インフィニット・ストラトス 世界への反抗 作:鉄血のブリュンヒルデ
この話は臨海学校に行くまでの数日間で怒った出来事です。
特別編 part.0 Lupin
「こちら東京国立近代美術館前。こちら異常無し」
『了解。警戒を怠らぬ様に』
「分かりました」
闇夜の中で光に照らされるのは、日本でも大きな美術館であるここ東京国立近代美術館。実は、数日前にとある予告状が届いていたら。
[月が登らぬ夜に、貴殿の所有する女神の涙を頂戴しに参上致します]
そんな紳士を気取った様な文面を送り付けたのは、かつて世界に名を轟かせた大怪盗の名前だった。
『緊急連絡!女神の涙が、消失しました!』
『盗まれた!ワシの、女神の涙があぁぁ!』
その名はルパン。アルセーヌ・ルパン。この世界で、怪盗の名と世界のありとあらゆる宝を、欲しいままにした男の名前だった。
…………………………
「シャラァ!」
それと同時刻。赤いルビーを散りばめた様な戦士と。
「ハァ!」
紫のアメジストを散りばめた様な戦士が、異形を相手に戦っていた。
「一夏!そろそろ決めるぞ!」
ルビーの戦士が言うと、アメジストの戦士は力強く頷く。
「分かった!」
二人は腰についている手のような装飾を動かすと、右手にはまっている指輪を同時に変えた。
〈〈ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!〉〉
〈チョーイイネ!キックストライク!サイコー!〉
〈イエス!キックストライク!アンダースタンド?〉
「「はぁーーー!」」
二人は異形に対して同時に蹴りを叩き込んだ。
「グアァァ!」
ドカァァァン!
異形は爆散し、戦士達の立っていた場所に立つのは、二人の青年だった。
「あー、疲れた。さっさと帰って寝ようぜ、一夏」
「あぁ、そうだな。櫂」
一夏と呼ばれた青年は眠たそうに応えた。二人は気怠そうに背を伸ばしたりあくびをしながら近くに停めてあったバイクに歩く。
〈フハハハハッ…フハハハハッ!〉
その時、どこからともなく不気味な笑い声が響いた。
「なんだ?!ファントムか?!」
ピッ
「ん?鈴どうした?」
「どんな着信音だよ!」
櫂と呼ばれた青年が、懐からスマホを取り出して通話ボタンを押した。それに対して一夏は、若干キレ気味に叫んだ。
『櫂!大変!』
電話越しですら伝わる焦燥。それに対して、櫂はその声に驚いて目をパチパチさせながら少しキレ気味で応えた。
「んだよ、こんな夜中に。俺ら疲れてんだけど?」
『そんな事言ってる場合じゃない!ウィザーズから試作品のドライバーが一つ盗まれたの!』
「はぁ?!おい!警備どうなってんだよ!」
櫂は眠気が飛んだのか、目を見開いて言った。
『分からないわよ!でも盗まれたのは昨日のちょうど十二時。犯行の手口も手がかりも何も無いわ』
「とりあえず分かった。明日ウィザーズの本部に行くぞ。ちょうど用事あったし」
櫂は通話を終了させると、近くで待機していた一夏に声をかけた。
「一夏、明日予定空いてるだろ」
「空いてるけど。え?俺も行くの?」
「本当はお前とシャルロットの用事だったんだがな。新しく一個追加された」
櫂は続きを言おうとしたが、それは一夏の背後の高台に立つ人影に中断された。
「おい、てめぇ何者だ」
ただならぬ気配を感じ、櫂は警戒しながらも相手を威圧した。そこでようやく一夏も気が付き、振り返った。
「なに、魔法使いというのがどれ程の物かと見物しに来ただけさ」
男は肩を竦めながらいなすように言った。
「お前、俺達を知ってんのか。ファントムか?」
「おっと、私を彼らの様な異形と同じにしないで頂こうか」
あくまでも互いに冷静に、互いを測っていた。
「なら、てめぇがドライバーを盗んだ犯人か」
「ドライバー?あぁ、これの事かい?」
男は着込んでいたスーツの内側からそれを取り出した。
「てめぇが持ってるなら話は早い。ソイツは返してもらうぜ」
櫂はもう一度変身しようと手の装飾に触れた。だが、それは男の声に止められた。
「まぁ待ちたまえ。戦うには些かこの場は不相応過ぎる。私達の戦いの場は、またあるさ」
男はそう言いながら夜の闇に溶け込んで行った。
「あ、おい待て!」
一夏は咄嗟に追おうとしたが、時既に遅く、その姿は影も残らず消えていた。
「おい櫂!アイツなんなんだ!ドライバー持ってるのに、敵っぽかったぞ?!」
一夏は櫂にそう問うと、櫂は静かに答えた。
「アイツはウィザーズからドライバーを奪った。多分だが、その名前は」
櫂はスマホでニュースサイトを開き、その一番大きい記事をタップしてそのページを開きながら一夏に見せた。
「アルセーヌ・ルパン。二十世紀に名を馳せた大泥棒だ」
ちなみに作中ではルパンを実在の人物として扱っています。