仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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第三十七話 「ホテル・アグスタ ~当日~」

ヴァイス・グランセニックは本日も快適に機動六課専用のヘリコプターを操縦していた。

目的地はホテル・アグスタ。

任務は無事に乗客(この場合は六課メンバー)を目的地に送り届ける事だ。

それが完了すると『待機』ではなく、そのまま『帰還』となっていた。

ヘリコプターはただでさえ、発着場になにかと面倒がかかる。

この『帰還』という判断は別段間違ってはいない。

(そういや、野上のダンナ達は先に行ってるんだったよな……)

ヴァイスは野上良太郎を『野上のダンナ』と呼んでいる。

理由としては、あのフェイト・T・ハラオウンの意中の相手という事もそうだが、二人が一緒にいると、どうしても『恋人』というような甘い感じがせず、互いが互いの長所や短所を知った上で補い合っている『夫婦』のように思えたからだ。

(アレでまだ結婚はおろか、付き合ってもねぇんだから信じられねぇよな)

正直、それしか言いようがないものだ。

二人は『夫婦』でもなければ当然、『恋人』でもない。

(たまに前の職場の奴等に聞かれたりするけど、そうとしか答えられねぇしな)

人付き合いということでかつての部署の同僚と飲み会をすることもあるが、そう答えると質問してきた連中は何とも言えない表情をしていた。

勝ち目があるのかないのか、というものだ。

(でもフェイト執務官は間違いなく、野上のダンナ以外は眼中にねぇだろうしなぁ)

ヴァイスは大人しく座っているフェイトをちらりと見る。

彼自身、同僚からフェイトへの告白で撃沈した噂話は何度も聞いた事がある。

(それにシグナム姐さんもなんだよな……)

自分にとって『姉御』と呼ぶべき存在のシグナムも良太郎に特別な感情を抱いている事は知っている。

(姐さんに想われてるって改めて考えるとすげぇとしかいいようがないよな……)

その毅然としたたたずまいから異性はもちろん同性からも黄色い声がシグナムにはあった。

当然のことだが彼女は同性愛者ではない。

だが初対面同然の異性の告白に心動かされる程、彼女は『乙女』でもなかったのだ。

そういった場面をヴァイスは何度か見たことがある。

(同情しちまうよな……)

そんな事を考えながらも、ヴァイスは操縦桿を握る力を抜くことはしなかった。

 

 

ヴァイスがそのような事を考えていることなど、露知らず今回の作戦参加メンバーは最終ブリーフィングを行っていた。

 

 

 

 

ホテル・アグスタへと先に赴いていたチームデンライナー、ゼロライナーの面々は前日から警護をしているシグナム、ヴィータと合流していた。

「お前達、その格好で行くつもりか?」

「もしかして場違い、ですか?」

「うん。間違いなく」

シグナムとヴィータは良太郎と桜井侑斗の姿を一瞥してダメ出しをした。

二人の姿はいつもの私服姿だ。

「とはいっても、僕達が持ってきているスーツは現在クリーニング中ですし……」

滅多に着ない物でも、定期的に手入れをする必要がある。

「その事なら心配ない。後から来るシャマルが今回用の仕事着を持ってきてくれるみたいだ」

侑斗は事前に知らされている情報を開示する。

「それだと、残る問題は一つだな」

「モモ達、ね」

ヴィータが言う問題に、早く反応したのはコハナだ。

「あたし等は赤鬼の事を知ってるから問題ねーけどさ。今日このホテルに来てる全員はそうもいかねーだろ?」

ヴィータの言う通り、モモタロス達イマジンは機動六課をはじめとして縁のある者達の間では対等の扱いを受けている。

だが、世間はそういう目で見てくれるわけではない。

大抵が『危険な存在』か『自我を持ったロストロギア』か『自我を持ってコンパクト化した天変地異』などというような扱いだ。

だがヴィータの心配は杞憂で終わる。

何故なら良太郎、侑斗、コハナは『問題ない』という表情を浮かべていた。

「手は打っているのか?」

「そんな大それたことじゃないんですけどね。本当に」

コハナにしてみれば本当に大したことではなかった。

 

 

何故なら、彼等にはいつも使用している着ぐるみを着せているだけなのだから。

 

 

オオカミとペンギンとゾウとドラゴンとカラスがホテル・アグスタにいる客に風船を渡していた。

たまにペンギンが女性にナンパを仕掛けようとするが、オオカミとゾウが後頭部を叩いていた。

ドラゴンとカラスはそれを尻目に風船を手当たり次第に配りまくっていた。

着ぐるみが風船を配っているという光景は浮いているという感じはしない。

それは配っている場所がホテルの入り口だからだ。

「なあ、俺達っていつまでこんなことしてなきゃいけねぇんだよ?」

オオカミがペンギンに訊ねる。

「だって僕達、招待状もフリーパスも持ってないんだよ。ましてやオークション会場なんて場所に着ぐるみが入ったらその時点で不審者扱いだよ」

金銭と希少価値のある品物があふれている場所に入るには明らかに浮きまくっている姿だ。

「なのは等が来んかぎりは俺等はここで待機って事やな」

ゾウが風船を配る。

「がおー」

「かー」

手持ちの風船がなくなったドラゴンとカラスは通り過ぎる客を驚かしてみるが、その愛嬌のある着ぐるみの姿では迫力がなく頭を撫でられたりしていた。

「ん?」

オオカミの視界に妙なものが入った。

「どうしたの?センパイ」

「何か変な毛の色したユーノを見たんだけどよ……」

「変な毛の色したユーノ?」

オオカミの言い回しにペンギンは首を傾げる。

「ああ、フェレットの事?」

「おお」

付き合いが長いため、ペンギンはオオカミの言いたい事を理解できた。

「フェレットぐらいいるでしょ」

ペンギンは特に疑問を抱かなかった。

「でもなんか妙なんだよな……」

「何が?」

オオカミが抱いている疑問がどのようなものかはわからないが、ペンギンにしてみればいい加減に面倒になったのは言うまでもない。

 

 

「さっきな、イマジンの臭いがしたんだよ」

 

 

子供向けの愛想のいいオオカミの着ぐるみを着てはいるが、声色は真面目そのものだった。

 

 

 

 

オオカミが見た変な毛の色したユーノ---プロキオンは物陰に隠れていた。

「あのイマジンさん達がユノさんが尊敬しているイマジンさん……」

彼の契約者であるユーノ・スクライアから聞かされたことだ。

そもそもこのミッドチルダもとい時空管理局が管理している世界において、『人間がイマジンを尊敬している』という行為自体が極めて異質なものだ。

『人間がイマジンを敵視する』というのが当然の流れだと、プロキオン自身が知っているからだ。

着ぐるみを着ているとはいえ、彼にはイマジンか否かを判別することができる『嗅覚』がある。

だからこそ、ホテル内で風船を配っている妙な五体の着ぐるみが人間ではない事はすぐにわかった。

プロキオンは今まで『人に害なすイマジン』しか見たことがない。

だからこそ『自分と同じイマジン』というものに興味が湧いた。

「着ぐるみを着てるから本来の姿はまだ見れないね」

頭上から声がしたので、顔を向ける。

そこにいたのは主であるユーノ・スクライアだ。

「ユノさん!どうして?お部屋にいたんじゃ……」

「僕にとってもあの人達は特別、だからね」

「そうですよね」

プロキオンも主が何故そのような感情を抱いているかは理解していた。

「僕にとっては十年経ってるけど、あの人達にとってはほんの数か月だからね……」

「変な感じですね……」

主の言葉にプロキオンは複雑な感情を隠さずに、相槌を打った。

 

 

「あの着ぐるみ達が仮面ライダー電王とゼロノスの仲間達なんですね?」

 

 

確認するかのような言葉が一人と一匹の耳に入った。

ヴェロッサ・アコースだ。

「お疲れ様です」

ユーノは笑みを浮かべて軽く挨拶する。

「いえ、先生はこれからですよね?」

ヴェロッサはユーノがオークションに参加することを知っている。

「ええ、そうなんですよ。何回参加してもこの手の講義とか解説というのは慣れないんですよね……」

あはは、とユーノは笑う。

「またまた、ご謙遜を……。見ている側からすれば威風堂々としてますよ」

「内心ではいっぱいいっぱいなんですよ……」

更にユーノは小さく笑う。

「来ると思いますか?」

ヴェロッサの言葉に、主も自分も緊張が走った。

「来ますよ。この機を逃すわけがありませんしね」

笑顔だったユーノは真面目な表情になっていた。

「お宝たくさんですもんね」

プロキオンの感覚では、今回オークションに出展される品はロストロギアであろうとなかろうと『お宝』でしかない。

そして『お宝』を盗む者は『悪者』なのだ。

「狙ってきそうな物は既に機動六課には言っています。開催中に襲撃されると僕自身、安心して変身できるかどうかわからなくなりますからね」

ユーノは立場上というより、目的達成のために大っぴらに変身することはできない。

「変身したら即逮捕でAライナーは間違いなく没収ですからね」

それは秘密裏に協力しているヴェロッサの首を絞める事にもつながる。

「機動六課と仮面ライダー電王、ゼロノス頼りになりますね」

「そうですね……」

 

 

 

 

機動六課のヘリコプターがミッドチルダ首都南東地区の空を航行していた。

「ほんなら改めて、ここまでの流れと今回の任務のおさらいや」

今回は部隊長である八神はやても現場に参加していた。

一部隊の隊長が現場に赴くことは時空管理局という組織の中ではとりわけ珍しいわけではない。

戦闘能力のある者(この場合は魔力を有している者)が隊舎で椅子を温めているという方が少ないくらいなのだから。

「これまで謎やったガジェットドローンの製作者及びレリックの収集者は現状ではこの男……」

はやてが告げた直後に、宙にモニターが展開された。

映し出されたのは一人の男のバストアップ写真と主な経歴だった。

「広域指名手配されている次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティの線で進める」

「こっちの捜査は主に私が進めるんだけど、みんなも一応憶えておいてね」

はやての言葉に続くように、フェイトが真面目な表情で告げた。

「「「「はい!」」」」

フォワード四人も真面目な表情で返事をする。

「で、今日向かう先はここ!」

後方にいたリインがすーっと宙を移動しながら、モニターのそばまで移動する。

 

 

「ホテル・アグスタ!!」

 

 

リインが告げると同時に、スカリエッティからホテル・アグスタへと切り替わっていた。

「骨董美術品オークションの会場警備と人員警護。それが今日のお仕事ね」

「取引許可の出ているロストロギアがいくつも出品されるので、その反応をレリックと誤認したガジェットが来ちゃう可能性が高いとのことで警備に呼ばれたです!」

高町なのはが説明している際は、フォワード四人は真剣な表情をしていたのだが、説明者がリインになると『癒し』効果のためか表情が緩んでいた。

スバル・ナカジマに至っては近くで『おすわり』しているザフィーラ(獣)の頭を撫でていた。

「この手の大型オークションになると、密輸取引の隠れ蓑になったりするし色々と油断は禁物だよ。特に怪人にはね……」

現段階のフォワードの実力からガジェットドローン相手に後れを取る事はないとフェイトは考えており、最大の障害となるのは怪人だと判断して告げた。

「侑斗さん等は既に昨日から警備に入ってるシグナム副隊長とヴィータ副隊長等と合流してる」

はやての説明を聞きながらも、キャロ・ル・ルシエは対面に座っているシャマルの足元にある六つの箱が気になった。

「私達は建物の中の警備に回るから、フォワード(前線)は副隊長達の指示に従ってね」

「「「「はい!!」」」」

なのはが指示を出すと、フォワードはすぐに返す。

「あの、シャマル先生」

キャロが先程から抱いていた疑問を解決するタイミングと思い、挙手をした。

「さっきから気になっていたんですけど、その箱って?」

「え?ああ、これはね。隊長達、侑斗君、良太郎君、ハナちゃんのお仕事着♪」

キャロが指差す六つの箱を、シャマルは笑顔で答えた。

フォワード四人は同時に首を傾げた。

ヘリコプターが、着陸したのはそれから十分後の事だった。

 

 

 

 

ホテル・アグスタで合流した良太郎と侑斗は、シャマルから箱を受け取った。

その箱にはオークション会場に入場しても自然に振る舞えるための衣装が入っていた。

従業員の更衣室に二人はいた。

「こんなのもらっていいのかな……」

「仕事に必要なものだからいいんだろ」

良太郎と侑斗は箱の中身を見て、感想を述べていた。

互いに私服を脱ぎながら、箱の中に入っていた衣装に袖を通していく。

「サイズがピッタリだ。この仕事をしたのは八神じゃないな」

「誰?」

「シャマルだよ。あいつなら六課にいる全員のサイズを頭の中に入れてるからこのくらいの事は造作もないさ」

着ていた私服をロッカーに入れる。

「シャマルさん。すごいもんね」

良太郎の中では、シャマルは才色兼備な女性となっている。

「言っておくが、シャマルに対して妙な過大評価はするなよ?アイツはアレでも抜けてるからな」

「ふーん」

八神家の身内同然である侑斗の言葉なのだから、嘘ではないだろう。

「よし!侑斗、それ……」

「言うな。八神は俺を何だと思ってるんだ……」

侑斗の格好を見た良太郎はどういえばいいのかわからなくなっていた。

良太郎は主流とも呼べる黒色のタキシードだが、侑斗は白色という着る人をかなり選ぶものだった。

見方によってはとても『カタギ』とは言えない雰囲気も出ていた。

「似合ってるんだからいいじゃない」

「アイツにはとりあえず拳骨一発はしておくか……」

侑斗は、はやてのおちゃめに対する報復を宣言した。

更衣室を出ると、女性四名と鉢合わせした。

四人ともドレス姿だった。

なのはは彼女の魔力光と同じ桜色をメインカラーにしたキャミソールタイプのドレスで、髪型はいつものサイドポニーではなく、ストレートにおろしていた。

フェイトはバリアジャケットに近いカラーをした肩が露出し、スリットが入っているロングスカートのドレスで髪型はストレートで変化はないが下の方に巻いてあるリボンはなかった。

はやては青色をメインにしたドレスで両耳にはクロスのイヤリングをつけており、髪型はアップにしていた。

コハナは白色のドレスで、髪型はいつものストレートでもなければポニーテールでもないツインテールだった。

「二人とも、サイズはぴったりみたいやな」

はやてが二人を一瞥してから満足げな表情をしていた。

「ところで侑斗さん、野上さん。何か言う事あらへんかな~?聞きたがっている人もおるんやけどな~」

はやてがその服装とは反する悪戯な表情を浮かべて、催促を始める。

「高町、テスタロッサ、ハナ。よく似合ってるよ。八神、お前はさっさとタイムマシンに乗って二十二世紀に帰れ」

侑斗の一言は、なのは、フェイト、コハナに喜びの表情ではなく、いかにも吹き出しそうなくらいに笑いをこらえていた。

「侑斗……」

拳骨ではなく、こういうやり方で報復するとは予想していなかったがあからさまな暴力ではないだけマシだと良太郎は納得しておくことにした。

「まさか、このドレスのカラーを見て即座にそんな返し方するとは思わんかったわ……」

はやては言い返すどころか、瞬時に高度なボケをした侑斗の技量に高さに恐れをなした。

だがそれは、自身の事を『タヌキ』と認めていないと成立しないものなのだが。

「アレって確か『タヌキ』じゃなくて『ネコ』だったような……」

フェイトは記憶の奥にあったものを引っ張り出して口に出すが、良太郎を始めとする日本人四人に「しーっ」と黙るように言われる。

侑斗とはやての売り言葉に買い言葉的な応酬が終わってから、その場の『ほのぼの』とか『笑い』に満ちた雰囲気は変わり真面目なものとなる。

「さて、これから私達は中の警備へと入ります。不自然な行動を避けるためにも二人一組のツーマンセルで行動しますんで、組み合わせは今からクジで決めたいと思います。この中から

一枚引いて、同じ絵柄の人同士がコンビって事になるんでよろしくな」

はやてが説明口調が辛くなったのか、最後だけ本来のモノに戻っていた。

いつの間に用意してたんだろうとはやてを除く五人が思ったが、口には出さずにクジを引いていく。

その結果。

 

 

なのは&コハナ。

フェイト&良太郎。

はやて&侑斗。

 

 

という組み合わせになった。

 




次回予告


第三十八話 「ホテル・アグスタ ~事情~」
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