仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

36 / 37
随分とお久しぶりです。

物価が上昇しても、給料が上がらないという事は景気が良くない企業が次にやる事と

いえば人員削減、ようはリストラではないかと考えていたりするMINAです。




第三十六話 「ホテル・アグスタ~前日~」

機動六課隊舎でシグナムとヴィータが鞄を片手にしている姿が見えた。

それが観光旅行ではない事が誰もがわかっている事だった。

二人は『ホテル・アグスタ』で開催されるオークションでの警護のために向かうのだから。

「それじゃ、はやて……じゃなかった。八神部隊長、行ってまいります」

「うん。頼むでヴィータ」

「それでは八神部隊長」

「うん。明日には私等も合流するからな」

二人を八神はやてが見送っていた。

「釈迦に説法かもしれないが、気を付けてな。これデネブからの餞別だ」

「わかってる」

「ああ」

はやての隣に並んでいる桜井侑斗がデネブキャンディーが入っている袋を一つずつ渡す。

「ありがと♪」

「すまないな」

デネブキャンディーの虜になっているヴィータは『副隊長』の仮面をあっさりと脱ぎ捨てた。

シグナムは虜になっているわけではないが、ファンになっている事は間違いない。

「侑斗、ゴルゴムとか来ると思う?」

ヴィータが袋から一つ取り出して、口の中に放り込む。

「さあなぁ。連中がロストロギアを狙うなら、可能性は大だと思うが動機が分からない」

侑斗は、はやてから貰った資料の情報を思い出しながら口を開く。

ゴルゴムにしろクライシスにしろロストロギアと絡めるには異様に思えてならない。

「動機とはどういう事だ?桜井」

「八神と何度か話してるんだが、スカリエッティならレリック以外のロストロギアを手に入れても有効に使うからメリット

があるという事がわかる。だけどゴルゴムやクライシスがロストロギアを手に入れてもメリットがあるとは思えないんだよ」

ロストロギアは『お宝』とジャンルすることができるが、それを分けるとなると『万能アイテム』ではなく『いわくありげなアイテム』になるだろう。

何故ならば、無知無学では決して有効に扱う事が出来ないからだ。

ゴルゴムやクライシスがロストロギアの知識を有しているとは考えにくい。

だからといって、『バカ』と決めつけているわけではないが。

「イマジンは損得度外視してる奴もいるからな」

この場合における『損得』とは第三者からの視点でしかない。

侑斗の今までの経験からして深く見ない限りはそれが『損得』だと判別しにくいものばかりだからだ。

「ゴルゴムやクライシスはイマジンと違って、組織系統があるみたいだからな。油断はするなよ」

それは、はやて達が趣味で作ったファイルの中にある事だ。

「わかってるって」

「元より油断をする甘い相手ではない事は承知している」

はやての時と違って、二人の返答はかなり真剣なものだった。

それはガジェットドローン程度ならば、リミッターを設けられている状態でも問題なく戦う事ができるが怪人達ととなると

現在の状態で戦う事は自殺行為に等しい。

 

 

「「それでは行ってきます」」

 

 

二部隊の副隊長は敬礼をしてから、ホテル・アグスタへと向かった。

 

 

 

 

 

ホテル・アグスタに到着した二人は身分証明書を提示して、予め手配された部屋へと向かう。

機動六課が試験部隊であるため、贅沢な事を大っぴらにすることはできない。

というよりも、元々『娯楽』や『浪費』といった類と真逆に生きている彼女達は一泊最低限快適に過ごすことができればそれでいいのだ。

もちろん部屋数は一人一部屋ではなく、二人で一部屋だ。

荷物を置いて、ヴィータはベッドに転がりシグナムは椅子に座る。

「ヴィータ」

「ん」

シグナムの言葉にヴィータは寝転がりながら、向きを百八十度変える。

レヴァンティンを介して、宙にモニターを展開させていた。

映し出されていたのは、明日のオークションで出展される品ばかりだった。

「こんなの奪いにくんのかな。わざわざ」

ヴィータの言うように、出展される品は一見するとガラクタに近いものだった。

「あたしだったら、絶対に盗まない」

ロストロギア関連の部署についているといっても、ヴィータはその手の価値を知っているわけではない。

任務だから守る、というのがヴィータの考えだ。

「それには同感だ」

シグナムも同じだった。

「スクライアは今回のオークションに解説役として出席するようだな」

「だったら詳しい事知ってんのかな?」

「あり得るな。この手の事に関して、あいつの右に出る者などここにはいないだろう」

警備に回る時間まで達していないため、二人は件の人物がこのホテルに来泊しているか否かを確かめるために、フロントへと向かった。

そして件の人物が来泊している事を知り、自分達よりもはるかに豪勢な部屋で宿泊している事を知るのはそれから五分後の事だった。

 

 

 

ユーノ・スクライアとその相棒であるプロキオン(フェレット)は主催者側に案内された部屋の豪勢ぶりに目が点となっていた。

彼等は機動六課と違って完全なVIP待遇のゲストだ。

扱いが違うのも当然と言えば当然だろう。

「ひっろーいお部屋です」

あまりの広さにプロキオンは駆けまわっていた。

「壺とか壊しちゃダメだよ」

駆けまわっているフェレットは人語を理解する聡明なものだ。

だからこそユーノも強くは言わない。

出展されるオークション品の解説役という立場でここに赴いている。

しかし、それはあくまで表面上のものだ。

真の目的はロストロギアを奪いに来る可能性の怪人の撃退である。

(イマジンならば契約者の指示か、はぐれイマジン。前に戦ったクライシスだとその裏に誰かがいるって考えた方がいいかもね)

スカル魔の動きは間違いなく、無頼ではなく洗練されたものだった。

それは彼等が正規軍に所属している正規兵という事を指していた。

(なのは達の住んでいる地球にはかつてイマジンと同じかそれ以上に脅威な秘密結社がいくつも存在していたってのは驚きだね)

スカル魔戦以降、ユーノは仕事の傍らでクライシスやスカル魔の事で調べていた。

その結果として様々な秘密結社が、高町なのはの生活している地球に存在していたことが明らかになった。

しかもその秘密結社が互いの存在を知ってか知らずか、今となっては知る由もないが必ずと言っていいほどダブルブッキングをしたこと

がないという『奇跡』があった事もだ。

「あれだけの事をやらかしている連中なのに、なのは達が知らないってのもどういう事なんだろう……」

たしかにどの秘密結社も、なのは達が生まれる前のものばかりだ。

だが日本国民を恐怖に陥れてきた者達の存在は明るみになっていない部分もある。

「どこの世界も政府と秘密結社の癒着は濃厚か……」

日本政府がこの秘密結社達を明るみにすれば首をくくる覚悟をしなければならないのは間違いなく政府側だからだ。

「どうしたんですか?ユノさん。独り言なんて……」

「ん?ちょっとね……」

椅子に座っていたユーノは立ち上がって、窓から景色を眺める。

澄み切った青空で雲が所々、模様となって一枚の絵画として描く事ができるだろう。

「この一件、揉めるね」

コンコンとドアを叩く音が一人と一匹の耳に入った。

「はい」

ドアを開けると、シグナムとヴィータがいた。

 

 

 

「随分広い部屋にいるんだなー。お前」

ヴィータは腰に手を当てて、窓の景色を眺めながら部屋の感想を述べた。

「VIPだからね」

ユーノは短く言いながら、二人分の紅茶を淹れる。

「シグナムさん達は今回のオークションの警護ですか?」

「ああ。そこでお前に訊ねたい事があってな」

シグナムはレヴァンティンを介してモニターを宙に展開させる。

「今回のオークションの出展物ですね」

「ユーノ、この中でどれが怪人が狙ってるってわかる?」

ヴィータは本題に入り込んできた。

「どれを狙ってくるかなんて……」

かつて『海鳴市の存在する地球』に潜伏していたゴルゴムも当然調べている。

「ガジェットドローンが狙ってこないかもしれないけど、ゴルゴム怪人なら狙ってくる可能性が高いものならわかったよ」

「どれどれ?」

「これ」

 

 

 

出展品名 四つの石

詳細   天の石 地の石 海の石 王の石

 

 

「これだね」

「ジュエルシード系か?」

「いえ、正確にはある事をするために必要な物なんですけど、それ以外では全く何の役にも立ちません」

ユーノが指した出展品の見てくれからシグナムは推測したが、彼はそれを否定した。

「ある事って何だよ?」

ヴィータが回答を急かす。

 

 

 

「世紀王を生み出すために使うみたいです。その名前はブラックサンとシャドームーンだそうです」

 

 

 

「「シャドームーン!?」」

機動六課副隊長二人が目を大きく広げて、驚きを隠そうとはしなかった。

「知っているんですね。その名前に……」

「ああ。主はやてとすずかさんが研究していた中にその名があった」

「たしかゴルゴムの一番偉い奴の名前!」

部屋の雰囲気ががらりと変わったのか部屋内を駆けまわっていたプロキオンの足も止まって話し合っているこちらを見ていた。

「スクライア。怪人がコレを奪うとなると、世紀王を生み出すという事だが何故そのような事をする必要がある?」

わざわざ自分達にとって目の上のコブを作るような行為をしたがる者はいないというのが、シグナムの見解だ。

「どーいう事だよ?シグナム」

ヴィータは首を傾げる。

「私はゴルゴムの怪人というものはほとんど資料でしか知らないが、イマジン並みの戦闘力を持っていると考えている。このま

まならば自分達の自由に動き回る事ができる。だが世紀王を作れば自分達の動きを制限される事になるそうなれば怪人達にとっ

てはどちらが自分達にとって得かはわかるだろう?」

「あたし等にとっては陸みてーなもんか」

ヴィータは考えた結果、一番なじみ深い例えを口に出した。

彼女の言う通り、時空管理局の地上部隊は完全なる縦社会であり融通はほとんど利かない。

そのため、解決できた案件を取りこぼしたという例は珍しくない。

「そんなものでいいと思うよ」

ユーノの言葉はヴィータにしてみれば及第点という風にとる事が出来た。

(なあ、シグナム)

(どうした?)

ヴィータが念話の回線を開き、シグナムはその行動に怪訝になる。

(ユーノの奴、何でこんなに詳しいんだろ)

いくら無限書庫が『調べればわからない事は絶対にない』と言われている場所で司書長をやっていたとしても納得できない部分もある。

(私達がここに来ることに備えて下調べしていたというわけではなさそうだな)

それができるのならばユーノ・スクライアは怪物だろう。

(スクライアは今でこそ前線から離れてはいるが、十年前は我等同様に仮面ライダーと共に戦っている。そこで何か思うところがあるのだろう)

それが何なのかまではわからない。

元々、シグナムもヴィータもこの手の心理戦といったものは苦手なのだ。

(なーんか他にも隠してる事あるんじゃねーの?)

(どうだろうな。あいつは一部署のトップだ。下士官に言えない事もあるさ)

偉くなればなるほど身内相手に、秘匿しておかなければならない事情というものもある。

(偉くなるって難しいもんだな。はやて見てると全然そんなふうに感じなかったけどなー)

主であるはやての顔を念話の回線を切らずに思い浮かべる。

はやてはそういう部分を普段はおくびにも出さないから、その手の感覚がマヒしてしまっていたのかもしれない。

(主はやてがある種では特異なのかもしれんな)

(ふーん)

シグナムは妥当な言葉がこれしかなかったことに少し後悔しながらも、ヴィータに告げた。

(ヴィータ。私はスクライアそのものの方が気になっているがな)

(何でさ?)

(気付かなかったとは言わせんぞ。お前とてこの部屋に入ってから薄々と感じていたのではないか?)

シグナムがチラリとヴィータを一瞥する。

(前線に何年も離れてる奴の雰囲気じゃねーって事だろ?)

(わかってるいるならいい)

二人はこの数年間、ゆっくりと現在話している人物と対談をしてはいなかった。

だからこそ、一つの部屋でゆっくりと話していると彼の纏っている雰囲気が内勤者のモノとは違うという事がわかってくる。

(何ていうかさ、上手く言えねーけど今のユーノって似てなくない?)

(野上や桜井、モモタロス達にか?)

「どうかしたんですか?二人とも」

「いや、柄にもなく考え事をしていた」

「慣れねーことはするもんじゃねーよな」

怪訝な表情を浮かべているユーノに対して、シグナムとヴィータは適当にごまかした。

なお、この口頭が発せられると同時に念話の回線は既に切れていた。

 

 

「ふう……」

機動六課の副隊長が去ると、ユーノは一息ついていた。

「大丈夫ですか?」

プロキオン(イマジン)が冷蔵庫からミネラルウオーターが入っているペットボトルを渡してきた。

「ありがとう」

笑顔で答えると、キャップを素早く開けてのど元を潤す。

ごくごくっとボトルの中に入っている水は勢いよくユーノの喉を潤していく。

「はあ……」

一息つくと、ユーノはペットボトルを口元から離す。

「イマジンや他の怪人さんと戦っている時でもそんな風にはなりませんのに……」

「昔からねシグナムさんとヴィータ、一人ずつなら普通に大丈夫なんだけど二人一緒だと妙に緊張しちゃうんだよ」

相手が本物の『騎士』だからなのかもしれない。

だからこそ、自分のような『にわか戦士』は見抜かれるのではないかという『恐れ』が本能的にあったのかもしれない。

「確かに怖いですものね。あの二人は……」

イマジン状態になっているプロキオンはフェレットの時と違って、口調に子供っぽさがなくなっている。

「シャマルさんやザフィーラさんがバラすとは思えないけど、隠しているというのはね……」

「主……」

ユーノが今の中で弱音を吐くことができるのは、プロキオンだけだ。

『同志』もしくは『共犯者』ともいえるシャマル、ザフィーラ、アルフ、無限書庫のスタッフにも決して吐くことはできない。

プロキオンもその事は知っている。

だからこそ、彼は自分が弱音を吐いたとしても決して口外はしないだろう。

「イマジンにクライシスにゴルゴムに僕達の仇となる相手……」

「多いですね……。いっそのこと全部を電王さんやゼロノスさんに打ち明けてしまえば……」

思い切った事をプロキオンは言う。

(良太郎さん、侑斗さん、モモタロスさん達にか……)

それができればずっと自分のしている事は楽になるだろう。

(どんな顔して言えばいいんだよ……)

楽になろうと考えた時、自分の立場を思い出した。

「……やっぱり言えないよ。言えるわけがない」

今の自分はとてもではないが、自分が尊敬の念を抱いている男達に顔向けできる事をしているわけではない。

自分がAゼロノスになったのは、『力』を欲したためだ。

その力を手にして果たす目的、いや果たしたい目的があるのだ。

だがそれは決して『仮面ライダー』と呼ぶに相応しい者達と相反するものだ。

(もう引き返すことはできないし、元には戻れない……)

「それに僕が本当に誤った道をたどっているなら、あの人達は是が非でも止めてくれるよ」

なのは達ではダメだ。

五年間の誤魔化しに全く疑念を抱いている素振りを見せなかった時点で、この役をする権利は彼女達にはとうに失っている。

任せられるのは異世界から来た『仮面ライダー』だけだ。

ペットボトルに入っている残りの水をユーノは一気に煽った。

 

 

 

 

 

機動六課訓練場では野上良太郎とスバル・ナカジマが対峙していた。

「………」

「………」

互いに中腰となって、互いの出方を伺っている。

ちなみにこの申し出をしたのは意外にも良太郎である。

本来ならモモタロス達とスパーリングをしているところだが、今回はスバルにお願いしたのだ。

スバルは断るとも考えたが、二つ返事で了承してくれた。

表情には「これまでの訓練の成果を活かしたい」という感情が浮かび上がっていた。

「行きます……」

「お願いします……」

スバルが切り出し、良太郎が応じる。

間合いを詰めて駆け出しながら、左足を軸に腰を捻って上段回し蹴りを放つ。

(速い!!)

以前とは自分が認識している速度が違っている事に一瞬だけ驚くが、表には出さずに左腕で防御する。

バシッとスバルの右足と良太郎の左腕がぶつかる。

「痛ぅ!」

蹴りの鋭さに良太郎は表情を歪める。

スバルを見る。

彼女の表情に一瞬だが、『喜び』が浮かんでいた。

良太郎は左足を軸に、右前蹴りを放つ。

紙一重の所をスバルはバック宙をして下がる。

(スバルちゃんとは初めてだけど、正直魔法抜きの純粋な格闘技だったら勝てる相手じゃない……)

スバルを相手にしたのは彼女が習得しているシューティングアーツの対策だ。

未知の格闘技術を楽観視して受け止めるほど、良太郎は豪胆ではない。

振り上げた足を下ろして、また構えてスバルを見る。

汗が流れる。

冷や汗ではないが、それでも頬に伝うものを拭う気はない。

良太郎は駆け出す。

左足を軸にして腰を捻って右拳を矢のように一直線に放つ。

スバルは両腕を×字にして防御する。

「痛ぁ!」

スバルが声に出す。

反撃とばかりに、右腕を振り上げて拳を放つ。

防御はせずに、タイミングを合わせて左手で払う。

「!!」

スバルが攻撃を繰り出す前に、アッパーではなくボディブローを繰り出そうとする。

そこでタイマーが鳴った。

「はあ……はあはあ……はあ……」

「はあ……お疲れ……」

スバルは緊張の糸が解け、その場に座り込んでしまう。

良太郎も労いの言葉をかけながら、座り込む。

「す、凄いですね。野上さん……」

「そんな事はないよ。一対一でスバルちゃんと戦って勝つ自信なんてなかったからね」

スバルも良太郎も嘘のない言葉を述べる。

十分が経過すると、両名は同じタイミングで立ち上がる。

「もうすこしだけ付き合ってくれる?」

「はい!もちろんです!」

良太郎の申し出にスバルは快く受けてくれた。

 

 

 

ホテル・アグスタで主催されるオークション開始まであと24時間。

 




次回予告 


第三十七話 「ホテル・アグスタ~当日~」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。