インフィニット・ストラトス 世界への反抗 作:鉄血のブリュンヒルデ
「な、なんだアイツ!」
「ファントム!何でここに?!」
あれが、櫂の言っていたファントムか?
なんというか、想像以上の怪物だ。確か、ここの壁は通常のISでも穴を開けるのは殆ど不可能と言われる程の強度らしい。それをあいつは(正確には分からないけど)生身で壊した。この学園には将来IS関連の企業への就職やISの操縦者になる事を夢見ている。その中にはISの力を過信する人もいる。だから
「「「「「キャアァァァァァァァ!」」」」」
必然的に、殆どの人は恐怖する。
「鈴!どうするんだよ、これ!」
「櫂が来るまで、少しでも足掻いて時間稼ぎするしかないわよ。私じゃ、倒せないからっ」
そう言って鈴は、唇を噛む。悔しいんだと思う。自分は時間稼ぎだけしか出来ないという事実が。だから、俺は。
「なら、足掻こうぜ。精一杯」
「一、夏?」
「まだ、足掻けるんだろ?だったら、最後まで足掻こうぜ!俺達には、”希望の魔法使い”がいるだろ!」
「……………一夏の、くせに……そんな事、分かってるわよ!」
鈴は、俺に怒鳴る。けど、その顔は、何かを吹っ切った様な顔だった。
「さてと、そろそろ話は終わったか?」
「「っ?!」」
「ったく。なんだって俺がこんな事……めんどくせぇ…」
俺達の覚悟を嘲笑うかの様に、奴は怠そうに言う。
「ゲート候補はわんさかいんのに、何で誰もここ責めねぇんだよ。お陰で俺が態々出向かなきゃ行けねぇんだぞ……」
「ちょっと!あんた!」
「あ?」
「目的は何?!」
鈴の質問と共に、ISから降りた。
「目的?んなもん、ゲートを絶望させるだけだよ」
「何の為に!」
「知らねぇよ。でも、ワイズマン様がそう言うんだ。俺達はそれに従うだけだ」
ファントムの言葉に、鈴は鋭い目つきになる。
「ワイズマン?それがあんたらの親玉?」
「だったらなんだ?」
「倒すのよ!あんたら全員倒して、そいつを!私達が!」
「………そうか、お前魔法使いか!ハッハッハッ!!魔力が小さ過ぎて気づかなかったぜ!」
ファントムは、大袈裟に笑う。幼馴染を笑われたとあっては、流石に心が穏やかではない。俺は、心が震えた。
「何がおかしいんだよ!お前に、鈴の目標を笑う権利があんのかよ!」
「権利?そんな物必要無い。お前達より俺の方が強い。弱い物が強い者に嘲笑われるのが、世の常だろ?」
ファントムは笑う。それが当たり前のように。
「だったら、お前は笑われるな」
「……………あ”ぁ?」
「そうよ。あんたなんかより、強い奴がここにはいるんだから!」
鈴の言葉に、ファントムはニヤリと笑った(気がした)。
「そうか。この前ここでゲートが何も無しに覚醒しそうになったって話は、本当だったのか。まぁ、どうでもいい!一先ずその強い奴が来るまで、てめぇらで暇潰ししてやるよ」
「来るわよ!一夏!」
「分かって「遅せぇよ!」がぁ?!」
ガシャンッ!
「一夏!」
「お前もな!」
バコンッ!バキッ!
「キャア!」
強過ぎる。
ガンッ!ガキンッ!
「グワッ?!」
ガコンッ!ギンッ!
「グアァ!」
俺達じゃ勝てるわけない。
「う、うぅ………鈴、逃げろ!」
「あんたが、逃げなさいよ!」
だが、俺達も逃げられない。後ろは無い。例え俺がどうなっても、俺達の後ろに控えている櫂に繋げなきゃいけないんだ!
「零落白夜!」
「ちょっと一夏!何のつもり?!」
「やられっぱなしじゃ、あいつに格好つけれないだろ!もうこれ以上、お前達だけに背負わせたく無いんだよ!」
「一夏……」
「ハッ!そんなんで俺に勝てるとでも思ってんのかよ!」
「さぁな。でも、負ける気はねぇよ!うぉーーー!」
「一夏!」
ファントムは、俺に向かって光弾を放つ。だが俺はそれをなんとか躱したり受け流したりして前に進む。
「これでぇ!」
「死んじまいな」
「っ?!」
ドカアァァァァァン!
先程より威力の大きい光弾が、ゼロ距離で俺に炸裂する。
(これだけやれば、あいつも俺を、認めるよな……)
俺の意識は、段々と混濁していく。
〈ビッグ、プリーズ〉
だがその時、大きな手が俺を受け止めた。その手はゆっくりと俺を降ろして、ゆっくりと魔法陣を抜ける。そして魔法陣が消えると、そこには俺達の待ち侘びた姿があった。
「なーに格好つけてんだよ。阿呆」
その声は、いつもこちらを馬鹿にする様だ。でも、それがあいつなりの友情の表現なんだと思う。
「後は任せとけ。相棒」
なんか、そう言われたの久しぶりだな。そう言いたかったが、思う様に口も体も動かない。多分ダメージが大き過ぎたんだ。だから俺は静かに頷く。俺とこいつにはそれだけで十分だから。
「今日はショータイムじゃねぇ。俺のダチを傷付けた落とし前、しっかり付けさせて貰うぜ」
その言葉を最後に、俺の意識は途切れた。