遅れてすいません!これも全てFGOが悪いんだ!(責任転嫁)
一夏がその劇薬に等しい汗ばんだ躰を少女達の前に晒していた時からほぼ同時刻。遠く離れたアメリカ、ハワイ州上空、高度10000mを無人ISシルバリオ・ゴスペル(以下、銀の福音)は高速で飛行していた。
目指すは日本、いや、正確には織斑一夏。その人ただ一人。既に米本土からの執拗な追撃を振り切った銀の福音はその勢いで一気に米領空圏を抜けようとしていた。
『ICHICA…!ICHICA…!』
ここを抜けられれば一夏に逢える。一夏を抱ける、犯せる。銀の福音に搭載される人工知能は最早正常な思考能力を完全に喪失していた。狂える鋼の乙女を止める者など、いったい何処に居るというのか。
『…Enemy aircraft sensing』
そう、何処にも居ない。銀の福音のハイパーセンサーが本来友軍機である米空軍所属機を”敵機”として捉えた。敵だろうが味方だろうが関係などない。些末な事だ。私の邪魔をするものは全て敵だ。
「ロックオンされた」
「こっちはステルス機だぞ」
ハワイ州、ヒッカム空軍基地より本土からの要請を受けスクランブル発進したF-35Aを中心に構成された編隊は、通常編成から遥かに多い特別編成にて狂える無人機を迎え撃った。管制塔からは既に撃墜命令は降りている、オマケに無人機きた。何も躊躇する必要性など無い。
何より腹が立つ、パイロット達は折角の休日をこんな訳の分からん鉄屑に潰された怒りで燃えていた。家族との時間、恋人とのデート、友人との遊びの約束。それら全てをこの鉄屑は奪ったのだ。
「ステルスだろうが無かろうが何れにしても顔を突き合わせねばならんのだ」
特別編成隊の隊長が落ち着いた声色で隊員達に無線で語りかける、歴戦の勇士の言葉に浮き足立っていた隊員達は軍人らしい冷静さを取り戻した。
「こんなポルノ紛いの写真ひとつで暴走するAIなど最初からスクラップにしてしまえば良かったのだ!!」
ヒッカム空軍基地管制塔にて一人の男が資料として渡された紙の資料を両手でぐしゃぐしゃに丸めるとその辺に投げ捨てた。男の着る軍制服の胸元には多くの勲章がこれまで彼が歩んできたエリートコースを悠然と周囲に示していた。
「司令、どうか落ち着いてください」
「落ち着け?今、貴様落ち着けなどと言ったか?これが落ち着いてなど居られるか!」
男は先程自分が丸め捨てた資料を3~4回踏みつける、無残な姿となった資料には1人の少年の顔写真と少々如何わしいアングルから撮られた写真数点が貼り付けてあった。
織斑一夏、世界で唯一ISを操縦できる男性であり。今回の騒動の原因(?)でもある少年だった。
「あのGAY BOYめ、我が国に恥をかかせる為にひと肌脱いだって所か?」
「いや、たかがGAYの学生がここまで大それた事が出来るかよ」
「織斑一夏の背後に居る何者かが彼に指示したと?」
今回の騒動の為に同基地内に緊急設置された『無人機対策室』は混迷を極めていた。集められた軍人たちはそれぞれ今回の騒動についての持論をそれぞれ展開していた。まあ尤も、飛び交う推論のほぼ全ては3流ゴシップ誌に載っているような陰謀論だったが。
「まさか…日本が我々に戦争を仕掛ける気なのでは!?」
「………有り得るな」
「クソッ!GAY BOYめ!!なんて卑劣な」
「卑劣なGAYがッ!」
そんな中、対策室に一人の下士官が飛び込んできた。走ってきたのであろう。息を切らせながら、額には汗が浮かんでいた。
「たった今、追撃隊が無人機と会敵したようです!」
軍人達の顔は途端に険しい物へと変わった。
「攻撃開始」
隊長機からの指示を皮切りに隊員達は嬉嬉として火器を銀の福音に撃ち込んで行った。機銃とミサイルの集中豪雨が銀の福音を包み込む、これが通常兵器であれば存在した形跡すら遺さず消し飛ぶであろう苛烈な攻撃。
だが彼女は、銀の福音は現世界最新、最高、最強の兵器とされる『IS』である。一般の競技での使用を前提としたものではない、実戦を想定した強度を有するシールドエネルギーが旧来兵器の一斉攻撃の尽くを完封する。
「Interceptor start」
銀の福音は背部にユニットを展開した、眩い輝きを放つ双対のそれをコックピット越しに視認したパイロット達は皆、魅入ってしまった、今まさに自分達の命を刈り取ろうとせんとする無人機の姿に。
「天使」
隊員の誰かがそう呟いた。その言葉が管制塔が記録する彼ら特別編成隊の最後の言葉だった。
銀の福音は大翼を優雅に羽ばたかせ、羽根の弾丸を放つ。光が空を覆うと光の雨が彼らに降り注いだ。
「………総員脱出!!」
既のところで気を取り戻した隊長が総員に即時脱出を大声で指示した。各機からパイロットシートが乗員を乗せて射出される、隊員の一人がベイルアウトによるGの負荷に歯を食いしばりながら自身の真下を見た。彼のヘルメット越しの視界に映ったのは数秒前まで自身が乗っていたF35Aが輝く光の羽根の濁流に飲み込まれる瞬間だった。
戦闘機たちの断末魔のようなけたたましい爆発音がハワイ州上空に響き渡る、銀の福音は踵を返すと振り返ることなく再び一夏を目指して高速巡行を再開した。
「行っちまったよ…」
事の顛末を管制塔から監視していた局員が力なくそう呟いた。彼の目の前にあるモニターには『Annihilation』の文字が彼ら特別編成隊の全滅を無機質に示していた。
『銀の福音』日本到達まで後数時間。
―――――――
「さあ、次は誰からやる?」
千冬は生徒達を見回しながら彼女らの自主的な模擬戦参加を促す、すると1人の生徒が挙手をした。白をメインカラーにしたISスーツにその豊満な肉体を包んだ生徒は千冬もよく知る者だった。
「篠ノ之か」
「はいっ!」
いつもより妙にハキハキとした声で箒は訓練に名乗りを上げた。まるでプレゼントを買って貰った子供のような目だ、千冬は何処か浮ついた様子の箒に困惑しつつも言葉を続けた。
「よし、訓練機は用意してあるからそちらに乗れ、装備は…」
「いえ、その必要はありません」
「何?どういう事だ」
「それは私から説明させてもらうよ」
一人の女がふらりと、風のように千冬の前にやって来た。千冬はその女をよく知っていた。いや、この場にいる者全員が、その女の顔を知っていた。かの有名な絵画『モナ・リザ』の次に世界中に知られた女の顔。
授業で使用するISの教本、その最初の1ページ目に顔写真と共に紹介される、毎日嫌でも目にするその女の名前は。
「篠ノ之博士!?」
周りの喧騒も我関せずといった様子でその場に現れた束、その背後には自律可動式の大型ドローンがコンテナを背負って束に追随していた。
「久しぶりだねーちーちゃん、箒ちゃんも!」
「束…!」
「姉さん…!」
千冬は突如再開した旧友に驚き、箒は目を輝かせ待ってましたと言わんばかりに実姉を歓迎する。
コンテナを担いだ大型ドローンが箒のすぐ側に着陸すると、コンテナが自動で開き、鮮やかな紅い装甲を伴ったISが中から露わとなった。
何事かとざわめく観衆と、赤い”それ”の存在の正体が何かを確信した箒は震え声で恐る恐る実姉に赤い”それ”は何かと問う。その表情は歓喜に満ちていた。
「それが…私の…!」
束は得意気な顔で答えた、可愛い妹、箒の為に特別に拵えた、篠ノ之束の研究者人生の中でも最高傑作と自負するそのISの名を。空に紅く輝く花の名を。
その名は…
「うん、箒ちゃんの専用機!第4世代型IS『紅「ありがとう姉さん!!!」………うん」
またしても言葉を遮られた束、まあ妹が喜んでるならそれで良いかと束は力なく笑った。
さーてこれからどうしようか…展開に悩みながら書いてます…