1
(まだねばるか)
学へのラッシュを続けながら、長田は目線を下に落とす。
見下ろすと、学はパンチの嵐をひたすら避けたり、腕でガードしたりして凌いでいる。
防戦一方だ。
その学の口元が一瞬緩んだのを、攻めている長田は見逃さなかった。
(何か狙ってる!!)
そう感じた長田は、自身の勘を信じて一旦距離を取ることにする。
(見た目とは違って、慎重何だな)
突如猛攻撃を中止して、バックステップした長田を学はガードした腕の隙間から、注意深く見る。
実は長田の嫌な予感は的中していた。
学は攻撃を受けながらも、能力分析を続けていたのだ。
そして一つの答えを導き出していた。
(詳しい能力まではわからねぇ……けど奴が能力を使った時には必ず声を出してる)
学はガードを下ろし、自信のこもった目で長田を見る。
かっと目を見開いた学の鋭い眼差しを見た長田が、無意識に一歩後ろに下がった。
「行くぞ!!」
学は長田が後ろに一歩下がるのと同時に、大声を上げながら突っ込んでいく。
それはまるで、勇猛なサイが突進するが如く力強く、速い。
(何だ? ただ突っ込んでくるだけか)
迫る学を見て長田は拍子抜けしていた。
確かに速く、力強い突進だ。
だが一直線に駆け抜けてくるだけの単純な攻撃など、見切るのは容易い。
「杞憂だったか」
狙いをつけながら、長田が大きく息を吸う。
2
シャウト [レベル3]
それが長田の能力名。
その力は、発声した声の物質化。
自分が物質化した声は、他人には見えない。
物質化した声の硬度は、豆腐から鋼鉄までで、長田の意志で自由に変える事が出来る。
出力は大した事がないが、それを補う応用力がある。
「すぅぅぅー 」
大きな深呼吸で溜めた空気を大声にして解き放とうとする。
「!?」
が出来なかった。
何故なら目の前で音もなく学が消えたのだ。
土ぼこりを巻き上げるほどの勢いで迫っていた、学が一瞬で。
慌てて首を左右に動かし長田は、学を探すが見当たらない。
「奴はどこ……ぐはっ!!」
首を振っていた長田が、いきなり背後から激痛を感じ呻く。
「はぁはぁまさか、昼に能力を使わされるとはな」
全力疾走をした後のように、息を荒げた学が背後から左手で、長田の首を掴み握りしめ、そのまま持ち上げる。
「うぐぐっ……」
首を締められた長田は、潰れた声しか出せない。
「やっぱ声を使う能力か」
声を出せなくなって、力が使えない長田を横目で見ながら、満足げに学は笑う。
自分の推理が当たっていたことに喜ぶ。
痛い思いをした甲斐があったというものだ。
「俺の勝ちだ」
学は勝利宣言をすると、首を握り締めてる、長田を地面めがけて顔面から叩きつけたのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。