とある野望の凶刃(凍結)   作:翔馬

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夜分遅いですが次話投稿します。


惨劇(3)

 

 

「お前! 帰ったんじゃなかったのか? 」

 

クイクイと自分の服の袖をいまだに引っ張る恋 人を怪訝な顔で見る。

身長差が20センチ以上あるので当然見下ろす形にな る。

 

「もう〜そんなの俊ちゃんが心配だからに決 まってるじゃないの」

 

さおりはそう言いながら、クイクイ引っ張って るのを更に強くグイグイに変えて引っ張りながら言 う。

 

どうやら彼氏に風紀委員が近づいて来ているの に気づき慌てて心配になって引き返して来たよ うだ。

そんな幼い恋人の いじらしさに思わず感動のあまり涙が出そうになるが、威厳を守るために必死に耐える。

全く俊一には勿体ないくらいの恋人だ。

 

「そいつはありがたくて涙が出ちまいそうだ ぜ。

でもよ昔はいざ知らず、今は風紀委員に睨まれる ような事は してないから大丈夫だよ」

 

俊一は優しく微笑むとゆっくり引っ張り続ける さおりの手を外すと、

右手をさおりの頭に乗せ てその頭を撫でてやる。

 

「それによ……早くしねぇと間に合うはずの門限に間に合わなくなるぞ」

 

俊一はそう言いながら左腕に付けている時計で、時 間を見せてやる。

 

それを見たさおりの顔が一瞬で真っ青になる。

 

俊一の時計の針は午後19時55分を指してい た

 

「うそ!後5分しかないじゃない」

 

さおりは袖から手をぱっと離すと、慌てて寮の ある方にクルッとターンする。

 

「お取り込み中のところすみません……風紀委員ですがちょっといいですか?」

 

(ん?)

 

背後から呼びかけられた俊一は、怪訝に思 いながらも振りかえる。

 

そこにはさっき遠くで見えた

夜回り中だった風紀委員の姿がある。

どうやらラブコメをしている間に接近されていたらしい。

 

(なんなんだよ。

俺が何かしたってのかよ ……い や?不純異性交遊してるか……いやいや!そんな事 判るわけが、でも精神感応 (テレパス)の能力 者だったら判るか)

 

俊一は身に覚えは、あまりなかったが夜間という事で焦ってしまう。

 

「夜分に失礼します実は一つお聞 きしたい事がありまして」

 

俊一が一人考えていると 風紀委員が

次の話をする。

 

「……えっ!? 聞きたい事すっかそれって職質っ てやつ」

 

俊一は風紀委員に 少し遅れて答えを返すと、次にその夜回り風紀委員を観察する。

 

今は真面目な野球少年だが、かつては

スキルアウトとして悪さをしていた。

かつあげ、万引き、ケンカなどは日常茶飯事だった。

そのため警備員や風紀委員などは今でもつい、警戒してしまう。

特に風紀委員はタダ働きと言うこともあり、

やる気がないのならまだましで立場を利用し弱味を握って、金銭等を要求するとか言うタイプもいるのだ。

 

(夜回りとかするような、仕事熱心な風紀委員がそんな悪党とは思わないけど……風紀委員が夜回りなんて珍しいからな)

 

そう思った俊一は改めて夜回り風紀委員を見る。

身長は自分より少し低い175ぐらいか

坊主頭の自分よりは少し長めの左右を短く刈り上げた頭、ピアスブレスレットなどの装飾品は着けておらず、どこの学校かわからないが学ランの制服を着て、左手に木刀をだらんと垂らして持っている。

何時でも使えるようにだろう。

用心深い事だ。

だが、俊一が気になったのは木刀でもなければ、制服でもなかった。

風紀委員の眼

その眼がきになった。

(こいつ……やばいな)

 

一見平凡そうな外見に覇気のない眼

ギラギラもしてなければ、氷のように冷たくもない。

だがその瞳の奥に暗い闇が見えた。

その暗い闇をかつて俊一は見た事があった。

暗部

それは学園都市内で誘拐や暗殺破壊工作などの、非合法な事を請け負う闇の組織。

俊一はかつて中学で悪さをやっていたとき、その闇の組織の一員ともめた事があるのだ。

その闇の住人たちも瞳の奥に闇を宿していたのだ。

今目の前にいる夜回り風紀委員と同じ闇を。

(あのときの恐怖は忘れたくても忘れられねぇ。

白い翼を生やした茶髪の兄ちゃんが、

わずか数秒で、俺たち7人やられちまったんだよな。

相手に殺す気がなかったから、助かったけどよ)

 

過去の恐怖体験を思いだし、俊一は体をブルッと震わせる。

 

(全くこんなヤバそうな奴を風紀委員何かにしてんじゃねぇよ。

まぁ猫被ってる見てぇだから、わからないのかもしれないけどな)

 

俊一は自分の勘を信じ、目の前の風紀委員に対し更なる警戒をする。

一歩後ろにさがり、ポケットの中に入れている、タクティカルペンを取りだし左手に握りしめる。

 

突然後ろに下がった俊一を、怪訝そうな表情で見た後、夜回り風紀委員は笑みを浮かべる。

 

「そんなに警戒しないでくださいよ。

何簡単な質問に応えて貰うだけですから」

 

「あの〜こんな夜遅くに職質って

いくら風紀委員って言っても、ちょっと

横暴じゃないですか?

俊ちゃん中学の時は悪だったけど、

 

今は真面目なんです」

 

 

俊一が風紀委員と話していると、

か細いが明らかに、風紀委員を非難するような声が会話に割り込んできた。

 

その声を聞いた瞬間、俊一は盛大な溜め息を一つ吐いた。

 

「はぁ〜お前寮に戻ったんじゃなかったのかよ」

 

会話に割り込んできた、声の正体は

さっき寮に帰ったはずの恋人だった。

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。
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