仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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今回は抜けていた三三話を投稿いたします。




第三十三話 「六課のいないミッドチルダ 前篇」

 

 

 

機動六課隊舎ではメインメンバーが不在の状態といっても、業務が休止という事はなかった。

慢性的な人員不足である時空管理局で働いている以上、『暇』と『休息』という言葉は比較的無縁に近いものだったりする。

グリフィス・ロウランは様々な書類と睨めっこをしていた。

ただ単に睨めっこしているのではなく、自身で片付けられるものを手元に部隊長である八神はやての指示を仰ぐ必要のある

ものは別枠に置いている。

こうしておかないと部隊長は自分一人で片付けかねないからだ。

余計な手間を部下に押し付けずに片を付けるというのは『理想の上司』とカテゴライズされてもおかしくないが、新米が育

たないというデメリットも備わっていたりする。

(特にこの怪人に関しては司令の指示を仰がないと無理だな)

グリフィスが手にしていた資料には『謎のドクロ怪人』と記載されていた。

 

 

ヘリパイロットのヴァイス・グランセニックはヘリコプターのメンテナンスをしながら、近くに置いてあるポータブルTV

のニュースを聞いていた。

「ドクロ怪人ねぇ」

現在彼が聞いているニュース番組はミッドチルダ以外の次元世界での出来事も教えてくれることを趣旨としているものだ。

正直、六課に出向するまでは『他人事』か『まゆつば話』と受け止めていただろう。

だが、現在は違う。

イマジンという怪人は間違いなく存在しているし、そんな連中と共闘しているのが現在の自分なのだから。

否定するという事は自身を否定することと何ら相違ない事だ。

「ヴァイス陸曹ぉ」

考え事をしてしまい、作業を中断していたヴァイスに声がかかった。

「おう、アルトか。どうした?」

「例のやつ、シャーリーさんにお願いした結果ですよ」

通信士アルト・クラエッタが書類を渡してきた。

「お、早いな」

「……何だこれ」

「それが結果だそうです」

 

 

『JF470式に『時の列車』の技術を取込もしくは模倣することは物理的にも経済的にも不可能』

 

 

「詳細は次のページから記載されてますんで」

アルトの言うように、ページを捲っていく。

「こんなにかかるのかよ!?」

経済面つまりコスト面のページを開いた時、ヴァイスは大声を張り上げてしまった。

作業をしている数人がこちらを見ていたが気にしない。

「はい。私も見た時は驚きましたよぉ」

「これ、あと十機以上はヘリを買えるぞ。しかも最新型の……」

「改めてこう数字で突きつけられるとグサっときますねぇ」

「ああ……」

この二人の野望ともいえる計画は初っ端から暗礁だった。

 

 

 

「ヴァイス陸曹とアルト通信士がそんな事を……」

あらかた資料との睨めっこを終えていたグリフィスはシャリオ・フィニーノ、ルキノ・リリエの三人で休憩を取っていた。

「『時の列車』の技術をJF470式に組み込むというアイデアはよかったんだけど……」

シャリオが語る前にヴァイスに渡した書類のコピーを二人の前に見せる。

ルキノが手にしてパラパラと捲っていく。

「これ、冗談じゃないですよね……」

内容を疑うわけではないのだが、ルキノは書類作成者であるシャリオの顔を見る。

「冗談なら私もよかったんだけど紛れもない事実なのよ」

眼鏡が少しずれたのでシャリオは直しながら、ルキノの言葉を否定した。

「これはもはや、改造と呼べるものじゃないね……」

グリフィスも書類を見ながら感想を述べる。

正直、これだけ費用が掛かるのならば新品を購入した方がマシというものだ。

「それに酷な現実もあるの。『時の列車』は今の管理局の技術の十年以上先を進んでいるという事が明らかになったの」

つまり、今の段階ではどんなに費用を積んでも不可能という事になる。

むしろ『ただの無駄遣い』と揶揄されるだろう。

実績が無いに等しい機動六課ではそれだけでイメージダウンになってしまう。

「でも諦めるとは思えないね。あの二人は……」

グリフィスの呟きにシャリオとルキノは首を縦に振る。

それだけあの二人が『時の列車』の性能に魅了されているのは傍目から見ても分かる事だった。

 

 

 

(特に何の問題もないようだ)

大型の狼の姿をしているザフィーラは隊舎内を回りながら異常がない事に安堵していた。

懐かしい面々に会う事が出来ないのは残念だが、誰かがやらなければならない役割なので自分がやるしかないと思っている。

(桜井や野上、イマジン達も旧交を温める事はできただろうか)

自分にできなかった事を桜井侑斗と野上良太郎、そしてイマジン達に託していた。

『本日、クラナガン××地区で女性が殺害されました』

レクリエーションルームに設置されているテレビで本日の出来事が放送されていた。

『目撃者の話によりますと、犯人は黒いフードを被ってドクロの仮面を被っていたそうです』

「愉快犯か?」

テレビから流出される情報を脳内でまとめた結果、ザフィーラはそのように呟いた。

(電王、ゼロノス不在となると頼れるのはスクライアだけか……)

事情を知るザフィーラは解決策を早急に導き出していた。

 

 

 

 

 

時空管理局本局。

ここは管理局員が『最も配属されたくない場所』というアンケートで一位あり、『理想の上司』アンケートでも一位でもある

無限書庫だ。

その『理想の上司』にあたるユーノ・スクライアは右肩に妙な毛並みをしたフェレットを乗せて司書長室で専用端末に映る内

容と睨めっこしながらも、端末から放映されている内容を聞いていた。

「ドクロの仮面か……」

「イマジンではないですね。イマジンはそんな恰好はしませんよ」

右肩に乗っている妙な毛並みのフェレットが犯人はイマジンではないと断言する。

それは無理もない事だ。

このフェレットはただのフェレットではない。フェレットの姿に擬態したイマジンなのだ。

擬態フェレット---プロキオンもテレビに放送されている目撃者の証言から得られる情報をきちんと聞いていた。

「イマジン以外に怪人っているんでしょうか?」

「調べてないからね。何とも言えないよ」

あらゆる情報を入手し、請求者が望む有益な情報を書面にまとめるという職場のトップである以上、迂闊な事は口には出さない。

宙にモニターが開く。

『司書長。アコース査察官がいらしてます』

司書の一人がバストアップで映し出されており、内容を説明した。

「わかりました」

それから数分後にはヴェロッサ・アコースが司書長室に入室した。

「お久しぶりですね」

「そうですね。といっても、あれからさほど月日は経過していませんよ?」

ヴェロッサの言葉に、ユーノはすぐさまツッコミを入れる。

「そうですね。どうも、最近真面目に仕事をこなしていたせいか時間の間隔が狂っているみたいですね」

「それは大変だ。明日の天気予報は雨になるかもしれませんね?」

「かもしれませんね」

互いに笑みを浮かべながら、くだらない雑談をする。

ヴェロッサは仕事人間の巣窟とも世間から見られている時空管理局の中では極めて『異端』の存在だ。

時にルールを飛び越えるような真似をしても飄々としている態度はこちらとしても頼もしく思えたりもする。

司書長の机の専用端末に映し出されているディスプレイをヴェロッサは見る。

「噂のドクロ……ですね」

「ええ。目的は不明ですが、自分の存在を秘匿する様子はないみたいですね」

「おっしゃる通りです。だからこそ頭を抱えているというのが現状です」

言葉通りにヴェロッサは頭を抱えている。

「目撃者さんがどうしているんでしょうか?」

プロキオンも脳を回転させながら、浮かんでいる疑問を口に出した。

「プロキオン君の言う通り、殺人が目的なら目撃者を残すというのはセオリーに反する行為だ」

ヴェロッサは顎に手を当てて、両目を鋭くする。

『査察官』としての顔つきになっていた。

「殺人……目撃者……セオリー……」

ヴェロッサが口に出した単語をユーノは呟く。

ヴェロッサが言うように、殺人を『結果』とするならば目撃者を作る事は得策ではない。

目撃者が加害者にとって首を絞める存在になる事は間違いないからだ。

「この事件ってミッドでは数は少ないんですよね?」

無限書庫にいながらも、その手の情報は自分で調べなければならない。

多方面からの資料請求をこなすだけで、時間の大半は削られるのが無限書庫だ。

逆に現在起こっている出来事を情報として入手するのは結構後だというのが現実だったりする。

「多いか少ないかの判断は難しいですが、現在までに既に三件起こっています。他の次元世界でも似たような事件は起こっていたようですね」

ヴェロッサが知りうる情報を口にした。

「それだけ起こっていても目撃者は必ずいるんですよね……」

犯人は逃げ切る事に自信があるという風に解釈も取れるが、故意に残しているようにも取れる。

プロキオンは端末を操作しながら、じーっとディスプレイを睨んでいる。

「被害者さんに共通点を見てみても、ないですね……。でも、被害者さんと目撃者さんには共通点があるんですよね」

「被害者と目撃者は赤の他人じゃないって事でしょ?」

プロキオンが言い出す前に、ユーノが先に答えた。

「あー!!ずるいですよー!!」

イマジン状態ならともかく、フェレット状態のプロキオンの抗議ともいえる前足をグルグルさせての攻撃は大した威力はない。

「家族、友人、恋人。『他人』とはいえない関係の人達ばかりだね」

ヴェロッサの言葉に、ユーノは目から鱗が落ちた。

「プロキオン、アコース査察官。僕、犯人の目的がわかっちゃったかも……」

「「え?」」

ユーノの言葉に、一人と一匹が声を合わせた。

 

 

 

 

 

「ぎゃああああああああ!!」

悲鳴を上げた男はその場にうつぶせになって倒れる。

彼の意思で倒れているのではない。

外部からの攻撃で強制的に全身を支える力が抜けてしまったのだ。

倒れている男から血が大量に流れだし、水たまりのようになっていた。

「お父さああああああああん!!」

「いやあああああああ!!」

男の家族とも思える女性二人が大声を上げる。

大鎌には赤い血液がベットリと付着しており、数滴がピタリピタリと地面に落ちていく。

男を屍にしたのは、魔術師などが好んで着そうな黒いローブでドクロの仮面を被っていた。

ドクロは残りの二人を見る。

「「ひっ!!」」

蛇に睨まれた蛙状態になっており、腰が抜けてその場から離れるという行動をとる事が出来なくなっていた。

そうなった者達に待っているのは『死』しかない。

だがドクロは残りの二人に手をかけることなく、その場から姿を消した。

なお、これはミッドチルダの西部で起こった昼間の出来事である。

 

 

 

 

 

 

昼休みに食堂で日替わり定食を食べる事は無限書庫司書長の数少ない楽しみだったりする。

ヴェロッサが提供してくれた情報からユーノは一つの結論を導き出していた。

これらの事件は『誰かを殺害する』事が『目的』だったのではなく、『過程』でしかなかったという事を。

真の『目的』は『誰かに殺害する現場を目撃させる』というものだ。

目撃者は被害者と『他人』ではこの計画は今ひとつの結果しかない。

極めて近しい存在だからこそ効果的になる。

(目撃者を近い相手にすることで犯人は『恐怖心』を煽る事ができる)

本日の日替わり定食は和食である。

ユーノは器用に箸を持って、白米を食べてから味噌汁を啜る。

(他人でも問題ないけど、他人事にされてしまう可能性が高いから除外してる)

その事からしてこの事件を企てた犯人は、人間の心理を知っている事になる。

焼き魚を綺麗に骨だけ状態にして食べ終えてから、白米と味噌汁を食べていく。

(問題は次にどこに現れるか、か)

犯人の目的がわかったとしても、次に出現する可能性がある場所を特定しないといつまでも事件は解決しない。

電王とゼロノスは現在、ミッドチルダにはいない。

相手が魔導師ならばこちらが出しゃばる事はしないが、怪人ならば別の話になる。

(事件現場か……)

本日、早急に急がなければならない資料請求はなかったはずなので司書達に任せても問題ない。

ユーノは宙にモニターを展開させる。

バストアップで映し出されているのは本日の現場責任者となる司書だった。

『どうしました?司書長』

「確認ですけど本日が期限の請求は、ありませんよね?」

『はい。本日が期限のものはありません』

司書は慇懃に穏やかな表情で答える。

「午後から、外出しますので何か問題が起こったら連絡をください」

『わかりました。司書長』

「はい?」

『お気をつけて』

「ありがとう」

司書の気遣いにユーノも笑みを浮かべて返した。

足を踏み入れると、管理局員数名が現場保持をしていた。

ミッドチルダで最初に発生した事件現場はデートスポットや家族で癒しのひと時を満喫できる公園だった。

殺害されたのはデート満喫中のカップルの女性だ。

目撃者であり恋人の男性は突然の出来事に、気が動転していたという。

理性を取り戻すのに、一時間くらいが必要となってようやく証言を取る事が出来た。

 

 

『いきなり現れて手にしている大きな鎌を振り下ろしてきた』

 

 

との事だ。

捜査をしている管理局員の一人に聞いて得た情報だ。

なお、本来このような直聴を行っても相手にされないというのが常だがユーノは自身の身元を明かすと相手は恐縮して包み

隠さず情報を開示してくれたということだ。

念のために被害者が殺害される動機があるのかと訊ねてみると、白昼堂々殺される程の恨みは買っていないとの事だ。

次に二件目の現場へと赴く。

一件目と同様に公園だった。

殺害されたのは家族の中の夫と呼べる男性だった。

殺害方法は従来と同じ大きな鎌による斬殺だ。

被害者遺族はいきなりの出来事だったため、気が動転していた。

現場保持をしていた管理局員から聞き出した情報は一件目とあまり変化はなかった。

ただ角の生えたドクロの仮面だったという事を除いては。

三件目、四件目、五件目と回っていくとドクロが単体なのかという事自体が怪しくなり始めていた。

「ドクロさんは一人だと考えてましたけど、複数の可能性もありますよね」

プロキオンも得た情報を脳内でまとめながらそのような仮説を述べる。

「角なしと角ありのドクロ。わざわざ現場ごとに一人が仮面を付け替えるなんてことをするとは思えないしね」

「二人以上いるって事ですね」

「そうだね」

複数犯でいる以上、相手が自分よりはるかに高い戦闘能力を持たない限りは負けはないと考えている。

五年近く修羅場をくぐってきたうえで得られる『自信』のようなものだ。

(今日中に片を付ける!)

そう強く誓うと、一人と一匹は次に出現されると予測される場所へと足を運んだ。

 

 

 

次に出現すると予測されるミッドチルダ中央地区の公園。

「これで大ハズレだったらシャレにならなけどね……」

ユーノはベンチに座って、公園内で色々と満喫している人達を見ていた。

その数は決して多くはない。

「不吉な事を言わないでくださいよー」

プロキオンは怒りながらも、主が買ってくれたクレープをハムスターのように食べている。

「今が午後三時だから、人が集まりだすとしたら二、三時間後ってところかな」

「どうしてですか?」

何故今ではないと断言できるのかプロキオンにはわからない。

「五時や六時だと残業とかイリーガルな出来事がない限りは、仕事や学校の授業は終わっているからね。家族で外食とか友

人同士でハメを外すとかデートするとかになると、ここはもっとも適した集合場所なんだ」

「となると、ドクロさんは……」

「必ず来るね。その時間に的を絞ってね」

スーツのジャケットの懐のポケットから黒いケースを取り出す。

名刺入れではない。Aゼロノスに変身するためのゼロノスカードだ。

中に入っている枚数を見る。

電王が現在、ここにいるおかげでカードの消費速度は抑えられているため自身の予想よりはるかに遅かった。

カードケースをもう一度、懐のポケットに収める。

ユーノの目の色が変わっていた。

無限書庫司書長の瞳ではない。

『青い狩人』の瞳となっていた。

 

 

 

 

ドクロが出現するまであと三時間。

Aゼロノス初のイマジン以外の怪人戦が始まろうとしている。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告


第三十四話 「六課のいないミッドチルダ 後編」
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