やっぱり事前に伏線とか張らないと展開が唐突になっちゃうね…
「突然電話してすまない、姉さん…久しぶり」
時計の針は少し巻き戻り、一夏たち1年生が臨海学校へと出発する三日前の事。箒は寮の消灯時間間際、ある人物へと電話で通話をしていた。
「そんなにかしこまらなくても良いよ、箒ちゃん」
電話の相手は篠ノ之束、IS(インフィニット・ストラトス)の生みの親であり。現在は世界各国から身柄の保護を名目に追われる身でもある天才科学者だ。
「実は…」
「良いよ、言わなくてもわかってる」
「姉さん…」
箒の言葉を遮り、結論を出す。この天才科学者の前では小娘のお願い事などお見通しだ。
「専用機が欲しいんでしょう?」
束は電話の向こうの妹の表情を予想する、今頃泡を食ったような顔をしていることだろう。束はほくそ笑んだ、これならわざわざ専用機を渡す口実作りをする必要もない。
束は既に製作していたのだ、実の妹。箒に渡す専用機を、あのいじらしい妹がまさか自分から私に”おねだり”をしに来るのは想定外だったが。
「ほ、本当なのか…姉さん…!」
「うん!束さんは箒ちゃんのことならなん「ありがとう姉さん!!」よ…!?」
突然の大声に驚く束、何事かと思っていると箒は更に感謝の言葉を続けた。
「ありがとう姉さん…!本当に何と礼を言ったらいいのか…!!」
「い、いやぁ…別にそこまで言ってもらえるのなら…束さんもう「本当にありがとう!!!」しいよ…」
またも出鼻をくじかれた束、話のペースを完全に箒に取られてしまった。元よりコミュ障の彼女は一度話の主導権を握られてしまうともう押し黙ってしまう他ない。
これが赤の他人ならば束は相手のコミュニケーションをシャットダウンしてそもそも会話が成立しないのだが、今相手をしているのは実の妹の箒だ。無碍にする訳にもいかない、証人保護プログラムによる家族離散の原因となったのは他でもない自分だ、その負い目もある。
「う、うん…」
「ありがとう…!ありがとう……!姉さん!!」
「あ…りがと、う…」
振り絞るような声で感謝の言葉を述べる箒と、しどろもどろにそれを受け取る束。一方的な展開の手押し相撲のような会話は束の精神すり減らした、がんばれ束。
「これでようやく…」
「よ、ようやく…?」
「一夏を手篭めに出来る………!!!」
「てごっ?!」
電話の向こうに居る妹の口からなにやらとんでもない言葉が聴こえた気がする、『手篭め』時代がかった言い方だが要は『犯す』という意味だ。犯す?箒ちゃんがいっくんを犯す!?
「まっ!待って箒ちゃん!!」
「本当にありがとう!!!姉さん!!!!」
電話はそこで途切れた、もうどうしていいのかわからずただ途方に暮れる束。天災とも呼ばれる優れた頭脳は想定外の事には酷く脆かった。
「…どうしよう…」
束のすぐ後ろでは作業用アームが着々と箒の専用機を建造している、一切の滞りなく進む作業を束は呆然と見ていた。
嫌な予感がする、束は勘などという不確定要素に信を置くことはない。ないのだが、今回に限っては別だ。何かとんでもない事が起きるかもしれないと、束の第六感は告げていた。
「ふ、ふふっ…!」
篠ノ之箒は歓喜していた。遂に、遂に一夏が私のものとなるのだ、口元は欲望に歪み、垂れる涎を舌で卑しく舐めとる。整った容姿を全て帳消しにする程汚い笑顔だった。今誰かが箒の姿を見れば誰もが彼女を変態と呼ぶだろう。事実変態だった。
「一夏が悪いんだからな…!お前があんなにやらしい躰をしているのが悪いんだ………!」
水〇敬ランドに出てくる女みたいなきったない笑顔を浮かべ、一夏をまだ見ぬ自分の専用機でモノにする場面を妄想する箒。
そして余談だが、この一人ニヤニヤしている姿を他の生徒に見られ、暫くの間箒は陰でのアダ名が『変態ニヤけ女』となる。
――――――――
臨海学校2日目、ここからIS学園生徒達は本格的なISを使用した訓練を始める事となる。1日目の自由時間で英気を養った生徒達は、みな各々に己の背負う課題に取り組むのだが今年はそうはいかない。今年はなんたって皆のセックスシンボル織斑一夏が居るのだ。
一夏はそのドスケベボディをISスーツに包み、少女達を惑わす引力を放ちながら2日目の訓練に参加していた。
「行くぞ!鈴ッ」
「かかって来なさい!」
旅館から少し離れた沿岸部上空にて、教員と多くの生徒達が観戦する中。一夏の白式と、2組の鈴が駆る甲龍は互いの近接戦闘用装備を使用した模擬戦を行っていた。
方や搭乗時間半年にも満たない素人と、方や中国代表候補の戦いは後者による一方的な試合展開になるだろうという開始前の観戦者たちの下馬評を覆す接戦となった。
「うおぉぉぉ!!」
「ハハッ!やるじゃない」
鈴は表面上こそ一夏の成長を讃えてはいるものの、内心とても焦っていた。成長速度が早過ぎるのだ、余りにも。鈴とてIS操縦未経験から弛まない研鑽と努力により代表候補生の座を掴んだ秀才だが”ここまで”ではなかった。
やはり血か?鈴は対戦者である一夏に注意を配りながら、観戦者の中に混じる千冬を横目に見る。初代戦乙女(ブリュンヒルデ)織斑千冬。その才覚を宿す血は実弟にも脈々と流れているようだった。
そして何より…
「はぁぁぁっ!」
(エロいッッッ!!)
芳醇な若い色香を放ちながら鈴に向かって突進する一夏、端整な容姿と相まってそれは躱し難い引力を携えていた。これが1組の生徒であったならば日々共に教室で過ごす為に耐性が付いているのだが、鈴は2組。一夏とふれあうのは精々授業の合間の休み時間くらいだ。当然耐性など身に付いている筈もない。
「トドメだ!」
「しまっ…」
一夏が持つ零落白夜が鈴を袈裟に斬り伏せる、それと同時に甲龍のシールドエネルギーは底をつき、絶対防御が発動した。
鈴の敗因はただ一つ、『2組』だったからだ。
「ほら、ちゃんと捕まってろよ」
待機状態となった甲龍では陸地に戻ることが出来ないので、仕方なく一夏は鈴に所謂お姫様抱っこをしながら皆の前へ戻る事となった。
観客からは嫉妬と羨望の混じった眼差しが寄せられ、「私も抱っこされたい」「抱かれたい」「寧ろ抱きたい」などどそれぞれ好き勝手な感想を述べるのだった。
そして、その中に一際熱い眼差しを一夏へと向ける女が居た。そう、我らが変態ニヤけ女篠ノ之箒だ。
(良いぞォ…一夏ァ)
武〇弘光の描くマンガに出てくる女みたいな顔でニタニタと欲望を滾らせる箒、紛れもない変態だ。
(よくぞ実った…食べ頃になるまで…私が食べるまで…!)
目を血走らせ、地に降りて来た一夏をガン見する箒。一夏は既に白式を解除しており、汗に濡れたカラダを露わにしていた。年若い少女達にとって目に毒ってなんてもんじゃない、劇薬だ。
「鈴ッ!鈴ッ!ヤバい鈴が息してないっ!」
「しっかりして鈴音ー!!」
お姫様抱っこによる至近距離で一夏のフェロモンを浴びた鈴は心肺停止状態となっていた。まあ助かるだろう、鈴だし。
「鈴大丈夫かなー」
箒の滾る熱視線に全く気付かないまま、呑気に鈴の心配をする一夏、彼は知らない。後に災難が他でもない自分自身に降りかかるという事を。
束さんまさかのツッコミ役に
日に日に文才が枯渇していってるなぁ…