インフィニット・ストラトス 世界への反抗 作:鉄血のブリュンヒルデ
「私は、何をしたんだ?少なくとも、櫂があそこまで激怒する程の事はしていない。そもそも、好きな男の嫌がる事を、する訳が無いじゃないか!」
私は校舎裏にいる。さっきの櫂の言葉の意味が分からず困惑しているのもあるが、部屋に帰ってシャルロットに会うのが怖かったんだ。
「……フッ、皮肉だな。こんな時に、あの時の事を思い出すなんて」
私の脳裏に浮かんだのは私と櫂が出会った日のことだった。
私と櫂が出会ったのは、一年前の夏の日だった。
…………………………
「なるほど、ここがドイツ軍か」
私達が訓練をしていると、フェンス越しに私達の訓練を眺めている男がいた。隊の中にそれを不快に思う者が居たので、私はそれを注意しようと男の目の前に立った。無論フェンス越しだ。
「お前。何故我々の訓練を見ている」
「ん?いや、訓練大変そうだなって思ってよ」
アジア系である事は分かったが、どこの国か分からなかったから、私は英語で話しかけた。すると男は流暢にドイツ語で返してきた。私もそのままでは相手に失礼だと思いドイツ語で返す事にした。
「お前の視線を不快に思う者がいる。お前の気持ちが尚更訓練を大変にしているぞ」
「ジョークも言えるんだな。あんた名前は?」
名前を聞かれて答えるか迷ったが、別に名前を聞かれたところで困らないので、答えることにした。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ。お前は?」
「竜川 櫂。魔法使いだよ」
「ふざけているのか?」
「ばーか、そこそこ真面目だよ」
のらりくらりと返ってくる言葉に少し苛立ち、そろそろ退くように言おうとした。
「ん?何をしているんだボーデヴィッヒ」
その時、後ろから教官の声が聞こえた。世界で知らぬ者無しと謳われる程の強者。織斑 千冬教官だ。
「よっ、千冬」
コイツ!教官を呼び捨てだと?!しかもファーストネームで!
「っ?!櫂!何故ここに!」
って!教官も?!もしやこの二人、そこそこ深い間柄なのでは?
「教官はこの男どの様なご関係なのですか?」
「家が隣なんだ。よく家の弟と遊んでくれてな」
「教官の、弟…」
私は、一年前の出来事を思い出していた。一年前の第二回モンド・グロッソで、教官の弟の織斑 一夏が誘拐された、あの事件。
「気にすんな」
「え?」
その時、竜川と名乗った男が私頭を撫でながら言った。
「アイツは気にしてねぇよ。ていうか、むしろあれをバネに頑張ってる。だから、気にすんな」
竜川の言葉は、どこまでも暖かった。
それから一週間。竜川……いや、櫂はドイツに留まり、毎日軍の施設に足を運んでいた。最初は不快に思う者も多かったが、アイツの振る舞う料理や、魔法だと言うマジック等が彼女達の心も掴んだのだろう。
そしてさらに三日が経った頃、奴は現れた。
「オラオラオラァ!絶望しやがれゲートォ!」
ソイツは人型ではあるものの、人の容姿とはかけ離れていた。
「クッ!皆こっちから避難しろ!」
今日、教官はIS委員会から呼び出されて居ない。それ故に、私以外に戦える者はいない。IS部隊は全滅した。私は避難誘導を任されているから下手に前線に出られない。こんな時、私があの力を上手く扱えれば!
「くたばれ!」
「なっ!ウッ!」
怪物が斧の様な武器を振り下ろす。私はそれを見て、死を覚悟した。
「やらせるかよ!」
その時、ノイズがかった声が聞こえた。
「ウッ!グアァ!」
「っと、大丈夫か?」
怪物を蹴り飛ばしたのは、体に宝石の様な装飾のある、異形だった。
「お前は、誰だ?」
「俺?俺はウィザード。お節介な魔法使いさ」
ウィザードと名乗ったソイツは、私に手を差し伸べてきた。私はその手を取り、立ち上がる。
「魔法、使い?」
その言葉を聞いた瞬間、私の脳裏にあの男の……櫂の顔が浮かんだ。
「お前まさか!ムグゥッ!」
私が喋ろうとすると、ウィザードは私の口を人差し指と中指で上唇と下唇を閉じさせる事でそれを止めた。
「ショーの種明かしは、一番やっちゃいけねぇ事だ。もうちょい、このショーを楽しんどけ」
ダメだ。この声を聞くと、胸の奥に勇気が湧く。
「さぁ、ショータイムだ」
ウィザードは構えながらそう言った。
…………………………
「今思えば、出会った時から好きだったんだろうな」
私は幸せな夢に身を任せ、意識を手放した。その時私は気付かなかった。私や、櫂に迫る脅威に。
今回、櫂がウィザードに変身していた時に出していた声は「仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!」で登場したウィザードの発していた声をイメージして貰えるとわかりやすいと思います。