インフィニット・ストラトス 世界への反抗 作:鉄血のブリュンヒルデ
「ハァ!」
「グッ、トァ!」
戦いは、明らかに箒の有利に進んでいた。シャルは状況を見て後ろに下がり、今は俺達のそばにいる。
「ゼェイ!」ブンッ!
ザンッ!
「グゥッ!」
剣道で鍛えた反射神経と元から高い運動神経が相まって、今なら櫂のドラゴンにすら達するんじゃ無いかと思う程だ。
「邪魔を、するなぁ!」
「っ!その程度!」
ルパンが光弾を放つが、箒はそれを真っ二つに斬り裂きながらルパンに迫り、もう一度斬り掛かる。
「ええい!」
〈コネクト・ナウ〉
「はぁ!」
ルパンは剣の様な武器を取り出してそれを防ぐ。
「箒!これ使って!」
その時、鈴がいくつかのリングを投げた。それの内一つは箒が掴み、残りは綺麗にホルダーに収まった。
「分かった!」
箒は掴んだリングを右手にはめると、ウィザーブレードのパーツをスライドさせてハンドオーサーのサイドを逆にした。
〈ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!〉
〈スラッシュ・ナウ〉
「ハァ!」
「なっ?!ぐあぁ!」
箒の斬撃は勢いを増し、ルパンの剣を押し切った。そのままルパンを斬るが、殆どダメージが入ってないみたいだ。
「次はこれだ!」
〈ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!〉
〈シュート・ナウ〉
箒は右手のリングを即座に変えてかざした。ウィザーブレードには光が宿り、箒は何もない所でその刀身を振る。
「タァ!」
その掛け声と共に、刀身に宿っていた光が剣の軌道に留まり、その形を纏ったまま斬撃を飛ばす。
「ヌゥン!」
ルパンは負けじとそれを弾き、お返しと言わんばかりに光弾大量に撃ってきた。
「ならば!」
〈ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!〉
〈ブラスト・ナウ〉
魔法が発動すると、箒の周りに衝撃波が走り、それが光弾を誘爆させて当たる前に全てを消した。
「これで決める!」
「させん!」
箒がリングを変えようとしたその時、無数の魔法陣が現れ、以前学校を襲おうとしていた無人機ISが大量に現れた。
「何?!」
「あのクソ兎!何普通にコピーされてんだよ!」
櫂が立ち上がろうとするが、まだ体が痺れている様で今にも倒れそうだ。俺も立たなければ。あの数のISに襲われれば、いくら変身した箒でも一溜りもない筈だ。
「このISは私達に任せなさい!」
その時、甲龍を纏った鈴が無人機の内一体を双天牙月で叩き落とした。
「なら、私も行きますわ!」
セシリアはスターライトMk-IIIで無人機を何体も落として行く。
「私も行くぞ!」
ラウラはAICで動きを止めつつ、プラズマ手刀やワイヤーブレードを使って無人機を斬り裂いていった。
「なら、僕はサポートするよ!」
シャルが触手で無人機を引きずり通し、そこを爪で貫いて倒していく。
「凰!あの武器を貸せ!」
「はい!」
千冬姉が鈴に呼びかけると、鈴はウィザーソードガンを投げた。千冬姉はそれを受け取ると、地面に近い無人機を縦横無尽に斬って行く。
「アイツだけ生身じゃねぇか」
「そこら辺は気にしたら終わりだろ」
なんて、呑気な話を出来る程には回復したが、まだ立っているのが精一杯だ。一体何を喰らえばこんな長い間立てなくなるんだよ。
「これで貴様の兵はいないも同然だ。私の仲間を侮るな!」
箒は今度こそ右手のリングを取り替えた。
〈ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!〉
〈イエス!スラッシュエンド!アンダースタンド?〉
ウィザーブレードに、光が集まる。それはやがて光の刀身となり、箒はそれを構えた。その構えは、俺と櫂と箒が小学生の頃に必死に練習していた技だ。櫂が提案して、皆で考えて、皆で練習した(櫂はたまにサボってた)技だ。
「ウオォォォォ!」
下段に構えて、振り上げる。
「昇龍斬ッ!」
剣道では恐らく隙だらけになるだけの技だけど、俺達にとっては三人の絆とも言える技だ。必殺技にそれを選んだのは、俺達と共に戦いたいという意思の表れだと思う。
「グッ!グアァァァァァ!」
ルパンはその攻撃をもろにくらい、近くにあった崖に叩きつけられた。
「龍咆!」
「スターライトMk-III!」
「「最大出力!」」
「ウオォォォ!」
「ハアァァ!」
それと同時に、無人機と戦っていた皆も片付いた様で、皆が集まって来た。
「今日ばかりは私達の方が役に立ったわね」ニヤッ
「うるせぇ。お前らISとしか戦ってないだろ」
「いや、私はルパンに勝ったぞ」
「追い討ちかけるなよ…」
鈴は櫂に、箒は俺に少し嫌味を言う。あー、事実だから言い返せねぇ。
「ウ、オォォォォォ!」
「っ?!」
箒が振り返るより先に、光弾が箒を襲う。
「グアァ!」
箒は避けない。それどころかその場に留まろうとしている。理由は簡単だ。後ろに、俺達がいるから。
「何やってんだ!逃げろよ!」
櫂が必死に言う。このままじゃ、箒が!
「断る!私は何度もお前達に助けられた!だが、私は何も返せていない!だから、今度は私がお前達を!」
ダメだ。こんなのダメだ!分かってんのに、どうして俺の体は動かないんだ!
「グッ!これ以上私の仲間………いや、友には傷一つつけさせん!ウオォォ!」
ドカァァァァァァァン!
「箒ーーーーーーーー!!」
俺の声は、爆音の中に消えていった。