「ねエ、リオン。いつも思うけどこいつら殺さなくていいのカ?」
盗賊のアジトの襲撃を終えた俺たちは辺りに死屍累々と転がる盗賊を横目に馬車に荷物を積み込んでいた。
この語尾が変な喋り方をしているのはミラン。
見た目はまともな奴だが中身は違う。
そう、彼は根っからの戦闘狂なのだ。
戦闘中は高笑いをしながら敵を切り付けていく。
一体何が楽しいのやら。
「いつも言ってるだろ。俺らの獲物を減らさないためだよ。」
そう、俺たちは盗賊を狩る盗賊。
盗賊がいなくなればそれが出来なくなるではないか!
そしたら死活問題だ。
だからこそ、あえて殺さず生かしているのである。
盗賊に落ちた以上はもう普通の生活には戻れないだろうし、また盗賊活動を再開するだろう。
そこを、俺らが再び襲撃するのだ。
「鬼畜だな。」
俺の独り言に冷静に突っ込んだこいつはバジル。
この盗賊団一番の真面目者で、お金や書類の管理はすべてこいつが行っている。
こいつはミランの兄で、同じ黒い髪に黒い瞳を持っている。
ミランとは対照的に冷静沈着なので本当に兄弟か疑わしくなるよ。
「盗賊に慈悲はないよ。・・・よし、これで全部積み込んだな。さあ、ケイト達のところへ戻ろう。」
荷台にお宝から武器までアジトにあったありとあらゆる物を詰め込んだ俺たちは、先ほど盗賊を襲ったところへ向けて馬を走らせる。
まあ、馬と言ってもこいつは普通の馬ではなく、魔物の馬『
2,3キロほどの距離ならばあっという間だ。
「お、首尾はどうだ!」
先ほど焼け野原にした場所で座っていた赤い髪をつんつんに逆立てた男が俺たちに気づいて話しかけてくる。
こいつはマイル。チャラい見た目に反して中身は意外とまとも。
この盗賊団で一番の常識人だと自負している。
俺からすればこいつはただの突っ込み係だけどな。
一番の常識人はこの俺だからな。
「上々。結構のお宝があったぜ。」
俺は荷台のお宝を指さしながら、そう答える。
「おお、すげー量だな。今日は宴会が出来そうだ。」
「・・・・酒、飲みすぎ、注意。」
「分かってるって。迷惑はかけねえよ。」
そうなのだ、こいつは見た目のまんま酒癖が悪い。
一定量以上の酒が入ると途端に騒ぎ出し裸になって踊りだす。
ただただ気持ち悪い。
町だったら即衛兵に捕まるな。
「おい、リオンお前何考えている。」
「いや、何も考えてないよ。」
「・・・・・嘘。バレバレ。」
この口数が少ない奴はケイト。
茶色い髪は長く伸びていて、肩まで届いてる。
こいつはぱっと見、女の子に見えるがれっきとした男だ。
極度の恥ずかしがり屋で、長いこと暮らしている俺たちとでもこの口数の少なさだ。
それ故にか気配を消すことには長けている。
「そ、それより例の女の子はどうしてる?」
「それならあそこに・・・・って、おいハンス!お前何やろうとしてんだ!」
こちらに背を向けていた大男がマイルの声にビクッと肩を震わせる。
よく見ればベットの上に寝かしている少女の胸に向け手を伸ばしかけていた。
こいつはハンス。
こいつを一言で表すとエロ。
戦闘中でも女の子がいれば危険を気にせず一直線に向かっていきその胸をもむ。
そのほかにも、戦闘中にも関わらず言葉に言い表せないようなことまでする時がある。
だから、エロ。
というか、エロという言葉はこいつのためにあるようなもんだ。
「ハンス。お前手を出すのは敵対した女だけじゃなかったのか?」
こいつは以前確かこのようなことを言っていたはずだ。
まあ、エロだから微塵も信じてはいなかったが。
「まだ、手を出していない。」
ハンスは首を勢いよく横に振り否定する。
「まだってことは手を出そうとしたんだネ。」
「・・・・・変態、・・・・・ケダモノ。」
「見損なったぞ、ハンス」
「いつものことだろ。」
おお、皆さんボロクソに言いますね。
煽っておいてなんですが楽しいな、見ていて。
ありゃ、ハンスが涙目になっている。
ちょっとやりすぎたか。
「そんなつもりなかった。ただ、想像していただけ。」
いや、それもダメだろう。
必死に弁解しようとしているけど弁解になっていないよ。
逆に自分がエロだってことを協調してるじゃねーか。
「想像しているだけでも変態だろーが。もういい、いったん離れろ。で、リオンこの少女はどうすんだ。」
ハンスを即席のベッドから引き離しながらマイルが尋ねてくる。
このベッドは魔法で作った植物のベッドだ。
寝心地最高、安眠、安全のまさに魔法のベッドだ!
少女の寝顔もほら穏やかだろ。
「いや、そんなことどうでもいいから。それに少女、少女言ってるけどお前とそこまで年齢違わないぞ。15・6歳だろ。」
やべ、また独り言が漏れていたみたいだ。
気を付けないと。
それでこの少女をどうするかだっけ。
そうだな・・・・・
「俺が、さっきのこいつらが商隊を襲ったところまで運んでみるよ。多分まだ騎士たちがいるだろうし。」
俺は地面に倒れ伏している盗賊を見ながらマイルに返す。
「そうか。じゃあ俺らは先拠点に戻っているぞ。」
「ああ、じゃあ、後で。」
マイルは
「よし、運ぶか。」
植物のベッド――魔法名
魔力で体に身体強化を施して先ほどこの屑盗賊たちが商隊を襲った場所へ向けて走り出す。
「う、う~ん。きゃあ」
あ、少女が起きたみたいだ。
一応事情を説明してっと、
「は、放してください。」
あ、やべ。これは俺が襲った盗賊だと勘違いされている。
とりあえず放してくれって言ってるから放すか。
「え?」
あれ?なんか驚かれている。
あ、そうか。自分を攫った盗賊がこんな簡単に自分を解放するとは思わないか。
「俺はお前らを襲った盗賊ではない。いま、お前を商隊のところへ運んでいるところだ。」
「ほ、本当ですか?」
あれ?なんか簡単に信じかけているぞ。
大丈夫か?
「ああ、本当だ。」
「では、お願いします。」
少女が両手を差し出してくる。
っておかしいだろ!?
普通見知らぬ人がいたら警戒するのが普通だろ!?
しかも盗賊に襲われた直後だぞ!?
あと、なんで顔がすこし赤いんだ!?
まあ、こちらとしても都合はいいから文句はないから。
「じゃあ、運ぶぞ。」
「はい。」
信用しすぎだろ!?
俺が運ぼうとして差し出した手を握るのになんの躊躇もなかったぞ!?
そして何でさらに顔が赤くなってんだ!?
何か腑に落ちないこともあるがとにかく目的地に向けて再び走りだす。
そして、先ほどに場所に、騎士のど真ん中に着地。
「おい、到着だ。」
どこか上の空だった少女に声をかける。
「は、はい。」
「「「「おい、貴様お嬢様から離れろ!」」」」
まあ、そうなるわな。
見知らぬ男が自分たちの主を抱き抱えているのだから。
そう!これこそ正常な反応!
この少女がおかしいんだ。
とりあえず少女を地面に下ろす。
「お嬢様、こちらへ。」
騎士が剣を俺に向けたまま少女を引っ張っていく。
そして、俺を包囲するかのように動ける騎士全員が剣の切っ先を向けたままにじり寄ってくる。
その少女を運んだのにまるで悪者扱いだな。
あ、悪者か。盗賊だし。
このままだとろくなことがないから退散するとしますか。
「皆さん、その人は悪い人では・・きゃあ。」
少女が何か言っていたがまあいいか。
自分の足元に魔法で突風を引き起こし、その風を利用して騎士の囲いを上から脱出する。
「無詠唱!?」
騎士たちが何か言ってるが無視無視。
さっさと退散しよう。
「ま、待てーーー!」
待てと言って待つバカはいないだろ。
それじゃあ、さいなら~。
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「皆さん、なんてことをするのですか。彼は私を助けてくれたのですよ。」
リオンが立ち去った後、騎士たちは少女の前で正座をしてうなだれて居た。
「ですが、彼が盗賊である可能性もありましたので。」
騎士たちは必死に言い訳をする。
「あんな、かっこいい盗賊がいるとおもいますか?いるわけないでしょう。」
((((((いるかもしれないじゃないか))))))
「今、なんて考えましたか?」
「「「「「「いえ、何も」」」」」」
「まあ、いいです。だが、私の恩人に剣を向けたことは確かです。向こう10か月の減給です。」
「「「「「「ひ、姫様~、どうかご慈悲を~」」」」」」
「さ、帰りますよ。」
騎士たちは再び地面に倒れ伏す。
少女は馬車に乗り込むとそこにいた年配の男性に指示を出す。
「爺や。馬車を出して。それと、あの人の捜索も手配して。決して手荒に扱わないように。」
「畏まりました。・・・姫様にもやっと春が訪れましたか。爺やは感慨深いです。」
「な、そ、そんなわけないでしょう!ただ・・少し気になったというか、その、ともかく違いますから。」
「わかっておりますとも。ささ、帰りましょう。」
「絶対わかってないでしょう!その笑顔は何なのよーー!」
爺やは少女の叫びは無視して馬車を走らす。
「彼が最近巷で噂になている、救い手ですかね・・・・。」
爺やのその呟きは馬車の走る音にかき消されたのだった。