何とか間に合いました。
それではどうぞ。
惨劇(9)
(どうにか勝てたな)
馬乗りになってる自分の下で苦しげに呻き声を上げる冬牙を見下ろす、俊一の心に安堵する気持ちが
広がっていく。
どうやらまだ警備員は来てないようだが、まぁもうすぐ敵を倒すことが出来るので俊一が慌てる事はない。
夜の公園の闇に俊一が冬牙を殴る音だけが、ゴツゴツと不気味に響く。
ゴッゴッ
(こいつを倒してもまだ来てないのなら仕方ない。また通報するか)
殴りながら、俊一の心の中の安堵はゆとり、余裕へと変わっていく。
ほんの数分前までは腕でガードしたり、あわよくばと、殴ってくる腕を掴もうとしてきて油断ならなかった冬牙だったが、俊一が肘打ちを食らわせ更にパンチ力アップのため、そこら辺の石を拾って、握りこんだパンチを顔面、胸、耳と打ち分けて殴ると
防御が間に合わなくなり、やがて防御すらも諦めたので俊一の勝利は確定した。
だから俊一は戦闘の最中であるにも関わらず、色んな事を考えられた。
そんな彼が戦闘の次に考えたのは、恋人の事
( あいつまだいるのか?)
俊一は抵抗はやめたが、未だ意識のある村上をさおりの事を考えていても
殴り続ける。
ガッガッと鈍い音と鮮血が飛び散り、地面に赤い斑点が付着する。
その時!
突如振り上げた俊一の右腕が動かなくなる。
「!?」
振り上げた状態で止まった動かない自分の右腕を、俊一はとっさにチラッと見た。
そこには
嫌らしく、残酷な笑みを浮かべた
坊主頭の男、おおごめ流雲が彼の右腕を掴んでいた。
「全く……素人に一応殺しのプロが、マウント取られてんじゃねぇよ!!」
流雲は俊一の腕を掴むと、力任せにその腕ごと俊一を持ち上げる。
片腕一本で宙に持ち上げられた俊一になすすべはない。
腕一本で宙ぶらりんに、された俊一を
宙ぶらりんにした坊主頭の男(俊一は流雲の名を知らない)が睨む。
その目には嘲りが浮かんでいる。
流雲は笑みを浮かべながら、語りだす。
「そういや警備員に通報してたんだったな、ちゃちゃっと終わらして冬牙の
馬鹿を回収してとんずらしねぇとなっ」
流雲がそう言い終わった瞬間、無造作に後ろに放り投げる。
人、一人をそれも大人とそれほど変わらない高校生の少年を片手一本でほり投げる。
凄まじいまでの、りょ力だ。
流雲は縦回転で、風車の羽のように回転して飛んでいく俊一をちらっと
つまらないモノでも見るように一瞥した後、仰向けに倒れてる、冬牙を見下ろしだした。
「よう。男に馬乗りにされる趣味があるとは知らなかったぜ」
流雲はぶっきらぼうにそう言うと、ゲラゲラと品のない笑い声を上げだした。
(嘘だろ)
俊一は投げられた瞬間は突然空と地面が逆転して混乱したが、つまらないモノを見るような、流雲の姿が逆さに見えて、自分が投げられたのを知った。
現在俊一は強風に飛ばされる小枝ように、くるくると宙を廻ってる。
このままだと地面に叩きつけられるだろう。
だが勢いが強すぎるので、俊一は足から着地するのは無理だと悟る。
(だったらせめて)
あまり考えている時間はない。
俊一は両腕で頭を抱えると、体を丸めた。
直後地面に俊一の体が 背中からぶち当たる。
トランポリンで跳んだように
高くバウンドした俊一の体は次は頭が
叩きつけられそうになるが、それは腕で頭を抱えていたので、頭部への致命傷は防げた。その後数回バウンドした
後俊一は、地面に転がった。
「痛ぇ体中が痛ぇ」
俊一は痛みに耐えながらも、立ち上がった。
(5メートル程は飛ばされたのか)
俊一は向こうの方に見える、流雲の後ろ姿の見え方から、飛ばされた距離を測る。
(片手一本ってどんな馬鹿力だよ)
俊一は痛みを堪えながら、1歩、1歩刻むように歩きながら、流雲を目指す。
「警備員の奴ら、まさかめんどくさがって通報無視してんのか?」
かつてスキルアウトの不良だった俊一は、警備員や風紀委員のものたちが
皆が正義感の熱い者たちばかりで、
構成されていないのを、知っていた。
「だけど、いくら腐ってるっても
通報無視するほど腐っちゃいないと
思うが」
そんな事を考えている俊一の視界に
外灯が見える。
よく目を凝らして見ると、そこにうつ伏せに倒れてる人が見える。
その人の下の地面は赤いじゅうたんを
ひいているように見える。
俊一はそのうつ伏せに倒れている、
人をよく見ようとゆっくりと近づいていく。
嫌な予感がする。
俊一はその倒れている人に見覚えがあった。
大きさからして大人ではない。
というかその人物が着ている服は
「常盤台中学の制服って……まさか」
俊一は早く近づいて、人物を確認したいが満身創痍の体は言うことを効かない。
よろめき倒れてしまいそうに
なるが何とか踏ん張って、ゆっくりと倒れている人物に近づく。
それが自分の知っている少女でないことを祈りながら。
しかし
その願いは無情にも叶わなかった。
数秒後更に距離を縮めた、俊一はその
倒れている人物が、自分の従姉妹で恋人でもある少女の死体だと確信した。
俊一は彼女の死体を見た後、虚ろな瞳で地面に両膝を着けた。
「さおりが死んだ……あの坊主が殺ったのかぁ!!」
俊一は憎しみの込もった瞳で、大粒の涙を溢す。
俊一の握り締めた拳から、血が滴り落ちる。
「坊主と言われても俺は、お経も唱えられないけどな。
それに俺にはおおごめ流雲ってちゃんと名前があるんだがな」
急に背後から、馬鹿にするような
声が聞こえてきた俊一は、左手で涙を拭った後声が聞こえてきた背後に首を振り向ける。
ゆっくりだが力強く振り向く。
そこには左手にナイフを持っている
坊主頭の男、否憎き敵大米流雲。
「さおりを殺したのか?」
俊一は静かだが怒気の籠った、声で問う。
そんなただならぬ気配を見せる俊一にビビることもなく、特に興味なさそうな感じで流雲は見ている。
まるで石ころでも見てるみたいだ。
「さおりってのが誰かわからねぇが、
まぁ、そこに転がってる死体は俺の仕業だがな。
これで満足か」
流雲はそう言うと、左手に持っていた
ナイフの切っ先を真っ直ぐ俊一に向ける。
「よくもさおりを……」
怒る俊一はナイフの切っ先に気づかない。
まぁ気づいたところで、彼が止まる事は無かっただろうが。
俊一は立ち上がろうと、足腰に力を込める。
そんな俊一を見下ろしながら、流雲は
ポチっとナイフのグリップにあるスイッチを押した。
ナイフの根元が一瞬赤く光ると同時に
ナイフの刃だけが、一直線に飛んでいく。
その刃が、あっという間に俊一の喉に突き刺さる。
俊一は眼を見開き、己の喉に刺さった
ナイフの刃を見つめる。
「がっ……」
俊一は左腕でナイフの刃を触ろうとするが、口から血を吐くと、腕から力が抜けてだらんと垂れる。
「学園都市製のスペツナズナイフだ。
まぁ正式名は知らないがね」
流雲はそう得意げに言いながら、虫の息の俊一の側に近寄る。
だが虚ろな瞳で、もはや視力の無くなってきている俊一には、流雲はうすぼんやりと、ぐにゃぐにゃ見えるだけで、ちゃんとした映像には見えない。
だが声だけは聞こえる、俊一は消えゆく意識の中その声を聴き続ける。
命有る限り。
「確か冬牙の野郎はサイフ抜き取って強盗の仕業に見せかけてたな」
流雲は膝だちの、俊一の肩を片手で支えながら、ズボンのポケットの財布を取り出す。
「めんどくさいから、サイフごと持っていくぜ」
流雲はポケットから回収した財布を、
中身を確認せずに懐に入れた。
「最後に何か言い残す事、あるか?」
流雲はそう言うと、俊一の耳元にのぞきこむようにして、体を密着させる。
俊一は、声を出そうと口を動かそうとするが、口からごほっと血を吐いて
言葉にならない。
それから、ゆっくりと樹が切り倒されるように、地面に倒れた。
「なんだせっかく、遺言聞いてやろうと思ったのに、言う前に逝っちまったぜ」
流雲はそれだけ言うと、俊一を二度と見ることはなかった。
流雲は、回収、回収と呟きながら、
仲間の冬牙の元に駆け足で向かった。
それから、一分で冬牙を回収し終えると彼は冬牙を担いで、惨劇の公園から
去っていった。
2つの死体が残る公園に、通報を受けた、白井黒子が到着したのはそれから
15分後の事だった。
その時到着早々彼女は、盛大に吐いたのだが、それはまた別の話である。
とにかく学園都市連続カップル殺人事件の四件目の犯行はこうして、終わりを迎えた。
連続カップル殺人事件の被害は先の
三件と合わせて、犠牲者数、八人
内訳、男子高生三名
男子大学生1名
女子高生三名
女子中学生一名
警備員本部が本件を極めて凶悪な殺人事件として、犯人の捕縛は生死を問わないと決定したのは、それから3日後の事だった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
遅筆で申し訳ないですが、頑張って行きますので
宜しくお願い致します。
感想、アドバイス随時募集中です。
皆さまの感想、ポイント、お気にいり登録数が書ける活力です。(マジで)
それでは長くなりましたが、これで失礼いたします。
最後に皆さま良いお年を (^^)