仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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更に投稿します。



第三十話 「機動六課 海鳴へ⑥ ~第一回異種怪人戦~」

 

 

機動六課の現拠点となっているアリサ・バニングス貸出のコテージでは、現在大所帯となっていた。

この間、サーチャーの結果待ちとなり魔導師サイドとしては小休止のような状態だ。

だが、仮面ライダーサイドはそういうわけにはいかない。

野上良太郎は自身の仮説を他の面々にも報告した。

普通なら鼻で笑われて一蹴されるような話だが、誰もがその話に耳を傾けていた。

仮面ライダーサイドの誰もが『幽霊列車騒動』の体験者だからだ。

それに良太郎の話を信じる理由はもう一つある。

それはモモタロスの嗅覚が何の反応もしなかったからだ。

相手がイマジンならば間違いなくこの嗅覚の対象になるのに、それがなかったという事は別の存在という事を意味している。

そして海鳴市の住民を恐怖に落としれている謎の怪人は蜘蛛の糸を用いており、過去にも似たような殺人事件が行われていた

事が明らかになった。

八神はやて、月村すずかが資料を集めてアリサがまとめたファイルにも事件は記載されていたが、犯人が誰なのかまでは公表されていなかった。

だが、蜘蛛のような怪人が偶然にも事件記者がシャッターチャンスを得て写真に収めてしまい、それが大々的に新聞に報道された。

読者の誰もがこの怪人が犯人だと結びつけることに疑いは持たなかった。

だが、読者はこの怪人がどのような末路を辿ったのかという情報を得る事は出来なかった。

何故なら新聞には一度も取り上げられず、テレビにも報道されれたことがなかったからだ。

だから誰もが推測で判断するしかなかった。

 

 

誰かが怪人を倒した。

 

 

という事を。

その『誰か』というのはファイルを一読した良太郎にはわかっていた。

(僕達以外にもいたんだ。いや、シグナムさんは知っていた感じだったな……)

十年前の時間で良太郎はライナー電王に変身して、シグナムと戦っている。

その際に彼女は自分の姿を見て、『仮面ライダー電王』と言った。

ここから考えられる事は『仮面ライダー』という言葉を某かの方法で知ったという事になる。

そして、その原因も知る事が出来た。

 

 

仮面ライダーBLACK。

 

 

ゴルゴムをたった一人で滅ぼした仮面ライダー。

今から数十年前に存在したと思われる伝説の英雄。

それ以外の事は何一つ明らかにはなっていない。

(今から数十年前だから士郎さん達は知ってると思うけど……。なのはちゃん達はまるで聞かされていないみたいな感じだったし……)

その事を子供達に口外しなかったのは親心なのかもしれない。

また、話したところで『おとぎ話』か『トンデモ話』として受け止められてしまったらそれまでなのだから。

(怪人絡みは目撃者と体験者以外は絶対に信じないしね)

人間は自身の常識範囲外の事象を決して認めたりはしないのだから。

それを責める気は良太郎にはなかった。

自分がもし、電王にならずに平凡な人生を歩んでいたとしたら信じないからだ。

自分達はもしかしたら伝説の英雄が相対した怪人の亡霊と戦うのかもしれない。

そう考えると、不安よりも『必ず倒す』という決意が強くなっていた。

考えをある程度までまとめ終えると、目の前の出来事に意識を向ける。

地元協力者がフォワード陣に自己紹介をしていた。

 

 

自己紹介はアリサ、月村すずか、アルフ(幼女)は既に終えていた。

エイミィの番だった。

「良太郎。そろそろ本腰入れるわよ」

隣に座っているコハナが呟く。

「わかってる。モモタロス達が暴走したら頼むよ」

このメンバーの中で的確かつ迅速にイマジン四体の暴走を鎮める事が出来るのは彼女しかいない。

「まかせて。これからエイミィさんが言う事はそうなってもおかしくない事だものね」

これらのやり取りは現在、誰の耳にも入らない声量で行われている。

 

 

「えー、恐らく立場が複雑なミッド人。エイミィ・ハラオウンでーす」

 

 

この時、ウラタロスが一瞬だが首を傾げたのは決して見間違いではない。

また、モモタロスが右耳の中に小指を突っ込んで耳垢を取り除く行為をしていたのも決して見間違いではない。

「元は次元航行隊の通信士で執務官補佐。アースラでの通信主任をやっていた縁で、なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん、それに良太郎君達

と会いました。もう十年も前だねぇ……」

この時、キンタロスが首を縦に振っていたが相槌を打っているのであって寝ているわけではない。

その隣で、リュウタロスが寝ていたら頭を叩こうとしている素振りをしていたのは見間違いではない。

「それから色々あってこっちで美由希ちゃん達と仲良くなったり、フェイトちゃんのお義兄さんでもあるクロノ・ハラオウン提督と結婚したりして……」

 

 

「「「「なにいぃぃぃぃぃ!!」」」」

 

 

突然の大声にエイミィの自己紹介は中断された。

大声を出したのは四体のイマジンだった。

同時に席から立ち上がってもいた。

「クロイノの姉ちゃん……」

「何て早まったことを……」

「血迷ったんか!?」

「どうしちゃったのさ!?エイミィちゃん!」

イマジン四体も自分同様にエイミィという人物を高く評価している。

もしかすると、自分以上かもしれない。

何せ彼女は『時空管理局員で初めて何の偏見も持たずにイマジンに普通に接した人間』なのだから。

「やっぱ君達からしたらそう捉えちゃうんだね……」

良太郎とコハナが手を打とうとする前に、エイミィが切り出した。

その表情は暗くなく、苦笑いを浮かべていた。

「だってクロイノだぜ……」

「どうしてわざわざハズレを選んだのさ?」

夫を、『クロイノ』と呼んだり、『ハズレ』呼ばわりしたりしているがエイミィの表情に『怒り』は出ていない。

「まあ、エイミィがクロイノの稼ぎを目的にして結婚するとは思えんしなぁ」

「エイミィちゃん、どうしてなの?」

キンタロスはエイミィの結婚動機となりえる一つを切り捨て、リュウタロスは本人から問いただそうとしていた。

なお、エイミィとイマジン四体のやり取りを聞いている他の面々はというと。

この手のやり取りに慣れている者達は割と平然としているが、慣れていない者達や初めての者達は必死で笑いをこらえていた。

 

 

「ええとね。その……ずっと好きだったから……愛してしまったってのはダメかな……」

 

 

エイミィが照れながら言う。

その表情を見て空気が読めないイマジン達ではない。

「カメ。これはどーゆーことになってんだよ?」

モモタロスはこの手の話に一番聡いウラタロスに訊ねる。

「釣られちゃったみたいだね。クロイノに……」

「手遅れっちゅうことか……」

「そんなぁ~」

自分達ではどうしようもない状態になっているのだと理解した。

「私が手を出す必要ってないわよね?」

「うん。モモタロス達も半分は本気かもしれないけど、半分は冗談だろうしね」

「あ、やっぱりわかってた?」

「完全に本気だったら、デンライナーに乗ってクロノの所に行ってるだろうしね」

自分達の心配が杞憂に終わろうとしてしていると判断しながら、コハナと良太郎はイマジン達の行動の真意を見抜いていた。

彼等にクロノ・ハラオウンを襲撃する気はないという事を。

そもそも彼等はクロノを『クロイノ』と称して、弄る事はあっても暴行にまで発展した事はない。

先に手を出そうとしたのはむしろクロノの方だったりするが、これも未遂で終わっているので何の問題にもならない。

エイミィもその事は彼等の態度を見て見抜いてはいるが、この場にいるほとんどが額面通りに受け止めているので上手く取り繕わなければならない。

現にイマジン達の真意を知らない者達はオロオロしているくらいだ。

「だからさ、折角心配してくれてるところ申し訳ないんだけどさ……。私、大丈夫だからね」

エイミィがイマジン達を始め、他の面々に安心させるように笑顔で言う。

「センパイ。どうしよっか?」

「モモの字……」

「モモタロスぅ」

ウラタロス、キンタロス、リュウタロスがモモタロスに視線を向ける。

自然と他の面々も彼へと視線を向けていた。

「姉ちゃんがそれでいいってんだったらよ、俺達は何も言えねぇじゃねぇかよ」

腰に手を当てて、渋々納得したような表情を取る。

「でもよ、もしクロイノが浮気とかDVDとかされたら言えよ」

「センパイ、DVでしょ。クロイノがそんなことしたら遠慮なく言ってくれればいいからね」

モモタロスが夫婦不和になる原因の二つを述べるが、一つは明らかに違っているため二番手のウラタロスに訂正された。

「まずは適当に締め上げてから、素っ裸にして……」

「どこか適当に目立つところで逆さ吊りの刑だよね~」

キンタロスとリュウタロスが執行する刑の内容を公言する。

聞かされている側は皆、このように思っているだろう。

 

 

この人達なら絶対にやる、と。

 

 

「ありがとう。そんな風に言ってくれてさ。あとクロノに会っても私に遠慮しなくていいからね?」

エイミィの一言はイマジン達にとってはお墨付きだった。

そう、『クロノ・ハラオウン弄り』という行為に対してのだ。

イマジン四体の顔がすごく悪そうな顔をしていたのは決して気のせいではないだろう。

エイミィの紹介が終了し、その後に美由希の紹介が行われた。

美由希の紹介内容は主に、妹であるなのはに対しての想いだった。

だが、その内容を良太郎は他人事のように聞くことはできなかった。

自分にも身内がいるからだ。

野上愛理という家族がだ。

(姉さん。心配してるだろうなぁ)

そんな事が顔に出ていたのか、隣のコハナが心配げな表情をしていた。

「愛理さんのこと?」

「まあ、ね」

コハナが確信を突いてきたので、良太郎としては頷くしかない。

「一か月帰ってないからね。何事もないとは思うけど……」

信頼しているというか、肝が据わっているところがある姉だからトラブルに巻き込まれても難なく乗り越えているだろう。

「あれ……」

「どうしたの?良太郎、あ……」

本世界にいる姉の安否を考える事をやめた良太郎の目に、斜向かいで妙な光景が映った。

キャロがティアナを心配しているというものだ。

「珍しい光景よね……」

「うん」

二人のやり取りをきちんと聞いていたわけではないので、状況は把握していなかったが妙に気になる光景でもあった。

地元協力者達の紹介が終わると、今度はフォワード四人の紹介へと切り替わった。

 

 

 

 

ガサゴソと音を立ててコテージに向かっているが、誰も気づいてはいなかった。

 

 

 

 

宴も最高潮へと向かっていた。

そうなっていくと、予め用意していたものはどんどんなくなっていくというのが自然の摂理だ。

ストックはしてあるので、後はそれを取りに行くだけで万事収まる。

フォワード陣がジュースの予備を取りに行くと言い張り、湖へと向かっていく。

イマジン達もジャンケンで誰が同伴するのかを決めていた。

グーが二体、チョキが二体という結果になり勝ったのはモモタロスとリュウタロスだった。

「おし!」

「やったぁ!僕の勝ちー♪」

勝者のモモタロスとリュウタロスは勝ち誇っていた。

「しょうがない。いきますか」

「そうやな」

敗者であるウラタロスとキンタロスが勝者の二人を見てから、フォワード陣の後を追う事にした。

いくら鍛えられているといっても、女子供に重いものを持たせるというのはどうだろうという部分もあったりする。

「ウラタロスさん、キンタロスさん。どうしたんですか?」

真っ先に訊ねてきたのはスバル・ナカジマだった。

「ジャンケンで負けちゃってね……。その罰ゲーム」

「ま、女子供だけに重たいもんを持たせんのどうかというわけで来たわけや」

ウラタロスは定番のインテリポーズを、キンタロスは親指で首を一回ひねってから腕を組んで答えた。

「ありがとうございます」

感謝の言葉を二体に述べたのはティアナだ。

湖に向かう中で、ティアナが自身の成長に疑念を抱いている素振りがあったがそれをスバルがフォローしていた。

「どうしたんや?カメの字」

「ん?ティアナさんを見てたらさ、ちょっとユーノの事を思い出してね」

「そういや、来てから一度も会ってへんな。元気しとるやろか?」

チームデンライナーにとって、忘れてはならない存在がいる。

ユーノ・スクライア。

高町なのはをこの世界に導く原因となった少年である。

また、良太郎と合流するまでや時空管理局と共闘関係になるまでは彼が作戦などを立てていたりもしていた。

魔法の世界に関する知識やジュエルシードの事などは彼から教えてもらっていたくらいだ。

「翠屋でのなのは、憶えとるか?」

「ユーノが翠屋に割と訪れているって知った時、結構驚いていたよね」

「ま、会ってへんねやろな」

キンタロスの推測は間違っていないとウラタロスは思っている。

「あれから十年か……」

「何や?急に」

「前に僕がユーノと二人で無限書庫に行ってたでしょ。その時の事を思い出してね」

フォワード陣が湖からジュースを取ろうとしている姿を見ながら、危なくなったら助けようというポジションを二体は取る。

「何かあったんか?」

「男が好きな女の子を守りたいために一番最初に望む事をユーノも言ってたんだよ」

「ユノ助がか!?」

眼前の動向を見守っているキンタロスが信じられないという表情をしていた。

「信じられないって顔してるね。キンちゃん」

「当たり前や。あのユノ助やで。そういうのとは最も縁遠いヤツやろ?」

キャロが持ち上げようとしたので、キンタロスが歩み寄ってジュースの入った袋を持ち上げる。

「でも男だからね」

ウラタロスの一言にキンタロスは反論する言葉を閉じてしまう。

「俺等のせいなんか!?」

「どうだろ。でも、僕らがまるっきり無関係とは言い切れないしね」

自分達の存在は力無き者にしてみれば『希望』であると同時に『劇薬』だとウラタロスは思っている。

『希望』として解釈している間はただ盲目的に見ているだけなので、下手な事はしない。

しかし、これが『劇薬』となると何かと面倒なことになる。

刺激が強すぎて、悪影響になる事が確実だからだ。

できればユーノには自分達を『希望』という形で見ていてほしいというのがウラタロスの願望だが、現実そんなに甘くない事も知っている。

十年前に彼が放ったあの台詞は決して『少年特有の青さから出てくる憧れ』のようなものが混じっていなかった。

羨望、嫉妬、渇望というようなものがむき出しになっていた。

最も人間が進化しやすく、同時に堕ちやすいものだ。

「カメの字はどない思てるんや」

「何が?」

「ユノ助がなのは等と上手い事やってると思ってるんか?」

キンタロスの両手の握られている袋には二リットルのペットボトルのジュースがぎっしりと入っていた。

「やってるとは思うよ。でもねキンちゃん。士郎さんが言ってたように人間関係に永遠不変なんてないのは確かだよ。どちらにも今の関係をこじらせる

原因はあるだろうしね」

詐欺師的な性格のウラタロスだからこそ言える台詞だ。

ウラタロスの両手にもティアナから取ったペットボトルぎっしりの袋が握られていた。

先頭を歩いている二体の足が止まった。

「いるね」

「ああ、俺等を待ち伏せてるで」

後ろを歩いている四人も二体の反応を見て、足を止めた。

「あ、あのどうかしたんですか……」

エリオが切り出した。

「何が出てきても驚いたり動揺しちゃダメだよ」

ウラタロスが後ろの四人に釘を刺す。

「スバル、エリオ。悪いけど俺等の荷物持っとってくれ」

「は、はい」

「わかりました」

二人は二体から両手に握られている袋を受け取る。

 

 

「いい加減に出てきなよ。僕等は逃げも隠れもしないからさ」

 

 

ウラタロスの挑発が林の中で響く。

ガソゴソと音を立てて、何かがゆっくりと出てきた。

キシャーという音を立てながら、牙を横に動かしながら現れる。

黄色と黒色の保護色で、六本の腕を持っておりその外観や醸し出す雰囲気は明らかに『イマジン』ではなかった。

そして出てきた何かは一体ではなく、五体だった。

全員の視界にハッキリと映った。

イマジンとは違う蜘蛛型の怪人が五体出てきた。

「グギュギュギャー」

蜘蛛型の怪人---クモ怪人がこちらに向かって何かを言っている。

だが、人語ではなかった。

 

 

「ヨクワカッタナ、って言ってます」

 

 

そのように言ったのはキャロだ。

「「「「??」」」」

三人と一体は首を傾げている。

「グギャギャギャアギャアギュギュギュギョギョギョ」

クモ怪人の一体が更に口を開いて何かを言う。

 

 

「ワレワレハごるごむノくもかいじんダ、って言ってるね」

 

 

あの鳴き声を訳したのはウラタロスだった。

「「「「???」」」」

鳴き声を訳した一人と一体以外は首を傾げていた。

そして思った。

 

 

何でこの怪人の言葉がわかるんだ!?、と。

 

 

自分達の言葉が通じる事にクモ怪人達の目元にうっすらと涙を浮かべていたりするが、誰も見てはいなかった。

 

 

 





次回予告


第三十一話 「機動六課 海鳴へ⑦ ~カイジンガルで怪人狩り~」
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