インフィニット・ストラトス 世界への反抗 作:鉄血のブリュンヒルデ
「おい箒!箒!」
一夏が倒れた箒を抱きながら声をかける。声をかけるっていうか、呼びかけてるな。箒の変身は解除されていて、体と服はボロボロになっていた。
「一夏。箒を頼む」
「何言ってんだ!俺も戦う!アイツをぶっ殺す!」
「憎しみに囚われたお前は戦うべきじゃねぇ。憎しみが人を強くするのは一瞬だ。それに、俺達の目的は殺す事じゃ無くて救う事だろ」
「ふざけんな!箒がこんなになったのになんでお前そんなに落ち着いてんだよ!ていうかお前もまともに動けないだろ!」
確かに、えらく落ち着いてんな。なんだろうな。怒りを通り越して変な感情に片足突っ込んでるのかもな。
「今はんな事話してる尺はねぇんだよ」
今にもあのドライバーは暴走しそうだ。それを精神の凶暴化に留まっているのは、アイツの精神力のおかげだ。娘を救いたい。その一心だけでアイツは精神を完全には呑まれずにいる。
「魔力の殆どを回復に回して、そして内からドラゴンの力で魔力を増幅させる。この方法を思いついて、やっとそれが終わって動ける様になったのは”今更”だ」
俺は立ち上がりながら言う。
「ありがとよルパン。俺が自分で押せない所にあるスイッチ、押してくれてよ」
左手が熱くなる。よく見ると、いつの間にかフレイムドラゴンに変わってるが、まぁ変える手間が省けたからいいや。
〈シャバドゥビタッチヘーンシーン!シャバドゥビタッチヘーンシーン!〉
「変身」
〈フレイム・ドラゴン〉
〈ボー・ボー・ボーボーボー!〉
体にドラゴンの………俺のファントムの力を纏う。俺ももう片足なんてレベルじゃない程に化け物になってんな。
「さぁ、ショータイムだ」
「娘を………娘を救う為に私は!」
「ハァ!」
俺は二本のウィザーソードガンでルパンを斬り裂く。だがまぁ、この程度で倒せねぇのは分かってる。
「私は、私はァ!」
やっべぇな。殆ど自我が崩壊してんじゃねぇか。
「娘を、救う為に、世界を破壊する!」
〈ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!〉
〈イエス!キックストライク!アンダースタンド?〉
「やらせねぇよ。世界の未来も、お前とお前の娘の命も、全部消させねぇ!」
〈ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!〉
〈チョーイイネ!キックストライク!サイコー!〉
俺もルパンも、右足に力を溜める。これで最後だと言わんばかりに。
「これで終わらせる!」
「終わらせねぇ!」
俺達は同時に走り出した。そして飛び上がり、右足を突き出してそのまま迫る。
「ハアァァァァァァァ!」
「トアァァァァァァァ!」
ズガァァァァァン!
二つのエネルギーが衝突する。エネルギーが空気を振動させて、波動を生む。波動が辺りの崖や地面に当たると同時に爆発を生む。おぉ、一夏がちゃんとディフェンドで防いでる。つーかディフェンドでドームみたいなの作ってんじゃん。器用かよ。
「私は!私はァァァァァァ!」
「一人称ばっかり言ってんじゃねぇよ!うるせぇな!文章成り立ってねぇんだよ!」
あー、腹たってきたわ。なんか言ってたっけ?子供の為なら全てを投げ出せるのが親という物だ、だっけか?くっだらねぇ。
「そうじゃねぇ奴がいるから!この世界は腐ってんだろうが!」
「ウオォォォォォォ!」
「死ぬのも苦しむのも化け物になるのも!本当は全部俺一人で良かったんだよ!」
俺の後ろに炎のドラゴンが現れる。そいつは俺の右足に飲み込まれる様にして溶けていく。それと同時に、俺のキックの勢いが増す。
「終わらせねぇって言ったが、テメェの愚行だけはここで終わらせる!」
〈チョーイイネ!キックストライク!サイコー!〉
俺はもう一度魔法発動させてエネルギーを倍加させる。その力は、常に魔力を生み出し続けるドライバーの力を、上回った。
「シャラァァァァァァァ!」
「グォアァァァァァァ!」
ルパンを蹴り飛ばし、俺は綺麗に着地する。ルパンは地面に転がりながらその姿を社長に戻す。
「グッ、ウゥ……」
「フィー、Show is over」
俺はドライバーを回収しようと社長に近付いた。だが、社長の腰には、ドライバーが無かった。
「何?」
「フハハハハハハハハッ!とうとう力が最高潮に高まった!」
「っ!」
崖の上から笑い声が響く。俺はその方向を向くと、そこには白衣を着た男が立っていた。
「賢者の石こそ手に入らなかったが、ここまで力が高まったのなら、二つの魔法石だけで充分だ!」
「お前が木島宏大か!」
俺の横に一夏が走って来て叫ぶ。いつの間にか回復したのかコイツ。
「そう!私こそが天才魔法学者、木島宏大だ!」
「うっわー、天才って自分で言うとか無いわー」
「そのドライバーを返せ!」
あぁ、耳元でうるせぇなコイツ。仕方ねぇけどよ。
「断る!私はこの力を使って、神となるのだァァァ!」
ガンッ!
奴は二つの魔法石を取り出し、勢いよくぶつけた。その瞬間、二つ魔法石は輝きだし、奴の両手にリングを作り出した。そしていつの間にか付けていたのか、ドライバーのホルダーにもいくつかのリングがついていた。そして奴はハンドオーサーを操作して、変身待機状態にした。
〈シャバドゥビタッチヘーンシーン!シャバドゥビタッチヘーンシーン!〉
「へぇんっしぃぃん!」
〈フュージョンッ!ナウ〉
ゴオォォォォォォォォォ!
「っ!」
奴が変身するのと同時に、地震が起き始めた。
「なんだ!」
「お、おい!あれ!」
その時、一夏が真上を指さした。って!
「近付いてんじゃねぇか!」
「どうすんだよこれ!」
「どうするも何も!」
ヤバい。こうなるとは想像もしなかった。賢者の石の在処がわからない以上は世界の作り替えは不可能な筈だった。だけど、奴は有り余るドライバーの力でそれを代用しやがった。このままじゃ、世界が壊れちまう。そう思ったその時だった。
「グッ!」
奴が突然呻き声を出した。
「なるほど、あのどれかにいる私と干渉したのか。だが面白い。もう一人の私と融合する事で、私は完璧な存在となるのだァ!」
奴は空に飛び立って行った。
「逃がすかっ、うっ、いってぇ!」
その時、右足にえぐい痛みが走った。さっきのダメージか。タイミング悪ぃな!
「櫂、大丈夫か?」
一夏が俺の肩を支えて立ち上がる。
「こりゃ、最終手段使うっきゃねぇな」
「最終手段?」
正直、この手段は一か八かだ。
「世界を強制的にくっつけるんだよ」
戦兎から話を聞いた時に出て来た手段。世界を無理矢理一つにして完全体になるのを阻止したっていう、あれだ。
「そんな事したら、世界が壊れちまうだろ!」
「いや、そうなる前に決着を付けるんだ。宛ならあるしな」
俺はあのリングを取り出して、右手にはめる。そして耳の辺りに持っていくと、声が聞こえた。
「おっ、お前も同じ事考えてたのか。気持ち悪い」
『なんでそうなるんだよ。開口一番酷くないか?』
別に普通だと思うが。まぁいいや。
『んで?俺と考えてる事が同じなら、やる事分かるよな?あぁ、俺達もその手段を取らざるを得なくなった』
「何があった」
『こっちの世界での世界の融合を行おうとした奴を倒そうとしたんだが、逃げられちまってな』
なにやってんだか、と言う言葉は飲み込んだ。実際俺も取り逃がしたし。
『このあと、タイミングを合わせて同時にもう一つの世界に干渉する力を放つんだ。そうすれば、世界は強制的に半融合状態になる筈だ』
「そんで急遽融合したソイツらをぶっ飛ばすってことか」
『ま、そんな感じだ』
その作戦には致命的な欠点がある。確実に戦兎も気付いてるだろうけど。
「とにかく”時間”が無い。やるならなるべく早くな」
『分かってる。それじゃあまた後で』
この世界の命運は俺達に懸かってる。絶対に終わらせねぇよ。目的を果たすまではな。