オリジナル短編集   作:星沢山

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第二話始まるよー
短編集なのに二話しかないとか悲しいよー


機械の少年

暇だ。

 

そう思ってた時期もあった。

 

なんか一度でいいから生死をかけたギャンブルとかやってみたいとか言ってみた。

 

結論から言うと、俺は夢を見てたんだ。

 

 

 

<<朝>>

 

 

 

その日は、とても普通に始まった。

 

中学に入ってからもう二年。流石に親も起こしてくれない。起きた時刻は朝の7:55。いつもこんな感じだ。

 

「行って来まーす!」

 

漫画の世界にしかないと思うかもしれないけど、俺の場合あるんだよ、パンをくわえながら登校するってのは。

現在時刻8:02。学校に着くまで全力疾走だと5分ほど。最終的に俺が着くのは2時ごろ。

 

(間に合う!)

 

大通りをダッシュで走りながら俺はそんなことを考えてた。

 

しかし、学校の入り口までたどり着くと、異変に気づいた。黒ずくめの男が数名、入り口を厳重に守っていたんだ。俺が入り口の前でオロオロしていることに気づいたのか、入り口が少しずれ、俺が入る隙間を作ってくれた。

 

恐怖を抑えながら通ると、階段を猛ダッシュで上がった。オロオロしている間に10分ほど過ぎてしまい、このままだと遅刻説教フルコースが待っている。

 

もちろん、間に合うわけがないんだ。

 

「コラァ!龍二!何で毎日ギリギリに来るんだ!今日は遅刻だぞ!そこに立ってろ!」

 

「先生、でも入り口に黒服の…」

 

事情を話すと、先生が異常に衰弱するように怒りが消えて行くのが見えた。

 

「あ、ああ、そうか。座ってなさい」

 

俺を立たせるのも忘れて朝のホームルームを始めた、

 

他の生徒も異常に気づいていたのか、朝のホームルーム時間もざわめきが絶えず、授業にもならなかった。そして朝のホームルームがあと1分ほどで終わる時間になった頃、スピーカーから音声が流れた。

 

『本日は特別日程に急遽変更となりました。特別なものは必要ないので、これより各個検査を行います。検査が終わった順に帰ってよろしい。間違っても部屋から出ないように。トイレなどのやむを得ない事情がある場合、教員に伝え同性の教員に同行してもらうこと』

 

いきなりのアナウンスに、俺はどう反応すればいいのかわからなかった。

 

授業がない。これはいいとしよう。

 

(各個検査ァ!?何をするんだ?この学校に未知のウイルスでも侵入したのかぁ!?)

 

変に思いながら他のみんなの反応を見ると、それぞれ同じような表情だった。少し嬉しそうな奴、逆に怖がる奴。色々だ。

 

ざっと友達や知り合いを見渡す。まずは海斗、俺の親友。席は少し離れたところにいるが、授業がなくなったことを嬉しそうにこっちに手を振った。

 

次は美幸…俺が少し気になってる女子。正直俺から見ると手も届かない存在だが、まあ夢として見るぐらいならいいだろう。

 

先生の指示で検査のために机を動かせと言われ、全員で作業を始める。

 

「なんで体育館とかで検査をやっちゃいけないんだろうな」

 

「さあ」

 

よそ見しながら机を動かしていると、右腕が切れるような感触が来た。

 

「痛ッ…」

 

その痛みはすぐに消え、痛みの根源を見ると、間違えて誰かにぶつけたようだ。

 

「ごめん」

 

謝ったのは同じクラスの賢治。机を揃える時に間違ってぶつかってしまったらしい。

 

こっちも謝って黙々と作業を続ける。

 

この作業を五分ほどで終わらせて、検査が来るのを待つ。待ってる時間は大体…30分ぐらいかな?遊んで待ってたのがほとんどだ。

 

「…?」

 

俺はというと、さっきぶつけた右腕がいまいち調子が戻らず、いまだに動きがかなり鈍っているのがおかしくて、あまり遊ぶ気になれなかった。

 

検査の人が来ると、その人たちは案外普通の医者に似ていると知った。白衣に眼鏡。何やら顔を相当真剣にしているのが気になったが、彼らが取り出したのは小さい針だった。

 

「血のサンプルを取るので、来てください」

 

一人、二人、三人。最初は怖そうにしていたのが、終わった時は安心そうにしていた。二番目に検査を終えた海斗に聞くと、

 

「静電気みたい」

 

と答えた。

 

俺のすぐ前だった美幸の番が終わり、ついに俺の番が来た。恐る恐る右腕を出すと、医者は俺に向かって笑った。

 

「大丈夫大丈夫。死にはしないよ」

 

チク

 

なぜか、そこに神経が走っていないように、痛みすら感じなかった。

 

「?」

 

どうやら、浅過ぎて血が出なかったようだ。

 

「ごめんね、もう一回やるから」

 

チクッ

 

「ー?」

 

それでも血はでないし、俺は痛みを感じない。

 

「まさか…いや…」

 

その医者は一本のメスを取り出すと、軽く刃を押し当てた。

 

痛みはないし、血もでない。

 

その医者は呼吸が止まり、凍りついた。

 

「あのー」

 

俺がそう言うと医者は気が戻ったのか、廊下に向かって叫んだ。

 

「ボーグだぁ!!」

 

廊下を駆ける音が一斉に聞こえ、医者はクラス全員に一斉避難を叫んだ。医者も逃げ、部屋には俺一人残された。

 

そこに大量の武装兵が流れ込んで来るのに時間はかからなかった。

 

『パパァン!!』

 

警告もなしにマシンガンが放たれ、俺の顔をギリギリ外した。

 

「うわあああ!」

 

驚きの余り教室から駆け出し、廊下を突っ走る。廊下にも武装兵がいたがそれを抜け、階段を走って駆け下りる。

 

「何で俺を撃とうとするんだ!」

 

いくら叫んでも向こうは聞く耳を持たない。

 

『バァンバァン!!』

 

後ろから聞こえて来る銃声から必死で逃げようとするが、ついに銃弾の一つが足にあたり、血が吹き出た。

 

「うわっ!」

 

余りの痛みに倒れ伏し、武装兵が俺の近くまで来た。

 

「よし、これでー」

 

「待て」

 

兵の一人が俺の脳天に銃を向けたが、隊長と思われる兵がそれを制止した。

 

「何でですか隊長!こいつを生かしておけばまた被害が…」

 

「馬鹿め!ボーグだったら血は出ない!」

 

その兵士ははっと気づいたように周りを見渡し、隊長に向かって叫んだ。

 

「では本物は一体どこに!」

 

「そんなこと知ったことじゃ」

 

死人に口無し。爆風で吹き飛ばされたその兵士は、遺言も言えずに消し飛んだ。

 

「囮の役目ありがと。んじゃ殺りますか」

 

そう言いながら廊下を歩いて来たのは賢治。それも右腕がおかしかった。本来手があるはずの部分は機械に代わり、そこから砲口が顔を出していた。

 

「よっと」

 

ミサイルがさらに一つ打ち出され、もう一人の兵士が吹き飛ぶ。

 

「奴だ!撃て!」

 

廊下の反対側から数十人の兵士が突然現れると、いきなり賢治に向かって撃ち始めた。

 

『ガン、ガァン』

 

何発撃ってもそれは賢治の体に弾き返され、意味がないように感じられた。

 

「ほいっと」

 

左腕の皮膚が分解し再び再構築、ガトリング砲の形になると、銃弾の嵐が兵士たちを襲った。

 

「ぐわっ」

 

しかし、一人倒すとまた一人、新手が各方向から迫って来る。それに対して賢治、いや今や未知の化け物は、多様な攻撃法でそれを翻弄した。

 

剣、ハンマー、銃、バズーカ、槍…体が機械のように変形し、分解と再構築を繰り返しては兵士をなぎ倒す。それが十分ほど続くと流石に飽きたのか。

 

「いっそのことこうするか」

 

そう言った瞬間に、賢治の体全体が全長二十メートルほどの蛇に変わると、その硬さと勢いで校舎に穴を開け時始めた。

 

上下左右構わずに穴を開けるものだから、校舎はついに崩れ落ち始めた。俺も、そしてもちろん、兵士たちも、全員瓦礫の下に埋もれた。

 

なぜ俺が生きているのか疑問に思い上を見ると、瓦礫は全て鉄の虎の形をした化け物によって叩き潰されていた。

 

「無実の人を惨殺するのは趣味じゃないから」

 

そう言うと虎は人間の形になり、迫って来る新手の兵士と戦い始めた。

 

「おい、おい、そこの君!」

 

後ろで叫んで来るのは誰かと思い見ると、それは俺を検査した医者がいた。

 

「この瓦礫をどけるのを手伝ってくれ!」

 

見捨てるわけにも行かず、コンクリートの瓦礫を落ちていた鉄の棒を使い持ち上げる。

 

「…ふう、助かったよ。それより君、僕が誤診した男の子だろ?傷口を少し見せてくれないか?」

 

メスで切られた腕の傷を見せると、その医者はじっとその傷を睨んだ。

 

「…これはすごい。見事にオペが施されている。血管の一部を止めて血がなくなるようにして、その一部だけ完全麻酔で切られた痛みがなくなるようになっている…それもこのオペは高速で、1秒以内で施されたものだ。君、今日何か、この腕に何かあったかい?」

 

聞かれると、俺は暴走する賢治の方を見てしまった。

 

「あいつと…ぶつけました」

 

「その時にやられたかな。見事なダミーだ」

 

安全を確認した俺が最初に考えたのは、湧き出る疑問だった。

 

「ボーグって何なんですか?それよりも賢治はどうなってるんですか!なんでこうなって…」

 

「落ち着いてくれ。こうなったら君にも説明しよう」

 

そう言うと医者は語り始めた。この暴走の裏に隠された真実を。

 

「あれは人間兵器だ。ロボット、サイボーグの類だな。本来はただの小さい、微生物サイズのロボットが研究所から突如逃げ出し、成長材料を探しながら各地を逃げ回っていたんだ。五年間も逃げ回った結果が今の奴…」

 

医者は思わず唇を噛んだ。

 

「奴は戦闘法を学び、執拗に探す我々を敵と見なした。逃げ回るだけなら良かったが、武器をつけ戦闘力を作り出した奴は、とうとう防衛だけではなく先制攻撃も行って来た」

 

「それが…兵士の言っていた被害のことですか」

 

「ああ…知っているならちょうどいい」

 

「止める方法はないんですか」

 

「もうない。成長しすぎた。あと一年あればできたかもしれないが、今や彼は核爆弾すら耐えられる。私も開発に参加したから知っている。このままだと奴は…」

 

医者は、空を飛ぶヘリコプターすらねじ伏せる兵器を見てため息をついた。

 

「全てを駆逐する人類滅亡の要になるかもしれない」




微妙なエンディング。機械の少年は多分もう一度でます。
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