とある野望の凶刃(凍結)   作:翔馬

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次話投稿します。今回は長いです(*_*)


惨劇(4)

 

「さおり!!何やってんだ。

さっき言っただろう 。

早くしないと……はぁ。

もういい手遅れだ」

 

俊一がため息を吐いて時計をさおりに見えるよ うに向ける。

時刻は午後8時を指している。

門限破り成立である。

 

時計を見た瞬間さおりは、ガクッと両膝を地面につけ、心ここに在らずとばかりに放心する。

その瞳は虚ろで何も写っていない。

 

 

(まったく心配性な奴だ。

全力ダッシュしたら間 に合っていたかも知れないのによ )

 

俊一は、現実逃避して呆けている。

恋人を慰めるために近寄っていき、恋人の肩に手を置く。

 

「あ〜まぁ鬼の寮監だって人の子だ。

土下座でもサンドバッグにでもなって弁明してやるから、元気だせ」

 

俊一はさおりに慰めの言葉をかける。

 

「俊ちゃ〜ん」

 

地獄に仏とばかりに涙眼で、感動して恋人にしがみつき顔を埋める。

 

よしよしとばかりに、その頭を俊一は撫でてやる。

 

 

「……あの〜もう宜しいでしょうか?

 

申し訳なさそうに、丁寧な口調が俊一に話しかけてきた。

 

(やば、すっかり忘れてたぜ、っていうかこいつ気配消してた?)

 

恋人のまるでこの世の終わりみたいな表情を見 せられた俊一は、風紀委員の存在を忘 れてしまっていた。

 

俊一は慌てて振り返る。

 

「すまねぇ。

で、 エリート風紀委員さんが俺みたいな無能力者に 何の用がおありで、一般人として、協力することに抵抗はないが、なるべく早くしてくれないか?

弁明するって急用ができたんでね」

 

俊一はそこまで言うと、しがみついたままの恋人に

「ちょっと待ってろ」と言うと、その気は無かったが空気扱いしてしまった、風紀委員に寄っていく。

 

だが警戒は忘れない。

暗部の構成員と同じような雰囲気をもつ、この風紀委員はやばい。

 

だから護身用のタクティカルペンを、右手に強く握ってもつ。

ちなみにタクティカルペンとは、外の世界の老舗銃器メーカーが製造した。

護身用に使えるボールペンの事で

俊一が持つのは、警備員とかに武器や装備を卸していたスタディ社製のもので、外の世界の物を参考に独自改良したものだ。

ちなみにこのスタディ社は何ヵ月か前に倒産しており、もう市場には出てこない、そこそこ貴重な一品である。

 

 

警戒心満載の俊一の様子に苦笑いした

風紀委員は、警戒心を解すように、優しい声で、ゆっくりとはなしだす。

 

「暑いのですか?

額に汗が浮いてますよ」

風紀委員は口元でにいっと笑みをうかべ、指で自身の額を二回軽く叩く。

「ッ!」

 

俊一は風紀委員に指摘されて、額の汗を手で拭うと、背後にジャンプして、

風紀委員から離れる。

 

さっき拭ったのに、再び汗が冷や汗が、彼の頬を伝う。

 

(目が笑ってねぇ。やっぱこいつ危ない奴だ。

それにさっきの笑み、まるで猛獣か何かに、睨まれたみたいだった)

 

俊一は頬を伝った汗を手の甲で、拭き取ると、腰を屈め、右手に握っていた

タクティカルペンの先を、風紀委員の胸の位置に合わせ、体重を後ろの足にかける。

いつでもバックステップできるようにだ。

俊一は風紀委員の目の奥に見た闇

気配を消して近づく、隠行の腕前

そして猛獣のような気配から、目の前の風紀委員を敵と判断した。

最悪風紀委員の偽者の可能性も考える。

 

「……失礼ですが、何か風紀委員に恨みでもあるのですか?

それとも犯罪者とかで、怯えているのですか?

ちょっと聞きたい事があるだけなんですがね。

しかも一言だけなんですけれど……」

そう言いながら、風紀委員は口元に笑みを浮かべると、俊一との距離を詰めるために、一歩近づく。

コツ

 

(!!っ)

 

俊一が一歩後ろに跳ぶ。

 

風紀委員がまた一歩近づく

 

(ッ!!)

 

 

さっきと同じくまた後ろに跳ぶ

 

それから二人はまるで鬼ごっこのように、それから同じことを5回繰り返した。

 

 

「俊ちゃん!

さっきから何やってるの?

風紀委員をからかっちゃダメ!

また捕まえられちゃうよ」

 

待ってろと言われたが、恋人の奇怪な行動にたまらず、心配してさおりは

俊一の手を掴んで、揺する。

 

 

「さおり!

離れろ。

それから早く寮に戻れ、俺も後から寮に行くから」

 

俊一はそれだけ早口で言うと、さおりの手を掴んで、引き剥がそうとする。

だがさおりも離された手をと逆の手で、俊一の服を掴んで離さない。

 

「待って、俊ちゃんどうしたの

何か変だよ?

あの風紀委員さん、何かあるの?

 

手を離されては、また掴みを繰返しながら、さおりが疑問を問う。

「 はぁ……」

 

俊一は恋人と手の掴みあいをやめると、ため息をつき、さおりの頭に片手を置く。

 

「わかったよ。

いいかよく聞け、俺の勘だがあの風紀委員はやばい。

下手したら風紀委員でない可能性もある」

 

俊一はさおりの頭を撫でながら、口元を引き締めた、真剣な表情で恋人に言う。

 

「やばい? ……偽者かも知れないって、俊ちゃん何言ってるの?」

 

「同感です」

 

さおりと俊一の会話にもう1つの声が割り込んでくる。

 

声は偽者とかヤバイとかさんざん言われた夜回り風紀委員のものだ。

 

「デートの邪魔をしたのは、確かに悪いとは思いますが……デートを邪魔されたからって、学園都市の治安維持のために日夜働く風紀委員をヤバイとか偽者じゃないかとか、まるで危険人物のような言い方。

ちょっと酷くないですか?

まぁ職務中に悪口言われたから、公務執行妨害で捕まえるほど心は狭くないですがね」

風紀委員は肩をすくめて、やれやれと

首をふる。

 

「そうかい? そいつは悪かったな

でもあんたからは、暗部の構成員と同じ、匂いが雰囲気がするんだよ

それにさっき気配消して近づいただろう?

あんた本当に風紀委員か?」

 

俊一はさおりの頭から手を離すと、

再びタクティカルペンを風紀委員めがけて突きつける。

ただし今度は腹ではなく、喉の位置にタクティカルペンをあわす。

 

「やれやれ北野君じゃあるまいし、

そんなに怖い顔はしてないとおもうのですがね?

風紀委員は信用できませんか?」

 

「風紀委員は信用できるが、あんたが風紀委員だとは、信じられないね」

 

俊一はさおりを後ろに下がらせると

腰を屈めいつでも飛びかかれるようにする。

 

そんな俊一の様子を風紀委員は冷めた目で見る。

 

「困った人だ。

ではどうすれば私を風紀委員だと信じてくれますか?」

 

「風紀委員には腕章があるから、あまり使わないが、外の世界の警察手帳みたいな、風紀委員認可証があるはずだ そいつを見せてくれ。

確か警備員曰く偽造は不可能らしいからな」

 

にやりと笑みを出しながら、俊一は言う。

 

「用心深いと言うか、疑い深いね。

まぁいい」

 

 

風紀委員はそう言うと、ポケットからカード入れを出すと、そこから1枚

のシルバー色のカードを抜き取り、

そのカードを俊一に掲げて見せる。

 

「風紀委員第7学区統轄支部所属

一級風紀委員の村上冬牙(むらかみとうが)と言います。

これでいいですか?」

 

夜回り風紀委員こと村上冬牙は、そう言う。

 

 

村上の風紀委員認可証をよく見るため、 俊一は村上に近づいていく、しかし一歩、一歩 ゆっくりと警戒しながら、慎重に近づく。

 

「くっくっくっく」

 

慎重に近づいてくる、俊一を見ていた

村上は突如笑い出して、顔を俯ける。

 

「何がおかしい!」

 

村上の態度を見た、俊一が歩みを止めて、声をあらげる

 

すると今度は、首を上下に、振りだす。

 

 

「あぁもういい!、もう……いい。

虫けらの分際で妙に用心深いなお前!

まさか仕込みに気づいたと思ったんだが……付き合うのが面倒になってきた。

名前も名乗ったから冥土の土産も出来たし、いいだろう。

死ねぇ!!」

 

そう最後の一言を言い終わると、村上は顔を

上げると同時に左手を木刀に添え 俊一めがけて、飛びかかる。

早い。

まるで茂みから狼でも飛びかかってきたようだ。

 

村上はその勢いのまま、木刀の柄を掴んで、空へと突き上げながら、腰をひねり、刀身を抜く。

 

カッと木刀が月光を跳ねて、光る。

木刀が光る訳がない、俊一は村上の木刀が仕込み杖だったことに気づく。

 

(あんなものを、普通、風紀委員が持ってるはずがねぇ。

やっぱこいつ暗部か?)

 

暗部の構成員なら、確実に自分たちを殺す気だ。

 

俊一は握っていた、タクティカルペンを村上めがけて、投げつける。

 

 

(さおりを逃がさないと)

 

俊一は未だ、ただぼう〜っと、風紀委員から襲撃者に豹変した、村上を見ている。

俊一はそんなさおりを、逃がそうと、

向きを返ると、さおりのいるところに走りだそうとする。

だがその瞬間、のし掛かってくるような、圧迫感が、俊一の足を止める。

(体が動かない)

 

直後背後から衝撃を受けて、腹に

伝わる。

「がはっ」

その衝撃にたまらず、俊一は口から吐血する。

 

吐血しながら、俊一が腹を見下ろすと、そこから銀色の切っ先が突き出ている。

 

切っ先を見た俊一は、ゆっくりと、

首を背後に、からくり人形のように回す。

「スタディ社製のタクティカルペンか? 2つ発売された、古い方のモデルだな。

確か銃弾を弾き落とせるってうたい文句で販売してたっけ。

有冨の頭でっかちが、こういう良い品物作れるんだから、 テロとか考えないで儲ける事に専念すらよかったのによ

 

背後で狂気を宿した

村上が背中を刀で突き刺しながら、俊一が投げたはずのタクティカルペンを手のひらで弄びながら、笑っていた。

 

 




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