仮面ライダー電王LYRICAL StrikerS Vol.1 Spring Party   作:(MINA)

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第九話 「災害を屠りし者」

未開の地でイマジンを倒しに行くと息巻いたが、頼りであるイマジンの臭いが途絶えてしまい迷子になってしまったチームデンライナーはというと。

ヴィータ、シャマル、ザフィーラ(獣)に保護されて無事に機動六課の寮前まで送られていた。

「あたしは正直、今まででこんな情けない仕事をした事ねーよ!良太郎!お前がいながら迷子になんかなってんじゃねーよ!!」

腰に手を当てて強制的に正座をさせられているチームデンライナーは全員が顔を俯いていた。

ヴィータの言い分に誰もが反論できないからだ。

「……弁解のしようもありません」

代表で野上良太郎が呟くだけだった。

ちなみにイマジンと遭遇して倒したとしても、地図を所持していない彼等は同じ末路を辿っていたりする。

どちらにしてもヴィータの説教を食らっていたという事になる。

「あの、ヴィータちゃん。地図を渡し忘れた私やフェイトちゃんにも落ち度はあるんだし……」

「もうそれくらいでいいんじゃないかな……」

高町なのはとフェイト・T・ハラオウンがヴィータを宥めようとする。

「二人とも甘ぇーんだよ!叱る時に叱っとかねーとまた何やらかすかわかんねーんだからな!!」

ヴィータはある意味尤もな事を言う。

それはそこそこに付き合いのあるからこそわかる事だ。

「まぁこれ以上、説教してもしょうがねーからこれで終わりにしてやるよ」

ヴィータもこれ以上はただの粘着質的な嫌味になりかねないので終わりすることにした。

(一回の説教でどうにかなるほどのタマじゃねーしなぁ)

正座しているイマジン達の中で、自分を刺すように見ている視線があった。

(コイツは十年経ったにも変わらず……)

あれから十年経ち身体の成長はないが精神は成長していると自負している自分だが、モモタロスのこちらを睨むような表情を見るとこう何かが湧き上がってくる。

「オイ、赤チビ。説教終わったんだったら俺達は寝るぜ」

モモタロスは痺れた足でフラフラと立ち上がろうとする。

「十年経ってもその呼び方変える気はねーみてーだな。赤鬼……」

「テメーは見てくれも中身も変わってねーじゃねーかよ。赤チビ」

互いの額に青筋が浮かび上がって、睨みあっている。

「テメェ……」

「潰す!!」

それでも睨みあっている一体と一人。

互いに手が飛んでこないだけマシだとそこにいる誰もが判断すると、正座をしていた残りの面子もゆっくりと立ち上がって寝る準備を始める。

それぞれが寝袋を手にしてテントに入り込む。

「センパイもいつまでもヴィータちゃんと睨みあってないで、さっさと寝たら?」

ウラタロスがモモタロスに向かって寝袋を投げつける。

手前で寝袋はボスッと落ちる。

互いに興ざめしたのか、背を向ける。

「命拾いしたな。赤鬼」

ヴィータはことの成行きを見守っていたシャマル、ザフィーラと共に八神家へと戻っていく。

「ケッ。次こそはテメェの頭をエビフライにして食ってやるぜ」

モモタロスは寝袋を手にしてテントの中へと入っていく。

互いに笑みを浮かべながら。

 

テントの中に入って眠りをつこうとしている良太郎だが、キンタロスのいびきのせいで眠りにつけなかった。

寝袋から抜け出して、テントから出る。

外は変わらず夜であり、気温も少しだけ下がっているのか肌寒さを感じた。

機動六課の隊舎前まで気晴らしに散歩をする。

「ん?」

人影が見える。

(この時間帯で?誰だろ?)

姿がハッキリ見える距離まで良太郎は歩む。

そこにいたのはフェイトだった。

「フェイトちゃん」

「良太郎?寝てたんじゃなかったの?」

背後から声をかけられ、フェイトは驚きながら振り向くがすぐに平静へと表情を戻す。

「中々寝付けなくてね」

「来て早々大変だったもんね」

フェイトの言い方は『迷子』か『イマジンとの戦闘』のどちらかを判別するのは難しい。

「……まあね」

良太郎としても曖昧に答えるしかなかった。

立ちっ放しも正直疲れるので、二人は自然とその場に座る。

「僕達ってこれからどうなるの?今までみたいにはいかないってのはわかるけど」

「うーん。昔のなのはの様に民間協力者って事になると思うよ。良太郎達の事を知ってる人達って限られてるからね」

「限られてる?」

「うん。義母さんやレティ提督が良太郎達の事を事件関係者以外には口外禁止にしているからね」

「リンディさん。気を遣ってくれたんだ」

「本来なら世界を二度救ったのは良太郎達だから、色々と褒賞も与えられるはずだったんだけどね」

「僕達の都合でそうもいかなくなったわけだしね」

二度に亘って救ったといっても全ては十年前の時間でのことだ。タイムパラドックスを考えて良太郎達は自分達がその時間にいたという『足跡』は極力残さないようにして

いた。

そのため、『P・T(プレシア・テスタロッサ)事件』と『闇の書事件』の記録には良太郎達の存在は全く記載されていない。

彼等の存在は事件関係者の『記憶』の中でしか存在しないのだ。

年月が経ち、自身のした事により代価を得るようになってからはこの『知られていない英雄』扱いが不憫でならなかった。

今の自分達を救ったのは間違いなく隣にいる彼を始めとした者達なのだから。

「六課絡みの事件ならこれからも良太郎達の名前は出さないようにするけど、あまり期待はしないでね」

「火のない所に煙はたたないってヤツ?」

「うん。どんなに隠蔽をしてもやっぱり隠しきれるものじゃないからね。そうなると申し訳ないけど……」

「それなら仕方ないよ。そっちの顔を潰してまでやってもらうわけにはいかないからね」

フェイトが申し訳なさそうに言い、良太郎としては了承の返事はしておいた。

彼としては『八月』までは何とか誤魔化してほしいというのが本音だ。

(それでも上手くいかないのが『時間』だけどね……)

人の力で『改竄』や『修正』を行ったとしても、それを上回るのが『時間の流れ』というものだ。

もはや自然脅威みたいなものであり、中途な考えを持って関わると悲惨な結果になるのはわかりきっているものだ。

良太郎は両手を後頭部に組んで、その場で寝転がる。

フェイトもつられて横で寝転がる。

「綺麗……」

夜空には満天の星が光っていた。

「侑斗が見たら喜ぶかもね」

フェイトの感想に良太郎は多分一番喜ぶ人物の名を挙げる。

「ミッドチルダで生活してそれなりになるけど、こんな風に夜空を見たのは初めてだよ」

フェイトの瞳には夜空が美しく輝いていた。

それは決してプラネタリウムで拝めるものではなかった。

「僕だって自分の世界で寝転がって夜空なんて見上げた事はないよ」

良太郎の瞳にも、今は満天の星空しか映っていなかった。

「綺麗だね」

「うん」

良太郎の感想にフェイトは頷いてから、起き上がって上着のポケットから懐中時計を取り出して時刻を見ていた。

「もうこんな時間だ。良太郎、私そろそろ帰るね」

「その時計ってもしかして……」

良太郎も起き上がりながら、フェイトが持っている懐中時計に目がいく。

「うん。十年前に良太郎がくれた物だよ」

「うん。あ、それ持っててくれたんだ」

十年前の時間で、良太郎がハラオウン家へ養子に行く祝いとしてプレゼントしたものだ。

大切に扱ってくれた事を良太郎は嬉しかった。

「私の宝物だもん。絶対に手放さないって」

自信を持って胸を張ってフェイトは豪語する。

「あとね」

フェイトは良太郎の正面に立って、視線を向ける。

その視線から良太郎は逃げようとは思わなかった。

 

「私の気持ちは十年前と変わってないからね」

 

そう言うと、フェイトは背を向けて自身の住居先へと戻っていった。

「………」

良太郎はフェイトの言葉を脳裏で反芻していた。

「おやすみ。良太郎。これから頑張ろうね」

フェイトは一度振り向いてそう告げてから歩き出した。

「これから……か。色々と起こりそうだな」

良太郎は自身に何かが降りかかるのではないかと予想していた。

できるなら降りかかってほしくはないなぁと思うが、やっぱり降りかかってしまうんだろうなぁとも。

 

*

 

翌朝となり、外が騒がしかった。

「ん……」

目覚まし時計がないので、喧騒が代わりとなる。

「よぉ起きたかよ。良太郎」

既に起きていたモモタロスが声をかけてきた。

「外が騒がしいんだよ。ま、立派な建物の前にテント張ってたら見に来たがるってのはわからなくはないけどね」

既に起きているウラタロスが騒がしい原因を説明してくれた。

「それにしても皆同じ格好してるで」

日頃は誰よりも寝ているキンタロスが珍しく起きていた。

「何かうるさいなぁ。良太郎あいつ等やっつけていーい?」

喧騒に苛立ちを感じているリュウタロスは武力行使をしようとしていた。

「だ、ダメだよ!リュウタロス。そんな事したら僕達ずーっとテント暮らしになっちゃうよ」

「じゃやめる」

良太郎の最悪の予想をリュウタロスは想像してあっさりと武力行使を断念した。

「とりあえず、みんなはテントの中にいて。僕が様子を見てみるよ」

そう言うと同時に良太郎はテントの外を出る。

そこには陸士隊服を着用している数十人の男女がいた。

自分がテントから出たことで半歩ほど全員が下がったように思えた。

(この感じからして僕達の事を知らないんだ)

知っているならもっと違う反応をしていただろう。

「良太郎」

別のテントからコハナが出てきた。

今まで出てこなかったのは着替えていたからだろう。

「ここにいる人達の反応からして私達の事を知らないってみた方がいいのよね」

コハナは自身を認めさせるように言う。

良太郎は首を縦に振った。

 

隊舎前で人だかりが出来ており、かき分けながらスバル・ナカジマとティアナ・ランスターはその原因を自らの目で見ようとしていた。

「「あ」」

その原因が何なのか二人は瞬時に理解した。

「ティア。あの人……」

「野上さんよね。てことはテントの中に仲間のイマジン達もいるって事になるわね」

二人は昨日に初めて良太郎達と出会い、彼が電王に変身してイマジンを撃退する姿を目の当たりにしている。

現在二人は六課の隊舎の場所を確認する為に、本局に赴く前に訪れていたのだ。

自分達以外の局員も、今後はこの『機動六課』に席を置く予定もしくは確定している者達ばかりなのだろう。

それが揃って今日に集まるとなると、シンクロニシティでも起こったのではないかと思ってしまう。

昨日の『魔導師ランク試験イマジン乱入事件』は世間には出回ってないが、時空管理局内では有名なものになってしまっている。

仮面ライダー電王に変身する一人の青年。

自然災害扱いであるイマジンを倒した仮面ライダー電王。

そして電王となる青年に協力しているイマジン。

イマジンの在り方を覆すイマジン達には恐い物見たさで来る者も決して少なくないだろう。

「誰も何かしようとはしないね」

スバルは膠着状態に自然となっていることに疑問を感じていた。

「無理もないと思うわ。イマジンを倒せるってそれだけで大事なんだから」

ティアナの言っている事は決して誇張ではない。

以前にも述べたようにこの世界でイマジンは『自然災害』のようなものだ。

自然災害に正面からファイティングポーズを取って特攻する人間はいないだろう。

結果はわかりきっている。絶対に勝てない、と。

理屈ではなく本能で。

もし、その自然災害に正面からファイティングポーズを取って特攻して勝つ人間がいたらどうだろう。

周囲の人々はその者を『英雄』と扱うか『腫れ物』として扱うかという事になる。

大抵は後者だろう。その理由としては『触らぬ神に祟りなし』で。

それでも遠巻きで見る限りには『英雄』として扱う事もありうる。

(なのはさん達はあの人やイマジン達を凄く信頼してるんだよね?)

(それがわからないのよね。なのはさん達とイマジンやあの人ってどういう繋がりなのかしら?)

念話の回線を開いてスバルとティアナはチームデンライナーと自分達の上司となる人物達の繋がりを考える。

この二人は『P・T事件』や『闇の書事件』の事は公式での記録でしか知らないので無理もないことだ。

「スバル」

ティアナは嫌な予感がしながらも、相棒の横顔を見る。

何かを決意した表情。

こうなると、自分はその決意を最善の方向に持っていくしかない。

止められないのだから。

「行くんなら私も行くわよ。アンタの尻拭いが出来るのは今の所は私だけなんだから」

ティアナの台詞がスバルの背中の押したかたちとなり、二人は良太郎の元へと歩み寄った。

 

*

 

「何かしら?」

機動六課の寮を管理する寮母を任されているアイナ・トライトンはいつもより早めに出勤してみると、機動六課の隊舎の人だかりに目を丸くしていた。

彼女が本日、早目に出勤したのは昨日八神はやてから連絡があったからだ。

古い知り合いが住居先がなくて困っているので、寮の部屋をセッティングしてほしいとの事だ。

部屋は全部で四室を考えており、その内二室は個室であり残りの二室は共同部屋にとの事だ。

セッティングするだけなら今日の午前にまでは可能なので早速仕事に取りかかる事にした。

まさか、隊舎の人だかりの原因を作っている者達がこれから宿泊するのだろうとアイナは想像するはずもなかった。

 

*

 

人だかりの中から二人の少女が自分の前に立っていた。

陸士隊制服を着込んでいるが、昨日に初めて会った二人だ。

「ナカジマさんとランスターさん」

良太郎は二人の少女の名前(正確には姓)を口にした。

「憶えててくれたんですか♪」

「おはようございます」

スバルは憶えていてくれた事に純粋に喜び、ティアナは社交辞令として挨拶をする。

「これは一体どういう風になってこのように……」

「僕もよくはわからないんだよ。朝起きたらこんな感じに……」

ティアナの質問にも良太郎は曖昧な回答しか出来ない。

「そうなんですかぁ」

スバルは能天気に納得するが、ティアナは考え込んでから視線を良太郎に向ける。

「もしかして……。あの野上さん、一つお聞きしていいですか?」

「僕で答えられる範囲なら」

「野上さん達はミッドチルダを始めとする次元世界でのイマジンの扱いってご存知ですか?」

「イマジンの扱い?」

ティアナの質問に良太郎は首を傾げる。

良太郎のその態度にティアナは驚きはしなかった。

どこか予想通りだとも思えた。

「ティア。どうしたの?野上さんはイマジンに関しては私達よりずっとプロだよ?」

スバルはどうしてティアナがそのような事を訊ねているのか理解できなかった。

「ランスターさん。もしかして僕とランスターさん達とでは認識が違うって事?」

「はい」

ティアナは良太郎の質問に即答した。

スバルはティアナと良太郎の顔を交互に見ている。

良太郎にとってイマジンとは『時の運行』を乱す存在であり、人間的感情を強く持った怪人なので平和的な解決(話し合い)が可能な怪人だ。

無論、平和的な解決の見込みがない場合は戦わなければならないわけだが。

モモタロス達と共に戦っている事を考えても『人類の敵』という認識は持っていない。

「私達にとってイマジンは『天災』と同じなんです」

「天災と同じ?」

「はい」

ティアナが決して大袈裟で言っているのではない事は良太郎は彼女の表情を見てわかる。

先程からやり取りを見ているスバルにしても同じ様な表情をしていた。

「立ち話もなんだからテントに入らない?腰を落ち着けて聞きたいんだ」

良太郎も真剣な表情となって、二人にテントに入らないかと勧めた。

二人は互いに顔を見合わせてから頷いた。

スバルとティアナはテントの中に入ると、間近で見るイマジン四体に気圧されていた。

「オイ、俺達が台風とかと同じってどういう事だよ?」

「ひっ!?」

「………」

モモタロスが彼なりに普通に訊ねるが、スバルとティアナはそれだけで恐縮していた。

「センパイ。女の子に凄んじゃ駄目だっていつも言ってるじゃない。ゴメンね。僕達イマジンが天災と同じって理由を聞かせてくれない?」

ウラタロスがモモタロスの非礼を詫びながら、二人に話すように促す。

「私達、厳密に言えば魔導師や騎士はイマジンを確実に倒す事が出来ないんです」

「なのは等でも無理なんか?」

キンタロスがティアナの意見に疑問を感じて訊ねる。

「……なのはさん達は戦えないんです」

スバルが悔しそうな表情で言う。

「どうして?なのはちゃんやフェイトちゃん達なら絶対に戦うと思うなー」

リュウタロスが、高町なのはの性格を思い出しながら言う。

「魔導師ランクで高ランクのなのはさん達は戒厳令に抵触してしまうんです」

「戒厳令?」

ティアナが放った単語に、テントの入口にいたコハナが聞き返した。

「コハナクソ女。オメェ、自分のテントはどうしたんだよってぶっ!」

コハナはモモタロスに一発拳骨を繰り出してから腰掛ける。

「もう片付けたわよ。それよりもランスターさん、さっき言ってた戒厳令って?」

「あ、はい!高ランクの魔導師はイマジンの特殊能力である憑依の餌食にされやすいって事で被害を拡大させないための措置なんです」

コハナが当たり前のようにモモタロスを殴った光景を目の当たりにし、ティアナとスバルは口をポカンと開けていたが平静に戻る。

「という事はランクの低い魔導師達がイマジンと戦わなければならないわけ?」

良太郎はティアナの言った内容の逆を告げると、彼女は首を縦に振った。

「それ無茶すぎるよ。イマジンなめてるとしか言いようがないね」

ウラタロスの指摘は現職管理局員であるスバルとティアナにはグサリと来るものだった。

「自殺しにいくようなもんやな」

キンタロスも腕を組んでサラリと感想を述べる。

「ねぇねぇ」

「なぁ」

リュウタロスとモモタロスが良太郎を見る。

「「カイゲンレイってなに?」」

「戒厳令っていうのはね。厳重に注意、警戒する事をしく命令の事なんだよ。この場合だとランクの高い魔導師はイマジンが現れても現場に出る事が出来ないって事だね」

良太郎が二体に大まかな意味を説明した。

「出たらどうなるんだよ?良太郎」

「そうなると現場に向かった人の責任になるね。仮にイマジンと戦って命を落としたとしても、戒厳令を敷いた側としてはは知らぬ存ぜぬを貫くか『警告はしましたけど聞

いてませんでした』って言うかもしれないね」

自分の世界で実際に起きた組織内のケジメのつけ方の一例を良太郎は述べた。

「命令違反して死んだヤツはホンマに犬死になるんやな」

キンタロスは想像とはいえ、やりきれない表情をしていた。

ティアナは黙って頷く。

「イマジンの戦闘力の高さで倒せないって理由と、人命を優先した策が結果として最悪な状況を招きどうやっても倒せなくなっている。だから『天災』なんだね」

イマジン=天災のたとえを良太郎達は理解した。

「でも、どうやって今までこの世界の時間って護られてたの?僕達も侑斗も前に別世界に訪れて以来は一度も来てないよ」

イマジンが蔓延っているのに、この世界の時間は変に改竄されたという事はない事に良太郎は疑問を感じる。

「『青い狩人』が倒してくれてるんです」

今まで口を開かなかったというより、説明が上手く出来ないからティアナに丸投げするかたちで黙っていたスバルが口を開いた。

「青い狩人?」

「はい。野上さん達以外でイマジンを倒せる謎の戦士なんです」

「謎の戦士ってどういう事かしら?」

良太郎がその呼称を訊ね、スバルは説明するがその中で疑問が生まれたコハナが訊ねた。

「イマジンが現れたら、必ず現れて倒していく事しかわかっていないんです」

「その謎の人が今までこの世界の時間を護ってきたって事?」

「はい」

スバルの説明を良太郎は聞き、確認の際に訊ねてきたが彼女は首を縦に振った。

「青い狩人ってダイオキシンかよ?」

モモタロスは『青』というところからそれなりに因縁のある者のニックネーム?を言う。

「あのドロボウさん?それはないんじゃないの」

ウラタロスはその者の関与を否定した。

「自分の目的の為に動くやろうけど、ボランティアに近いんやで。あいつがそんな目的で動くとは思えんしなぁ」

「ドロボウだもんねぇ」

キンタロスとリュウタロスもその人物を思い出しながら、やっぱり否定した。

「もしかして幸太郎とか……」

コハナは『青』をそのまま受け止めずに、それに近い系統の色である『藍色』のカラーリングをしている仮面ライダーであり、良太郎の孫である野上幸太郎(のがみこうたろう)

ではと考えてみた。

「幸太郎がここに自分から乗り気で来るとは思えないよ。それに幸太郎はこの世界とは全く関係ないんだし」

関係上、祖父である良太郎がその意見に首を横に振った。

「「………」」

スバルとティアナは話の内容についていけておらず、沈黙するしかなかった。

「ひとつだけわかってる事があるよ。その青い狩人が僕達に味方かどうかはわからないけど、この世界の『時の運行』を乱そうとするなら……」

「やるって事だろ」

モモタロスが良太郎の言おうとしている事を続けると同時に、サムズアップしていた右手をさかさまにした。

テント内の温度が何度か下がったような感じがした。

「あの……野上さん」

スバルがおそるおそる右手を挙手した。

「ん、なに?ナカジマさん」

「えと皆さんは、なのはさん達と古い知り合いのように思えるんですけどどういった経緯で知り合ったんですか?」

スバルはもしかしたらヤバイ部分に触れてしまうのではと思いながらも、訊ねる事にした。

そもそも、彼女の一番の目的はコレなのだから。

全員が顔を見合わせてから、首を縦に振った。

『話しても問題ない』という合図なのだと思う。

(どんな経緯で知り合ったと思う?ティア)

(さぁそればっかりは聞いてみないとわからないわよ。それにしてもアンタの思い切りのよさは本当に参るわ)

魔導師間の念話はチームデンライナーに傍受される心配はないという事を知っているわけではないが緊張の糸が解れているのか、スバルとティアナは念話での交信を始めた。

「僕達が彼女達と知り合ったのはこの世界の時間でいえば十年くらい前になるんだ」

良太郎の一言にスバルとティアナは即座に首を傾げる。

「あの失礼ですけど、野上さんお歳は?」

ティアナは失礼と感じながらも、訊ねてきた。

「十九だよ」

「今が十九歳となると、九歳の時になのはさん達と知り合ったって、あれ……?」

ティアナは違和感を感じ、腕を組んで考え始めた。

 

(ティア。ティア!どうしたの。急に考え込んだりして)

スバルは急に黙って思案している相棒に対して肉声ではなく、念話の回線を開いて訊ねた。

ちなみにその仕種は良太郎達にしてみればアイコンタクトを取っているようにも思える。

(なによ。今ちょっと考えを整理してるんだから)

(野上さんとなのはさん達が知り合ったことに何か疑問があるの?)

(腑に落ちないのよ。フェイト執務官の野上さんに対しての態度はどうも私が考えてるのとは違いすぎるもの)

(違う?)

仕種ではなく、声の音量の微妙な変化で感情を出てくるのが念話での特徴だ。

(野上さんは今から十年前にフェイト執務官達と出会っているってのは本当だと思うの)

(だったら疑う必要ないじゃん)

(スバル。アンタは野上さんとフェイト執務官は同じ年齢で知り合ったって思ってるの?)

ティアナはスバルの考えを参考にしようとする。

(え、今から十年前なんだからそうなんじゃないの?ティアは違うって思ってるの?)

十九-十=九という単純な引き算だ。

(九歳の時に出会った二人が十年ぶりに会ったって感じの雰囲気じゃなかったわよ。アンタだって昨日の事なんだから憶えてるでしょ。野上さんは今のフェイト執務官の

姿に驚いてたけど、フェイト執務官は今の野上さんの姿を見ても大して驚いてなかったわ)

(フェイト執務官はクールだからじゃ……)

(馬鹿。それじゃその後のフェイト執務官の行動は矛盾しちゃうのよ。それにフェイト執務官は野上さんが仮面ライダーに変身した事にも驚いてないところからすると、

九歳の野上さんと知り合ったんじゃなくて今の野上さんと出会ってるって事じゃないかしら)

(それって野上さんは嘘をついてるって事?)

スバルは良太郎は自身の年齢を十九歳と言った事を思い出す。もしこの年齢が嘘なら彼は二十九歳という事になる。

(嘘は言ってないと思うわよ。ただ普通の方法で知り合ったとは考えにくいわね)

ティアナの推測ではお互いが九歳の時に知り合ったのではなく、何らかの方法を用いて十九歳の良太郎が九歳のフェイトと知り合ったと推測している。

そうなると、何の為にとなってしまうわけだがそこまではわからない。

「あの野上さん」

「なに?ランスターさん」

「もしよろしければでいいんですけど、私の推測を聞いていただいてよろしいでしょうか?」

ティアナは畏まりながらも、視線を良太郎に向ける。

「いいよ」

断る理由もないので、良太郎は了承した。

イマジン四体やコハナも興味があるのか黙って聞くことにしていた。

「野上さんとなのはさん達が十年前に知り合ったっていう事に嘘はないと思います。でも、フェイト執務官の野上さんに対する態度が妙に引っかかったんです」

「あ、ああ。あれね……」

公衆の面前で女の子に泣かれながら抱きつかれた事を良太郎は思い出しており、頬が赤い。

「十年ぶりに再会したのに、野上さんの姿を見てもフェイト執務官は驚かなかったって事は既にその姿をご存知だったって事になります。対して野上さんは誰なのかわから

なかった態度を取っていたとなると本当に十年近く会ってないって推測する事が出来るんです」

傍聴側は黙って聞いており、ティアナは続ける。

「そして私とスバルとリィンフォース曹長以外は野上さんが仮面ライダーである事がわかっても驚かなかったところからして、何らかの事件の中で知り合った可能性が高い

という風にも考えられるんですけど……」

そこで饒舌が詰まった。

「どうやって今の僕が九歳のフェイトちゃん達と知り合ったのがわからない、と」

良太郎が代弁してティアナは首を縦に振った。

スバルも首を縦に振るが、これはティアナに釣られての事だというのは誰の目から見てもわかる事だった。

 

(僕達が過去に関わった事件に関して知らされてないんだ……)

彼女達もいわば部外者なので、自分達が過去に海鳴で起こった二つの事件に関与している事を知らないのも無理もないことだ。

(ここで僕達がデンライナーを使って今から十年前の時間に来たって事を話すわけにはいかないからなぁ)

良太郎個人としては話してもいいのだが、ここで話してしまうと折角自分達の為に緘口令を敷いてくれたリンディ・ハラオウン達の顔を潰す事になるのでそれは避けたかった。

「ランスターさんの言っている事はほとんどが正解だよ。僕は九歳で彼女達と知り合ったんじゃなくて今のままで九歳の彼女達と知り合ったんだ」

良太郎は真相は告げないが、ティアナの推理は正解だと告げる。

「どうやって来たのかが、まだわかりません」

スバルが挙手をして訊ねてくる。

(上手くはぐらかそうとしたんだけどなぁ……)

サラリと突いてくるスバルをあながち油断できないと考えを改める良太郎を始めとするチームデンライナー。

「僕達が彼女達と知り合った方法はね。悪いけど今のままじゃ教える事は出来ないんだ」

「えと、どうしてですか?」

スバルは更に訊ねる。

 

「僕達の事を知るって事はこれからも関わっていくって事になるんだ。なにせある意味では世界の真実を知ることになるからね」

 

良太郎は穏やかだが、真剣な口調で二人に告げた。

「「………」」

良太郎から放たれる雰囲気に圧されたのか二人はそれ以上は訊ねようとはしなかった。

 

*

 

アルト・クラエッタとルキノ・リリエもまたこの機動六課の隊舎前に設置されているテントを眺めていた。

スバルとティアナが良太郎に招かれて入っていたのも彼女達は見ていた。

「中に入ってから結構経ちますよね」

「そうですよね……」

まさか捕食されているのではと想像してしまうが、悲鳴一つ上がってこないところからすると何かを話しているのだろうと推測する。

「あの、アルトさん」

「何です?ルキノさん」

ルキノがアルトに視線を向ける。

「あのテントの中に入っている人達が昨日の……」

「イマジンを倒した人達なんですよね……」

ルキノの質問にアルトは答えるが、自身もにわかには信じられないようだ。

このように捉えているのは何もこの二人だけではない。

目の前というよりは映像で映し出されたものを見ても、散々苦しめられた存在を倒す存在を受け入れるのには時間がかかるものだ。

「何だ。オメェ等もやっぱり来てたのかよ」

背後から男性の声がしたので二人は振り向く。

ヴァイス・グランセニックだ。

「ヴァイス陸曹!」

「もしかして……」

アルトが名を呼び、ルキノは来訪目的を言おうとする。

「ここに来た目的はオメェ等と一緒。好奇心だよ。何せシグナム姐さんを倒したってんだからな。生で見てみたいじゃねぇか」

「「ええっ!?」」

ヴァイスの発言に、アルトとルキノは目を大きく開いて驚く。

「私とて無敵ではない。勝つ事もあれば負ける事もあるさ」

更に後からロングコートを羽織って、陸士隊服を着用した二人の子供を引率しているシグナムが歩いてきた。

連れられている子供---エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエは大して驚いている様子はなかった。

「お前達は驚かないな」

エリオとキャロの反応を見てシグナムはそのようにこぼす。

「え、あの……フェイトさんから……」

「聞いたことがありますから……」

フェイトと関わっている以上、その経由で電王やゼロノスのことを聞かされているのはなんら不思議な事ではない。

「出てきましたぜ」

テントをじっと凝視していたヴァイスが口を開いた。

テントからスバルとティアナが出てきた。

「話は終わったみてぇだな」

この人だかりがなくなるのはこれから三十分後の事になる。

 

*

 

「あの、すみません。野上良太郎さんでしょうか?」

寮で部屋のセッティングをしていたアイナがテントの外で身体を動かしている良太郎達に声をかけた。

「はい。そうですけど貴女は?」

「私、機動六課の寮母を担当する事になりましたアイナ・トライトンと申します。八神部隊長より部屋のセッティングをするように仰せつかっており、準備が整いましたので

ご案内しますがよろしいでしょうか?」

「あ、そうなんすか。ありがとうございます。みんな!部屋の準備が出来たって」

「うーい!」

モモタロスが代表して、テントから良太郎を除く全員が出てきた。

流石にイマジンがいるとは思わなかったので、出てきたときアイナは内心ビクビクしていた。

「テントを片付けますんで、ちょっとだけ待ってていただいてもよろしいですか?」

「え、ええ。まあ。急ぐ事でもありませんので……」

良太郎の申し出をアイナは快く引き受けた。

それから十分後にテントの片づけが終わり、チームデンライナーは今夜から拠点となる場所へと案内された。

 

*

 

「コレがヴィータが言ってたAゼロノスさんからのプレゼントやな……」

八神はやての私室にある端末には一通のメールが受信されていた。

差出人は『AZ』となっている。

「文面そのものに怪しいものはなし、と。添付されてるモノが怪しいな」

感想をもらしながらも、はやては操作していき添付されているデータを開く。

「コレって……。凄い……。私が作りたかったモノや……」

 

『この添付したものが貴女方の助けになる事を信じて送ります。生かすも殺すも貴女次第です。AZ』

 

「あ、マリーさん。はやてです。実はですね。ぜひ見てもらいたいものがあるんですけど……」

旧知の知り合いであるマリエル・アテンザに連絡を取る事にした。

はやてが驚愕しマリエルに即座に連絡を取ったものとは……。

 

ゼロノスカードの模造品、ダミーゼロノスカードの設計図だった。

 




次回予告

第十話 「機動六課 始まりの日」
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