インフィニット・ストラトス 世界への反抗 作:鉄血のブリュンヒルデ
「私がまだ魔法を上手く扱えてなかった頃、私は櫂とそのバディに着いて行っていたの」
「バディ?」
鈴は、過去を語り出した。
「その人は、私にとってお姉ちゃんみたいな存在だった。指揮力も高くて、魔法の扱いが上手くなかった私にもちゃんと活躍させてくれて、とっても優しかった」
鈴の顔はとても穏やかだった。
「あの人は強かったけど、ウィザードには至らなかったわ。それでも、その強さはファントムを追い込む程だった。だから私はその人に憧れたわ。でも、そんな矢先に、アイツは現れた」
鈴の表情は、一気に明るさを失う。
「その日も、櫂と私とその人でファントムの討伐に向かったわ。そしてそこに居たファントムに私達は戦いを仕掛けた。
最初は数の有利もあって私達が優勢だったんだけど、急にファントムは力を増して、私達はたちまち劣勢になっていた。そして櫂が捨て身の技を使って倒そうとしたんだけど、倒せなくて。そして変身が強制解除されちゃって、櫂が立ち上がれない所にファントムはトドメを刺そうとした。でも、その時にあの人は!」
鈴の目頭に涙が浮かぶ。
「俺を庇って、ファントムの本気の一撃をモロに食らった」
その時、櫂が口を挟んだ。きっと鈴を心配しての事なんだろう。
「当然、魔法使いと言えど生身だとただの人間だ。つまり、ファントムの攻撃に耐えられるはずもなく」
「あの人は、死んだわ。絶望すらする暇なく」
そんな事が、二人にはあったのか?俺達のあの日の出来事なんて、これに比べれば下らないじゃないか!
「そして、そのファントムは兎も襲った。その時は何とか追い払えたけどな。でも、アイツは強かった。全く歯がたたなかった」
「櫂でもか?」
「あぁ、俺でもだ」
「これが、櫂以外にファントムを倒せる者がいないと推測される理由よ」
鈴は、さっきの昂っていた感情を抑えきれたのか。あんなに辛そうな鈴、初めて見た。あれが、本当の鈴なんだ。
「私はそれから、沢山修行や訓練を重ねた。いつかあのファントムを倒す為に」
「だから、そんなに無茶するんだな」
「無茶でもしないと、アイツは倒せない!………いや、例え無茶をしても、私じゃアイツを倒せないわ……だから!」
「櫂を頼るのか?」
鈴の言葉を遮ったのは、千冬姉だった。その言葉に、鈴は頷く。けど、その肩を千冬姉は掴んだ。
「何故だ!何故大人を頼らない!魔法が使えないからか?それがなんだ!何か、私達に出来ることは無いのか?!」
「でも、これは私達の問題で」
「だとしても!私は、お前達子供が傷付くのをもう見たく無いんだ!」
千冬姉の声は、医務室に響いた。
「……………………今更何よ」
「え?」
酷く冷たい声が、空気を切り裂いた。
「私達は、あんた達に心配される程度の人生歩いてないわよ!私達の気持ちが、分かるわけない!…………行くわよ、晴香」
「あ、うん……」
鈴の声の残響は、俺達の心に鋭く突き刺さった。