仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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第三十一話 「機動六課 海鳴へ⑦ ~カイジンガルで怪人狩り~」

 

 

 

夜の林の中で、五体のクモ怪人と対峙する四人と二体。

その中でウラタロスとキャロ・ル・ルシエはこれから事を構える事が必須の怪人の言葉を理解していた。

もちろん、この事に驚いていたのは当人達だったりするのだが。

「カメの字、お前いつの間に英会話なんか習ったんや?」

「キンちゃん。これ英語じゃないからね。あとさ、僕習った覚えもないからね」

キンタロスの言葉をウラタロスはやんわりと否定する。

「キャロ。アンタ、前の部署にいた時に覚えた、何てことはないわね……」

ティアナ・ランスターが仮説を立てるがそれには矛盾が存在している事に気づいて声がしぼんでいく。

「はい。自然保護隊といっても怪人さんは含まれてませんから……」

いたら大問題だと、キャロ・ル・ルシエが補足する。

「じゃあどうしてキャロとウラタロスさんにはわかるんだろ?」

スバル・ナカジマが議題を振り出しに戻す。

「共通点があるんでしょうか?」

エリオ・モンディアルがキャロとウラタロスに共通する何かがあるのではないかと疑う。

「キャロとカメの字にか?ある意味、正反対の位置におる二人やで」

キンタロスが隣にいる青一色のイマジンと、自分よりはるかに背の低い位置にいる少女を見下ろしてから比べる。

「正反対ってキンちゃん。ちょっとそれって失礼じゃない?」

ウラタロスもカチンと来たらしく反論しようとする。

「合ってるやないか。キャロみたいな純真な子とお前みたいな女たらしが同じ位置におるわけないやろ」

付き合いが長い分、キンタロスも容赦なく言う。

一人と一体の突然開眼した能力についての談義はまだ続く。

その間、クモ怪人達が攻撃を仕掛けてくることは何故かなかった。

 

 

 

クモ怪人達は輪になって話し合っていた。

「グギョギョグギョギョ(あの人間の女と青い気持ち悪い奴)」

「グギョギョ(俺達の言葉が通じていたな)」

「グーギョギョゴギョギョグギョ(怪人になって三神官様以外で初めてだな)」

「グギョ(ああ)」

怪人になって数百年くらいが経ち、通じる相手は同輩であるゴルゴム怪人か上司である三神官くらいだ。

ほぼ不死身に近い命を手にはしたが、命令がない場合は薄暗く陰気くさい場所で待機しておかなければならない。

唯一の楽しみはゴルゴム怪人共通の好物である『ゴルゴメスの実』を食べることくらいである。

ただし、今の自分達は既に死亡している存在だが。

「グギョゴギョギョギョゴギョギョゴ?(三神官様にお願いしてあの二匹を仲間にするってのはどうだろう)」

「グギョギョギョギョ(でも仲間は募集してないはずだ)」

「グギョギョギョギョギョギョギョ(補充はあの場所から召喚すればいいとバラオム様もおっしゃっていた)

「グギョギョギョギョギョ(勧誘は諦めるか……)」

「グギョギョググググギョギョギョグギョ(最後に一度、勧誘してみよう。それで駄目なら……)」

クモ怪人五体が揃えて首を縦に振った。

「グギョギョギョ(そこの人間と青い奴)」

クモ怪人の一体が前に出て、キャロとウラタロスを見ながら言った。

 

 

 

「なに?今ちょっと忙しいんだけどさ。あと僕はウラタロスっていう名前があるから覚えておくように」

「は、はい。何でしょうか?」

クモ怪人の呼びかけに反応したのは言葉が理解できるウラタロスとキャロだ。

 

 

「グギョギュグギョギョギョギョギョ(俺達の仲間になる気はないか?)」

 

 

クモ怪人の言葉を聞きながら、ウラタロスとキャロは目を丸くした。

「いや、無理でしょ」

「すみません。それはできません」

一体と一人は即座に断りの返事をした。

「キャロ。あの怪人は何て言ってたの?」

「ええとね。オレタチノナカマニナルキハナイカって言ってたんだよ」

エリオの問いにキャロは律儀に答えた。

「スカウト!?」

「よっぽど言葉が通じてる事が嬉しかったのね」

キャロの言葉を聞きながら、スバル・ナカジマとティアナがクモ怪人に同情していた。

「カメの字、だから即答やったんやな」

ウラタロスがキャロより先に、クモ怪人のスカウトに即座に反応していた事をキンタロスは思い出す。

つい先程の出来事なので比較的に楽だった。

「あんなグロテスクな姿になる趣味は僕にはないしね」

スカウトを断った大元の理由も述べた。

「「「「「グギャギャギャギャガー!!」」」」」

クモ怪人が五体一斉に喚き散らす。

何を言っているかはわからないが、ウラタロスの一言に本気で怒っている事だけは彼等の身体から吹き出ている雰囲気でわかった。

「キャロ。あの怪人達が怒っているのはわかるけど、何て言ってるの?」

エリオがまたも、キャロに通訳を頼む。

「オマエニダケハイワレタクナイ、て言ってるよ」

「ウラタロスさんへの抗議だったんだね……」

「しかも五体揃ってハモるんだ……」

「イマジン以外の怪人と戦う事確定のはずなのに、緊張感がどんどんなくなってくるのは何でなのよ」

キャロが訳し、エリオとスバルが内容に対して感想を述べてティアナが現在自分達に纏われている緊張感がどんどん薄れていく事を肌で感じた。

「ねぇキンちゃん。こいつ等、自分達の所属している組織をゴルゴムって言ってたよね?」

「そうやな。て、カメの字!ゴルゴムって!!」

「「「「!!」」」」」

間の抜けた雰囲気から急激に身の毛のよだつものへと変わっていった。

ここにいる誰もがある事実を知っている。

それは、彼等は既に壊滅しているという事だ。

それがここにこうして存在しているという事実を受け止めると、エリオとキャロは野上良太郎が教えてくれた事がすぐに脳裏によぎった。

「あの、キンタロスさん」

「どうしたんや?キャロ」

自分に訊ねてくるのは珍しいと感じたが、キンタロスは返事する。

「あの怪人さん達ってその……死霊っていうんですよね?」

「キャロちゃん。どうしてそれを!?」

キャロの質問に反応したのはウラタロスだ。

「りょ、良太郎さんが教えてくれたんです」

エリオが答える。

「良太郎がその事を教えるいう事は、こうなる可能性を考えとったんやろな」

「ありえるね。知ると知らないとでは天と地ほどの差があるからね」

そう言いながら、キンタロスとウラタロスはパスを取り出してクモ怪人との間合いを詰める。

「さあて、やりますか。キンちゃん」

「そうやな。鈍っとった身体を動かすにはええ相手やで」

二体は既に先程とは別人と言ってもいいほどの雰囲気と迫力を醸し出していた。

歩を止めて、腰にデンオウベルトを巻きつける。

 

 

「「変身!!」」

 

 

同時にデンオウベルトのターミナルバックルにセタッチする。

『ロッドフォーム』

『アックスフォーム』

デンオウベルトの電子音声が各々のフォーム名を発する。

そこには銀色と黒色がメインカラーのプラット電王へと変身する。

彼等の周りには各々のフォームにちなんだオーラアーマーが中空に出現して各箇所に装着されていく。

そして、頭部に青色で亀をモチーフにした電仮面、斧と『金』という文字がモチーフになっている電仮面が頭部のデンレールを走る。

それぞれの電仮面が頭部で『仮面』としての形をなしていく。

ウラタロスは青色がメインカラーとなっている電王---仮面ライダー電王ロッドフォーム。(以後:ロッド電王)

キンタロスは金色がメインカラーとなっている電王---仮面ライダー電王アックスフォーム。(以後:アックス電王)

それぞれの電王へと変身した。

二人の電王からフリーエネルギーが噴出す。

それだけで、一瞬の風となる。

ロッド電王がお決まりのインテリポーズを取る。

 

 

「オマエ、僕に釣られてみる?」

 

 

アックス電王が親指で首を捻ってから、四股を踏む。

 

 

「俺の強さにお前が泣いた!!」

 

 

電王達の眼光にクモ怪人達は怯んではいなかった。

 

 

 

 

「極端すぎるわよ……」

「ティア?」

ロッド電王とアックス電王の背中を睨むような視線で見ているティアナをスバルは訝しむ。

「普段はあんなにおちゃらけてるのに、いざ戦闘になったらあれだけの迫力を出すなんて……」

心底悔しがっているようにも見えた。

「ここから動いちゃダメだよ。あいつ等五匹もいるから逃げる素振りを見せたらそれだけで襲われるからね」

ロッド電王はクモ怪人を睨みながら、注意してきた。

「あと、念話でなのは等を呼んでもアカンで」

「え、どうしてですか?」

アックス電王の忠告にスバルは訊ねる。

「良太郎から聞いてるよ。今のなのはちゃん達はリミッターをかけられているんだってね。そうなると、余計に守る対象が増えちゃうわけだから

やりにくくなるんだよね」

ロッド電王が解説する。

「初めて戦う連中や。それなりに時間経っとるのにモモの字等が来ぉへんところからして、臭いを掴んでへんねやろな」

アックス電王はチームデンライナーの増援も期待できないと告げる。

「いいじゃない。センパイじゃないけどあのガジェットドローン(ガラクタ人形)の相手ばっかりっていい加減飽きてたしね」

「それもそうやな」

モモタロスのように好戦的ではないが、彼等もイマジンだ。

戦って快楽を得るという性癖を持っていないが、自分よりもはるかに格下を相手にして喜ぶような歪んだ性癖も持っていない。

未知の相手となると、『恐怖』よりも『好奇』の方が強かったりする。

「お先に!!」

言うと同時に、ロッド電王は一気に駆け出してクモ怪人と間合いを詰める。

軸足とする左足を大地に踏みつけて、腰を捻って右足を構えて上段回し蹴りをクモ怪人の左こめかみに狙いをつけて繰り出す。

「ペギャ」

間抜けな声を上げながら、クモ怪人の一体は背にある木に激突した。

「あら?受けるかなぁって予想してたのに……」

挑発に近い台詞を述べているロッド電王を残ったクモ怪人達が睨む。

蹴られたクモ怪人がむっくりと起き上がる。

「不意打ちを狙ったんだけどね……」

ダメージを受けているようにも思えない態度のクモ怪人を見ながら、ロッド電王の声色にはまだ余裕が含まれていた。

「カメの字。どうや?感触は?」

『駆ける』ではなく『歩み寄る』という仕草でアックス電王も戦場へと入り、ロッド電王に訊ねる。

「さてね。まだ戦ってるわけじゃないからね。何とも言えないよ」

談話をしている二人の電王を囲むようにしてクモ怪人が陣形を作っていた。

そして五体が同時に跳躍して、襲い掛かってきた。

「ふん!!」

アックス電王が飛びかかってきたクモ怪人二体の首を両腕で掴んだ。

「「グギャ、ギャギャギャ」」

掴まれている二体は苦しそうに何かを言っているが、アックス電王にはわからない。

「カメの字。こいつ等、何て言ってるんや?」

掴んだままでクモ怪人の攻撃を難なく避けているロッド電王に訊ねる。

「ハナセ、クルシイ。だってさ」

左右交互に繰り出してくるクモ怪人の攻撃を見切って、ロッド電王は質問に答えた。

「そりゃすまんかった……なあ!!」

アックス電王は掴んでいる両腕を勢いよく振ってクモ怪人二体を地面に叩きつけた。

さらに妙な鳴き声を上げるが、怪人二体は特に致命的なダメージを受けているような様子はなかった。その証拠にすぐに

起き上がってきた。

「さすがに死んどるだけあって、『痛み』とかないんか。こいつ等」

「どうだろね。鈍いだけであるんじゃないの?」

過去の戦いで、死霊と戦闘していた時の事を思い出す。

死霊イマジンは攻撃を受ければ、それなりに痛みをアピールするような声を上げていたが眼前の怪人達はどうもその当たりの反応が

希薄らしい。

「さてと手早く片付けますか」

「そうやな」

二人の電王は、腰元に携帯している専用武器デンガッシャーに触れた。

 

 

 

 

コテージでは、まだ宴は続いていた。

勝手知ったる間柄というか、野上良太郎と子供姿のアルフは様々な話題で盛り上がっていた。

といっても、良太郎が聞き手でアルフが話し手とポジションは固定されていたが。

アルフは色々と話し、良太郎はそれらを全て聞いている。

意見を述べたり、批判をしたりなどはしない。

それが話す側のアルフにとって、ありがたいものだったりする。

心理学的にも人が最も必要とするのは『意見をしてくれる人間』よりも『ただ聞いてくれる人間』の方が、何かと重宝するとされている。

意見をするという行為は、誰でもできるが必ずしも成功がついて回るわけではない。

何故なら、失敗すれば大きなものを失うからだ。

決して目では見えない『信頼』をだ。

「十年って出来事が起こるには十分すぎる数字だよね」

「そうだねぇ。フェイトも色々と大きくなったりするさ~」

アリサ・バニングスと話し込んでいるフェイト・T・ハラオウンを見ながらアルフは言う。

「アルフさん。何か意味ありげな言い方だね」

「も~、わかってるくせに~」

アルフが良太郎の脇腹を悪い顔をしながら肘でつつく。

「アンタ、こっちにはどれくらいいるつもりなんだい?」

機動六課に足を運んでいるわけではないので、アルフは良太郎達がどのくらい滞在するのかは知らない。

「わからない。事件が解決するまではいる事は間違いないけど、どのくらいかかるかなんてね……」

「そうだね。事件なんて短期になる事もあれば長期になる事もあるからね~」

アルフも前線を退いているとはいえ、完全に荒事と手を切っているわけではないので『事件』というものが一定の物ではない事を承知していた。

「手がかりも何もない状態だしね」

良太郎は現状をぼそりと呟く。

「ま、何か困りごとがあったら遠慮なくあたしに言いなよ?あたしとアンタの仲だ。できる事は惜しまないよ」

アルフの言葉に嘘偽りがないと良太郎は判断する。

「ありがとう」

笑顔で良太郎はアルフに感謝の言葉を口にする。

「気にしなさんなって♪」

アルフも笑顔で返した。

 

 

 

ロッド電王がデンガッシャーの左パーツ二つを縦に連結させる。

が腰元に携帯している右側のデンガッシャーのパーツの一つをクモ怪人の一体に投げつけた。

クルクルと回転し、カンという音が鳴りだしそうな勢いで顔面に直撃する。

その間に、残った右側のパーツを腰元から抜き取って、先に縦連結させていたパーツの後部に連結させる。

投げつけたパーツがロッド電王の元へと返ってくると、そのパーツを右手に握られているパーツの先端へと縦連結させた。

フリーエネルギーが伝導されていき、ロッド電王の身の丈を超すデンガッシャーロッドモード(以後:Dロッド)になる。

両手を巧みに操ってDロッドをクルクルと回す。

その勢いで、上段から叩きつけるようにしてクモ怪人へと向けていく。

Dロッドは地面を叩く結果となる。

「何しとるんや?カメの字」

アックス電王がぼやきながら両手にデンガッシャーの右と左のパーツを手にして、縦に連結させる。

「イマジンだったら間違いなく直撃だったんだけどね……」

Dロッドの初撃を避けられたことにロッド電王の声色には落胆はなかった。

アックス電王は更に右パーツの一つを先程縦連結させていたパーツの上に縦連結させる。

「イマジンよりは動きええって事か?」

残った左パーツを腰元から抜き取って、縦連結させたパーツの一番上の横に連結させると斧の刃が出現した。

フリーエネルギーを伝導させて、『武器』として巨大化させる。

デンガッシャーアックスモード(以後:Dアックス)がアックス電王の右手には握られていた。

アックス電王はゆっくりと歩み寄りながら、Dアックスを上段に構えて一気に振り下ろす。

「ギャン!」

悲痛に近い声なのだろうが、人間やイマジンのそれとは違うので判断は攻め手に全て委ねられてしまう。

斬りつけられた個所から火花が飛び散り、もくもくと煙が出てはいた。

「どう?キンちゃん」

「わからん。ダメージ与えたんやけど反応が薄いから食らっとるんかどうかはわかりにくいわぁ」

ロッド電王は初撃を与えたアックス電王に感想を問うてみるが、芳しいものではなかった。

「でも、あいつ等の動きで見えないものとか対処できないものってキンちゃん、あった?」

「あるわけないやろ。あいつ等、腕が六本あってもそれぞれが指一本程度の役割しかあらへんからなぁ」

クモ怪人の腕は確かに六本ある。だがその先端は人間でいう『手』ではなく、

「足運びも今まで戦ってきた奴等と比べても、そんなに飛び抜けてもいなかったしね」

彼等とて相手の攻撃をただ単に避けていたわけではない。

動きや速度を見て、どの程度の力量なのかを推し量っていたのだ。

幾多の死線を乗り越えてきた故にできる技術である。

クモ怪人達も距離を置いていた。

近接戦闘では分が悪いと判断しているのだろう。

「「!!」」

何かを仕掛けてくると、二人の電王は直感した。

「「「「「ギシャアアアアアアア」」」」」

クモ怪人が五体同時に口を開いて、何かを吐き出した。

白い繊維の様なものが向かってくる。

だが、それが二人の身体に触れる事はなかった。

こちらに向かって放ってくる瞬間に、跳躍して宙に移動していたからだ。

クモ怪人達は獲物もいないのに、一直線に白い繊維を吐き続けている。

その行動に妙なものを感じた二人は、クモ怪人達の背後に回るように身体を動かす。

互いに怪人の背後に回って攻撃を開始する。

ロッド電王はDロッドを両手で握って槍で突くような構えを取って繰り出す。

クモ怪人は背中をつつかれて、ちょこちょこと前進せざるを得なくなっている。

適当な回数をつつき終えると、右前蹴りを繰り出して前のめりに倒す。

「あの飛び道具、オマエの意思で止めたりするのは難しいみたいだね?」

Dロッドを右肩にもたれさせながら先程の攻撃を批評する。

「しかもずーっと同じ量を吐いてるみたいやないみたいやしな」

こちらを向いてきたので、アックス電王は堂々と正面からクモ怪人二体を切りつけた。

斬りつけられた二体はもくもくと煙を出しながら距離を取ろうとする。

「ギョ!」

クモ怪人達は背中をぶつけていた。

クモ怪人五体が二人の電王に追い詰められているという図式が出来上がっていた。

「そろそろ王手といこか?」

「いつでもどうぞ♪」

アックス電王の促しにロッド電王は乗る。

二人は同じようなタイミングでパスを取り出す。

 

 

第一回異種怪人戦も千秋楽を迎えようとしていた。

 

 

 

「野上さんは、あの人達に戦い方を教わったんだよね?」

「そうね。後はモモタロスさんとリュウタロスにもでしょ」

スバルは、五対二という劣勢状態をひっくり返した二人の電王の戦い方を見ながらあることを確認するかのようにしてティアナに訊ねる。

 

 

『劣勢でありながらも、状況を把握して活路を見出して的確に敵を倒す』

 

 

理屈はわかるが、実際に行うと非常に難度の高いものだ。

自分の力量と相手の力量、自分が現在どのような状況に置かれているか、そしてどのように行動すれば効率よくそれらを行う事ができるのか、という

事を正確に見極める力が必須になる。

それは『才能』として占める部分もあるが、大元になっているのは『経験』だ。

考えて行動して、成功と失敗を繰り返して力にするというものでそれらは日々の訓練もさることながら実戦によっての経験でこそ研ぎ澄まされるものだろう。

流派のない剣士や武人が強くなる一番手っ取り早い方法は実戦で戦って生き残る事をひたすら繰り返す行為に類似しているのかもしれない。

「あの模擬戦の映像が残ってるうちに野上さんの戦い方を何度も繰り返して見てみたのよ」

ティアナが口を開く。

チームデンライナー、ゼロライナーの戦闘記録は原則として抹消が義務付けられている。

だが、記録としての『足跡』が残っていなければいいだけで最終的に抹消しておけばいいので一日、二日の閲覧の名目で観賞することは黙認されている。

「実に実戦的な戦い方だったわ。ハッキリ言って今の私達じゃ次元が違いすぎて到底敵わないわね」

負けず嫌いのティアナがハッキリと公言した。

「ティア……」

「でも、今は無理でも必ず追いついてみせるわ。必ずね」

「ティア!うん。頑張ろう!」

相棒が闘志を失っていない事にスバルは純粋に喜びの声を上げた。

「………」

エリオは黙って戦いを見ていた。

瞬きもせずに、一日も早く追いつけるようにという気持ちが拳が強く握るという行為を現していた。

「エリオ君?」

隣にいるキャロとフリードリヒは若い騎士がいつもと様子が違うと感じた。

理屈ではなく、どちらかといえば動物的直感に近いものではあるが。

「あれが仮面ライダー電王……」

保護者であるフェイトやその相棒のアルフから何度も聞かされたことがある。

イマジンを屠り、悪事を働く仮面ライダーをも倒してきた存在。

今のこの世界があるのも間違いなく彼等のおかげだという事を。

「もしかして、エリオ君もなりたいの?その……仮面ライダーに」

キャロの問いかけに、ティアナもスバルもエリオを見る。

「前に言った事があるんだ。フェイトさんやアルフにね。その時のフェイトさん達の顔は今でもハッキリと憶えてるよ」

キャロもティアナもスバルも喜んでくれたのではと想像していた。

「で、エリオ。フェイトさん達はどういう顔をしてたの?」

スバルが回答を急かす。

 

 

「とても悲しい顔をしていたんです……」

 

 

エリオの表情はその事を振り返るような感じで様々な感情が入り混じっていた。

「どういう事?」

ティアナが更に訊ねる。

「フェイトさんが言ってました。本来、良太郎さんは『戦い』とは無縁な生活を歩んでいる人だったって……」

「だからキャリアがあんなに短かったのね」

エリオの言葉にティアナは納得した。

「もしかしたら、電王にならなければ幸せな生活を送れていたのかもしれないって言ってました」

夢を叶える場が時空管理局に存在していた自分達とは明らかに異なっている。

イマジンを倒しても、『時の運行』を守ったとしても彼等に『夢』を持てるとは思えなかった。

あるのはただただ『終わりのない戦い』のみ。

幕引きを決める事ができる自分達とは違い、世代交代でも起こらない限り変化はまずない。

野上良太郎の代わりに、仮面ライダー電王となって『時の運行』を守るという行為は誰でも彼でもができる行為ではない事は周知の事実だ。

「でも、もしもだよ。野上さんが電王にならなかったらどうなってたんだろ……」

「わからないわよ……」

スバルの疑問にティアナは答えなかった。

本当は想像はできていたが、あまりにスケールが大きいので口で説明すればするほどややこしくなると感じたのだ。

 

 

「良太郎さんに助けられた人は、良太郎さんの分まで幸せになる義務があるって僕に言ってました。それが唯一できることだって……」

 

 

仮面ライダーは自らの幸せを代償にして人ならざる者と戦う力を得る。

エリオの言葉に三人の胸に突き刺さる言葉だった。

そのように解釈をしてるのならば家族が無邪気に告げた言葉でも、身を割かれる想いだったのだろう。

だからフェイトやアルフは悲しい表情をしたのだ。

自分の身内から『幸せ』を代償にして終わりのない戦いへと飛び込もうとする者がいた事にだ。

「あ、必殺技が出ますよ!」

エリオの話が締めに入ると、キャロがロッド電王とアックス電王がクモ怪人に止めを刺そうとする姿が目に入った。

 

 

 

 




次回予告


第三十二話 「機動六課 海鳴へ⑧ ~任務終了 帰還~」
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