インフィニット・ストラトス 世界への反抗   作:鉄血のブリュンヒルデ

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特別編 part.4 新たなウィザード

「わ、私?!」

 

箒は大袈裟なくらいに驚いた。多分俺の初変身の時と同じくらいだろうな。

 

「そ、お前」

 

櫂は当然かの様に言うが正直まだ耳を疑う。だが、よく考えば櫂は最初からこれが目的だったのかもしれない。

 

「第一に、私は魔法なんて使えないぞ!」

 

「使う為の道具も何も揃ってなかったからな。仕方ないだろ。だが、魔法は使わずとも魔力ならもう使ってるぜ」

 

「え?」

 

櫂の言葉に、箒は唖然とする。自覚が無いからだ。それと同時に、俺は答えに行き着いた。

 

「それって、VTシステムの時の箒の強さの事か?」

 

「あぁ、そうだ。あれは多分覚醒したお前の魔力に、眠っていた箒の中の魔力が反応して生まれた力だ。まぁ、元々の箒の実力も相まってだがな」

 

「確かに、幾ら力が大きくても器が整ってなければその力は抑え込めないからな」

 

千冬姉が納得した様に呟く。櫂は無言で頷き、次の言葉を放とうとしたが、それを笠木さんが止めた。

 

「先に行っておこう。正直に言って、それは魔力が高いだけでは制御出来ないぞ」

 

「分かってるよ。でも、この中で変身出来るのは箒だけだ。俺も一夏ももう力を持ってるからな」

 

「だが、今はまだ強化アイテムや武装として使った方がいい。いくら魔力量が高くとも、質を高めねば変身は出来ない。それは我々がよく知っている」

 

笠木さんの言葉には確信があった。恐らく、何度も試したんだろう。自分達の体を使って。

 

「それもそうか。じゃあ、コイツは一先ず俺達が預かっとく」

 

〈コネクト・プリーズ〉

 

櫂は岩からそれを引き抜き、コネクトでそれを何処かへ置いた。

 

「そう言えば、お前の武器とかって何処に置いてるんだ?」

 

「ん?俺の家」

 

「そっか」

 

ん?櫂の家?櫂の家って、今誰も居ねぇよな?

 

「それって大丈夫なのか?」

 

「まぁ、ファントムとか物取り対策はしてあるから別に問題ねぇよ」

 

「そりゃそうか」

 

まぁ、あの櫂が何の対策もしてない訳が無いしな。

 

「それともう一つ………いや、結構あるな。まだ話がある」

 

「シャルロット・デュノアの調査の件か?」

 

「それも含む。実はこのセシリア・オルコットって言うのが、俺がアンダーワールドのファントムを消滅させて魔力が消滅させたんだが、その日から日に日に魔力を取り戻して尚且つ膨れ上がっている。正直、俺じゃ分かんねぇ」

 

「分かった。その件も調査しておこう」

 

「頼む」

 

この会話を見ると、二人の本来の関係性が伺える。きっと信頼し合っているんだと思う。

 

「それで、シャルロットの件も聞けるか?」

 

「あぁ、だが…………」

 

笠木さんは書類を取り出しながら、表情に影を落とした。

 

「これは、正直想像を絶する程の黒だ。デュノア社も、財団Xも」

 

財団X……。確か前に櫂が言っていたな。本来知られている医薬品の研究等を隠れ蓑に、その実態は軍事兵器の開発やテロリストへの兵器の横流し。更にはファントムとすら手を組む様な、まさに死の商人だと。

 

「君達はまだ子供だ。こんな社会の闇を、知らなくてもいいんだぞ?」

 

笠木さんはきっと心配なんだろう。これを聞いて、シャルを傷付けないか。けど、シャルは強い眼差しで、笠木さんを見た。

 

「聞かせて下さい。僕は知らなくちゃいけないんだ」

 

シャルの目には、迷いなんて無かった。

 

「分かった。では話そう。まずはデュノア社だが、ここ数年業績は量産機であるラファールに依存し、第三世代機の開発にも乗り遅れて窮地に陥っていた。そこにつけ込んだ財団Xは、デュノア社に魔法の存在を教えた。そこで実験台として扱われていたのは…シャルロット・デュノア、君の母親だ」

 

ある程度の事は覚悟していた。だが、これはあまりにも酷かった。シャルのお母さんは、あんなに、ただ娘を愛していただけなのに……。

 

「待て。それはいつの話だ」

 

「今から十八年前だ」

 

十八年前?それって、まだシャルロットが生まれていない?

 

「なるほど。つまり、実験台として扱われるシャルロットの母親ならどう使おうが問題無いと思った父親が、シャルロットの母親に手を出した。それで生まれたのが、シャルロットって訳か」

 

「簡潔に言うとそうだ」

 

おい、おいおいおい。巫山戯るなよ。

 

「なんだよそれ!ふざけんな!」

 

俺はつい、怒鳴り声を上げてしまった。だが、一度溢れた感情はそう簡単に止まらない。

 

「そんな、身勝手な理由でシャルロットは苦しんでたのか?そんなのって……そんなのってあるかよ!」

 

だって、そうだろう?誰よりも懸命に生きてきた奴が、どうしてそんなに苦しまなくちゃいけないんだよ!

 

「やめろ一夏。今過去をどうこう言っても、仕方ねぇだろ」

 

「お前、それでいいのかよ!…っ!」

 

その時、俺は気付いた。櫂の握り締めている拳が震えている事に。そして、爪の食い込んでいる部分から血が微かに出ている事に。

 

「俺達じゃ、過去は変えられねぇ。それに過去を変えれば、シャルロットも生まれなくなる。それだけは、絶対にダメだ」

 

櫂も悔しいんだ思う。自分達の手が届かない所で、友達が傷付いていた事が。

 

「それで、財団の方は?」

 

「財団に潜入した者の報告によると、財団Xはラグナロクと呼ばれる儀式を行う事を目標としているらしい」

 

「ラグナロク……神々の黄昏か」

 

櫂は呟く。ラグナロクってよくゲームとかで聞く奴だよな。

 

「ラグナロクとは、この世界にある賢者の石と女神の涙、そして悪霊の眼球を代とする事で完成する儀式だ。そのエネルギーは果てしなく、世界を滅ぼせる程と言われているらしい」

 

「女神の涙に悪霊の眼球…いずれも今回ルパンが狙ってる獲物だな」

 

「偶然か必然か。どちらにしても二つ揃える事は何としてでも避けなければいけない」

 

「分かってる。その為に俺達がいるんだよ」

 

櫂はそう言いながら部屋を出て出口に向かう。

 

「俺達は悪霊の眼球を守りに行く。お前達はどうする?」

 

櫂は千冬姉達を見て言う。恐らく、来るかどうかは自分の意思で決めろって事だろ。

 

「無論私は行くつもりだ」

 

「私も行きますわ!」

 

「私もだ。何か見つかるかもしれない。私の力の使い道が…」

 

「当然私は行くわ」

 

「私も行きます」

 

「僕も」

 

「私も行く」

 

全員が同意してくれた。例え力を持ってないとしても、心強い。

 

「んじゃあ、行ってくる」

 

「あぁ、頼んだぞ」

 

櫂と笠木さんは短い言葉を交わした。櫂はそれだけを聞いて出て行った。

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