ここはアルト王国から少し離れた街道の近くにある森。
そこでは、数人の男が木の陰に隠れて潜んでいた。
「げひひひ。おい、もうすぐ馬車が来るぞ。今回のターゲットだ。」
「ああ、貴族が乗っているんだってな。商人と組んできているんだったな。」
「キヒヒヒ、商人の荷物と貴族を捕まえて身代金の要求か。これは大儲けできそうだな。キヒヒヒ。」
「お前ら油断すんじゃねーぞ。周りには騎士もいるそうだからな。」
「大丈夫だぜ。騎士なんて威張っているだけの無能じゃねえか。」
「違いねえ。ゼハハハハハハ。」
男たちはそう言って笑う。
そんな男たちは体から臭い匂いをまき散らし、身だしなみもしっかりしていない。
それもそのはず。彼らは盗賊である。
盗み、恐喝、殺害、暗殺。
ありとあらゆる手段で人から物を奪い、それを糧に生きていく。
一般人として生きていくことができなくなったものが行き着く成れの果てである。
世間から非難されようが彼らには関係ない。
彼らも生きていくことで必死なのである。
この男たちも最近町から追い出された者や奴隷だったものが集まって出来た盗賊集団である。
それなりの腕をもち、今まで二、三個馬車を襲ったが全員が無傷で生き残っている。
そんなこともあり今回の襲撃も成功するものと思っている
「おい、見えたぞ。準備はいいか。」
「「「「「おう。」」」」」
「いまだ!魔法で馬を殺せ!馬車の行く手を遮るんだ。」
「おう。我が意思に従いて・・・・・・・・・・『
盗賊の頭であろう男の指示に従い盗賊の一人が魔法を繰り出す。
馬の足元の地面から盛り上がるようにして出たきた土の棘が馬を突き刺す。
突然倒れた馬に馬車を引いていた他の馬は驚き暴れまわる。
それは周りの騎士が乗っていた馬車も同様である。
馬が混乱したことにより、その恐怖が他の馬にも伝わり隊列が乱れる。
「いまだ!積み荷にお金、武器。ありとあらゆる物を奪い去れ!!」
「「「「「うぉおおおおおおお!!!」」」」」
頭の掛け声とともに男たちは木から馬車へと飛び掛かる。
魔法と剣が騎士たちの上から降り注ぐ。
上からの襲撃に混乱していた騎士たちは対応が後手に回る。
「襲撃だ!!!盗賊だぞ!!落ち着け!!お嬢様の命を第一に対応しろ」
この騎士団の騎士長であろう壮年が指示を出すが指示系統が混乱していて全く通らない。
そうこうしているうちに、騎士団の半分以上が戦闘不能に陥る。
「ヒャッハー!今だ!積み荷を奪え。残りは俺とともに騎士団を押さえろ!身ぐるみ剥ぐのも忘れるなよ!」
頭の指示をもとに盗賊は積み荷を奪う者と、騎士団を抑える者の二手に分かれる。
積み荷を奪うものは手際よく物を運び出し、逃げるための馬車へと積み込む。
「おい、貴族も一人攫え!できるだけ子供をさらうんだぞ!」
「いかん!お嬢様を守れ!ック!?」
お嬢様を守るように指示を出そうとした騎士長に盗賊の頭が襲撃をかける。
「指示を出させるわけにはいかないんでな~。ちょっと大人しくしていろや。」
「これでも騎士弱きものを守る象徴だ!貴様を倒す!」
「へっ、やれるものならやってみな。」
その言葉を合図に、二人が剣を交し合う。
魔法が飛び交い辺りを荒らしていく。
激しい剣と魔法の応酬に周りにいるものは近づくことすらできない。
最初は盗賊の頭が優勢に見えたが、次第に騎士長が押してくる。
盗賊の頭は有利な状況にも関わらず、少しづつ後退していったため戦況が変わったのだ。
騎士長はその行為を不思議に思いつつも一端頭の隅に追いやり、目の前の盗賊の頭を倒すことに集中する。
そして、騎士長は剣を振り上げ頭の剣を上に弾く。
剣を弾かれたことでできた決定的な隙を騎士長は逃さない。
盗賊を倒すべく剣を振りかざすが、頭が悪い笑みを浮かべた瞬間嫌な予感が背筋を走る。
だが振り下ろし始めた剣はもう止まらない。
吸い込まれるようにして頭の体に剣が走り、血が流れる。
盗賊は先ほどよりさらに悪い笑みを浮かべると騎士に抱き着くようにして倒れこむ。
剣を振り下ろしたばかりの騎士長にそれを防ぐ術はない。
騎士長を巻き込むようにして倒れこんだ頭は大声で指示を出す。
「いまだ!掻っ攫え!!」
「ッ!?しまった。」
頭が後退したことでできた幾ばくかの距離と頭の倒れこみに巻き込まれた騎士長にそれを防ぐことはできない。
馬車になだれ込むようにして襲い掛かる盗賊たちを止めようと騎士たちが応戦するが数が少ないこともあって抑え込まれる。
「捕まえました!」
馬車の中に入った盗賊のうちの一人が15・6歳の少女をわきに抱え出てくる。
少女は当て身を食らったのか気絶してぐったりしていた。
「よし!退散だ。全員引けーー!」
頭の合図をもとに盗賊が撤収を開始する。
「させるか!」
騎士長がそれを阻止しようと走りだすが、
「ぐはっ!?」
後ろから木陰に隠れていた別の盗賊が襲い掛かり騎士長を切り倒す。
「はっはっはっは。俺らの勝ちだな。あばよ!」
盗賊は全員逃走用の馬車に乗り込み逃げ出す。
それを止めることができない騎士たちは顔をゆがめていた。
「すごい大量の財宝です。これは軽く白金貨100枚は下りません。さらには貴族の少女までさらったのですから今回の襲撃は大成功ですね。」
逃走用の馬車の中で盗賊たちは浮かれていた。
全員が軽くはない怪我を負っていたがその傷に見合う、いやそれ以上のものを手にすることができたのだ。
だが、その浮かれは長くは続かなかった。
『
逃走用の馬車がいきなり火に包まれる。
「「「「「「ぎゃあ、熱い、あちい!」」」」」
いきなりの襲撃になすすべもなく焼かれる盗賊たち。
魔法攻撃の範囲外にいた盗賊たちは馬車を飛び降りる。
「くそっ!何なんだ?騎士か?」
盗賊の一人は燃える仲間を見て声を荒げながら襲撃者を探す。が、
「残念違うよ。」
いきなり後ろから聞こえてきた声に振り向こうとした盗賊は一瞬のうちに首を切り落とされる。
盗賊たちはいきなり自分たちの真ん中に現れた人物を見てギョッとする。
そう、誰も気づかなかったのだ。彼がそこにいることに。
慌てて迎撃体制をとり中央を向く盗賊たち。
その後ろからたくさんの魔法が降り注ぐ。
「「「「「「「「「ぎゃあああああ」」」」」」」
予期せぬ方向からの襲撃に次々と盗賊たちが倒れていく。
「くッ」
盗賊の頭は何とか魔法を躱し戦線から離脱するため後退する。
「グハッ」
しかし後ろから切られ倒れこむ。
「な、何が・・・」
意識が朦朧とする中状況を確認しようと頭を持ち上げる。
そこは彼にとっては生きることを諦めるような状況であった。
仲間は全員が地に伏せ動く者はいない。
辺りは焼けただれ一部では地面が抉れていた。
そして、そこに立つのは見知らぬものばかりであった。
「ケイト。一人勝手に突っ走んな。」
「・・・・大丈夫。・・・こいつら怪我。」
「ケガしてても油断できないヨ。慎重に慎重に。」
「女性の盗賊いなかった・・・・・。胸もめるチャンスだったのに・・・・・・。」
「お前の頭は常にそれか!?このエロハンス!!」
わいわいがやがやと楽しそうに話す彼らを見て盗賊は体の震えが止まらなかった。
なぜかわからないが恐怖が沸き上がるのだ。
「あれ、まだその人起きてるヨ。」
「女じゃねえ・・・・。」
「いい加減にしろお前は!!」
「・・・・気絶させる。」
戦闘態勢に入りだした目の前の集団に盗賊の頭は悲鳴を漏らす。
「いや、いいよ。そのままにしておいて。先に積み荷と人質を回収しな。こいつからはアジトの居場所を尋ねるから。」
そんな集団を止めるかのように盗賊の頭の後ろから声が聞こえる。
盗賊の頭が恐る恐る振り向くとそこには15・6歳ほどの少年が立っていた。
「「「「「「はい。」」」」」」
そんな少年の指示に集団は戦闘態勢を解き積み荷の回収を行う。
「おまえは・・・・・」
盗賊の頭は少年を見上げる。
「助けてあげたんだからアジトの場所を教えてね?」
「ああ、ここから2,3キロ行った先ある小さな洞窟・・・・・ッ!?」
盗賊は何故かアジトの場所を
自分は確実に相手を敵だと認識していたのにも関わらずだ。
「ありがとう。手荒な真似をしなくてすんだよ。」
少年はにっこりと笑うと、立ち上がって馬車の方へ向かう。
「おまえは・・・お前たちは盗賊集団『
盗賊はかすれるように声を出して目の前の集団に
「如何にも。私たちは盗賊専門の盗賊集団『
盗賊はその言葉を聞くのを最後に、後ろからの衝撃で気を失う。
そして数分後には彼らのアジトからも財宝がなくなるのだった。