひしゃげる』というような表現で跡形もなく砕け散っていた。

完全に消滅した事を目視すると、スバルは踵を返してローラーを滑らせた。

 

アンカーガンで天井まで上ったティアナは自分より斜め下の位置にあるフロアで屯しているターゲット達に狙いをつけていた。

(落ち着いて。冷静に……)

自身に言い聞かせながら、アンカーガンで狙いをつける。

足元にオレンジ色の魔法陣が展開される。

狙いをつけて引き金を絞る。

バァンバァンバァンとオレンジ色の魔力弾がターゲットを破壊していく。

「あっ……」

ターゲットと思いきや、視界に入ったのはダミーターゲットであるため、照準を外してその背後に現れた二体のターゲットに狙いをつけて引き金を絞って破壊した。

全てを破壊し終えると、ティアナは屋上から飛び降りて目標物を見つけるとアンカーガンを構えて、アンカーを発射させる。

アンカーの先端は壁に刺さり、オレンジ色の魔法陣が展開される。

ティアナはそのままロープの動きを読んで、巧みに操って無事に地面に着地を成功させる。

壁から離れたアンカーは鞭のようにしなりながら、シュルルルとアンカーガンのバレルの中へと納まっていった。

フロアの中から出て来たスバルと走りながら、合流した。

「いいタイムだね!」

「当然!」

スバルは『好調で幸先がいい』と言い、ティアナは『自分達ならできて当たり前』という意味がこもっている台詞で返した。

 

バババババとヘリコプターはプロペラを回転させながら、その場で停滞させていた。

ヘリコプター内でモニターで観覧しているフェイトとはやてはというと。

「うん。いいコンビだね」

「そやけど、難関はまだまだ続くよ」

フェイトは二人の動きや役割分担の的確さを褒め、はやては厄介な障害があるような口振りをしていた。

モニターをはやては触れる。

アップに映し出されたのは今までのオートスフィアの数倍の大きさのものだった。

「特にコレが出てくると、受験者の半分以上は脱落する事になる最終関門。大型オートスフィア」

「今の二人のスキルだと普通なら防御も回避も難しい中距離自動攻撃型の狙撃スフィア……」

「どうやって切り抜けるか知恵と勇気のみせどころや」

二人は受験者がどのような対応をするのかが見物だった。

 

 

大型オートスフィアは相手が来るまでじっとその場で佇んでいた。

感情があるのならば『デンと構えている』という表現が似合うのかもしれない。

この試験においての『ラスボス』的存在でもある。

そんな大型オートスフィアに小さくピシリと亀裂が走り始めた。

 

 

スバルとティアナは次のエリアへと走っていた。

「いっくぞぉぉぉぉぉ!!」

「スバル。うるさい!」

ノリに乗っているスバルとは対照的にティアナは冷静さを保ち、相棒を注意した。

二人の行く先であるハイウェイ跡地にはオートスフィアがわんさかとあり、迎撃態勢をとっていた。

オートスフィアは二人を視認すると容赦ない攻撃を繰り出していた。

ティアナはアンカーガンのバレル先端にオレンジ色の魔力弾を停滞させたままだった。

オートスフィアの攻撃を防ぐ為に壁に隠れて攻撃の出方を伺っているのだ。

時間無制限ならばひたすら『待ち』という方法を用いる事は出来るが、時間制限があるこの試験では『待ち』という方法は時間の浪費にしかならない。

攻撃が止まったと判断したティアナは狙いを定めてアンカーガンの引き金を絞る。

 

オートスフィアが立て続けに破壊されていく。

攻撃が仕掛けてこないうちに、壁に隠れてアンカーガンのバレルを下ろして装填されている二発のカートリッジを排莢してから、新たなカートリッジを二発バレルのに装填して下ろしたバレルを勢いよく上げて戻した。

すぐさま、引き金を振り絞った。

 

スバルはローラーの機動力を活かして前面に立っていた。

移動しながらもハイウェイ跡地で利用できそうな地形を判別していく。

(よし!)

使える場所を選ぶと、ローラーの回転を速めて速度を上げる。

「うおおおおおおお!!」

速度が上がり、カタパルトのようになっている瓦礫の上に乗っかって、眼前のオートスフィアを粉砕する為に右手を振りかぶる。

カートリッジロードをしており、リボルバーナックルのスピナーが回転していた。

距離が限りなくゼロになったところで、オートスフィアの光線を殴って弾き飛ばしてから柱を踏み台にして両脚を踏ん張ってから跳ね上がって、右足を振りかぶって跳び回し蹴りを放ってオートスフィアを地面に叩きつけて破壊した。

すぐさまティアナの背を守るようにしてローラーを滑らせた。

「よし。全部クリア」

ティアナは周辺を確認してから言う。

「この先は?」

スバルはリボルバーナックルのスライドカバーを開いて、装填されているカートリッジをシリンダーごと取り替えていた。

役目の終えたカートリッジ搭載のシリンダーは射出する事で排莢した。

再装填すると、スライドカバーは閉じられた。

「このまま上。上がったら最初に集中砲火が来るわ。オプティックハイドを使ってクロスシフトでスフィアを瞬殺。やるわよ?」

ティアナはバレルを下ろして、カートリッジを詰め替えながらスバルに今後の趣旨を説明した。

「了解!」

スバルは右手でサムズアップして応じた。

 

 

大型オートスフィアに小さくだがまたピシリと亀裂が走った。

少しずつ動き、ある物へと狙いを定めていた。

 

 

オートスフィアは迎撃態勢を取っていた。

後は昇ってくる標的を打ち落とせばいいだけだ。

アンカーが天井に突き刺さり、オレンジ色の魔法陣が展開される。

オートスフィアは一斉に下から昇ってくるモノに狙いをつけて光線を発射させる。

カキンバキンカキンという金属が当たる様な音が響く。

道路を何かがガーッという音を鳴らしながら、煙と火花を立てていた。

「五!」

ティアナの声がするが、姿はない。

「四!」

何かが、オートスフィアを破壊していった。

その動きはまるで(ヒレ)のみを海上に出している鮫のようにも思えた。

「三!」

何かの正体が次第に明らかになっていく。

何か---スバルは一直線に進んでいく。

透明状態になっていたのはティアナが用いた幻術魔法・オプティックハイドによるものだ。

「二!」

ティアナの合図でスバルは右腕を振りかぶる。

リボルバーナックルのスライドカバーが開いてカートリッジロードされる。

オートスフィアが一斉にスバルに向かって攻撃を仕掛ける。

リボルバーナックルのスピアーが渦を描いている。

スバルは攻撃を避けていく。

「一!」

ティアナのカウントと同時にスバルは跳躍する。

「ゼロ!」

その直後に後方ではティアナの姿が浮かび上がり、彼女の左右と頭上にはオレンジ色の魔力球が浮かび上がっていた。

 

「クロスファイアァァァァァ!!」

 

構えている右手が引き金の役割になっている。

 

「リボルバァァァァァァァァァァ!!」

 

スバルも右腕を振りかぶって前にかざす。

 

シュウウトオオオオォォォォ!!

 

青色の魔力弾と衝撃波が飛び、その直後に三個のオレンジ色の魔力球が発射された。

オートスフィアは全て粉砕されていった。

残っているのは攻撃能力のないターゲットのみだ。

 

ヘリコプターでこの状況をモニターで見ていたフェイトとはやてはというと。

「なるほど。これは確かに伸び代がありそうだね」

「あはは。そやろ」

「残るは最終関門」

はやては自分の見立てが間違っていない事に満足し、フェイトは挑戦的な笑みを浮かべていた。

 

 

大型オートスフィアのボディに更にピシリと亀裂が走っていた。

そして、先程よりも動いていた。

狙いはまだわからない。

 

 

「イエーイ、ナイスだよティア!一発で決まったね♪」

スバルは相棒の立てたプランを褒めながらも、側にあるターゲットを左拳で殴って破壊した。

「ま、あんだけ時間があればね」

ティアナはアンカーガンを拾いながら、短く答える。

「普段はマルチショットの命中率あんまり高くないのに、ティアはやっぱり本番に強いなぁ♪」

「うっさいわよ!さっさと片付けて次に……!!」

ティアナのいた位置だからこそ、それに気づく事が出来たのかもしれない。

「ん?」

スバルはまだ気付いていなかった。

後ろにオートスフィアがある事を。

光線の発射準備をしていた。

 

「スバル防御!」

ティアナは告げると同時に、スバルとの距離を詰めてオートスフィアからの攻撃を避けた。

「わっ!」

スバルも状況を理解して、攻撃を避けていく。

ティアナはアンカーガンを構えて、オートスフィアを睨む。

構えて狙いをつけて引き金を絞って放つ。

だが、道路の窪んだ場所に足を突っ込んでしまい、グキッと音が鳴った。

「あぐっ!」

ただ単に転んだわけではないという事を、本人が一番わかっていた。

「ティア!」

壁に隠れていたスバルが声をかけるが、それより早くオートスフィアがティアナに攻撃を仕掛ける。

ティアナは転がりながら移動して起き上がり、引き金を絞る。

一発目は流れ弾でサーチスフィアに、二発目はオートスフィアに直撃した。

(流れ弾だけど……当てた感覚がない……)

『銃』を主として戦う者には『剣』や『拳』を扱うもの同様に独自の感覚がある。

自分が放った弾丸が、的に当たったか否かというものはわかるのだ。

ティアナには一発目が流れ弾とはいえ、サーチスフィアに直撃した感覚がなかった。

自分の魔力弾が当たったように見えたと思っている。

「ティア!」

スバルが駆け寄ってくる。

「騒がないで。何でもないから」

ティアナは苦痛の表情を浮かべることなく、スバルに告げる。

「嘘だ!グキッっていったよ!捻挫したでしょ!?」

コンビを組んでいるだけあって、スバルには嘘だとすぐに見抜くことができた。

「だから何でもないって!……痛《つう》!!」

ティアナは立ち上がろうとするが、痛みに耐えられずその場でしゃがんでしまい全身が震えていた。

「ティアごめん……。油断してた……」

スバルは自身の責任と感じて、謝罪する。

「私の不注意よ。アンタに謝られると却ってムカつくわ……。走るのは無理そうね。最終関門は抜けられない」

「ティア……」

ティアナが今自身が必死に自分が出来る事で今後のプランを立てていた。

「私が離れた位置からサポートするわ。アンタ一人ならゴールできる」

負傷者を抱えて時間切れ《タイムオーバー》になって、二人とも不合格になるよりは一人でも合格者を出した方がいい。

それに、自身が足手まといになることが何より許せないというのが本音だ。

「ティア!」

スバルが必死な形相でティアナに詰め寄る。

「うっさい!次の受験の時は私一人で受けるって言ってんのよ!」

「次って……。半年後だよ!?」

「迷惑な足手まといがいなくなれば、私はその方が気楽なのよ!」

ティアナが憎まれ口を叩いている事はスバルにはすぐに理解できた。

「わかったらさっさと……」

ティアナがふらつきながらも立ち上がる。

「ほら!早く!」

それでもスバルは行こうとはしなかった。

時間が刻一刻と迫っているというのにだ。

「ティア。私、前に言ったよね?弱くて情けなくて誰かに助けてもらいっぱなしの自分が嫌だったから管理局の陸士部隊に入った。魔導師を目指して魔法とシューティングアーツを習って、人助けの仕事に就いた……」

「知ってるわよ。聞きたくもないのに何度も聞かされたんだから」

そう言いながらも、ティアナはスバルの想いを真摯に受け止めている。

「ティアとはずっとコンビだった……。ティアがどんな想いで魔導師ランクの昇進にどれくらい一生懸命だったのかもよく知ってる……」

スバルは顔を伏せがちだが、告げたい事を告げている。

ティアナはスバルに向けて背を向けている。

「だからこんな所で、私の目の前でティアの夢をちょっとでもかせるなんて嫌だ!一人で行くのなんて絶対に嫌だ!」

スバルは涙目になって、ティアナのプランを拒否する。

「一人で行くのなんて絶対に嫌だ!」

首を横に振る。

「じゃあ、どうすんのよ!?走れないバックスを抱えて残りちょっとの時間でどうやってゴールすんのよ!?」

背を向けていたティアナがスバルへと向き直る。

 

「裏技!」

 

スバルの一言にティアナは思わず目を丸くした。

試験で用いられる裏技って殆どが不正行為よね、とティアナは瞬時に考えたりしていた。

「反則取られちゃうかもしれないし、ちゃんとできるかどうかもわからないけど上手くいけば二人でゴールできる!」

スバルが自信に満ちた表情で告げる。

「本当?」

ティアナとて簡単に諦めるほど潔い性格はしていない。

ほんの一部の可能性があるのなら、それに乗ってみたいくらいだ。

「あ、えと……ちょっと難しいかもなんだけど……ティアにもちょっと無理してもらうかもだし……」

スバルの自信に満ちた態度がどんどん変わっていく。

手をもじもじさせたり、胸元で両手を合わせたりしていった。

「よく考えると、やっぱり無茶っぽくあるし……その何ていうかその……」

ティアナの中では時間が経つに連れて、可能性がどんどん崩れていくような感じがした。

次第にスバルの仕種に苛立ちまで感じる始末だ。

 

「あああああああ!!イライラする!!」

 

堪忍袋の緒が切れたティアナはとうとう叫んでしまった。

素早くスバルに詰め寄って、バリアジャケットの襟を掴む。

「ウジウジ言っても、どうせアンタは自分のワガママを通すんでしょ!?どうせ私はアンタのワガママに付き合わされるんでしょ!?だったらハッキリ言いなさいよ」

ティアナはこれまでもそしてこれからも、スバルとコンビを組む以上はこういうやり取りをするのだろうと確信していた。

「二人でやればきっとできる。信じてティア」

スバルの表情は自信を取り戻していった。

ティアナは襟首を掴んでいた手を離し、右手で時刻を表示させる。

「残り時間三分四十秒。プランは?」

「うん!」

ティアナが自分のプランに乗ってくれる事はスバルにとっては何度経験しても純粋に嬉しかった。

 

リィンとは違う場所で試験監督をしていたなのはは、眼前のモニターを何度もインターホンを押すようにしているがモニターからは試験の映像が映し出される事はなかった。

「トラブルかなぁ?リィン、一応様子を見にいくね」

『はいです。よろしくお願いします』

ゴール地点で待機しているリィンに一言告げた。

『私もセットアップしますか?』

レイジングハート・エクセリオンが本格的に活動する事を主に打診する。

「そうだね。念のためお願い」

なのはの周囲に展開されているモニターが全て消えた。

その直後に、なのはの全身が桜色に輝いた。

 

ハイウェイ跡地をティアナが一人走っている姿をヘリコプター内のフェイトとはやてはモニターで見ることが出来た。

「お、出て来た」

「あれ?だけど……」

モニターにはスバルの姿が映し出されてはいなかった。

光線が窓ガラスを破って、ティアナに向かっていく。

そして、爆発した。

「直撃!?」

「いや、違う」

目の前の出来事に驚いているはやてとは対照的に、フェイトは冷静だった。

更にもういっぱつ光線がティアナに向かっていった。

ティアナはその光線を巧みに避けながら走っている。

「高速回避?違ゃうな……」

「あの子、ティアナはおとり……」

「ということは……」

フェイトとはやての脳裏にこの二人の目的が凡そに見当がつき始めていた。

ここにはいないもう一人が『本命』であり、大型オートスフィアの破壊役ということだ。

モニターに映るティアナは光線に直撃したが、更に二人出現してひたすら一直線に走っていた。

 

瓦礫を壁にしてティアナはしゃがんでオレンジ色の魔法陣を展開させていた。

右手はオレンジ色の魔力光で覆われていた。

両目を閉じて、精神を集中させていた。

「フェイクシルエット。これメチャクチャ魔力食うのよ。あんまり長くは持たないわよ」

発動させながら、ティアナは呟く。

(一撃で決めなさいよ!でないと二人で落第なんだから!!)

別の地点に移動を終えているスバルに念話を飛ばした。

 

「うん!」

別の地点で下を見下ろすようにしてスバルは立っていた。

足元には水色の三角形型の魔法陣が展開されていた。

「私は空も飛べないし、ティアみたいに器用じゃない。遠くまで届く攻撃もない。出来るのは全力で走る事とクロスレンジでの一発だけ!」

左手で拳を作って覚悟を決める。

右手のリボルバーナックルのスピナーが回転していた。

「だけど決めたんだ……」

スバルの脳裏にまるで昨日の出来事のようにして、なのはに助けてもらった事が甦る。

励まされた事。

天井をディバインバスターでぶち抜いた事。

抱きしめられながら、笑顔を向けてくれた事。

「あの人みたいに強くなるって!涙を流す人を守れる自分になるって!!ウイングロードォォォ!!」

右拳を振り上げて、スバルは魔法陣が展開している地面に叩きつける。

水色の魔力で構築された道が一直線に廃ビルの一つへと向かっていく。

幻のティアナを攻撃した光線が飛んだのは、あの廃ビルからだという事は知っているので狂いはない。

スバルは短距離走のクラウチングスタートの体勢をとってから、目標のビルを睨む。

「行って!」とティアナが言った様な気がした。

「行っくぞぉぉぉぉぉ!!」

右手を振りかぶって、カートリッジロードを終えるとスバルは自身が構築した水色の魔力道をローラーの機動性を活かして、一直線に走り出した。

右拳を振りかぶって、真っ直ぐに放つ。

廃ビルの壁を粉砕して、コンクリートなどの埃が舞うが、お構いなしにそのフロアにいる大型オートスフィアを狙う。

「やああああああああああ!!」

勢いを殺さずに、更に右拳を大型オートスフィアの障壁めがけて放つ。

この障壁は固く、割れる兆しは一向にない。

一旦離して連打して殴るより、濃度のある一発の方が早く破壊できるとスバルは考えている。

リボルバーナックルのスライドカバーが何度も開閉してシリンダーが回転し、何度もカートリッジロードをする。

障壁の中に指が入り込んだ。

 

『壁』から『膜』に変わったようにも思えた。

障壁に亀裂が生じ始め、ガラス破片のように砕け散った。

大型オートスフィアのボディに更に亀裂が走り始める。

スバルにはそれが自身が与えたダメージか最初からそのようなものがあったのかという事を考えている余裕はなかった。

大型オートスフィアが間髪いれずに、光線を発射する。

スバルは両腕をクロスして防御するが、完全に勢いを殺しきれなかったために後方へと仰け反るが、バック転で上手く切り抜ける事が出来た。

爆煙が晴れると同時に、スバルは構えて足元に魔法陣を展開させる。

リボルバーナックルがカートリッジロードする。

スピナーから蒸気が噴き出る。

「一撃必殺!!」

両腕を大仰に上下に構えて円を描くようにする。

水色の環状魔法陣が宙に出現する。

リボルバーナックルにも水色の環状魔法陣が纏われている。

スピナーが回転を始めている。

「ディバイイイイイイン!!」

水色の魔力球が環状魔法陣中央に出現する。

「バスタァァァァァ!!」

右拳を放つと同時に、水色の魔力球は光線となって一直線に向かっていった。

大型オートスフィアに直撃し、ボディに更に亀裂が走り始める。

やがて耐え切れなくなり、オートスフィアが爆発を起こした。

ディバインバスターの余波は大型オートスフィアの後方のガラスを数枚粉砕した。

爆煙がたち、スバルは「やった!」と思った。

後はティアナを負ぶってゴールまで全力疾走すれば終わりだと思った。

爆煙が晴れていくと、何もないのが普通だ。

だが、そこには本来ならいるはずのない、正確にはいていいはずのない存在がそこにはいた。

 

ガチョウ型のイマジン---グースイマジンがいたのだから。

 

スバルは陸士訓練校で習った事を行うしかなかった。

『即撤退』を。




次回予告

ウラタロス 「仮面ライダー電王LYRICAL StS!!」

試験会場に現れたグースイマジン。

受験者も観覧者も試験監督も動揺が走る。

狩りを楽しむように追いかけるグースイマジン。

その時、一人の民間人?が乱入した。

第四話 「電王、ミッドの大地に立つ」
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